軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

400話 質問と尋問と拷問と

城壁に囲まれた中規模の町『カルージュ』。

山間に造られた高低差のあるこの町は、高台にいくほど建造物が立派になっており、頭を潰しやすそうなこの構造には感謝したいくらいだが。

(まいったな……)

犯(・) 人(・) が(・) 多(・) 過(・) ぎ(・) て(・) 、俺はいったい何から手を付ければいいのか。

逆に身動きが取れなくなってしまっていた。

数までは拾えない【広域探査】の結果は『無数』と表現するに等しく、視界に入る対象と照らし合わせれば、大多数の兵士が盗賊に扮していたことがすぐに分かる。

変装をしたところで判別の方法などいくつもあるというのに、バレないと思っているのか。

今も目の前で兵同士がくだらない自慢話に花を咲かせているのだから呑気なものだ。

多くは事情を知らない『白』の町民。

「……おい」

勢いで一掃なんてできるわけもなく、しかしチマチマやっていたらどんどん逃げられるだろうし、ここはまず頭から狙うべきか――。

「おい、そこのガキ」

「?」

「おまえ、さっきから何見てやがんだよコラ」

「見てはいないですよ? 追いかけ回して何人狩ったとか、売ったら20万ビーケくらいになったとか、そんな自慢話を聞いていただけです」

「……何人なんて一言も言ってねぇだろ、 何(・) 匹(・) だ」

「人を匹と数えるのもだいぶ問題だと思いますけど」

「おい、こいつ……」

「あぁ。おまえよ、なーんか悪ぃことしてそうな顔してんなぁ。ちょっと話聞きてぇから奥行こうや。逃げようとしやがったら足を斬り飛ばすからな?」

……丁度良いか。

実行犯であるこの二人から情報を搾り取って、そこから手早く済む作戦を練るとしよう。

▽ ▼ ▽ ▼ ▽

「ぁ、だッ……たすけ……」

「あなたはちょっと黙っていてくださいね」

場所は恒例のパルメラ内部。

人目に付かない場所としては格別に優秀なこの場所で、ドブルと名乗る聞き手役だった男だけに強制の奴隷化を施す。

「さて、あなたにはいろいろと聞きたいことがありまして。まずカルージュの兵が盗賊に偽装してラグリース内のオーバル領を襲った、これで間違いありませんか?」

「あ、ああ、間違い、ない」

「首謀者と、兵数は?」

「兵数は、約8000、首謀者は、知らない」

「そっちのあなたは?」

「ひ、ひぃいいい!! 喰われる……喰われるから!」

「正直に答えないと、その結界、すぐに解きますよ?」

「ここ、答える! 答えるって! たぶんレイムハルト辺境伯だ! 金目のモノは全て辺境伯に献上しろって命令だったから!」

「あぁ……だからあなたはラグリースの人達から奪って着服したモノを、外れの町で現金化していたわけですか」

ドブルと名乗った男と、目覚めてすぐ逃げようとしたので両足を斬り飛ばしたお喋りな男。

二人いるなら丁度良いと、別々の方法を試しながらいくつかの確認をしていく。

お喋りな男の周囲には"防壁結界"を施しており、今もゴブリンファイターがガンガン殴っているので、籠めた魔力に対しどれほどの防御性能を発揮するのか。

そして以前から気になっていた尋問の方法についても試していたが……

やはりだな。

真実のみを吐かせるという点で【奴隷術】は優秀だけど、どうにも返答がカタコトでバカ正直というか、強制力のせいで応用が利かない印象を持っていた。

こうして死が差し迫った者の方が、助かりたい一心で別の追加情報まで口走ってくれるし、今後は相手や確認したい内容によって使い分けるべきだな。

「襲った目的は? 金目のモノを奪うことが目的ではないでしょう?」

「領土、だ。混乱に乗じて、少し奪うと」

「少し? オーバル領全域なら、決して少しとは言えないと思いますが」

「隊長が、少しと、言っていた」

「……あなたは?」

「詳しくは知らねーけどたまたまだろ! あっちの領主が俺達にあっさり降ってくれたお陰で、損害も無く丸ごと手に入れられたって話だ!」

「損害もなく……なのにラグリースの人達を、立ちはだかる兵もほとんどいないというのに、わざわざ殺し回ったわけですか」

「……」

「こ、殺さなきゃジュロイの仕業だって足がつく可能性もある! まずは目撃者を消せってのが総隊長の命令だったんだ! やりたくてやったわけじゃねぇ!」

「あなたは先ほど何匹犯し、何匹狩れたと、嬉々としてこの男に語っていましたが?」

「ちが、それは……」

「まぁ僕も人の皮を被った 悪党(ゴミ) が餌に見える時もあるので、あなたとは同類かもしれませんけどね」

「あひっ、……た、たっ、助けてくれよ……違うんだって。あれは冗談――、そう冗談で! ついカッコつけちま、ッ――……」

「あなたは喋り過ぎ、ってもう、肝心なこと聞き忘れたじゃないですか。オーバル侯爵の行方、あなたは知っていますか?」

「い、いや、知らない……」

「そうですか、なら、もう十分です。お疲れ様でした」

「ぁ」

明らかに二人は末端の兵士なのだから、情報量が少ない点はしょうがないか。

それでも予想通り、ジュロイが混乱に乗じて領土を奪おうとしたこと。

やっていることは、散々潰してきた盗賊連中と何も変わらないか、人を最優先で殺している分それよりも質が悪いこと。

そしてオーバル侯爵はそのことを知りながら――、というよりそのせいで命の危機を察し、真っ先に投降した可能性もあるか。

生死は不明、生きていたとしてもどこにいるのかは掴めないが……

「約8000人ね……あとは辺境伯とやらの身体に聞けばいいか」

遺体を回収し、再びカルージュへ移動。

高台の中頃に存在する、要塞のような石造りの建物に視線を向けながら、どう動けば効率的に悪だけを潰せるのか。

考えを巡らせながら上空へ舞った。

▽ ▼ ▽ ▼ ▽

「おう、そっちはどうだ?」

「だーめだ、全部ハズレ。速攻でトンズラした根性無しどもしかいねーよ」

「こっちもだな。皆、似たような情報しか持っていない」

「ふぅ~これで9か所目、やっぱり綺麗に全滅しちまって、 そ(・) の(・) 後(・) を知ってるヤツなんて誰もいねーんじゃねーのか?」

「そうかもしれんが……そう決定づけるのは俺達の仕事じゃないだろ」

ロキがパルメラ内部で二人のカルージュ兵に詰問するより少し前。

ラグリース国内に存在する各地の廃墟群でも、隠れ潜む残兵相手に似たようなことが行われていた。

男二人は【探査】を発動させ、次の標的を見つけるために村の中を彷徨い歩くが。

『あががぁああ……ッ!」

少しして、もう聞き慣れた悲鳴を耳が拾う。

誰が何をしているかは明白。

最初はさして気にもせず探索を進めるも、次に二人が合流してもなお続くその悲鳴に、お互い訝しげな表情を浮かべながら顔を見合わせる。

「アッ…ア゛ア゛ア゛ッッ!……ぅがッッ…、もうゆるじ、で……ッ!」

「……長いな」

「あれから全然情報抜けなくて機嫌悪いからだろ」

「だとしても、隊長相手に悲鳴を上げ続けている方が珍しい」

「それは、確かにな」

自然と、二人の足は悲鳴の続く方へ向かう。

ある程度の探索を終えたというのもあるが、それ以上に興味が湧いたのは耐えているその者に対してだ。

並の兵ならすぐに壊され、ここまで保てやしない。

二人は言葉を交わさずとも、もしや 当(・) た(・) り(・) を引き当てたのではないかと、そんな予感めいたものを感じていた。

そして数分後――。

「魔法、を……ぁッ…反射、じて……消え、て……」

「ん~! 早く早く! 君のその宝石のような瞳が、頭の中にめり込んで弾けちゃうよ♪」

顔の皮を剥がされた種族不明の獣人が、まるで咎人のように鉄の輪を手足に括りつけられ、石畳の床に貼り付けにされた上で拷問を受けていた。

瞼や鼻は削ぎ落とされ、ナイフの柄尻で強引に押し込まれた剥き出しの眼球は、有り得ないほど沈む込んで今にも破裂しそうな様子。

首より下も人の姿から外れかけており、今まで見てきた拷問よりもさらに凄惨な光景に息を呑みながら報告する。

「キンセ・ドルーチェ様、周囲の探索が概ね完了しましたが」

「ん~、やっとその先を知る人見つけられたから記録してよ。もう1回吐かせるからさ♪」

「は、はっ」

ドルーチェと呼ばれた女性は、男の予想に反して明らかに機嫌が良かった。

だからこそ、機嫌が良くても こ(・) れ(・) な(・) の(・) か(・) と冷や汗を垂らしながら、命を乞うように紡ぐ獣人の言葉を必死に記録する。

どの兵に聞いても同じ答えが返ってくる、高速で動く巨大な2本の炎柱と龍の存在まではもういいのだ。

問題はその先。

個体戦力と手の内を探る上で重要な、次の情報を――。

「ん~どうかな?」

役目を終えて絶命した哀れな存在など気にも留めず、愛くるしい表情で振り返るドルーチェ。

その言葉に記録していた男は、問題無しとばかりに中身を確認し、一部を読み上げた。

「他にも気になる部分はありますが……やはり重要なのは、『炎の白熱化』『魔法の反射』『周囲を薙ぐ巨大な炎』でしょうか」

「ん~本人は遠くて見えなかったみたいだけどさ、周囲を薙ぐ炎ってドラゴンのブレスみたいだよね!」

「い、いえ、そう言われましても、実物を見たことのない私共にはなんとも……」

「え~早く訓練所行けばいいのに! 私達の世界じゃ定番だよ、て・い・ば・ん! コホーッってさ。それに逃げる際中最後に見たっていう極大の水球も、なんか関係してるのかもね~」

後ろ手に繋ぎ、楽しそうにクルクルとその場を回るその姿は、血濡れでなければ、花畑の似合う可憐な女性にしか見えない。

しかし――。

男は記録の冒頭に再度目を向ける。

(ヴァルツ傭兵12位か……)

国に傭兵ギルドは存在していないが、広く浸透しているその仕組みくらいは男も理解していた。

その数字が表す意味も。

再度目の前で頭から水を浴び始めた女性に目を向けるも、流れる血の下は綺麗なもので、目立つ傷を負っているようには見えなかった。

(同じ強さを示す数字でも、傭兵12位とうちの15番隊隊長とじゃえらい実力の差だな……)

それこそが圧倒的な国力の差。

4強と言われる所以なのだろうと男は一人納得したところで、目の前の女性が誰に聞かせるでもなく呟いた。

「ん~5番目の異世界人って、もしかしてシヴァ様と同じ能力者だったりして♪」