軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

263.訪問者

真昼間だというのに青白く尾を引く火球が落ちてくるのが見える。地に着く前に燃え尽きてしまいそうな小さなもの、光の中に同じ色の光にひび割れた巨大な塊の見えるもの。等しく全てを溶かして穿つ雨となって降り注ぐ。

私の正面で空気を読んで出てきたクルルカンが杖の姿で浮いている。

でかいの落ちるとあからさまにクレーターができるんですが……。範囲指定しているからかマジックシールド的なものができてるのか知らんがクレーターも含めて範囲からはみ出ることもなく着弾してゆく。ただ破壊をともなわない衝撃波がばんばん来る。地面も揺れている気がするのだが、浮いているから気づかないふりをする私。後ろからなにかどよめきが聞こえてくるが気のせい気のせい。

どっかんどっかん景気がいい。

マントが大喜びして風をはらんで大きく巻き上がってははためいている。特にこちらも負荷らしい負荷は感じないのだが現実世界だったらムチウチ必至だろうこれ。

――黄色いドラゴンのドロップはなんだろう? ロース? リブ? 肉の部位と見せかけてかまとか背かみ・腹なかとか魚の部位だったりして。

間接的な入手はお知らせを切っているのだが、直接受け取ったり倒して手に入れたコアのお知らせは届く。ぴろんぴろんうるさいのでメニューを開けて表示させることで音を消す。

あれです、手に入れたコアのリストに見た名前が並んでいます。

どこで見たかというとカルからもらった雑貨屋近辺というかファストの勢力地図。私は表示をデフォルト、コアをたくさん預かっていた順のままなのだが、上の方に地図に記載されていた【黄金の槌】関係者の店舗の持ち主の名前が集まっている。 楔(さっき) の攻撃範囲内に集まっていたということはドラゴン 嗾(けしか) けてきたお仲間確定で。

店舗もついでに更地になっておしまいなさい〜。

そっと範囲を増やす私、そもそもドラゴンブレスで幾つか崩壊しとるし。人の店舗壊しておいて自分の店舗は〜って甘いだろう、壊すなら壊される覚悟をするべきだ。まあ、雑貨屋の前の嫌がらせ軽鎧屋も被弾しとるので覚悟はあるのかもしれんが。

私はあれです、雑貨屋への攻撃に備えて符を貼っています。――すみません、壊しておいてなんですが元サーバに戻れば元どおりにあるとはいえ壊されたくないです。

MP回復薬を使おうと思っていたのだが【ドゥルの優しき繭玉】もさることながら、攻撃した分MPが回復する効果を持つ【攻撃回復・魔力】と【秘された赤き幻想者】が対象者が多かったせいでなかなかひどい。

このイベント、最後にコアの総数の順位がでるっぽいのでいつものように名前を出さない方向でいたのだが、倒すと、というか倒されると相手に名前バレするのか……。

「ホムラ、見たことねぇスキルばかりなんだが?」

パーティー会話でガラハドが聞いてくる。分厚い大剣を片手で軽々と上着でもひっかけているかのように肩に乗せている。後輩から兄貴って呼ばれてそうな余裕と容貌。

「使うの恥ずかしかったヤツを初披露中だ」

「いや、見せてもらったステータスにそれっぽいの載ってなかったよな?」

「繭玉とかはごく最近だなそういえば」

「また増えてるのね……」

吐息のようなカミラの声。赤いマーメードラインのドレスの裾が風にさらわれてスリットが大きく割れ、白い太もも披露中。

「主……これはいつ止まるのですか?」

風が吹きすさぶ中、カルが涼しげな顔で剣の柄に手を置きマントをはためかせる姿は絵になる。まあ、今は若干困惑した顔しとるが。

「あ、すまん。止める、止める」

いやまあ、範囲内に攻撃対象がいなくなったらしくMPの回復が追いつかなくなっているのでもう自然に止まりそうなのだが。

「流しっぱなしの風呂みてぇに言うなよ……」

ガラハドが脱力して肩を落とす。

ドラゴンからは牙と皮、『ブレス』のスキル石でした。このスキル石、特定の種族しか使用できない、とあるのでドラゴン系の種族もあるのかな。ペットに使うということも考えられるのか? どちらにしてもイベント終了時に選べるスキル石は一つだけなので却下。ここでもファイナでも大量に入ってきているので早く確認したい。

改めて見ればエリアスの店も含めて近所のガラスが割れている。【堅固なる地の盾】は雑貨屋にはかかったが両脇の建物には弾かれたので、このダメージはドラゴンブレスのカルの防御スキルを抜けた分だろう。ドラゴンブレスで被害ガラスだけって、どんな防御能力なんだ一体。

危ないのでガラスを修復。【時魔法】『時遡』、流星を止めたらMPがじりじりと戻り始めた。が、腹が減った……。

「騒がせたな。どうぞ買い物を続けてくれ」

客に声をかけて雑貨屋に戻る。ガラハドたちもそれぞれ武器を収めて後に続く。

なんか「しゃべったー」とか「小さいドラゴンかわいい〜」とか聞こえて来るが、バハムートがかわいいのだけ同意しておきます。

「嬢ちゃんたち、悪ぃけど道開けてくれ」

ガラハドが優しく、でもきっちり通路から客を追い立てる。

「なんで異邦人って行動がずれてるのかしら? 女の子がうおおおと叫んでるかと思えば、男が頬染めてるんだけれど……」

カミラが不思議そうにパーティー会話で。

女の子の中身の大半が男だからじゃないでしょうか……。男も女も興奮してるのは美女の太ももだったり、涼しい顔でドラゴンブレス防いだ騎士だったり、ドラゴン相手に余裕な態度の兄貴が原因だったりするのだろうから、頬染めているのはどっちだかわからんが。

「腹が減った……」

「まて、ここで食うなよ!?」

カミラの疑問には答えず、別なことをパーティーで口にしたら騎士二人に雑貨屋のドアを蹴破る勢いで室内に連行されました。何故だ……。

手のひらに乗るミートパイ。パイ生地はサクサクとしていて口に入れるとバターの香りが広がる、次に来るのは肉汁。

歯ごたえ確保に角切りの肉と粗めのひき肉、玉ねぎのみじん切りと赤ワインと肉汁の代わりに細かめのひき肉をたっぷり入れて味を整えたグレービーソースをパイ生地で包んで焼き上げたもの。これがプレーンで、他にチーズを入れたものと半熟卵を上に乗せたもの。プレーンは冷めても美味しいが、他の二つは温かいうち。

「ビール、ビールが欲しい!」

「ダメよ、イーグルと交代しなくちゃ」

「あああああああ」

カミラにたしなめられてるガラハドが騒がしい。

氷の代わりに凍らせたベリーを入れた炭酸水を飲みながら酒の味がわかれば私もああなるんだろうかと考える、今の所わからんので食い気だけだ。半熟卵ごとパイにナイフを入れると濃い茶色の断面にトロトロの黄味が流れ出す。他は手でつまめるのだが卵乗せだけは皿とナイフが必要だ。一緒に焼いても卵だけ半熟になるスキルとかないものか。そうしたらパイの中に入れられるのに……。

バハムートは塩胡椒だけのステーキ。味付けはシンプルなものの方が好き、と見せかけてジャーキーは少しクセのあるくらいの味付けが好み。肉好きなのは変わらないのだが、好みの味の研究余地があるようだ。

絶対、夜は飲んでやる! と言い残してイーグルと交代しに行ったガラハド。ついでに全員揃ったらステータス見せろと約束させられた。カルもカミラと交代。

衝立の向うの声は聞こえてくるが、こちらの声は聞こえない仕様。衝立の向うというか正しくはカウンターの向こう側へ居住区の声が聞こえないオプションをつけた。

商業ギルド、細かく稼いでくる! ロブスターの件で要求を突っぱねたモスギルド長の株が少し私の中で上がったせいか、あからさまに異邦人から金を吸い上げる商売をしていても不快感はない。細かいところに手が届くのはいいことだ。

「ファイナはうまくいったかい?」

イーグルがポーンを一つ進めながら聞いてきた。

「ロブスター侯爵は。だが冒険者ギルドに来た二人が戻りもせずに逃げたのは予想外だった」

ロブスター侯爵と商業ギルド対象の攻撃予告。ロブスター侯爵は領地に引きこもるかと思っていたのだが、王都から動かなかったのでファイナに二つ穴が空いた。侯爵なのだからコアをたくさん預かっているのかと思ったのだが、商業ギルドのギルマスの方が多かったという……。そっちもカルが詰めてきたコアより少なかったのだが大丈夫か王都。

「あら、冒険者ギルドの副マスも冷や汗をかいたって聞いたもの、無理もないわ」

カミラはナイトを進める。

碁(ご) だったら付き合うが、チェスとか将棋は弱いのでパス! 私は二人がチェスを始めた隣で膝に抱いたバハムートを磨きながらリストに並んだスキルをチェック中だ。戦闘職のスキルもあるが、商人系や領地経営系、生産スキルがずらりと並ぶ。それと十八禁なスキルがそっと混じってるんだが、これは黒百合のだろうか……。

「ご安心下さい、ホムラ様。その二人、討ち取られました」

突然の第三者の声に一瞬固まったものの素早く立ち上がるイーグルと杖を引き寄せるカミラ。コツンコツンと床にチェスの駒が落ちる。

声の方を見るとメイド服のスカートを片手で軽くつまんで頭を垂れているウル・ロロ。もう一方の片手にはアスパラガスやトウモロコシなどの野菜の入った籠。

「いや待て、何でここにいる」

「愚兄だけではご迷惑をかけそうなので監視兼、手助けに。ドゥル様にはお暇のご許可をいただいて参りました、畑には姉がおりますのでご心配なく」

気配がないんですよ、このメイドさん!

「ホムラ、知り合いか?」

「ウル・ロロともうします、どうぞよろしく。こちらドゥル様からです、どちらに置けばいいでしょう?」

イーグルとカミラにも先ほどと寸分違わぬお辞儀をした後、野菜の籠を両手で胸のあたりに持ち上げ首を傾げて聞いてくる。

居つく気満々!!

袖口からクルルカンが心配そうに覗き、笑顔のウル・ロロと目があって固まった。

「ぴぎゃ!」

全員固まり気味の中で腕の中でご機嫌のバハムートの声が響く。