軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

385.住人探しクエスト開始

『転移門』の解放をかけた住人探しのクエストは明日の日の出から日没までとなった。

現在、村長の家で休ませてもらっている。家というか、木でなんだが。オープンすぎる部屋は落ち着かない……いや、テントよりは家だろうか。木々の梢が屋根がわりなため、天井(?)がはるかに高いというか無いというか。

部屋の区切りが腰高の壁だけなのは心許ない。エルフは植物をはじめとする自然を媒介にした魔法が得意で、ここも結界が張られている。

虫は入ってこないし、一般的な壁よりも危険に対しては防御力は高い。ただ、だいぶ視界の開放感がすごくて、風が枝葉を揺らす音、降るような虫の音もそのまま聞こえる。

「早くこの毒から解放されたいでし」

ベッドでごろごろしながら菊姫。

「転移はこのエルフの支配域の範囲が濃厚だと思うけどね」

菊姫のため息混じりの言葉にペテロが返す。

国家間の転移について最初に可能性を持ち出したのはペテロ。自分で否定してゆくスタイル。

「ちょっと! 希望を打ち砕かないで」

「くっ! 毒が平気だからって余裕見せやがって……っ!」

お茶漬とシン。

「冷静に考えて今までも首都を解放してからでしょ、国家間の転移」

冷静というか無慈悲に指摘するペテロ。

「エルフは国の形態持ってなくって、村か小さな町規模が点在してるっぽいけどに。僕もシレーネ倒して国家間の転移門解放が濃厚だとは思うよ。思うけどね!? あーパクチー増し増しバインミー」

そう言って、枕を抱えてベッドの上を転がるお茶漬。

「パクチーいらねぇ……」

げんなりしているシン。

「毒消しが持ち込み放題になったらエルフのお酒が飲めるでし」

毒に蝕まれても酒を飲むつもりの菊姫。

「ファストに戻るにしても、港町に転移できるようになれば、移動日数は大分短縮できるようになるしな」

宥めるように言う私。

「エルフの港町にプレイヤーの商人が来てれば楽かな。足元を見られるだろうけど」

「僕も暴利を貪りたい」

ペテロの言葉に呻くお茶漬。

「レオは静かだな?」

「布団に入ったらおやすみ3秒でし」

シンに答える菊姫。

「私たちもログアウトしようか」

そう言って布団をかぶったペテロに倣い、みんなもそもそと小さく動いておやすみなさいの声。

「おやすみ」

私も頭の位置を調整しておやすみなさい。

ログアウト休憩は最短15分だが、エルフの村で移動なしの夜ということで、ログイン時間をゲーム内の朝に調整。遅刻しないよう、アラームをかける。

さて、再度ログインする時間まで、いつもより間がある。現実世界で顔を洗って軽いストレッチをして、緑茶の用意。いただきものの和菓子を開ける。

しっとりと仕上げた村雨餡で小倉餡を包んだ棹もの。同系統では京都俵屋の『雲龍』が有名。うっすら紫を帯びた村雨餡に刃を入れて切り分ける。

栗入りでした。

小倉餡の炊き加減が絶妙、栗もしっとりとして餡と同じような柔らかさで、食感を邪魔しない。とても上品な甘さ。

濃いめのお茶を飲みながら食べる口福を楽しみ、ゆっくりする。今頃みんなも何か食べていることだろう。エルフ大陸で食べ物にストレスを溜めていたからな。

しばし後、アラームに促されてログイン。

小鳥が鳴き、朝日が差し込む部屋で目覚める。フルオープンな部屋だが、清々しい。――レオはベッドから落ちてるが、通常営業である。

起き出した面々に安全で調達可能な焼き魚の朝食を出し、弁当にサンドイッチをねだられる。クエストの最中だけでも他のものが食べたい! とのことだ。

で、クエストの開始。

「ルールは村人にお渡しした札を貼ること。貼られた村人は擬態を解いて、広場――この巨樹の下に集まります。エルフの村は小人数、この村も住人は25人です。範囲はこちらです」

ユーディスカさんが簡単なルールの説明をしつつ、地図を渡してくる。地図を受け取ると反映されて、マップを開くと範囲がわかるようになった。画面の右下に0/25の表示も確認。

「じゃあ私も隠れますね! 村長の合図で開始してください。ギブアップも村長までで」

おそらく笑顔で部屋をでてゆくユーディスカさん。

札を貼れればユーディスカさんの中身も判明するだろう。

「他の村の人に通達などは昨日のうちに?」

残った村長に聞く。

準備とかいらんのだろうか?

「ああ、通達は済んでおる。最近は普段から隠れとるから、特に改めて隠れ場所を探す必要はないじゃろう。札を貼られたら、広場に来いとだけじゃな」

村長が答える。

村長はスキルか事前の取り決めか、なんらかの方法で村人全員と意思の疎通が図れるのか。全員擬態しているような村では、声かけの方法がないと困る。

「ほほ、ユーディスカの姿を追わないよう、このランタンに視線を貰おうかの」

枝に下げられたランタンを杖で指す長老。

言われた通りランタンを見上げる私たち。

シ ン:『必殺! それっぽいところに指を刺す』が封じられたぜ

レ オ:わはははは!

お茶漬:見つけても到達難易度が高い場所にいる可能性

菊 姫:木のてっぺんとか見に行くのも大変でしよ

ホムラ:じゃあ私は高いところ中心に行っておく

ペテロ:私も。届かないところは声かけてくれたら貼りにいくよ

レ オ:俺も、俺も!

お茶漬:とりあえず個別で一通り、

見つからなかったら3人ひと組で見直す方向かに

レ オ:はーい!

シ ン:おう

菊 姫:わかったでし

ペテロ:承知

ホムラ:了解

と、いうことになり、地上からと木の上からの捜索班を結成した。結成と言っても個別行動だが。

村長の始めの合図を聞き、行動を開始する。

「行くぜぇ〜」

「わはははは!」

気合十分、走ってゆくシンとレオ。レオは木の上に枝を伝って、シンは地上をだが。

「行きますか」

2人の姿を見送ってから動き出すペテロ。

こちらも軽やかに枝から枝へ飛び移ってゆく。上の方担当、私だけ小道使用な件。

期限は日没まで、村の観光がてら隅々まで見て回ろう。そう思って幹につけられた板の螺旋階段を上がる。

「……」

幹に札を貼る私。

「く……っ! 私の自信作が……!」

動き出した木肌から淡い金髪が溢れ出す。

灰色の樹皮の色と質感のローブ……いや、毛布に樹皮を貼り付けたものに半分包まって、悔しそうに泣くエルフ。

絹糸のように細い金の髪が流れ、白い肩も朝日に眩しい。なんというか、エルフらしいエルフ。

だが、樹皮を貼り付けた毛布かぶって幹に張り付いていたことを考えると、残念エルフ確定だ。

「近くで見ると流石に凹凸が不自然だな」

巨樹なので遠くから見れば馴染んでしまうかもだが、流石にな?