作品タイトル不明
377話 『毒』
「えーと、二つ目に移っても大丈夫ですか?」
「お、おぉ、もちろんだ。しかし盗賊に扮している可能性か。捕らえれば何か分かるやも知れぬな」
「救援の他に、野盗の生け捕りも念頭に入れて動きましょう。有益な情報感謝致します」
「いえいえ、では2つ目ですが――、まずはこれをご覧ください」
「「……」」
そう言いながら取り出したのは、ばあさんが身に着けていた不気味な首飾り。
【鑑定】が通る今となっては『大黒樹の禍棘』という装飾の一種――つまり魔道具ではなく装備品に該当することが分かる。
「ばあさんが最後まで身に着けていたものです。一応形見の可能性があると思って持ってきましたが……先ほどの"安らかな眠り"という言葉にその反応、内容もご存じだったようですね」
この問いに王は瞳を閉じ、大きく一呼吸置いてから口を開いた。
「当然だ。余が宝物庫に眠っていたこやつをニーヴァルに託したのだ。この呪具を持って、国を救ってくれとな」
「へ、陛下……」
「そうでしたか」
「何か思うところは、ないのか?」
「もちろんありますよ。ただこの国の筆頭宮廷魔導士であり、最高戦力という立場で国を守ろうとしたのですから、部外者の僕が何かを言うのは違うと思っています」
「そうか……ちなみに、ニーヴァルは……、ばあさんは………いや、なんでもない……」
「……」
口をモゾモゾと動かしながらも、結局は自ら手で制し、言葉を止めるヘディン王。
何を聞きたかったのか。
それは分からないけど、ばあさんの功績くらいなら伝えられる。
「国を憂い、文字通り身を賭してばあさんが最後の最後まで戦い抜いたから、無傷に近い今の王都があると思ってください。少なくとも2位と5位の傭兵を同時に相手取っていたはずですし、もし早々に討たれていたら東から侵攻され、街の中はボロボロになっていたでしょう」
「そう、だな……」
この言葉にヘディン王は、頷きながらも片手で目元を覆った。
あんな方法が良いとは決して思わない。
でも、あそこでばあさんが抑えたから2位の男はあの場に留まり、北と南に移動していた軍もその司令塔に合わせて東へ戻ってきたはずなのだ。
多くの人達の命や財産を守ったというのは紛れもない事実だろう。
しかし、宝物庫か……
「申し訳ありませんが、お答えできる範囲で構いませんので、一つ教えてください」
「あ、あぁ、構わん聞いてくれ」
「この首飾りは宝物庫に眠っていたということで、他にもこのようなデバフ――、特殊なマイナス効果を持った装備が宝物庫に眠っていたりしますか?」
「ふむ……宝物の管理官に聞かねば詳しいことは分からぬが、『呪具』の類だと相手も自分も一度出血すれば、傷を完全に塞ぐまで多量の出血が伴うナイフ。あとは切れ味は鋭いものの、異常に敵を引き付けてしまうおかしな槍もあったと記憶している。必要なら今呼ぶが?」
「あーいえいえ、そこまでは大丈夫ですよ、ありがとうございます」
なるほど……なるほどなるほど。
これはかなりの有益情報だな。
デバフの"程度"に大きな差はありそうだが、それでも何かしらの代償と引き換えに強い効果を得るという仕組みが装備には複数、しかもレベル付きで存在していることになる。
今も机の上に置かれた『大黒樹の禍棘』には、『【苗床の贄】Lv5』というスキルが備わっているのだ。
まずこのスキルが魔力放出と引き換えに肉体を犠牲にしていたのだろうし、ヘディン王はその意味を理解していたからばあさんに託したということ。
トントントントン――……
手は自然と自分の太ももを指で弾き、思考は巡る。
そもそも、この手の特殊能力が 人(・) に(・) 備(・) わ(・) る(・) の(・) か(・) という根本的な疑問はあるが。
もしこのデバフ付き能力が、俺に備わってしまったとしたら。
あの、人が持つ数多の"経験値"を喰らいたいという強烈な衝動が、誰よりも強くありたいと願うただの『欲』だけでなく、別のデバフスキルが働いていた可能性も出てくるのか。
「ロキ殿?」
(詳細すら見えない【獣血】――『毒』までついでに喰らった可能性もあるが……)
しかし前兆のような、近い衝動に襲われる感覚は【獣血】のスキルが備わる前からギニエで感じている。
それにグレー文字ということは、"効果が発動していない"という見方をするのが自然。
だとしたら、その前――ギニエより以前から備わっていたとしたらどうなる?
(俺だけが持つ特殊な能力……その反動……レベル……スキルレベル……殺すほど、もしかして上がっていく……?)
ステータス画面が見られるこの能力も、レベルの上昇と思われる効果で所持金表示や『New』の表示が追加されたのだから、何かを成すことで上がる可能性は十分にある。
というより、どのスキルにも例外なくレベル設定があるのだから、スキルとして存在しているのならばレベルが上がることは確定のようなものだろう。
そしてスキルレベルが上がれば効果も強くなる、これだって誰もが納得できること。
その効果がデバフの影響を強くするものであったとしても違和感はない、が。
「ロキ殿? 3つ目は?」
(そうだ、なぜ『空白スキル』は3つではなく2つなんだ……?)
駄目だ。
繋がりそうで繋がらない。
この仮説通りであれば、若返りに関するスキル。
予想ではカルラやゼオの持つ【魔力回生】だと思っていたが、そのスキルの居場所がなくなってしまう。
何か見落としがあるのか?
それとも前提が――
「ロキ殿ー!」
「あ、ふぁい!」
「ふむ。意識が戻ったようだぞ?」
「固まったように動かなくなったので心配しましたよ?」
「おぉ、っと、すみません考え事をしておりまして、もう大丈夫です」
「そ、そうか。ならば改めて聞こう、して、3つ目の知らせとは?」
そうだった。
この確認が一番大きかったはずなのに、特大の疑問が浮かんだせいで頭の中から消え去っていた。
でも考えてみれば、試すには手頃かもしれないな。
俺だけの問題なのだから、検証するにしても全てを手探りでやっていくしかない。
人数なのか、得られた能力なのか、はたまた対象の地位なんかも関係するのか。
「えーと、これからヴァルツを潰してくるので、そのあとの土地の管理をお願いできませんか?」
「「……………………は?」」