軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

529話 潜ってみよう

「おぉ~!? いいじゃんいいじゃん!」

「カッコいいけどさ! なんかまた雰囲気が怖くない!?」

「さすが私と言いたいところだけど、これは素材が良過ぎるわね」

ここに来て初めての本格的な戦い――、つまり初陣であると。

ちょっと何言っているか分からない理由を並べていきなり着替え始めたゼオと、それに釣られた相変わらずパンツを穿かないカルラの姿を見て、俺とエニー、それに製作者であるノアさんも、鼻の下を伸ばしながら感嘆の声を上げていた。

場所はベザートの西区にあるノアさんの作業場。

機を狙っていたらしいゼオの催促により足を運ぶと、依頼していた服は無事に出来上がっていたわけだが。

俺はあの時途中で帰っていたため、二人の決めた服をこうして見るのは初めてのことだった。

だからこそ思う。

二人とも実は、異世界人なんじゃないのかなって。

それくらい完成度が高いというか、もうこのままの姿でゲームの世界にいてもおかしくなさそうなのだ。

しかもめっちゃ強い敵キャラとして、である。

ゼオは意外にも近接戦をこなしそうな軽レザーを身に纏いつつ、背には大好物のマントを。

全体的に黒を基調としながら金の差し色が所々に入り、マントに入った派手な文様にも同じ色が使われていた。

俺がヒラヒラならゼオはトゲトゲしていて、攻撃的な印象を強く与えてくれる装いだ。

そしてカルラはというと、この世界にいる貴族や王族とはまた違う、なんとも高貴な雰囲気を漂わせる恰好をしていた。

ゴシックではあるんだろうけど、まったくフリフリとはしておらず、スーツのように綺麗にまとまっているというか。

黒を主色に赤を要所要所で混ぜているのも雰囲気に合っているし、服好きなカルラのセンスが光る一品に仕上がっている。

まぁどちらも相当ノアさんの補助というか、地球の知識補正が入ってはいるんだろうけど。

「あんた達3人が並ぶと、より凶悪な集団に見えるわね……」

「ノアさん、それって誉め言葉なの知ってました?」

「ふっ、確かにな」

「これがロキの言っていた近寄り難き恰好良さってやつ?」

「その通り!」

お互いがお互いに衣装を眺め、ニヨニヨが止まらない3人。

そして横には、そんな俺達の姿を羨ましそうに見つめる者が一人いた。

「ねぇ、ロキ……私も……」

「おやおや~? 作ると怖ーい集団の仲間入りですけど、よろしいんですか~?」

大人気ないなとは思いつつも。

ここに連れてきた時点でエニーの服も作ってもらおうとは思っていたのだ。

その前に、生意気な小娘をギャフンと言わせても、たぶん罰は当たらない。

「うぅ……見慣れたらそうでもなくなってきたし! っていうか、カッコいいってちゃんと思ってたし! 私だって欲ーしーいー!」

「しょうがありませんなぁ。それじゃ我ら3人に混ざっても違和感のない服を」

「そうであるな。しっかり監修せねば」

「任せて。エニーに似合いそうな怖可愛い服のイメージはもうできてるから」

「「……」」

こうして背後から3人、エニーの服にあれこれ注文を付けまくってノアさんにブチ切れられてから、《夢幻の穴》の城内部へと向かった。

▽ ▼ ▽ ▼ ▽

「すっごー! 立ってると余計に大きく見えるし!」

Sランク魔物に興奮しているエニーの声を聴きながら、俺はゼオへ問いかける。

「どう?」

「ふむ、あの宙を浮く派手な鳥以外は見覚えがあるな。何をしてくるかは概ね理解している」

「了解。それじゃとりあえず見てるからね。エニーもカルラも、頑張って」

「もちろん!」

「う、うん」

職業選択を通して 大魔道(メイガス) となり、さらに祈祷から【転換】を取得して過去の強さにまた一歩近づいたゼオが、果たして今どの段階にいるのか。

それはこのような場で試してみなければ分からないし、エニーだってまだスキルポイントは温存しているはずなのに、日々の修行と職業選択の影響だろう。

【火魔法】はレベル7と初めて会った時よりも1つ上がり、ばあさんが得意としていた【魔力纏術】もレベル3を所持するまでになっているのだ。

一番安定していそうなカルラが不安気な表情を浮かべているのは少し気になるが……

ゼオと共にここで安定して狩ることができれば、経験値効率や気兼ねなく戦える場所、それに獲得できる素材など利点は非常に大きいわけで、できれば階層を下げずに上手くいってほしいなーと。

内心そう願った3人の戦いは、派手な魔法の初撃から始まった。

「いっくよー!」

そう叫んだエニーは、炎の津波とも言える波状の広域魔法を前方へぶっ放す。

その光景を見て思わず頭を抱えそうになると、既にゼオとカルラは俺よりも早く頭を抱えていた。

ゼオに師事しているせいなのか、魔法の規模に対して発動までがかなり速かったのは素直に凄いと思う。

しかし……途方もないアホなのか?

初見な上に、自分の力量で渡り合えるかも分からないランクの狩場。

にも拘わらず広域魔法を放ったせいで、まだこちらに反応していなかった魔物まで一斉に近寄ってきていた。

まぁ当の本人は背後にいる俺に向かって渾身のドヤ顔決めているので、まったく気付いていないが。

「阿呆が! 満足に捌くこともできぬ魔物を搔き集めてどうする!」

「いだーっ! って、全然死んでないし!?」

振り下ろされるゼオのゲンコツ。

青白い狼の【凍結息】で炎を相殺されたのも大きいんだろうけど、燃えながら地に落ちていく孔雀を2体確認できるだけで、あとの地上にいる魔物はダメージをあまり負っている様子が見られない。

「それどころか、あっちの竜は身体中から火を噴いて元気になってない……?」

カルラが燃える竜に向かっていくつもの氷岩を放って足止めし、そのまま背丈の2倍はあるハルバードを振り回す。

すると綺麗に吹き飛ぶ、燃える竜の太い首。

拠点周辺でAクラスの魔物を相手にしていた時よりも明らかに力強いのは、この一撃を見ただけでもすぐに分かるが……

続くミノタウロスの身体を真っ二つに割るより前にハルバードの柄を握られ、勢い良く振り回されたカルラの身体は軽々と宙を舞っていた。

「エニー! 右方の狼から火槍を放て! 1体ずつ確実に潰すのだ!」

「わ、分かった!」

「カルラは燃える竜だ! その武器でないと満足に近寄れん! 水でも氷でも、上手く牽制しながら仕留めろ!」

「うん!」

指示により固定砲台と化したエニーが狼の【凍結息】を次々と貫通させていく中、勢いよく駆け出したゼオは筋肉の塊のようなミノタウロスへ蹴りを放ち、そのまま肉弾戦へと持ち込む。

しかしその攻撃はあまり効いている様子がなく、逆にミノタウロスが殴りつける度にゼオの表情が大きく歪んだ。

魔導士なのになぜ?

そう思うも、一つ一つの攻防を試すようなあの動きは、きっと今の地力を確かめているんだろうな。

身体から薄く噴き出した黒い魔力は次第に厚みを増し、徐々に対応してきたと思った途端――

「?」

――ミノタウロスの首が不意に飛び、ポトリと地面に転がる。

え?

何が起きた?

あまりに一瞬の出来事で、見ていたはずなのに何をやったのか分からないまま、ゼオは焦げて煙を立てながらゆっくりと近づいていたアースドラゴンを次の標的に見据えて駆け出す。

その動きに反応したのだろう。

片足を大きく上げ、【烈震】の準備に入るアースドラゴンだが。

「ふん、させるか」

その言葉と同時に、ゆらりと。

突如跳ね上がった速度で一気に駆け寄りながらも、手が動く。

脚を撫でるような、そんな動き。

と同時に数メートルはあろう、支えていたアースドラゴンの太い脚が輪切りにされ、体勢を崩して下がったその首もまた、ゼオが触れるように手を翳すと、勢いよく切断されズレて転がっていく。

今度はなぜか、頭と胴の間をさらにもう一度斬られたように、3つの部位にバラされていた。

(なんだ……あれは……?)