作品タイトル不明
575話 南部調査
かつて狩りをするために潜ったパルメラ南部のBランク狩場から、爆速で南下すること約2時間。
樹海が途切れたその先は予想通り海が広がっており、俺はそこから海岸付近をひたすら東に向かって進んでいた。
探索も兼ねて探しているのは、できる限り条件に合致した環境だ。
目的にしている魔物の気配は時折確認できるので、あとは住むのに良さげな地形があってくれるといいんだけど……
(ん~しっかし、本当に誰もいないんだな)
碌な調査もしないまま、パルメラは全域が魔物の巣であるという情報を鵜呑みにして国を興したので、先住民というわけではないが、人間や亜人がどこかに住んでいる可能性だって十分あると思っていた。
特に海岸付近なら町の1つや2つくらいあってもおかしくなく、できればそんな人達と魚人が上手く交易でもしてくれればなーと。
そう願っていたわけだが、上空から見ている限りでは人工的な建造物などただの1つも見当たらない。
どこまで飛んでも昼ドラに出てきそうな崖が続いており、このままでは俺がマリーのように専属の取引相手として、生活に必要な物資を届けないといけなくなる可能性が高くなってきたことに思わず軽い溜め息が漏れる。
まあ3つ目を提案した時点でこのパターンも想定していたので、なったらなったでマリーを殺し切るまで、移住する魚人の人達には様々な面で頑張って動いてもらうしかないんだけど。
そんなことを考えながら、いくつもの探し物を並行して行っていると、ふいに頭の中で溌剌とした声が響く。
(ロキくーん! こっちに良い場所あったよー!)
逆方向を調査してくれていたフェリンからの【神託】だ。
――【神通】――
「他の条件はどうだった?」
(人は全然いませんけど、レモラという魔物のいる狩場は結構近いですよ~!)
「おお! それじゃすぐ確認するよ。ごめん、こっちに迎え来れそう?」
(これで場所特定できてるから大丈夫だよーそこから動かないでね!)
単純に広過ぎてしんどいという泣き言を言ったら、元から協力的で何かとついてきたがるフェリンと、魚人の保護という言葉に強く反応したフィーリルが【飛行】と【広域探査】をそれぞれ持ち込み協力してくれていた。
今後の交流や取引が行える可能性を考えると、できればミノ諸島に近い東側の方が移住先としては無難。
しかし何よりも優先すべきは安全面だろうと一人納得し、迎えに来てくれたフェリンと共にその場所へと向かう。
そして。
「へ~木材に困ることはなさそうだし、地形も今まで見た中で一番良いかも」
「でしょ? こんな感じでぐちゃぐちゃってしてるといいんだよね?」
フェリンのこの言葉に、改めて周囲を注意深く眺めながら頷く。
今いる場所は複雑な入り江が多く存在しており、海水が大地を割るように深くまで入り込んでいるため、一見すれば大陸と繋がっていそうに見える島もいくつか存在していた。
氷河なんてまったく見当たらないけど、北欧辺りにあるフィヨルドと似たような雰囲気だ。
「そうそう。帝国がかつて、東にある獣人の国に海から攻めたことがあるらしいんだよね。そうなるとまず間違いなくこの海域を船で通っているわけだし……海に面したあからさまに分かりやすい町なんか用意したら、何かちょっかい掛けられるかもしれないからさ」
「私にはランクというものが分かりませんけど、この周囲4か所から魔物の反応を拾えるので、資源を目的にするなら活動しやすそうですね~」
「……あれ、3か所しか拾えないな。もう1つは沖の方?」
「ですね~ロキ君の言っていたレモラという魔物の反応も海の奥の方から拾えますよ~」
うーん、【広域探査】のレベル差か。
1つはホーンラビットがかなり広い範囲で反応しているから、パルメラ大森林の一部として陸に広がるFランク狩場。
それに同じFランクのキシュキシュや、Eランクのポートイールも別々の場所から反応を拾えるので、そう考えると『F』『F』『E』『C』という狩場を抱えることになるわけか。
これならマルタ並み……だいぶ当たりの環境と言ってもいいだろう。
となると――あと確認しておくべきことはこれか。
そう思って二人に視線を向ける。
「あまり他所の国と近いんじゃアレだし、俺は念のためにここからもう少し西側の様子も見てくるから、その間に二人のセンスで町の下地を作ってほしいんだよね」
「前みたいな感じでいいの?」
「いや、目的は保護だからさ。こんなのはどうかなって思って……ゴニョゴニョゴニョ」
3人以外誰もいないというのに、顔を近づけ秘密の内緒話みたいな雰囲気で話すと、フェリンはすぐに目を輝かせ、フィーリルは若干呆れた表情で苦笑いを浮かべる。
「ロキ君は本当にそういうのが好きですねぇ~」
「えーでも楽しそうじゃん!」
「でしょ? 目的を最優先に考えた結果でもあるわけだし、たぶんここはマリーの目から逃れるために、子供達が多く住むんだろうからさ」
「はあ……しょうがないですねぇ~。それなら私も久しぶりに本気で頑張っちゃいますか~!」
「ふふ! 私の得意分野だからね! まっかせてー!」
「それじゃ30分ぐらいで戻ってくるからお願いね。俺も戻ったらすぐに手伝うからさ」
フェリンはこんな性格だからいいとして。
フィーリルもこれだけやる気になってくれているのなら、こないだ高いバイト代を払った甲斐もあったのかな?
そんなことを思いながら、他に住んでいる人がいないのか。
西側の海岸調査を進めていった。