軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

お酒のトラブル

騎士団本部近くにある、広めの土地と大きめの建物。

それは以前にとある成金が建造し……すぐ景気が悪くなって手放した土地である。

ティストリアはそこを買い取り、ガイカクへ与えていた。

広めの土地は彼も望むところであり……奴隷たちを奴隷労働させていた。

「まず各種族に合った宿舎の建設からスタートだな。あと品種改良している家畜のための牧場や、樹木の育林場もほしい……それが済んだら半端になっていた冷暗所の準備や、あとは……いや、病院が先か?」

一旦は既存の広い建物を宿舎としているが、はっきり言って人間向けの建物である。

獣人やエルフ、ダークエルフはまだいい。だがゴブリンやドワーフには大きいし、オーガにとっては小さすぎる。

そのためまず、ゴブリンやドワーフ、オーガの宿舎から建設していくことになる。

それが終わり次第獣人やエルフ、ダークエルフの宿舎を建造して、最後に人間のための大宿舎を建築することになる。

それが済むころには、この一番大きな建物、お屋敷はガイカクの研究所として完成しているだろう。

「いやあ、よかったなあ、お前たち。これで夢のマイホーム、しかも新築だぞ! 奴隷とは思えない待遇だな!」

「……そうですね、自分で建てるという点を除けばですが」

「自分の力で建ててこそマイホームだろう? 俺が測量と図面をひくから、お前たちは俺の指示通りに建築するんだ!」

ガイカクはなんだかんだ言ってワクワクしている。

結果さえ出していれば研究費が入ってくるし、今まで以上に広い土地でのびのびと違法な研究ができる。

しかも肉体労働は奴隷がする、完ぺきな流れである。

「ねえ、騎士団長って設計とか監督とかできるの?」

「親分はそういうのは何でもできますよ。前の土地でも、本格的な整備はあの人の指示でやってました」

「頭脳労働に限れば、何でもできる人ね……」

歩兵隊の面々は、古株であるオーガへ確認をする。

それこそゲームじゃあるまいし、『あそこに家を建てろ』とか『ブロックを重ねて家っぽくする』のようなものではないので、専門的な知識が必要なはずである。

いくら『売り物』ではないとしても、自分の満足のいく家を建てられるのは凄いことだ。

さすがは自分で天才というだけのことはある。

「……なあ棟梁、さっき病院を建てるとか言ってたけど、医者とか製薬は誰がやるんだ? 人を呼ぶのか?」

ガイカクのことを棟梁と呼ぶのは、ドワーフたちである。

なんだかんだ言って建築も結構得意なので、それなりに乗り気ではあった。

その彼女たちは、病院という『箱』にも興味がある一方で、その中身はどうするのか気にしていた。

「それはもちろん俺がやるさ。一人も死なせないと言った手前、治療にも全力を注ぐぞ」

「……え、医者もできるの?」

「むしろ専門の範疇だな。過去に禁止された医療魔導はほぼ全部使えるから、どんなケガや病気も治してやる」

医療というのは、倫理観や道徳観と深くつながっている。

だからこそ『適正な医療技術』であっても、封印されてしまうことはある。

それを全部使えると豪語するガイカクは、自信満々だった。

「腕がちぎれようが足がちぎれようが、内臓がズタズタになろうが『交換』してやろう!」

「……」

軽く説明を聞いただけで、なぜ違法になったのかわかる技術だった。

まあ理屈はわからないでもないのだが、正直愉快な治療ではない。

なんかこう、不思議で素敵な薬とかで治してほしいものである。

「とはいえ、まずは住環境からだな。お前たちを効率よく働かせるためにも、ストレスなく暮らせるようにしないと」

もうすでにガイカクの言葉がストレスだった。

別に間違ってもいないし、なんなら奴隷たちにとって利益になることだろう。

だがお前たちを効率よく働かせるために、とか言われると嫌にもなる。

「じゃあ指示は出しておくから、それが終わり次第俺は一旦本部に行く。ティストリア様から呼ばれてるんでな、なんか仕事が来たらしい。別に遊びに行くわけじゃないから、お前たちもさぼるなよ~~」

「は~~い!」

元気よく返事をするのは、無邪気なゴブリンたちだけである。

他の面々は『いいなあ』と、羨望を隠せない。

国一番の美女にして才媛だというティストリアに、彼女たちはまだ一度も会っていないのだ。

(ぶっちゃけ、怖いから会いたくないんだけどなあ……)

なお、ガイカクはあんまり会いたくない模様。

騎士団本部へ来たガイカクは、当然ながら案内されるままに執務室についた。

一応騎士団長になった彼だが、よく考えると他の騎士団に全くかかわっていない。

まああんまり会いたくないので、これでよかったのかもしれない。

「げひひひ……ティストリア様、ご機嫌麗しゅう……」

「よく来てくれましたね、ガイカク卿。私の用意した土地は気に入りましたか」

「はい、それはもう……」

軽く挨拶を済ませると、二人は本題へ入った。

片やお色気枠、片や正体不明枠。

正統派の騎士からずれた色物とも言える二人だが、こうやって話が早く進むのは、二人が一種ビジネス的な振る舞いをしているだけだという証左であろう。

「では、仕事の依頼です。アルヘナ伯爵領とワサト伯爵領間の道で、山賊が横行しています。コレの取り締まりを、貴方にお願いしたい」

「……騎士団に回ってくるにしては、いささか平凡な仕事ですな」

「ええ、もちろん注意事項があります。どうやらアルヘナ伯爵側が、山賊たちを支援しているようなのです」

「まるで、以前の私ですなあ……げひひひ」

やや小ばかにしたような笑いだが、フードに隠れたその顔は神妙だった。

なにせ自分もそうだっただけに、現地有力者とのコネがどれだけ強いのか理解しているのだ。

「しかし、山賊を使って物流を阻害、というのはいささか過激で陰湿。伯爵様というご身分の方々がやることにしては、少々品がないかと。どのような由来なのですか?」

「それについては、私の許に資料があります。どうやら二人の不仲は、近隣では有名な様子。なんでも利き酒大会でアルヘナ伯爵が負けたとか」

「き、利き酒大会とは……まあ趣のあるお遊びなのでしょうが……」

利き酒大会というからには、お酒の銘柄やら産地を当てる遊びであろう。

大酒飲み大会みたいな死人の出そうな大会よりは、まあ趣があると言えなくもない。

「しかし、利き酒大会の勝ち負けで山賊行為の支援をするとは……他の因縁を勘繰りたくなりますな」

「いえ、本当にソレだけの様子。どうやらお二人とも、酒などについてはこだわりが強いそうで」

「……なるほど」

当人たちからすれば、大事で譲れないことなのだろう。

だが他人からすれば、本当にどうでもいいことだった。

巻き込まれている被害者は、たまったものではあるまい。

「……今回の件、依頼者はどなたで?」

「山賊に襲われた者たちの連名です。どうやらワサト伯爵は、この件をむしろ喜んでいるようで」

「本人が被害を受けたわけじゃありませんからね……」

利き酒大会で負けた腹いせで、相手がやっきになってしょっぱい嫌がらせをしてくる。

性格によっては、それを愉快に思うこともあるだろう。

「ん……一応確認なのですが、お二人ともどの程度の『腕前』で?」

「ワサト伯爵が優勝、アルヘナ伯爵が準優勝だったそうです。他にも趣味人が多く参加しており、特に不正などはない公平な大会だったようです」

公平な大会の結果に不満を持って、陰湿に違法行為をしてくる……というのは皮肉だった。

まあフェアなスポーツ大会の結果に不満を持って、大規模な暴動が起きることもあるので、ないとは言いにくい。

「ふむ……一応確認しますが、解決の定義は『山賊の捕縛ないし殺害』ですよね?」

「もちろんです。山賊行為が横行しないようになれば、それを良しとします。それが依頼をしてきた者たちの願いなので」

「承知しました、それでは……」

ガイカクは、にっこりと笑った。

「奇術騎士団の名に恥じぬよう、手品のように解決しましょう」

利き酒大会で負けた腹いせに、山賊たちを使って嫌がらせをしている。

なんとも大人げない、子供のような動機の行動。

だがその被害は本物であり、対応が必要だった。

ガイカクはまだ建造中の拠点に戻る中で、作戦を組み立てていく。

「さて、誰をどの程度連れていくか……」

ガイカクは違法行為をしているため、外注をすることができない。

私的財産である奴隷たちを労働させて、施設建設をしなければならない。

だが彼女たちは労働力であると同時に、兵力でもある。

彼女たちを連れて行けば、その分建設が滞る。

平時には労働、有事には兵役。

なんとも悲しい話だが……まあ大抵の人間はそうやって生活している。

休日や休憩は適度に挟んでいるから、そこまでブラックでもあるまい。

「ドワーフも弱いわけじゃないが、戦闘ならオーガの方が数段上だし……ドワーフは残留で、オーガは連れていくか。こうなると、ドワーフが買えてよかったな。オーガを連れていっても、力仕事要員が減らない」

ガイカクはさらりと、ドワーフはオーガの下位互換、かのような言い方をした。

実際には戦闘以外だと力仕事 しか(・・) できないオーガよりも、鍛冶仕事などもできるドワーフの方が後方に向いている、という気持ちもある。

だがそれを説明しても、ドワーフが聞いていればたいそう怒るだろう。彼らは自分の武力にも自信があるので、そういう区分けを嫌うのだ。

「あと……エルフたちも今回はお留守番だな。多分定点攻撃はしないだろう」

ガイカクが率いる奇術騎士団において、主力である『移動式五エルフ 力(りき) 魔導砲台』、『灯点誘導式五エルフ 力(りき) 魔導散弾砲塔』、『移動式一エルフ 力(りき) 魔導砲台』、『灯点誘導式一エルフ 力(りき) 魔導収束砲塔』。

地球の兵器で例えれば『レーザー誘導式ホーミングミサイル』ないし『レーザー誘導式狙撃銃』に相当する兵器である。

ミサイルの方はかなり以前に実用化されているのでありがたみもないが、レーザー誘導式狙撃銃というのはSFの域であろう。

相手が動いていない限り、射程内ならほぼ100パーセントの命中率を誇るこれらの兵器だが、狙撃であり砲撃であることに変わりはない。

「ティストリア様からも『山賊は拠点を構えていない』と聞いているし、実際そうだろう。少なくとも俺たちが出向く頃には、そういう所にはいない。おそらく……市街地戦になる」

騎士団が派遣されることは、現地の領主にも伝えられるだろう。

領主が山賊へ協力している疑いがあるとしても、疑いに過ぎないのだから教えなければならない。

であれば、山賊たちは騎士団を警戒して、山中から出て市街に潜むだろう。

領主の手先なら、そうするはずだ。

「となれば、オーガも……いや待て、フレッシュ・ゴーレムは前回で使い潰したから、まだ新しいのができていない。となると……ちょっと不安だな。なら獣人部隊を主力に据えて、ダークエルフと人間の歩兵を補助に……」

研究開発と共に、戦術の指揮も担当するガイカクである。

彼の脳内では、必要な兵力の計算を行なっていた。

だがそれはつまり……。

敵山賊をみつけること、それ自体にはまったく不安が無いということだった。

「持っていくのは、あの樽でいいだろう。密造酒がこんなところで役に立つとはなあ……世の中分からんものだ」

ガイカク・ヒクメは、正式な騎士団長としての初任務に挑んでいた。

彼が手勢を率いて向かったのは、被害者であるワサト伯爵の下だった。

いや、一応アルヘナ伯爵の方も被害者ではある。ただ加害者に加担している可能性が高いというだけで、確たる証拠はない。

ただガイカクがこちらへ来たのは、彼はほぼ確実に被害者側、だからであろう。

ティストリアからの正式な命令を受けてこの地に来た彼は、違法魔導士でありながら何食わぬ顔で領主に会っていた。

(あのデブに会う時とくらべて、えらく楽だな……さすがは騎士団長の肩書か。まあそのせいでここに来る羽目になったわけだが)

言うまでもないが、交渉事で大変なのは会うことである。

これはただ出会うということではなく、相手に『ちょっと話を聞いてやろう』と思わせることも含める。

ティストリアの指名で騎士団長になったガイカク・ヒクメ。

噂の男が指令を受けてここに来た、ということでワサト伯爵はいきなり自分で会おうとしたのだ。

彼はガイカクを自らの執務室に案内し、一対一で話をしようとした。

これは密談をしたいということだけではなく、自分は潔白なので攻撃されることはない、という意思表示でもある。

もちろんワサト伯爵が、密談をしたい気分だった、ということもあるのだろうが。

「どうも、初めまして。私はガイカク・ヒクメ……ティストリア様の忠実なるしもべでございます」

「ははは! その言い方は、やや卑しいですが……しかし羨ましくはある。あの才女から直接命令を受けるなど、それこそ男の夢でしょうなあ」

(あの見習い坊主も同じようなことを言っていたな……まあわからんでもないが)

ガイカクもまったく本心ではないし、ワサト伯爵が本気で言っているのかはともかく、そういう言い回しをしても不自然に思われないのがティストリアであった。

(それにしても、伯爵、という意味ではあのデブと同じなんだが……凄い普通だな)

ガイカクは魔導士であり、医学にも精通している。

その彼からすれば、ボリック伯爵は健康に問題があるレベルの肥満体であり、目の前のワサト伯爵はやや運動不足気味な程度の標準体型だった。

年齢は三十代後半、というところだろう。

「私としては、噂の新鋭騎士団長が、いかにしてティストリア殿とお会いしたのか知りたいが……我が領地の窮状を思えば口にはできないな」

「ええ、民からの陳情がティストリア様の耳に入るなど……よほど嘆かわしいものなのでしょう」

「ははは! 今まさに、耳が痛い。耳が遠い振りをしていたら、一周回ってこうなるとはな……いや、怠惰で申し訳ない」

(まったくだな……その点は、あのデブの方がマシだな)

口ぶりこそまともだが、やっていることは職務放棄である。

臣民から『山賊が出て困ってる!』とか『もしかしたら隣の領主の手先かも!』とか言われているのに、自分で対処するわけでもなく、かといって騎士団に依頼することもなかったのだ。

その点で言えば、ボリック伯爵の方が大分マシである。

「まったく、恥じる気持ちでいっぱいですよ。おかげで、こうして密談風味にしている」

「……理由をお伺いしてもよろしいですか?」

「いや……そうだな、貴殿はどう思っていらっしゃるのか聞きたい」

どうやら自分の口からは言い難いようなので、ガイカクは憶測を語り始めた。

「そうですなあ……まず貴方は、今回の山賊騒ぎの元凶が、噂通りにアルヘナ伯爵だと思っていらっしゃる」

「ほう」

「お二人の因縁は、噂通りに『利き酒大会の勝敗』しかない。だがだからこそ、貴方はそれを放置した」

「ほう」

「敗者であるアルヘナ伯爵が悔しがって、こうして陰湿な嫌がらせをしてくる。それが嬉しくて……効いていないというアピールをしたくなった。そんなところですかねえ?」

「はははは!」

やや恥じらいつつ、開き直り気味に、ワサト伯爵は笑った。

「私は元々彼に酒を習いましてね、当然ながら彼の方が上でした。ですが……あの大会で、ようやく勝てた。それが嬉しかったのですが……彼が悔しさなどおくびにも出さず、紳士的に『おめでとう』と言ってきたことが……残念でして」

「大会というからには、名士もいらしたのでしょう。ならばこそ、伯爵としての振る舞いをなさったのでは?」

「ああ、それはわかっている。だがね……正直に言えば、その体面が保てないほど、悔しがってほしかった」

実際に見たらドン引きするかもしれないが……。

大の大人が、子供のように喚き散らす。そんなみっともない姿でいてくれたら、勝ったことにより一層の喜びがあっただろう。

ワサト伯爵はそう思ったのだ。

「勝ったのに、負けた気分だったよ。それこそ、器量の差を見せつけられた気分だった。だが……それでこの騒ぎだ。正直に言って、にたあ、と笑ってしまった。実はめちゃくちゃ悔しがっていたのか、と」

「悪い人ですなあ……」

「いや、まったく。性格の悪い話だ」

ワサト伯爵の舌は、ずいぶんと滑っていた。

普通の騎士団が相手ならこうは言わなかっただろう、ガイカクの振る舞いがそうさせたのかもしれない。

「陰湿な嫌がらせをされても反応をしなかったのは、逆に器量の差を見せつけてやろう、もっと悔しがらせてやろう、という浅ましさだったが……それで領民の声が騎士団に届き、貴殿の手を煩わせたことは申し訳なく思っている」

(いやまったく、その通り)

「私に協力できることがあれば、おっしゃってほしい」

ガイカクは少し、というか結構嫌な顔をしていた。

フードで隠していて正解、と思わずにいられない。

(結構バカだなあ、こいつ……いや、どっちもか)

やはりあのデブは、そこまで無能でもなかった。

ちょっと見栄っ張りではあったが、アルヘナ伯爵やワサト伯爵と比べれば可愛いものだった。

とはいえ、仕事は仕事。

ガイカクは努めて冷静に、話を切り出した。

「私も正直に申し上げて、すべての真実を明らかにするつもりはありませぬ。仮に私がすべてを暴いても、恨みを買うばかりでしょう」

「……そうだな、面倒をかけてすまない」

「新参者の私としては、お二人が和解なさってくれることを願うばかり……」

「……簡単ではないな」

「ええ、おっしゃる通り。なので少しお伺いしたいことが」

ガイカクは、今回の作戦の肝について、確認を始めた。

「気を悪くしないでいただきたいのですが、あえてお伺いします。ワサト伯爵、貴方はアルヘナ伯爵からお酒を習ったと」

「ああ、その通りだ。ただ飲むだけではなく、味わい方や……利き酒のコツなどをな」

「彼は、本物の酒好きですか?」

この言葉には、ワサト伯爵はやや顔をしかめた。

それこそ、質問をすること自体が失礼、という質問である。

「ああ、そうだ。その点に関しては、私が保証する。彼は酒が好きだ」

「ありがとうございます、それだけ聞ければ十分。私の策は成るでしょう」

「どうするつもりだ?」

酒が好き、というのにも種類がある。

酔うのが好き、という者がいる。

皆で飲むのが好き、という者がいる。

ただ高い銘柄を集めて自慢した者がいる。

酒が好きだとアピールして、自分を高く見せようとする者がいる。

「ワサト伯爵……私は騎士団長、それゆえに見逃してもらえる悪事もございます。その中に『酒の密造』という可愛い悪事もございまして……」

酒も食品であり、体の中に入れるものである。

国や地域によっては免許が必要になるし、国から許可を得なければならないこともある。

もちろん、税の対象にもなる。

そうした国で酒を無許可で作れば、それはもちろん違法行為だ。

「貴殿の作った密造酒で、かの御仁を納得させると? 先ほども言ったが、アルヘナ伯爵は酒好きだ。よほどの酒でも……」

「もしも、尋常の手段で手に入らぬ、違法の酒であれば?」

「……なに?」

ガイカクは違法魔導士、それゆえに用意できる物もある。

「法律によって、製造が固く禁じられている酒……それならば彼の『心』を動かせるでしょう」

「まて、貴殿は何をするつもりだ?」

美味すぎるがゆえに、万人に愛され過ぎたがゆえに、法律で禁じられた酒がある。

ガイカクの魔導によってよみがえったそれが、白日にさらされるのだ。

「歴史に消えた美酒、キャララ。それをかの酒好きにお出しするのですよ! さぞおののき、醜態をさらしてくださるに違いない!」