軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

327.vs鵺

「おお、助かる」

適当に回復した知らない騎士が礼を言いつつ、また魔物に絡まれる。おい。

とりあえず『氷のエストック』を入れて援護する。騎士側に出ている魔物は小さいので、おそらく気にしなくていいだろう。問題はボス級、後方の冒険者側でどったんばったんやってるやつだ。ちゃんと騎士たちから離すよう誘導しているパーティーもあるが、騎士側に入り込んで来たボス級もいる。

私が魔物に手を出してしまうと、討伐報酬がどうなるかわからんので困る。上前をはねる真似はしたくないんだが。どの騎士が異邦人と組んでいるのか、さっぱりわからんのも困る。ヒゲが前の方に居て、兎娘がいなかったので、組んでいても一緒にいない可能性ががが。

エリアス:お邪魔するわん

パーティがアライアンス状態になり、エリアスからの挨拶。アライアンスでは基本各パーティーのリーダーが発言し、他のメンバーは聞くことはできるが発言には制限がかかる。発言権の制限を外して大人数での会話のカオスを楽しむ人もいるようだが。

『主、どうやら共闘する者たちは選べぬようです』

カルから状況報告。

『蓄魂の香炉、鵺の欠片を含む魔物の討伐、おそらく条件を満たした者が参戦できるのでしょう』

『縁の濃い薄いはあるだろうが私が得たように、騎士の協力も、かな?』

鵺の欠片って、その辺で暴れているボスのことだろうかと思いつつ、カルに答える。

『私ども騎士が、不甲斐なくも主に助力頂いているのですが……』

『私は途中参加だぞ? むしろ面倒な行程をすっ飛ばして参加させてもらって悪い気がしとる。封印の獣とは戦っておきたいし、願ったりだな』

本当に間に合ってよかった。

ペテロ:お待たせw

シン:イェーイ!

クラン会話がまた騒がしくなる。お茶漬はまだ戦闘中のようだ。

ホムラ:早かったな

ペテロ:こっち私、シン、炎王、ギル、エリアス、騎士。騎士はエリアスに過保護で、邪……無駄にダメージ負ってるけど、他はみんな上手いからw

ホムラ:言い換えても酷い。

シン :ペテロが入るまで、相手に回復する隙やっちまってて、 賽(さい) の河原だったぜ!

二人の様子からすると、炎王あたりを回復しとけば間に合うところ、無駄に騎士も回復しなくてはならんかったのかな? その間に魔物も回復、っと。

ホムラ:ロイたちの方が早いかと思ったが、ペテロたちが先だったな。

ペテロ:ロイたちは途中で人助けwww

ホムラ:難儀な性格だ。

シン :一応、俺たちも住民は助けたぜ?

ペテロ:イベントに関連するかもだしねw

関連しないなら見捨てる疑惑。

ロイ:邪魔するぜ!

噂をすれば、ロイがリーダーなパーティー参戦。

大地 :失礼するであります

暁 :邪魔するぜ

続いて大地、烈火のところのお茶漬とナンパされた騎士が入ったパーティー、次にクロノスの暁のパーティー。

お茶漬:間に合った?

シン :おー

ホムラ:菊姫は暁のところか。

菊姫 :でし、でし。

ホムラ:他にアライアンスに入りそうなパーティーってあるのか?

ペテロ:聖女とその御一行?w あちこち助けに入ってて無理っぽいけど。

お茶漬:そもそも『蓄魂の香炉』持ってる人がいないんじゃない?

シン :俺も直前にサディラス行ったけど、負けて持ってねぇ

菊姫 :あてちも持ってないから入るの遠慮したら、クロノスの他のメンバーがなんか自力でとってから! って言い張ってて棚から牡丹餅でし。

シン :クロノスのとこ、真面目だよな

ロイたち率いるクラン、クロノスは大所帯。クランは高レベルなプレイヤーに、レベルの低いメンバーが頼りがちだが、ロイの人柄のせいか、クロノスはきちんと自力でイベントをこなそうとするメンバーが多いらしい。

お茶漬:香炉は参加者の大半が持ってないんじゃない? このイベント、想定より早く起こったんじゃないか説

ペテロ:神殿で騎士に無差別水かけwwwどう考えてもアレ正規のイベントではないwww

カイル猊下とエカテリーナの性格のせいだな。【転移】した神殿で、騎士が神官に水桶持って追いかけ回されるのを何度か見た。

参戦して来たパーティーが付与やら、薬を飲み、準備を終えたようだ。もっちゃもっちゃした黒い靄に踏み込んでゆく。

【幻想魔法】レベル5『幻想の霧』をとりあえずかける。効果的には敵の攻撃の当たり判定を下げ、味方の回避率を上げる。幻想魔法はアライアンス全体にかかるが、『幻想の霧』は敵が多いほど、霧が濃くなり味方を隠す魔法なので、今のところ微妙。魔物は多いが、後方でアライアンス外のパーティーが敵視を取っている。

『【幻想魔法】『白い花弁』』

名前まんまの白い花弁が騎士の戦場に舞い落ちる。

効果はほんの少しだけれど継続回復。『アリス』は白薔薇赤薔薇の花弁で、敵対する全対象からHPとMPを少しずつ吸い取って回復していたが、レベルが低いので相手のHPにダメージを与えるには至らない。ただの微回復だが、継続なのでそれなりに役には立つと思う。

【幻想魔法】をあげるチャンス到来なので、MPが続く限り連発したい私がいる。

ロイ :ありがとう!

エリアス:感謝するわん

大地 :感謝するであります

暁 :働くぜ!

各リーダーから感謝の声。

菊姫 :ありがとでし

ペテロ:ありがとう。相変わらず派手w

ホムラ:アライアンス単位の魔法がこれしかない。

お茶漬:アライアンス単位のスキルなんて、持ってる人ほとんどいないと思います。

シン :EP、EPの回復をお願いします!

ホムラ:そのようなものはない!

ペテロ:刀剣のスキルもあるよね?

ホムラ:あ。ある、ある。

魔物はマーリン少年が生み出しているが、ガラハドたちが処理しているので、【 月花望月(げっかもちづき) 】を使うほどの数はいない。

『【紅葉錦】』

刀を構え、倒せそうな魔物を選んでスキルを放つ。

魔物に届いた瞬間、舞い上がるたくさんの紅葉。吹き上がった頭上、真っ赤に染まる空から今度はゆっくりひらひら降ってくる。人に。地上に。物に。魔物に当たると小さな炎を上げて燃え、他の何かに当たると色をなくし、淡く消えてゆく。

扶桑に向かう途中、左近から得た刀剣スキル。効果は敵にダメージを与えるとともに、自分を含む味方の一定時間MP継続回復。こちらもごく少量だが、ちょっとした節約にはなるだろう。

色からして派手だなと思いつつ、気にしないことにする。

お茶漬:忘れられる強スキルさん可哀想だから、僕がもらったげる。

ホムラ:やらぬ

シン :EPじゃねぇええええええっ!!

菊姫 :おじさん、うるさいでし。

お茶漬:それにしてもハルナ、レンガード様に視線いってるのによく間違わずに魔法入れられるって感心するわ。

ペテロ:細かい魔法をたくさん組み合わせてるよね。詠唱じゃなくて複数のウィンドウを開いての呪文選択だし、何か演算してるみたいに見えるw

シン :こっちはホムラが何かすると炎王が挙動不審

菊姫 :あの格好の時は別人だって思うのをお勧めするでしよ

ホムラ:なんか酷いぞ

シンは職業的にEPによるスキルが多い。格闘系の攻撃コンボは繋げれば繋げるだけ、攻撃力が上がるので、ボスなどのHPの多い敵相手は格闘職の見せ場でもあるのだが、途中で飯を食うと格闘コンボが途切れる。

『さて、魔法の反射があるか試すか』

こっちも本格的に始めることにする。

『主、いつでも』

準備万端っぽいカルの声が返ってきたが、危ないことをするつもりはない。

『【生活魔法】の『水』です』

『……そこはせめて普通の攻撃魔法にしねぇ?』

『しません』

ガラハドに、なんとも言えない声音で言われたが、安全第一。

マーリンの頭上近くまで移動して、手から『水』を出す。コップ一杯分の水は私の手を離れ、空中で露に砕けてマーリンの上に降り注ぐ。

「あ”あああああああああああああああああああ」

少年マーリンが上を向いて空に届くような長い悲鳴――いや、咆哮を上げる。

白目を見開き、大口を開けたマーリンのその口から黒い靄が湧き出し、周囲の靄と混ざり、のたうち瓦礫を巻き上げて渦を巻く。

『うをうっ!』

『何!?』

『きゃっ』

靄の中にいたガラハドたちが声を上げるが、その前には盾と羽根を組み合わせたようなエフェクトが出て、ダメージはない模様。エフェクトは私の足元にも出ていて、黒い靄を散らしており、当然巻き上がった瓦礫も逸れダメージはない。

盾はカルのスキルなのだろうなと思い、そちらを見るとマーリンに向かい、涼しい顔をして立つカル。カルの立ち位置から黒い靄が割れて、後ろが無風地帯。でもマントははためく不思議。ガラハドのいつもと違う黒い騎士装備も格好いいのだが、いかんせん今は周りも黒っぽく埋没中。イーグルとカミラの方が目立っている。

まあ、カルの涼しい顔は角度的に推測だが。白い鎧、白いマント、淡めの金髪。ひるがえるマントの青の裏打ちが目に鮮やか。なお、頭頂部もふさふさな模様。――アグラヴェイン、強風吹かせてすまん。

『すまん、ありがとう。怪我をさせるところだった』

『ちっとくらいいいんだっつーの!』

『憂いなきよう努めますので、主はお気になさらずに』

『迷宮のボスくらいのノリでいいわよ』

『封印の獣相手とはいえ、心配しすぎだ』

パーティーのそれぞれから言葉を返される。

『反射じゃなかったようだが――何だ?』

溢れ出した靄が四つの塊を作り、質量を持って何かを形作る。

二つの大きな塊からは黒き獣イシュヴァーンがそれぞれ顔を覗かせ、小さな塊はフラスコのエフェクトが砕けてアリスが、次に姿を見せたのは何故かバハムートの黒い鎧。

『何!?』

ガラハドが叫ぶ。

そして残った靄を巻き込み、陽の光を反射させる黒曜石のような鱗を渦の中に見せながら、中央に姿を現したのは翼を持つ蛇クルルカン。

どういうセレクトだこれ。鎧がシュールすぎないか?