作品タイトル不明
652話 アダマントゴーレム
《パスマキア溶岩洞窟》は他では見かけないゴーレムが主体の狩場だ。
その数は計6種にのぼり、希少鉱物を含むゴーレムほど出現頻度が低く、また狩場の奥地で見かけることが多くなる。
……という情報は事前に得られていたため、今までにない狩場環境だと思って興味をそそられたわけだが。
「まあ、そう上手くはいかんよな」
これで4種目。
【擬態】した状態で天井に張り付き、固定砲台のように魔法を撃ってくるミスリルゴーレムを倒したところで小さく溜息を吐く。
図体はデカいけど動きがのろく、腕を振り回すことで【衝撃波】を放ってくるアイアンゴーレム。
鋭い六本の脚を持ち、縦横無尽に天井や壁面を動き回るブロンズゴーレム。
人型で様々な金属製の武器を持ち、対応したスキルも使用して襲ってくるゴールドゴーレム。
これまで奥へ奥へと進みながらこの4種を始末してきたわけだが、スキルはどれも既知のものばかり。
狩場の奥地に2か所ある小さな祭壇で、5日に1度自然形成されるという種火魔石を1つ記念に回収したくらいで、他は目ぼしい戦果もないまま最奥地らしい行き止まりの部屋まで到達してしまっていた。
とは言え、この程度は覚悟していたことだ。
むしろここからが本番だろうと、祈るような気持ちで半分近くが溶岩の池で染まる、出入口が1つだけの広い部屋を眺める。
運搬の手間やリスクを考えると大半は狩場の入り口付近を狩場にしているようで、途中は荷引きも引き連れていない、大物狙いと思われるパーティを2組見かけただけでほぼ人などいなかった。
この狩場に表ボスがいないことも源書が証明しているし、ならばここを俺専用の拠点にしたって誰も文句は言わないだろう。
そう判断し、頭の中で魔法を唱える。
『溶けない氷』
生成したのは暑さ対策のための分厚い氷だ。
溶けないと言っても実際は溶けにくいだけだが、地面に敷いた上で周囲を覆い、まずは俺自身を隔離してから【魔力纏術】で自分好みのリクライングチェアを作って読書に耽る。
俺が周囲を眺めていては湧いてくれないので、リポップ狙いならこれが一番。
快適な環境を整えてから半自動狩りを開始した。
――【闇魔法】――『黒玉』――『魔物を殺せ』――
▽ ▼ ▽ ▼ ▽
それからどれくらいの時間が経っただろうか。
4冊目の本を手に取り暫くしたところで、ここに湧く最後のゴーレム――『アダマントゴーレム』が【探査】に反応し、思わず飛び起きる。
氷の壁を飛び越え反応のある場所に目を向けると……んん?
人の頭部よりはやや大きいくらいの棘が生えた球体が、溶岩の池の上でふよふよと浮遊していた。
ええ……あんなのがゴーレムなのか……?
5種目の『ダマスカスゴーレム』は、とても無生物とは思えないほど素早く動く4つ足の獣のような風体だったため、意外過ぎる見た目に思わず困惑してしまうが。
「よし……よしよしよし」
見覚えのないスキルを抱えていると知り、自らを落ち着かせるように大きく息を吐く。
俺のステータスを伸ばしてくれるなら、魔物の見た目なんざなんだっていい。
と、突然頭上から無数の岩が降り注ぎ、俺の作った仮拠点を破壊していく。
躱すのは容易く俺自身が当たるようなことはないものの、溶岩の池にも容赦なく岩が落ちるため、跳ねるし所々で爆発しているしでアダマントゴーレムに近づけない。
これは……かなりいやらしい魔物だな。
溶岩池の上を漂ったまま一向に近づいてこないので、倒すとしたら普通は遠距離攻撃に頼るしかなく、しかしそうなるとせっかく倒せたとしても求めている戦果物が溶岩の中に落下してしまう。
――【挑発】――
かと言って――、やはりだ。
呼び寄せるために【挑発】スキルを放ってみるも、【挑発】の対象は生物のみという特性があるため、無生物のゴーレムには反応がなかった。
滅多に湧かない上に、その素材も取りにくい。
だからこそ、上手に攻略すれば希少なアダマント素材を手に入れられるということなのかもしれないけど、ん~普通はどうやって倒すんだろうな。
「ほい、捕まえた」
結界の中でそんなことを考えながら暫く動きを止め、真横へ転移。
すぐに魔力の反応が強い場所に手を突き入れ魔石を抜き取ると、強くはないけど面倒なアダマントゴーレムはその動きを止めた。
そして、アナウンスが流れる。
『【落岩】Lv1を取得しました』
詳細説明を見ても【火炎息】や【烈風】などと同じ、素早い発動で広域に攻撃を加えられるタイプの土属性版だ。
今となっては【無詠唱】があるため恩恵は薄いが、取得さえできればすぐにステータスをある程度伸ばせるのだから、それだけで時間を掛けた価値はあるというもの。
『【落岩】Lv2を取得しました』
『【落岩】Lv3を取得しました』
『【落岩】Lv4を取得しました』
『【落岩】Lv5を取得しました』
『【落岩】Lv6を取得しました』
『【落岩】Lv7を取得しました』
よしよし、まずは1つ目。
とりあえずレベル7まで上げておき、対応する『防御力』の上昇値に納得してから、未だボコボコと音を立てて泡立つ溶岩の池に目を向けた。
「さーて……本命も期待に応えてくれるかな?」