軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

546話 バイト代で買い物を

Sランク狩場のスキル収集が一段落し、念願だった裏ボスの討伐も無事に終わった。

グリムリーパーだって試せば別の裏ボスを湧かせられる可能性はあるけれども、本気で狙うとなれば準備には相当な時間が掛かるし、やったところで確実に湧くわけではない。

ならばそれはまた別の機会にしておき、ひとまず次の国へ向かう前に、ここらで一旦やるべきことを先に終わらせておこうと。

そんな気持ちで俺達3人は自由都市ネラスへ訪れていた。

目的は探索と買い物、そして特訓である。

「はい、それじゃ二人のバイト代ね」

そう言って、手伝ってもらっているお礼に金貨を10枚ずつ。

金額にすると、一人10万ビーケを渡す。

「おぉ~これが働いた証!」

「ふふ、ありがとうございます~」

1か月ほど前に、2700冊という複製リストが出来上がってすぐの話だ。

勉強会の一環としても丁度いいかと、ベザートの監視業務に携わるリル以外の5人には、本の複製という超重要な深夜バイトをしてもらっていた。

スキルを1つしか持ち込めないし、それぞれやりたいこともあるようなので、5人で1日5~10冊程度の非常に緩いペースではあったが……

監督者のアリシア曰く、その程度だから意外と好評で、自分の調べたいことを確認するついでに作業をするという流れは、一人も投げ出すことなく今日まで続いていたらしい。

こんな報告を受けて、あの女神様達がと。

なんだかちょっとウルッときてしまったのは秘密である。

それにフェリンが趣味で育てている上台地の農作物は、既にいくつも収穫期を迎えていた。

"野菜や卵なんかが量産できたら、ベザートでみんな食べてくれるから俺が買い取るよ"

かつてこのように伝えた案を実行に移すとなると、フェリンとフィーリルは遅かれ早かれお金を得るわけで。

リステと違ってまともな金銭感覚が備わっていないままではまずかろうと、そんな理由から、世界を直接見て回っている能天気な二人を特訓しにきたわけだ。

だからバイト代だって豪快にケチったわけではない。

渡すと渡しただけ使いそうだから、今日のお小遣い用にとりあえず渡しているだけである。

「えーと、フェリンは新しい農作物の種が欲しくて、フィーリルは生き物とか花だよね?」

「うんうん!」

「そうです~おっきくて可愛い動物がいてくれると嬉しいですね~」

「え……いや、それはたぶん相当難しいと思うけど……花屋くらいはあるんじゃないかな、うん」

早速フィーリルがお金を握り締め、キラキラした笑顔でアホなことを言っている。

仮に売ってたって10万ビーケで買えるわけがねぇ……

でもこの笑顔を守るために、追加でお金を渡してしまいそうな自分が怖い。

「ロキ君はオークションを見てみたいんでしょ? なら私は一度来てるからなんとなく街も分かってるし、別行動にする?」

「いや、俺も一緒に行くよ。ベザートで農業やる人がかなり増えてきてさ。他と被らないように新しい作物の種がほしいって話も出ているみたいだし、そろそろ畜産用の動物と、あと各国と連絡を取るための鳥も揃えておきたいんだよね」

「私が育ててるやつでいいならあげるよー? 元々はロキ君から貰った種だし!」

「私の所にもいろいろな種類がいますから、繁殖して数を増やしている動物なら移してもらってもいいですよ~?」

「あ、ほんとに? それならお言葉に甘えちゃおうかな~もちろん買い取るからさ」

そんなことを相談しながら、自由都市ネラスの本格的な街ブラ探索を開始したわけだが……

うーん、特訓の意味は果たしてあったのか。

思わず首を傾げてしまう。

「うふふ、これもどうぞって貰っちゃいました~!」

「わたしも! おじさんがオマケしてくれるって!」

「あ、ああ。今回は屋台飯か……凄いね、いやほんとに」

行く先々で、いろいろなモノを貰ってくる二人。

種苗屋を見つけて入ると、おまけだと言って購入代金よりも遥かに高い希少な種をいくつも貰い、小動物の専門店に入れば安価なヒヨコを買ったはずなのに、なぜか大変珍しいという綺麗な毛並みの子ザルまでフィーリルは抱いていた。

俺だって一緒に買い物をしているのに、それどころか一番お金を使ってるのは俺なのに、なんのオマケも特典もない。

店主のオヤジ達は揃って二人の顔を眺め、乳を眺め、尻でUターンしてからまた顔を眺めてと、凄く幸せそうな顔をしていたので何かしてあげたくなる気持ちも分からなくはないけど……

花屋に立ち寄った時は女店主だったのに、それでも処分品やらなんやらで大量のサービスをしてもらっていたのだから、分け隔てなく誰にでも気さくに話しかけている二人だからこそなのかもしれないな。

俺は当然として、リステでもたぶんこうはいかない。

「ね! やっぱり仮面なんていらないでしょ?」

「下界の様子を見て回っている時も、仮面なんていちいちつけたりしませんしね~」

両隣でニコニコと、おやつの串肉を頬張りながらそんなことを言う二人。

確かに今は、俺がノアさん仕様の普段着を着用していることもあってか、誰も近寄ったりはしてこないけど……

「あのさ、二人とも容姿が普通じゃないんだし、変なのに絡まれたりしないの?」

そう問うと。

「めんどくさいことになっても、走って逃げちゃえば誰も追いつけないし!」

「そうですね~それにあまりにも煩いようなら、その口を閉じてしまえばいいわけですしね、うふふ」

「……」

フェリンはまぁいいとして。

フィーリルの危険な香りがぷんぷん漂う答えには、しつこく絡んだヤツが悪いよなと。

詳しく中身を聞くのが怖くて、思わず閉口するしかなかった。