軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「ちょっとお伺いしていいですか?」

「何だ?」

未だ立ち直れていないガラハドとイーグルを尻目に、カミラにもう一度回復を試みながら、彼女の汗を拭っているとレーノが話しかけてくる。一応、私の持つ回復には病を癒す効果がついとるのだが、『 火華果実(かかかじつ) 』でしか熱を奪えないというのが確定なのか、私の回復のレベルが低いのか、カミラが良くなる様子はない。

「僕はドラゴニュートですが、様々なパターンに当てはめて、比較的人間の 機微(・・) というものを図るのが得意になったと自負していたのですが」

「うん?」

下手すると私より空気読めるよな、レーノ。でも言葉のニュアンスからすると、感情的な共感ではなく、経験からの推測だったのか。

「後学のために、この男性二人が何故、下着を握りしめて打ちひしがれているのか教えていただけますか?」

「……なんでだろうな?」

レーノの学習意欲が高いのは承知だが、答えにくい質問である。しかも冷静に言葉にされるとひどい。

「……私がうちひしがれてるのは、今まで苦労して揃えた装備よりもこの布切れ一枚のほうが性能がいいという事実。そして 火華果山(かかかざん) へ行くというけっこう命がけな決意をしたところで、パンツで問題が解決する不条理。なによりこれからこれを穿かねばならない現実が受け入れられないからです」

すごく弱々しい声が下から上がってきた。

「俺のここしばらく続いた苦労とか悩みとか弱さとか葛藤が、なんでパンツに解決されなきゃなんねーのか納得できない……」

隣からも疲れた声が這い上がってきた。おかしいな、さっき回復とリフレッシュ効いてたと思うのだが、なんでこんなに二人とも疲れてるんだろうな? と白々しく思うワタクシ。使わないときは収納しておけばいいよ! 荷物に三枚あって、ものすごく気になったけど、ようやく紫一枚になって私はちょっとホッとしたよ!

「そんなに凄いんですか……」

ものすごく不審がってるなレーノ。

「見たければどうぞ。【譲渡不可】で譲りたくとも譲れませんが」

少し復活したらしいイーグルがレーノにパンツを差し出す。

「なかなかシュールな光景だな」

「誰のせいですか! 誰の!」

「そうだ! なんでパンツなんだ! これがマントや普通の装備なら受け入れられたのに!!」

呟いたら感情の矛先が私になった。

「私のせいじゃないぞ? その文句は残念女神に言ってくれ」

私だって困惑した一人なのだ!

「うわぁ、【全気候耐性】【鋼の肉体】【 結(むすび) の魔体】ですか。素の防御力も破格ですね。それに【魅了】【破棄不可】【譲渡不可】。……さすが神器、といったところですね。何故これを二着も持っているのかが謎です」

レーノがブーメランパンツの性能に呆気にとられている。パンツにツッコミはないの? パンツなのはいいの?

【鋼の肉体】【結の魔体】はそれぞれ物理防御と魔法防御の増大だ。私の持っている紫パンツは素の防御力はそこまで高くないが、同じ効果がついているため、下手をすると、いや、防御面だけ考えれば白装備をぶっちぎる性能である。強いて言うなら精神系の状態異常に弱いのか。素の防御だけでも入手時の私の装備よりはるかに良かったしなあ。

そして防御力が金銀より低い代わりに、丸見えにしたときの【魅了】の効果が無駄に最大。何を考えてるんだあの残念女神。

……肝心なときに効果のない【魅了】ってどうなのかね。半脱ぎ推奨なんだろうか?

「とりあえずここにいても仕方がない。私の店に行こうか?」

「店?」

「ああ、そういえばファストに店を開くとか言っていたね」

イーグルが思い当たったように言う。本格的に雑貨屋を始めたのはガラハドたちとファル・ファーシを倒した後だったため詳細は告げていない。

「ホムラ、ファストのその店はオレたちにとって都合がいい。あの方でもファストの神殿とギルドには手を回せない。だが、お前にとってはいい話じゃないぞ」

真面目な顔でガラハドが言えば、イーグルもデメリットを告げてくる。

「私たちの相手は 齢(よわい) 一千年を超える魔法使いだ。今はまだはっきりと敵対はしていないけど、あの様子では、出会った ついで(・・・) に殺そうとする程度はされるよ」

ギルドは冒険者ギルドか? ファストのギルド長には会ったことがないが遣り手なのだろうか? 推定名マック=ドナルドさん。

「僕やカルは平気ですが、ラピスとノエルはちょっと心配ですね」

「不経済だが、ガラハドたちは転移以外で出入り禁止で。今更な気もするが」

「ああ、貴方がいつもやっている……、それならば場所はバレようがないですね」

レーノの同意ももらえた。魔法使い、推定マーリンと敵対しているのならば、三人はカルを追う騎士ではないのだろうし、迎え入れても問題はない。

「巻き込むぞ?」

「今更だ」

そういうわけで、帰って来ました私の店舗。

転移してそのまま私の部屋にカミラを寝かす。使ったことのないベッドは、そのまま彼女の病床になった。

「カミラの世話を下にいる店員さんに頼んでから出発だな。レーノも含めて外に漏らすような事はないから安心して欲しい」

「ああ、頼む」

「私も挨拶したい」

「ちょっ……っ!!!」

「主、この二人は?」

店員さんへの挨拶現場。カルが目を細め、警戒している、声がいつもより低い。ガラハドたちは単純に驚いているようだ。

「ああ、やっぱり知り合いか。悪い魔法使いから逃げてきたそうだ」

ひらひらと手を振り、早々に敵対的な立場ではないことを告げる。

「な、んで、あんたがここに!?」

「ご無事だったのですか!?」

無事じゃなかったけど今は無事です。 治療(ぼくさつ) 現場も無事じゃなかったのに無事だったし。

「ラピス、私の部屋に病人がいる。女性なんだが、着替えなんとかできるか? 取り敢えず私のローブに」

何か感動の再会らしきものが始まったので、私は私の仕事をすることにする。ガラハドたちの目に涙が盛り上がってるのを見て、なんだか気恥ずかしい。

カミラは戦闘をする装備のままだ。【生活魔法】を使って清潔にしたものの、病人着には向いていない。着替えさせたいが、私が脱がすわけにもいかん。

とりあえずカルの出現に思考が追いついていないらしい、ガラハドとイーグルは放置してカミラの世話をすることにする。

「主、背中持ち上げて」

「こうか?」

あれです、目隠ししてカミラの体を支えるという少しエッチな少年漫画の主人公みたいな体験をしています。ラピスの指示で腕を持ち上げたり、脚を持ち上げたり。うん、目隠ししてるから変なところに触っちゃうのも仕方ないよね! 目隠しで妄想が加速してやばいです、先生。

「主、困った。下着がない」

「ぶっ!」

「ローブだけでいい?」

ラピスが小首を傾げている気配がする。

いや、あの【生活魔法】で綺麗にしてるし、下着までは脱がせなくてよかったんですよ、ラピスさん!!

カミラ今、ローブの下素っ裸? いやその前に、ローブ着せる前は素っ裸だったのか!? 私、穿いてない脚を持ち上げてた!??

「魔物からのドロップ品でも構わんか? 女性の下着はわからん」

そっと『快楽の欲望サキュバスのスキャンティ』を出す。出してしまったあたり、私も相当混乱していたと思う。この状況はもしかして【アシャのチラリ指南役】が効いてしまったのだろうか。

「ん。問題ない」

淡々としているラピスが頼もしいが、とんでもないことをやらかしそうで不安でもある。

「主、ラピスがんばった」

ドキドキピンクなカミラの着替えを終え、目隠しを外すとラピスが抱きついて、私の服に顔を埋めてくる。耳がピクピクしているところを見ると、撫でて欲しいようだ。

「ああ、頑張ったな」

いろんな意味で。大活躍ですよ。

ガシガシと頭を撫でてやる。ノエルは優しくなでられるのが好きだが、ラピスは耳と耳の間の頭頂部を耳を含めて、少し強めにガシガシと撫でられるのが好きだ。

カミラが起きたらサキュバスのスキャンティの言い訳どうしよう……。

「イテテテテテテッッツ」

下に降りると、ガラハドがカルに頭を掴まれていた、見事なアイアンクロー。感動の再会からどうしてこうなった。さっきとは違う意味で涙目なガラハド。

「お前というやつは、よりによって主に迷惑をかけるとは!」

「離せ! クソジジイッ!」

ジジイ? カル、本当にいったい何歳なんだ?

「ぎゃあッ! ミシミシ言ってるミシミシ言ってる!!」

ガラハドが掴まれている横で、イーグルが優雅にお茶を飲んでいた。ノエルかレーノが出したのだろう。えらいこと騒がしいが気にならないのだろうか。慣れていそうなイーグルはともかく、レーノとノエルも通常運転なんだが。

「主、ラピス、おかえり。どうでしたか?」

ノエルが私に気づいてお茶を出してくれる。

「とりあえず着替えさせて寝かせている。すごい熱だな、『炎熱の病』とはよく言ったものだ」

40度以上の熱が三日以上続くと脳がやばいんじゃなかったっけ? 男はナニもやばいが。それともこの世界では耐性があるから現実世界とは違うのだろうか。

「『炎熱の病』は病とは言っているが、火属性の暴走だよ。運が良ければ何事もなかったように熱が下がるんだが、起きた時には良くって火属性が無くなって、MPも半減している。下がらなければ自分の中の火に命まで焼き尽くされてしまう。カミラはまだ大丈夫」

「火属性強そうだものな。二人は大丈夫なのか?」

「なんとも言えないな。今回のことで、もしかしたら、この病はあの方……魔法使いマーリンが人為的に起こしている気がしてきたよ。ランスロット様が一番最初に狙われたのも、強さ、人望もさることながら騎士の中で唯一火属性を持たないからかもしれない」

とうとう名前が大っぴらに、しかも様つき。

「難儀だな」

「巻き込んで申し訳ない。申し訳がないが……」

「なんだ?」

「ホムラ、な・ん・で・あの人がここにいるのかな?」

にっこり笑顔のイーグル。

「用心棒に雇ったから?」

「最強の騎士の名を持つ男が雑貨屋の用心棒なんて聞いたことがない!」

「あたたたたたたっ」

ほっぺたを掴まれた!

「賑やかですね」

我関せずとお茶を喫するレーノ。

私とイーグルを見て、止めた方がいいのか戸惑っている風なノエルとラピス。

雑貨屋の夜は私とガラハドの悲鳴で彩られる。