作品タイトル不明
385話 特別なスキル
確証があったわけじゃない。
ただこのスキルの解放条件が整ったのは間違いなくこの戦争中。
ひたすらスキル獲得のログが流れ続けていた、あの時で間違いないと思う。
そして、他にも解放だけされているスキルはあったが、このスキル名なら、たぶん……
「あぁ、【転換】が解放されたって、頭ん中で喋った、とは違うな……なんかこう、"浮かんだ"のは覚えてる」
「やっぱりか。祈祷が終わった後、首傾げながら変な顔してたもんね」
「そりゃそうだろ。あんなこと初めてだし、本当なのかどうかも分からなかったからな」
「言ってくれれば良かったのに~」
そう言いながらも、これでまた一つ、謎だった部分が解けたなと一人納得する。
この世界の人達が『女神様への祈祷』で新しくスキル取得する時は大変だ。
自然習得なら知らずとも勝手に経験値が上がって覚えるのだから問題ないが、新たにスキルを願うとなれば、そのスキルの存在自体を事前に知らなければ何も話は進まない。
親なり周囲の人間なり、広く周知されている基礎的なスキルならば情報を得るのもそう難しいことではないだろうが、希少スキルや取得条件の存在するようなスキルはどうやってその存在を掴んでいるのだろうと、些か疑問に感じていた。
かつて教会でスキルの相談をしている人もいたので、黒曜板で多くのスキルを目にし、『聖書』と言いながら叡智の切れ端を集めているらしい教会がアドバイスしてくれているんだろうと思っていたけど……
そうかそうか、少なくとも取得条件が整った場合は、頭に浮かぶという形で存在を知ることができていたわけか。
「ゼオ、読書中ごめん。【転換】ってスキルはどういうモノか分かる?」
「いや……ロッジと同じだ。我も記憶を遡れば、そのスキルの知らせを受けた記憶はあるが、習得には至っていないはずだ」
「はず?」
「我が【隠蔽】レベル10になる前までには、少なくとも習得していなかったからな」
「んん? あ――……もしかして、教会を利用しない亜人の人達って、お互いに【心眼】で所持スキル確認し合ってたの?」
「うむ。視ることに長けた長老や纏め役が、どの亜人種族にも一人か二人はいるものだ。それでも覗くことのできない者が現れれば、今度はその者が視る者となり、ゆく先々は長老であり纏め役となる」
「へ~そこは理に適ってるね」
【心眼】レベル10で覗けないのは【隠蔽】レベル10に到達した者のみであり、そこまでいけば強者である可能性が極めて高い。
そのような者が次代の長として視る側に回り、数をこなすことで【心眼】のスキルレベルを上げながら、また次の強者へと繋げていくわけか。
しかし、そのようなサイクルが成り立つのは、自然上昇でカンストまで持っていけるような寿命の長い種族だからこそ。
それに【転換】をゼオや周囲が習得できていない様子から、自然習得が絶望的なスキルだってあるのかもしれない。
非効率であることは疑いようもなく、強くあろうとする向上心があるのに、妙な宗教観や隔たりで地力を掴めず、本領を発揮できないなんて勿体ないにも程があるな。
(ゼオやカルラのためにも、できる限り早めになんとかした方がいい部分か……)
はぁ、まいったな。
狩りに行きたいのに、行く余裕がまったくない。
まぁフェイスアーマーはぶった斬られたし、どうやっても一度付けた【付与】が外せないので、新たに装備の作り直しは必要なのだ。
動くなら今が丁度良いかと、出かける前にロッジへ伝える。
「それじゃ俺は準備をしたらいろいろ調整とかで出かけてくるから、一通り装備の件お願いね」
「おう分かった。あぁ、頼まれていた武器はもう出来上がっているから、ソイツだけは渡しておくか」
その後、一度秘密基地に戻った俺は、なんとなく内容を予測できるこのスキルを眺め、頭の中で念じる。
(【転換】をレベル1に)
『【転換】Lv1を取得しました』
そしてすぐに、詳細説明を確認して納得する。
【転換】Lv1 最大レベルまで上がったスキルの余剰経験値を蓄え、指定スキルの経験値に転換することが可能になる 転換率2% 常時発動型 魔力消費0
「やっぱりそうなるよね。ボーナス補正は魔力Ⅱで転換率2%のタブ付きか……」
新しいタブを開くと、そこには大きな水がめのような絵が描かれており、上には『0』という数字も表示されていた。
独自のステータス画面を見ている俺だけの表示法なのかもしれないけど、見て一発で内容を理解できるのは有難い。
水がめということは、溜められる経験値に限界もあるのだろう。
となると……
「説明文を見る限りは大丈夫そうだけど、指定スキルに選択の制限があるのかどうか、だな」
もしなければ、俺にとってはこのスキルこそが最強への一手になることは間違いない。
念のために様子を見つつ、問題がないようならこのスキルを最優先してレベル10まで持っていく。
そうすればダンジョン産『技能の種』の必要数も大幅に減り、今後がかなり楽になるはずだ。
「ふふ、まだまだ先は長いけど、"ルート"だけはだいぶ見えてきたな……」
一人そう呟きながら、近所の象を数体狩った後にマルタへ飛んだ。