軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

25 ふたりの朝と夜

――朝陽が柔らかく照らす中で目を覚ますと、慣れない空気を感じて戸惑う。

ベッドでころんと横に転がると、金髪の男性の背中が見えた。

(レイヴィス様……?!)

驚きで息を呑みかけて、昨日の夜のことを思い出す。

そうだ、昨夜はこの部屋で、このベッドの上で――レイヴィスから魔力教導を受けて、疲れてそのまま寝てしまった。

「…………」

不思議な感覚だった。身体の感覚が、昨日までとまるで違う。太陽の光をたくさん浴びたようにじんわりとあたたかい。まるで、まだ内側でレイヴィスの魔力が響いているかのような。

ぼんやりとレイヴィスの背中を見ながら腹部を触っていると、レイヴィスの身体が動き、振り返った。

目が、合う。

「――おはよう」

柔らかい表情で、まるで当然のように挨拶をしてくれた。

「お……おはようございます」

リリアーナの挨拶は、少しぎこちないものになってしまった。

「身体の方は大丈夫か?」

「はい……でも、なんだか、不思議な気分です。うまく言えないんですけれど……昨日までとは違っていて……」

自分の内にある新しい感覚を、何とか言葉にしたくて考える。

「レイヴィス様の太陽が、私の中にあるような……元気をいただけるような……」

「ッ……そ、そうか……」

レイヴィスは一瞬息を詰まらせて、目を逸らした。

「俺は今日は城にいくが、無理はしないでくれ。本当は一日中傍にいたいんだが……」

「お仕事頑張ってください。それで、その……今日は帰ってこられますか……?」

――できたら、今夜も一緒に過ごしたい。

レイヴィスはまるで太陽のような笑顔を浮かべた。

「もちろんだ。必ず帰る」

◆◆◆

その日の夜も、昨夜と同じくベッドの上で寝間着姿で座る。今日は向いあって。

「今日もピラーを作れるんですか?」

「いや、当分は魔力のコントロールを覚えることに集中したほうがいい。そういうわけで、今日は魔力を循環させる訓練だ。両手を出してくれ」

レイヴィスはそう言って、両手の手のひらをリリアーナに向けてかざす。

リリアーナはレイヴィスの方に少し近づき、両手を伸ばしてそっと繋いだ。

(この、体勢……)

ベッドで向かい合って座って、両手を繋いだ体勢は、思った以上にとても近い。

レイヴィスの香りも感じて、思わず腰が引けそうになったが、ぎゅっと指を絡ませて握られると動けない。

「それでは始めようか」

「はい……」

レイヴィスの魔力が、手のひら全体から静かに流れ込んでくる。

「…………」

リリアーナは集中して魔力の流れを感じるようにする。両手から流れ込んでくるレイヴィスの熱を、身体の中の魔力で受け止める――それだけのこと。なのだが。

正面にいる彼の顔が近い。

金色の瞳はまっすぐにリリアーナを見ている。おそらくこちらの様子をつぶさに観察してくれているのだろうが――

それがどうしようもなく恥ずかしい。

思わず視線を下に向けると、レイヴィスの身体が目に入る。

しっかりとした男性の身体が、いまは柔らかい寝間着に包まれていて――

そしてリリアーナも寝るための柔らかい服を着ていて、お互いに身体の線が出ていて――

これは初夜と同じような格好なのだなと思うと、一気に顔が熱くなる。

そしてこの体勢――逃げ場がない。

片手だけならシーツをつかんで気を逸らせたのに、両手がしっかりと繋がれていて、絶えず魔力が流れ込んでくる。

太陽のような魔力に影響されて、身体の内側からじわりと熱が上がってくる。

胸が高鳴り、息が上がっていく。

両手と魔力で繋がっているだけなのに、どうしてこんなにも鼓動が速くなるのだろう。

肌に汗が滲み始める。レイヴィスの視線を感じるたび、身体の奥がむずむずと疼く。

「……リリアーナ、少し落ち着こう」

「は、はい……」

頷くが、どうしても落ち着けない。

心を落ち着けようにも、身体の方が、彼の存在をもっと感じようとしている。

まるで細やかな波が全身を撫でているような不思議な感覚が、身体の奥底の方から響いてくる。

気づけば肩を震わせ、息を短く刻んでいた。

(レイヴィス様が……私の中にいるみたい……)

レイヴィスの魔力が、奥深くを揺さぶっては引いていく。くすぐったくも甘いそれが隅々にまで広がっていき、全身が彼の魔力に染められていく。

なのに――足りない。

「……リリアーナ?」

再び呼びかけられて、やっとのことで顔を上げる。

目を合わせた途端、レイヴィスの視線に心が揺さぶられれ、反射的にまた目を逸らしてしまう。

「……見られているのが恥ずかしいか?」

答えにくい質問を投げかけられる。

「わ……わかりません」

「そうか。だが、君の魔力は素直に俺に応えてくれる」

気持ちを見透かすような目に、心臓が大きく跳ねる。

そんなことを言われても全然わからない。

ただ、手を繋がれて、隠れる場所も逃げる方法もなくて。

何もかもをさらけ出していることも、じっと見つめられていることも。

まるで獣に追い詰められたかのような、息苦しさが胸にこみ上げてくる。

「――あっ、あの」

思わず声を上げる。

「ほ、本当にみんなこんなことをしているのですか?」

「子どものころにな」

何でもないことのように言われる。そういえばそんな話を聞いたことがあるような気が。

「女性はたいていそのままでも魔力を安定させられるが、男は暴発させることがある。そうならないように、幼い頃に魔力のコントロールを学ぶ。俺も、父に習った」

「あっ、そ、そうなんです、ね……っ」

腰がぴくんと跳ね、声が震える。

「――リリアーナ、辛いなら今日はもう……」

「だ、大丈夫です……大丈夫ですから……やめないで……」

やめたくない。

まだ途中のはずで、まだ終わりたくない。

「そうか。じゃあ、もう少し深くを探ってみよう」

金色の目が鈍く光り――

(あ――――)

ずんっ――と、前に知った場所よりも深くを暴かれた。