作品タイトル不明
251.帰還
スキル石『迷宮創造の 一端(いったん) 』を使用するとスキル【迷宮創造・空間】を覚えた。一番最初に【迷宮創造・空間】を覚えた後は同じスキル石『迷宮創造の一端』で迷宮関係をランダムに覚えるようだ。
称号【迷宮の創造者】はダンジョン経営に特典、具体的には作る時にHPかMPを消費するようなのだがその消費が抑えられる。
個人ハウスのある島に海から続く洞窟があるのでその奥に設置しようかな? 【家】も【庭】も完成していないというのにやることが増えた!
「また騎士に関係ねぇスキルが出た」
「……私も。レベルも上がった」
「いいじゃない、ガラハドは元々冒険者のスキル多いでしょ。イーグルが微妙に思うのはわかるけどもう諦めたら?」
言葉通り微妙な顔をしている男二人に軽く言うカミラ。
「なんだ?」
「帝国の騎士は騎士系のスキル以外を騎士としては邪道と思っているところがあるのよ、特に『アシャの庭の騎士』を持つ騎士には顕著ね。ただボスで覚えるスキルって強力なものが多いから、ね」
エリートだった!
「カミラは?」
「私は見てわかると思うけど騎士じゃないもの、宮廷魔道師団所属よ」
どこか誇らしげなカミラ、ニュアンス的にさてはエリートさんですね? ややこしいが【騎士】でなくとも試練を通過すれば称号として『アシャの庭の騎士』は貰えるそうだ。厳しい試練で若干近接職が通りやすいそうだが過去には試練を通過した伝説の文官もいたそうな。――すごい気になる伝説の文官。
「まあこれでジジイのスキルに抵抗しやすくなるし、もう戻る気もねぇし、いいんだけどよ」
いいといいつつあまり嬉しそうではないガラハド。 試練を受け(どりょくし) て成った騎士だ。愛着や未練がないはずはない。
「カルのスキルってあの 跪(ひざまず) かせるやつか?」
「おう。多少精神で抵抗できるものの、ありゃ騎士系のスキルの割合が多いほどよく効くんだ」
「よかった、私スキルに騎士のきの字もなくって」
いやもう本当に。精神も肉体も操作系のスキルは気持ち悪い。
「いや、お前は今跪かせるほうだからな?」
「何を?」
「ジジイを」
「あれは大分恥ずかしかったので止めていただきたい」
扶桑組とホップ、ペテロの視線が痛かった。
「おそろしいことにランスロット様を強制的に跪かせることも可能なはずだけれど、ホムラにやる気はなさそうだね」
「ランスロット様の方も普通に跪きそうだし、強制は成立しないんじゃないかしら?」
イーグルとカミラがなにかこそこそ話している。
ボスを倒した後は転移登録をして戻るだけなのだが、リクエストで食事になった。もちろん肉がメインだ。
まず、ロースを揚げ焼きに。フライパンを傾けてたっぷりの油を繰り返し肉の塊にかけながら焼くのだが、うまくできると水分が程よく飛んで肉の旨みが凝縮される。肉自体の脂も溶けて残したい味や香りだけを閉じ込められる上、表面はこんがり茶色になってさらに旨みと香りが生まれる。温度が上がりすぎると油も肉も酸化してしまうので注意が必要だ。
そして牛タンの麦とろろ定食。牛タンは皮が付いていると私的にけっこう見た目がアレなのだが幸い剥き身で肉のブロックだった。元のほうは霜降りで柔らかいので厚切りに、先に近いほうは硬いので薄切りに。とろろは扶桑の自然薯、付け合せはキャベツの浅漬け。正直牛タンの調理方法が他に浮かびませんでした! 後で調べておこう。
「いい匂い」
カミラが形の良い鼻を小さくひくつかせる。
「荷物の中でも作れるはずなのに、わざわざ目の前で作るのは反則だぜ!」
「肉は目の前で焼きたい派だ」
音と香りと色の変化が楽しい。
「酒を!」
「うん、ぜひ」
「帰るだけだものね」
よだれが出そうなガラハドと嬉しそうなイーグルとカミラ、ボスの攻略を無事終えての祝杯だ。
だがさて、牛タンに合う酒ってなんだ? ワインやビールでも肉だしいけるかな? いや、とろろにワインはどうなんだ? 仙台には牛タン用の日本酒があるそうだし、日本酒でいこう。
香りが穏やか、軽快でキレがある純米酒純米吟醸酒――相変わらずアイテム情報頼りですが何か? 私が飲んでも喉を焼くだけで酒だとしか判断ができん。
「肉もうまい! この酒もうまい!」
スキルで微妙な顔をしていたのに、今は酔う前からご機嫌だ。
「きゃー! なにこれ」
カミラのとろろの粘りが強すぎてきれずにみよーーんと持ち上がってしまった様子。もう少し出汁で緩めたほうが良かったろうか。
「この黒いのは何だい?」
「ああ、それは胡椒のペーストだ。好みでつけてどうぞ」
生胡椒をオリーブオイルで伸ばしたペーストと柚子胡椒の二種類を焼きあがったロースに添えてある。塩はルシャから貰った反則的なのがあるが、胡椒は『妖精の胡椒』しか持っていないので塩とランクが釣り合わない。だがやっぱり辛味も欲しいかなーと悩んだ挙句添えたものだ。
「これ薄いのに歯ごたえあって面白いな」
ガラハドの言う通り『白牛の舌』はサクッとコリっとが強調されている気がする。
「おかげでうまい肉が手に入った。ありがとう」
改めて礼をいって私も食べにかかる。労働の後だからか、親しい仲間と食べているからか幸せな味がする。
「そういえば鬼!」
麦飯をもぐもぐごっくんとしたと思ったらガラハドが唐突に鬼の話題を持ち出す。
「うん?」
「一応言っとくが、俺もジジイもホムラに悪い影響があるようなら強制排除するからな?」
「何を?」
「ホムラが連れていた鬼たちだよ。親しそうだったけれどね、あちらの鬼という存在は親しいふり――或いは本当に親しくなった後でも油断をすると嬉々として人を殺すモノだよ」
「私たちも文献で読んだだけだし、今は決め付けずに様子見ね。でもあの気配はただ事ではないわ」
ガラハドの言葉に勢いがあるせいで、内容のわりに会話はサバサバと明るく進行する。
「いや、大丈夫だろう」
署名貰ってるし。
「世の中には色々いるんだ。ホムラは普段油断だらけで心配になるね」
「黙って疑ってるのも性に合わねぇしな、最初に言っとく。どーしても仲良くしたいなら、手形だけじゃなくって署名寄越せっていってやれ」
「署名を取っていれば魂を預けたようなものだもの、ホムラに何かあったら己も弱体化するはずだし」
「署名はもう貰っとるぞ?」
しばし私だけがもぐもぐと料理を咀嚼する。酒の飲めない私はいい緑茶を所望する! 扶桑へは冬に行ったので次回は新茶の季節に茶をあさりに行かねば。いや、その前に温泉と白峯の手形が先だった。署名も貰える気がするし欲しいことは欲しいのだが、ボス戦の印象で性格が面倒そうな気がしてなんとなく足が遠のいている。
「はあぁ〜。また杞憂かよ」
「あの連れていた四体とも全部?」
「ああ。もう一人手形もらったのがいるがそっちは喚び出す気はない」
なにせ褌に 法被(はっぴ) だし。あとあんまり喚びだしていない【小龍】【烏天狗】【影鰐】の三体も署名付きなのだが――影鰐さん、どうやって署名したんだろう?
「気にして貰ってるのは嬉しいぞ、ありがとう」
照れ笑いが出るくらいには嬉しいのだ。
デザートはミニ鯛焼きにソフトクリーム。鯛焼きは皮をカリカリと香ばしく餡子は甘さ控えめ、添えたソフトクリームはミルクの味を全面に出した優しい味。飲み物は全員温かい緑茶。
「ホムラはもう錬金で『マテリアル』作れるかい?」
「まだ失敗もするが作れるぞ」
『マテリアル』は『属性石』をどんどん掛け合わせて行くと出来上がるのだが、いまいち何に使うのか分からないまま今現在ストレージの肥やしになっている。名前が 原材料(マテリアル) なのに一次材料ではない不思議。多分鍛冶屋や裁縫をする人がこの先、『属性石』の上位素材として生産の際に使うとかなんだと思うのだが。
「あら、いいことを聞いたわ」
「錬金はレベルが上がっても一定確率の失敗はあるって聞くよ。よかったら売ってくれないかな?」
「構わんが、何に使うんだ?」
何か使用用途があるのだろうか。
「身につけているとレベルアップの時に対応したステータスが上がりやすいんだよ」
さっき上がって持っていた分は 消費し(われ) てしまったからね、とイーグルが続ける。
「異邦人と違ってこっちは自由に選べねぇからな」
日本酒からビールに替えたガラハドが住人と異邦人の違いを口にする。
「なるほど。何のマテリアルが欲しいんだ? 一式?」
「いや、効果があるのは二つまでだよ。同じものを二つでも違うものを一つずつでも。ホムラのお勧めはあるかい? ないならば『赤のマテリアル』が嬉しいかな」
二つまでということは、プレイヤーと同じ二ポイントのステ振りを『マテリアル』を使ってやってるということかな?
「じゃあ、赤で。材料は属性石だからまた雑貨屋の買取に詰めといてくれればいいぞ。今回食材総取りさせてもらったし」
紅や赤い色はアシャの色、力を上げたいのだろう。というか何故私にお勧めを聞くのだろうかと思いながらストレージから取り出して『マテリアル』を渡す。食材全部もらってしまっているからこれくらいおやすいご用だ。
外に出ると夜だった、現実世界でももういい時間なので人影はまばらだ。雑貨屋にガラハドたちと帰って、ハウスに行こう。雑貨屋の自室で寝てしまいたいところだが、ログアウトするので安全を取る。結界やら符やらのレベルを上げて早く普通に寝たいところ。
明日は仕事から帰ったら、少しネット検索して神々に出すメニューを考えよう。プリンのバリエーションも増やしたいところ。
マント鑑定結果【庭に神々がいるのは明らか、という気配がする】
手甲鑑定結果【……うむ】
ああ、うん。うっかり疑ってなかったけど改めて指摘されると変ですね……。
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・増・
スキル
【迷宮創造・空間】
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