軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

駆ける銀牙(裏)

少しだけ話は遡る。

レウスが銀月の誓いを破り、マリーナと共に走り去った後……俺は深い溜息を吐いていた。

この後、フィアの件を知ったレウスから殴られるかもしれないし、アルベルトに誘われてここに残ると言って俺から離れてしまう可能性もある。

それでも、レウスの自主性を鍛える為にも俺は嘘を吐いた。

「だが……あいつには嘘を吐きたくないものだな」

「シリウス様?」

「嘘って……もしかしてフィアさんの話は……」

「ああ、実はー……」

そして俺はエミリアとリースに真実を語った。

フィアの故郷が襲われたのは嘘であると。そして俺の判断に流されるレウスに、あえて辛い選択肢を突きつけた事をだ。

しかし……これは俺の勝手な言い分であり、レウスは何も気にせずに俺の下で動いている方が幸せだったかもしれない。

だがレウスは、俺と並び立って背中を守れるようになりたいと言うのだ。

つまり俺の相棒になりたいのだろうが、そうなれば話は変わる。

レウスの実力は認めてはいるのだが、まだ精神面の経験が足りない。

なにより俺の命令を待っていたり、言動に流されるような者に自分の背中を任せたくないのである。

だから今回の嘘はそれを計るようなものだったのだが、あいつは俺たちの状況を見極め、誓いを破ってでも友を見捨てる選択をしなかった。

このまま成長していけば、いつか……。

それからフィアも共犯者だと話し終えたところで、エミリアとリースは笑みを浮かべながら俺に近づいてきた。

「理由はわかりますが、レウスだけでなく私たちを騙したー……ばちゅでひゅ!」

「そうですよ! 私たちにもちゃんと説明しておいてください!」

「ごめんー……ぐっ!? いたたたたっ!?」

「…………」

「フィアさん? 逃げようとしたって駄目ですよ。あむっ!」

「フィアさんも同罪ですからね!」

「あ、あはは……お手柔らかにお願いね」

皆を騙した罰として、俺はリースから平手を頬に貰い、エミリアからは首を甘噛みされた。レウスの苦しみに比べれば大した痛みではないので、甘んじて受け入れた。

一方、俺と共謀していたフィアは今日から二日飲酒禁止を言い渡された。

「はぁ……でもまあ、レウスを騙しちゃったから当然か。偶にはお酒禁止も悪くないかもね」

「……すまん」

「シリウスが謝る必要はないわよ。貴方の話を聞いて私自身が納得した上でやったんだから、これは自分のせいよ」

全く、そこまで言われたら何も言えないじゃないか。今度埋め合わせをしてあげないとな。

「それでフィアさんの話が嘘なら、私たちはこのままこちら側の魔物と戦う事でいいのかな?」

「ああ、そのつもりだが……ホクト!」

「オン!」

「お前はレウスとマリーナを追い掛けて、二人をアルベルトの下へ運んでやってほしい。そして運んだ後はこっそりとレウスたちを見守っていてくれ」

これはレウスの試練でもあると思うので、必要な場合を除き魔物は極力倒さないように頼んでおいた。

「オン!」

頼もしく吠えたホクトは、俺たちの前から風のように走り去った。

これでレウスたちの方は大丈夫だろうが……。

「さっさとこちら側を片付けて、向こうの様子を見に行くか」

「何だかんだ言っても、レウスが気になるんですね?」

「悪いか?」

「いいえ。シリウスさんらしいです」

リースが微笑ましそうに笑っているが、気になるんだから仕方がない。

そしてエミリアは……。

「しりゅふすしゃま……」

俺の首を甘噛みしたまま、頬を上気させていた。

「ねえ……この子、発情していないかしら?」

「そういえば、銀狼族は首や肩を噛むのは夫婦の証だって、エミリアが言っていたような気がする」

「ほら、とにかく離れなさいエミリア」

「あう……も、もっと……」

自分から離れようとしないので強引に引き剥がしたが、エミリアの興奮は中々収まらなそうだ。

とりあえずエミリアの頭を撫でて落ち着かせながら、俺は思考を切り替えた。

「さて、今からパラードの討伐隊と合流するわけだが……」

事前に聞いた情報によれば、パラードの討伐隊より魔物側の方が若干戦力が多いらしい。魔法や罠を駆使すれば勝てるだろうが、被害を考えるとかなり厳しいそうだ。

だがいつか町を出て行ってしまう俺たちが魔物を全滅させてしまえば、町全体の危機感を削いでしまうし、俺たちがやったと知られれば色々と面倒な状況になる。

なので……。

「討伐隊とぶつかる前に魔物を間引こうと思う。俺はあそこの丘から魔物を狙い撃つから、三人は討伐隊と合流ー……」

「あ、ちょっと待って。魔物を減らすなら私に任せてもらってもいいかしら?」

「別に構わないが、魔物を全滅させる威力にしたら駄目だぞ?」

「ええ、程よく被害を与える魔法があるわ」

片目を閉じながら自信満々に答えているので、ここはフィアに任せる事にした。

というわけで、エミリアとリースは討伐隊に合流させ、俺とフィアは戦場を見渡せる高い丘へと移動していた。

戦場となる場所は大きな障害物が存在しない、だだっ広い平原だ。

その片隅にパラードの討伐隊が陣形を組んで魔物を迎え撃つ準備をしており、そのまま視線を反対側へ大きくずらしてみれば、広く展開しながらパラードの町へ迫ろうとしている魔物たちの姿を確認できた。

おそらく魔物たちが平原の中心を過ぎた辺りで、討伐隊の魔法が放たれて戦闘が始まるだろう。

「情報より少し数が多そうだな。行けるかフィア?」

「任せて。風の精霊の力、見せてあげるわ」

集中を始めたフィアは両手を前に突き出し、魔力を高めながら歌い始めた。

これは詠唱ではなく彼女特有の発動方法であり、以前に説明してくれた話によると……。

『風の精霊たちは私の歌が好きみたいなの。だから歌っているといつもより張り切ってくれるのよ』

つまり、大規模な精霊魔法を放つ時に彼女は歌うのだ。

綺麗な歌声が響き渡る中、『サーチ』で魔力の流れを調べてみれば、フィアから溢れた魔力が平原の中心に向かって流れているのがわかった。

俺は精霊を視る事は出来ないが、魔力が渦巻く平原から違和感を覚えるので、あそこには風の精霊も渦巻いているのだろう。

それからしばらくしてフィアの歌は終わったが……平原に変化は見られない。

「……魔法が発動していないんだが?」

「貴方が『インパクト』で使う時の、りもこん……だったかしら? あれと同じで、精霊に頼めば任意で発動するようにしたのよ。後は魔物たちがくる時機を見計らって……」

フィアの魔力は平原の中心で円を描くように渦巻いているので、感知能力が優れた者ではないとわからないだろう。

そして魔物がその中心に足を踏み入れたタイミングでフィアは片手を挙げ……。

「さあ皆、一暴れの時間よ……薙ぎ払いなさい!」

振り下ろすと同時に、平原の中心に巨大な竜巻が巻き起こった。

その場から動きが見られない竜巻だが、その分だけ範囲は広く、三割近くの魔物が成す術もなく呑みこまれていた。

フィアがやらなければ俺の『アンチマテリアル』で薙ぎ払おうと思っていたが、これなら使う必要はなさそうだな。

「魔物だけど同情したくなるな。あれは逃げ切れまい」

巻き込まれた魔物の四肢を引き千切られんばかりに振り回し、地面を削って穴を掘ってしまう程の威力だった。

しかし手製の望遠鏡で確認してみれば、 大鬼(オーガ) のような体が頑強そうな魔物には効果が薄そうだ。

あれでは竜巻が消えた後でも暴れそうなので……。

「仕留めておくか……」

それに、このままでは自分がいる理由がなくなってしまう。

なのでスナイパーライフルをイメージした『スナイプ』で、竜巻に巻き込まれている大型の魔物を優先しながら狙撃していった。

風の流れを読み、着弾地点の誤差を修正しながら放ち続けて魔物の数を減らしていると、討伐隊の陣地から多種多様の魔法が放たれ、竜巻の範囲外から迫る魔物たちへと降り注いだ。

突然表れた竜巻に呆けて、何もせずに接近されるという展開にはならなかったようなので安心した。

「風もそろそろ消えそうだし、後は大丈夫そうね」

フィアの竜巻によって多くの魔物が吹き飛ばされ、俺の狙撃で大型の魔物は半数近く仕留めた。

これだけの戦力差が開けば、戦局は確実に討伐隊側へ傾くだろう。

だが……先程から感じるこの妙な感覚は何だ?

「それじゃあ、エミリアたちの所へ戻りましょ? 今度はこっそりじゃなくて、皆の見える位置で活躍しないとね」

「…………」

「シリウス? ねえ、どうしたのよ?」

「フィア、君は先に戻っていてくれ。少し気になる事が出来た」

「……貴方が戻ってほしいなら戻ってもいいけど、私に何か手伝えることはないかしら?」

俺の真剣な表情を見たフィアは、理由も聞かずそう答えてくれた。

そうだな。単体で空を飛べるフィアなら俺についてこれるだろうし、彼女の手も借りるとしようか。

「なら付いてきてくれるか? あの集団の裏側へ回り込みたい」

「いいわよ。私が運んだ方がいいかしら?」

「頼んだ。少し集中して調べたいんだ」

「ふふ、任せなさい! こんな時に不謹慎だけど、貴方の役に立てると嬉しいものね」

苦笑しているが、どこか嬉しそうなフィアに緊張が解れた。

そしてフィアの魔法によって空に浮かんだ俺たちは、魔物たちの裏側へと飛んでいった。

討伐隊の人たちや魔物たちに気付かれないように距離を取りながら大きく迂回し、魔物たちの裏側へ回ったところで改めて『サーチ』を発動させる。

移動はフィアに任せているので、俺は集中して『サーチ』を発動させる事ができた。

「……やはり、何か変な反応があるな」

「それが気になる事なの?」

「ああ。魔物が密集しているせいでわかりにくいけど、魔物に紛れて明らかに違う反応があるんだ」

どんな魔物であろうと生きている一つの生命体であり、特有の魔力が存在する。

だがそんな魔力が密集する中に、明らかな不純物みたいな感覚を感じたのだ。

そこで一度地面に降ろしてもらって耳を澄ませてみれば、魔物たちの先頭集団が討伐隊とぶつかる戦闘音が響いてきた。

討伐隊が例の反応と接触するまであまり時間はなさそうだな。

「ここからなら近い。俺は走って突撃するから、フィアは……」

「魔物を近づけさせないようにすればいいのね?」

「ああ……頼んだよ」

頼りになるフィアと共に、俺は地を蹴って魔物の大群へと突撃した。

敵陣後方からの奇襲は人相手には有効だろうが、本能で生きる魔物には大して意味がない。

なので突撃と同時に周囲の魔物が本能のまま襲いかかってくるが、フィアが風の魔法を放って近づく魔物を全て吹っ飛ばしてくれた。

「貴方たちと遊んでいる暇はないのよ、あっちへ行っていなさい!」

「さすがだな!」

「ふふ、任された以上は当然よ!」

空を飛びながら隣を併走するフィアが側面と後方を担当し、俺が正面の魔物を『インパクト』で吹っ飛ばしながら走る。

目標は俺が数回魔法を放った頃には見つけられたのだが、そこにいたのは何とも奇妙な魔物だった。

「何よ……これ?」

無数にある 大鬼(オーガ) の腕に、馬型魔物の下半身。そして蛇の魔物が尻尾のように付いた……魔物。

まるで周囲にひしめいている魔物の部位を布を縫うように繋ぎ合わせ、前世の物語にも出てきた事のあるあの化物のようだ。

「体のバランスは悪いし、気持ち悪い魔物ね……」

「気持ち悪いのは外見だけじゃないな」

触れて『スキャン』をしなくても、『サーチ』の魔力反応でわかる。

あの部位は全て別の魔物で構成されているが、血が一切通っていないのだ。

そして胸に大きな魔法陣が描かれていて、そこから伸びる魔力が各部位に命令を与えて動かしている。つまり魔物としては完全に死んでいて、こいつは命令を聞くだけの人形か、ゴーレムに近い存在だろう。

ちなみにゴーレムは魔法陣で岩や砂を媒介にして作るが、あれは肉を媒介とした生々しいゴーレムだ。

つまり自然に発生した魔物ではなく、誰かの手によって作られた 合成魔獣(キメラ) と言うべきだろうな。

まるで悪質な人体実験による被害者のようで、前世の記憶が蘇って……。

「どうやら大群の原因はこいつみたいね。早く倒してー……って、どうしたの?」

「いや、気にするな。とにかくあれは始末しておいた方が良さそうだな」

「そうね……って、不味いわ。風よお願い!」

合成魔獣(キメラ) が大きく吠えれば周囲の魔物が活性化したので、フィアの言う通り騒ぎの原因はこいつで間違いないだろう。

そして、先程まではフィアが余所見をしていても対処できていたが、今は集中して魔法を放たなければ周囲の魔物に押し切られそうになっていた。

「長く保たないわよ!」

「ああ、すぐ終わらせる!」

色々と調べたいところだが、そうも言っていられないようだ。

フィアに周囲の魔物を任せ、俺は 合成魔獣(キメラ) へと駆け出した。

合成魔獣(キメラ) に付いている腕は 大鬼(オーガ) のものだが、あれはもうただの肉塊で、今では疲れや痛みも一切感じていないだろう。

近づく物を倒そうと、全力で振るわれる無数の腕を掻い潜るのは難しいだろうが、知能の存在しない機械的な動きならば何とでもなる。

「素直過ぎるわけだ」

懐の直前で踏み込む速度を一気に落とすフェイントをやれば、驚くほど簡単に引っかかってくれる。

全ての腕が懐に飛び込む前に振られ、その隙に胸元へ飛び込んだ俺は、 合成魔獣(キメラ) の核である魔法陣の前に両手を向け……。

「終わらせてもらう……」

両手から同時に『ショットガン』を放ち、魔法陣ごと 合成魔獣(キメラ) 胸元を吹き飛ばした。

魔法陣を撃ち抜かれた 合成魔獣(キメラ) から魔力を感じられないので、さっさとフィアを連れて脱出してー……。

「そこか!」

その瞬間……魔物とは明らかに違う魔力を感じた俺は、高台に目掛けて『マグナム』を反射的に放っていた。

「っ!?」

相手は……人だった。

距離がある上に咄嗟だったので、狙いは若干外れて相手の腕に当たったようだ。

「…………い」

もう一発放とうとしたが、相手は一言呟いてから姿を消していた。

『サーチ』で反応を追い掛けてみたが……動きが異常に速い。おまけに森の中へ逃げ込んだので狙撃も不可能だ。

せめて空でも飛んでくれれば撃ち落とせたのだが……こっちの状況からして、あれを追うのは諦めた方がいいな。

「ねえシリウス! ちょっと厳しいかも!」

そうこうしている内に、フィアが魔物たちに押し切られそうになっていた。

彼女は軍隊のような大群を薙ぎ払うのは得意だが、周囲の被害を考えて加減した魔法が苦手なので消耗が激しいのである。

魔力枯渇が近く、息を乱しているフィアを横抱きで回収した俺は、魔物を避けながら討伐隊の陣地へ向かって走っていた。

「はぁ……ちょっと魔力が不味かったわ」

「無理をさせてすまなかったな。だけど助かった」

「それなら良かったわ。それで、私たちはどこに向かっているの?」

「君をエミリアに預けてから、レウスを見に行ってくる。おそらくさっきの魔物が向こうにもいる筈だからな」

あれがいたとしてもレウスが負けると思わないが、念の為でもある。

それに、あの謎の存在が気になる。

一瞬だけ見えた姿は人で……身体的特徴から女性だった。そうなると、あれはロマニオの貴族を洗脳していた謎の女かもしれない。

俺の予想だが、あの女と魔法陣から感じる魔力が似ている点からして、あれが 合成魔獣(キメラ) を作った張本人だろう。

わざわざ魔物がいる戦場に姿を現している点から、自分の作った作品を観察していたに違いあるまい。マッドサイエンティストによく見られる行動だからな。

逃げられたのは痛いが……魔力は覚えた。

「次に会った時は……逃がさん」

「おかえりなさいませ、シリウス様。フィアさん」

それから魔物と戦っている討伐隊の合間を縫って陣地へとやってきた俺は、前衛の交代要員として準備をしていたエミリアと合流できた。

近くには怪我人の治療をしていたリースもいたので、フィアを抱えてやってきた俺たちを見て驚いている。

「フィアさん!? 怪我をしたのですか?」

「ふふ、大丈夫よ。ちょっと魔力を使い過ぎちゃっただけだから」

「良かった。シリウスさんも……大丈夫そうですね?」

「ああ、悪いが俺はレウスの様子を見てくるから一旦離れる。状況はフィアに聞いてくれ」

フィアをリースに預けてから向かおうとしたが、エミリアが俺の前に立ち塞がってコップを差し出してきた。

「ん、どうした?」

「シリウス様。せめて水分補給をなさってください」

「……そうだな。ありがとう、エミリア」

そういえば、さっきから走り回ってかなり汗を掻いている。まだ余裕があるとはいえ、油断は禁物だな。

俺はエミリアの頭を撫でながら受け取り、ゆっくりと飲み干してからコップを返した。

「じゃあ、行ってくるよ」

「行ってらっしゃいませ」

「レウスたちをお願いしますね」

「行ってらっしゃい」

尻尾を振りながら綺麗なお辞儀をするエミリアと、座ったまま笑みを向けるフィアとリースに見送られながら、俺は再び走り出した。

討伐隊から離れた俺は、誰にも見られない位置で宙を蹴って空に飛び上がり、ディーネ湖を一気に渡った。

ホクトの魔力を目印にして戦場へやってきた俺は、高台の上に座って眼下を眺めているホクトを見つけた。

「ふう……待たせたなホクト。レウスの様子はー……」

「オン!」

「おわっ!? 急に飛びついてどうしたホクト!?」

ホクトがいきなり甘えてくる謎の行動はあったが、様子を見る限りレウスたちに問題はなさそうだ。

丘から見下ろして姿を発見した時、アルベルトが即席の小隊を組み、レウスを先頭に戦場を駆け回っている光景が確認できた。

「……立派に戦っているようだな」

「オン!」

レウスのペース配分と荒っぽさが少し気になるが、アルベルトとマリーナがしっかりと補助しているので問題はなさそうだ。

時折魔物にやられそうな冒険者が見られたので、『スナイプ』で援護しながらレウスたちを見守っていたが……予想通りこちら側にもいたようだ。

「……いたか。だが奴は……」

ロマニオの討伐隊の中心で、俺が倒した 合成魔獣(キメラ) と全く同じ存在が暴れていたのである。

そしてやはりと言うか、あの女の反応は感じられなかった。まあ俺に撃たれたから当然とも言えるだろうが。

女の気配を探っている内に、レウスたちが 合成魔獣(キメラ) とぶつかって戦闘が始まった。

あのメンバーには強力な遠距離攻撃を持つ者がいないので、必然的に近接戦闘がメインとなる。

なので正面から攻めるレウスにあの肉塊による乱打が放たれるが、レウスは俺と共に鍛えてきた技術と、傍で見てきたアルベルトの技術を活かして上手く捌いているようだ。

一時的とはいえ、ほぼ同時に繰り出される六本の腕を全て捌いてみせた点は素直に驚いた。

「……俺にはあれは出来ないだろうな。爺さんが見たら喜びそうだ」

少しだけ追い込まれはしたが、レウスはアルベルトやウェインの協力もあって 合成魔獣(キメラ) を倒す事に成功していた。

その後も油断せずに止めを刺し、焼却処分もしているので俺から言う事はない。ちなみに向こうの 合成魔獣(キメラ) も、見つけたらしっかり焼却するようにとフィアに伝えてある。

いつでも『スナイプ』を放てるように身構えていたが、レウスが限界を越えて倒れるのを確認してから、俺はゆっくりと戦闘態勢を解いた

残りの魔物は討伐隊だけで十分だし、レウスはアルベルトをしっかりと守り切ったのだ。

「遂にここまできたか……」

まだ精神面での経験は足りないが、今回の件でレウスはまた大きく成長した。

このまま成長していけば、いつか……ライオルだけじゃなく、俺をも超えるだろう。

だから真実を説明し、それでも俺と共に来てくれると言うのならば……全力で応えよう。

「達人の世界へようこそ……レウス」