軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

483話 ガルム聖王騎士国

翌日。

俺は予定通り、ゼオとカルラを引き連れ、ベザートの町を訪れていた。

「ほえ~こっちは結構人が多いし、凄く町っぽい雰囲気になってるんだね」

「ふむ……もっと小さいかと思ったが、想像以上に賑わっているな」

「まだまだいろいろな部分が手探りの発展途上だけどね。いずれエニーも連れてくるから、三人には何かあったらこの町を助けてあげてほしいんだ」

今回連れてきたのは服作りだけが目的じゃない。

何かあった時に、ゼオがすぐこの町へ飛べるように――、そのためのマーキングも兼ねて訪れていた。

もしかしたら俺の代理として、ゼオにはこの町でしてもらうことがあるかもしれないし、緊急時となれば俺と一緒に守ってもらうことだってあるかもしれない。

その時に町がどこにあるのか分かりませんではお話にならないからな。

「当然、我に協力できることはいくらでもしよう。しかし――」

「なんか、すっごく見られてるよね」

先ほどから、様々な視線がこちらに向けられているのは分かっていた。

悪感情の籠った雰囲気ではないので、さほど気にもしていなかったが……

「二人は目立つし、しょうがないよ」

赤い瞳であることもそうだし、ゼオは浅黒い肌に長い灰色の髪を靡かせた、明らかに只者じゃない感が漂いまくる高身長イケオジ。

そしてカルラは単純な顔面偏差値の度合いで言えば、女神様達と張り合うくらい整い過ぎているのだ。

見た目だけでは性別がはっきりしないし、中性的な恰好を好むため、それぞれが好奇――というよりは、好意にかなり寄った熱い視線を浴びていた。

まぁ鼻の下が伸びているような人達だけでなく、中には固まったようにその場から動かなくなる者もいたりするが。

「あ、今、『ふぉっ』って悲鳴上げた人、絶対ロキのこと見てたよ」

「うむ、間違いないな。そのイメチェンとやらは、そこまでする必要があったのか?」

「俺もやり過ぎじゃないかなーとは思うんだけどさ」

今朝上台地に行って服が出来上がったことを報告したら、もの凄い速さで現れたリステとフェリン、それに途中からはフィーリルも加わり、アリシアが監修する中で俺の頭を散髪しつつ捏ね繰り回していたのだ。

フードを被ったら分からないよと言っても聞かず、とても拒否できるような雰囲気ではなかった。

「俺が舐められると、この町にも危険が及ぶからって、上の"アーシェ"達がね」

「ふむ……確かに、王たる者、舐められるのはよくないな」

「うん、ならしょうがないのかも」

「そう、しょうがないんだよ。状況に応じて使い分けるけどね」

そうこうしていると目的の場所へ。

部屋の扉を開けると、ノアさんは昨日で燃え尽きたのか。

殺人現場の死体のように、だらしない恰好のまま床で直接寝ていた。

この人、見た目は結構美人なんだけどなぁ……

「おはようございまーす」

「んあ……さむっ……かゆっ……………ハヒッ!? ちょっ、鍵は! って、この部屋鍵がないんだった……」

「不用心だから、誰かに付けてもらった方がいいですよ。それよりノアさんに服を作ってもらいたいって人達を二人紹介しに来ました」

そう言うと、某アニメのような『3』をした目がクワッと見開き、横にいたゼオとカルラを見定め、生唾を呑み込む。

「そっちの大きいのは脚も長いし、申し分ないくらいのモデル体型ね……どんな服でも似合いそうだわ。それに小さいそっちの子は、中性的な美と妖艶さも兼ね備えていながら幼さも残していて……、何よこれ、最高の素材じゃない」

「ロキ、なんかこの人、ちょっと怖いんだけど……」

「うむ、なんというか、気配が只者ではないな。まるで肉食獣のようだ」

「ちょっと変わってるけど、俺じゃ間違いなく到達できないその道のプロだし、そう機会も作れないんだから、どんな服を着たいのか真剣に相談した方がいいよ?」

そう伝えると二人はおっかなびっくりといった感じでイメージを伝え、出来上がったラフなデザインに目を見開いたまま硬直。

その後は興奮した様子であれやこれやと要望をぶつけていた。

ノアさんもがんがん突っ込んでるし、これはなんとも長くなりそうだな。

「ゼオ、俺はそろそろ次の国に向かうけど、帰りは自分達だけで大丈夫?」

「うむ、カルラと二人なら何も問題ない」

「それじゃこれ、多めに払っときますんで、二人が満足できる服をお願いしますね。一つ仕事を終わらせたばかりですし、時間はそんな無理しなくていいんで」

「あんたってほんとにお金持ちよね……まぁいいわ、これだけの予算を頂いちゃったんだし、二人には望み以上の服を仕立ててあげる」

「「「おぉ!」」」

「安心して私に任せておきなさい!」

▽ ▼ ▽ ▼ ▽

ゼオ達と別れたあとに訪れたのはフレイビル東部。

山間に建つ砦を上空から通過し、俺は次の国『ガルム聖王騎士国』に突入した。

まさかこんなに早く次の国に移るとは思わなかったけど、国もなければまともな町もなく、ひたすら移動を続けながら魔物と人の反応を確認していただけだったからな。

ハンターギルドがないというのは非常にストレスを感じることが分かったので、お次はそんなことがないようにと願いながら空の旅へ。

そのまま山を下った先に中規模の町を見つけて降下する。

「おぉ~綺麗だな」

統一されたオレンジ色の建物。

よく見ると赤レンガのようで、小路にまで敷き詰められた石畳といい、全体的に纏まりのある綺麗な街並みをしていた。

そして、そのままハンターギルド、存在していた傭兵ギルドへと順に足を運び、中央の支柱に貼り出された依頼を眺めてホッと息を吐く。

「こっちはまだ紛争中だったか……」

今回ガルム聖王騎士国に決めた理由がコレだ。

スチア連邦は気付かぬうちに国が消えており、パルモ砂国もすでに搾取の体制が盤石の様子。

となれば紛争中と言われていたガルムもかなり怪しいわけで、既に決着がついてしまっている可能性まで考えていたわけだが、この依頼ボードを見れば答えは分かる。

「ウェズラーグ旧市街地戦、ウォズニアク王政派の応援求む……親アルバート派の侵攻を許すな、ダンヘイル砦守備隊の参加者募集、報酬は能力によって応談……トラナ領域南部の守備隊員急募……」

この他にも貴族の警護やら主要施設の警備依頼がボードに隙間なく並んでいるのだから、今現在も紛争真っ只中であることは疑いようもなく、たぶん敵側に悟られたくない重要依頼も裏には存在しているのだろう。

これは事前に分かっていたことだが、国土の西側が現国王の体制維持を望む王政派であり中立派。

東側がマリーに付くことを望む親アルバート派となっており、依頼を見ているとこの国の騎士も一部が向こう側へついているように思える。

ふーむ……

マリーとアルバート王国の邪魔はしたい。

しかしあまり露骨な動きを取れば、強欲ババアがブチ切れて本格的な戦争に発展する可能性もある。

それにウォズニアク王政派というのも対抗はしているようだが、応援するほどの中身なのかも分かっていないしなぁ。

ならばまずは、マッピングを進めつつもう一つの目的。

最大の蔵書数を誇る『クルシーズ高等貴族院』を探してみるかと、端に追いやられていた野盗情報をいくつか確認し、『ガルム聖王騎士国』の旅を開始した。