軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

335話 新作の入荷と魔物使役

ふーむ。

今回の仕入れはハズレ3冊、当たり5冊かな?

そんなことを思いながら、秘密基地にある本棚にそれぞれの本を一度並べていく。

題名から興味の向く本だけを先に注文する――そんなやり方もあるのだろうが、この予想できない『本ガチャ』みたいな感じもゲームのようで嫌いじゃない。

『魔物図鑑 1巻』

リルが勢い良く読み始めてすぐに飽きていた本。

まだ1巻目ということもあって、中身は弱そうな魔物ばかり並んでいるので、あの反応もしょうがないとは思うが……

俺からすれば、まだ見たことのないFランク魔物が存在していると分かっただけでも十分当たりだ。

書かれている内容はハンターギルドに近い感じがするので、『源書』から情報を引っ張ったというより、実際に作り手が目で見て戦った情報という印象が強い。

『希少鉱石とは』

単純に希少かどうかという判断で産出量の少ない鉱石をピックアップしている本。

装備に転用できるかどうかも関係無しなので、どちらかというとその手の専門職が好みそうな本だが、しかしまったく参考にならないわけではなく、興味のそそられる内容も記載されていた。

『浮遊石』――思わず目を引くこのファンタジーらしい鉱石も、どうやら古代の時代には存在していたようで、今なおどこかで夢追い人が発掘チャレンジをしているらしい。

ちなみにあの光を吸収していそうな"黒過ぎる鉱石"は触れられてもいない。

希少云々という話ではなく、この世界では採れないという事実が確定しているからなんだろう。

『可愛い子ほど旅はさせるな』

ハズレ。

貴族向けに、外は危険がいっぱいだから、子供は気軽に外へ出すなと説いている本。

でもフィーリルがガン見していた。怖い。

『フィルオネス家の偉業』

これもハズレ。

どこぞの貴族が成し得た実績を纏めている本っぽいが、たぶん自分のことを自分で書いているんだと思う。お前は勇者タクヤか。

『スキルレベル検証 加工編』

たぶん当たり、なんだと思う。

過去に仕入れた『農耕編』と同じで、スキルレベル到達時にどのようなことができるのかを検証している本。

ただ結局はジョブ系なので、書かれている内容が凄く地味。

専門職の参考書みたいなものなので、本職とか目指している人には参考になるんだろうね、たぶん。

『魔法詠唱の 導(しるべ) 』

誰でも同じ効果を生み出す形態化された詠唱が、基礎となる8属性のレベル5まで載っていたので、宮廷魔導士のような団体に所属した場合は教科書にもなるような本だと思う。

ただ、分かっちゃいたけど、詠唱がとにかく長い。

とても実戦で扱おうとは思えないので、参考になるのは各属魔法が生み出すそれぞれの効果と、鍵となる魔法名くらいだな。

カッコ良さそうなやつは参考にさせていただきたいと思う。

『イケてる髭の整え方』

初めて買った本を燃やそうかと思った。

『木人族の不思議』

この世界に存在するらしい希少種族の一つ、『木人族』に焦点を当てた本。

これは素直に読み物として面白かった。

長命種ではあるも、人の枠として生き永らえるのは男性のみ。

女性は子を宿せば人から大樹へと変わり、実に人命を吹き込み大地を守る。

このように書かれており、俺の知っているファンタジー要素には当てはまらないからこそ余計に興味もそそられてしまう。

エルフ種と共存していた時代もあったらしいけど、今も存在しているのかまったく分からないのが難点だな。

あとはばあさんからではなく、オークションで競り落とした『宝石図鑑』は、本当の宝石用図鑑だったから良いとして――。

さて、どうするか。

本の確認も終わり、時刻はもう既に深夜。

検証は明日にしようと思っていたけど……うん、やっぱりダメだな。

どうにもこのままでは眠れそうもない。

(ちょっとだけ……ちょっとだけだから……)

ステータス画面を開き、既に何度も開いている新しい『タブ』を確認。

本での知識も大事だけど、現場で得られる知識だって大事だよねってことで、俺は久しぶりにラグリース北部の狩場、<<ペイルズ樹海>>へ飛んだ。

▽ ▼ ▽ ▼ ▽

場所は遺物ハンターも入ってこない懐かしの深層。

思わず背後にある山や周囲に目を向け、誰かさんのペットを意識しながら実験を開始する。

「まずはレベル5だから――Cランクのヤツを探さないと」

試していくのは、もちろんバーシェから得られたこのスキルだ。

【魔物使役】Lv5 条件を満たした対象に限り、使役することが可能になる 最大所持コスト500 使役時のみ魔力消費30

最初見た時は「これだけ?」って思ったけど、コストという文字にピンときて。

タブの存在に気付き、あぁ【奴隷術】の親戚みたいなものかと、一人納得していた。

ただ書かれている内容は"強制"がないため、【奴隷術】ほど細かくはない。

――スキルレベルに対応した 等級(ランク) までを上限に対象を選択する必要がある。

――使役するためには1匹に対し、 等級(ランク) に応じたコストを支払う必要がある。

――使役するためには一定水準まで弱らせ、対象に同意させる必要がある。

――この3条件を満たした状態で対象に触れ、自身の魔力を流しながら『使役』と念じることでスキルは発動する。

解除方法などはまた別に書かれているけど、タブ内に出てきた使役の仕方に関する説明はこれだけ。

あとはコストと等級の関係性が表になっていたので、Gランクの動物まで含まれるんだという意外性はあるも、これを見ればどういう理屈かはすぐに理解できる。

スキルレベル1 G・・・コスト1

スキルレベル2 F・・・コスト2

スキルレベル3 E・・・コスト3

スキルレベル4 D・・・コスト5

スキルレベル5 C・・・コスト10

今がスキルレベル『5』なのでここまでしか表示されていないけど、あとは限りあるコスト内でどのように組み合わせるかだな。

「おっ、良い感じのヤツ見ーっけ」

Cランク魔物を探して森の上空を飛び回れば、ようやく見つけたのは生息数の少ないゴブリンジェネラル。

相変わらず俺を見かけたら【威圧】とセットで一目散に走り寄ってくるので、近場にあった木の棒を拾い、ジャンプしながら頭をポコーンと軽く殴ってみる。

「グァッ!」

が、牙を剥き出しにしてただ怒るだけ。

説明にある、 弱(・) ら(・) せ(・) て(・) 同(・) 意(・) という流れがいまいち掴めない。

「バーシェは素手で殴ってたから、もうちょっと強くかな?」

あの男がベイブリザートをポコスカと殴り、あっさり言うこと聞かせている姿を遠目に眺めていたのだ。

だが、何度殴ろうと魔物特有とも言えるお怒りモードは変わらず、あっという間に息も絶え絶え。

このままではもう1発2発で、ポックリ死んでしまいそうである。

「グ……ガッ……!」

「こんなボロボロの状態じゃ使役する意味ないよなぁ。でもバーシェからレベル1の【手加減】も得られたんだし、何か意味が…………ん?」

いやいや、このスキルに引っ張られていたけど、重要なのは別の方か?

バーシェから得られたスキルのアナウンスを眺めていた時、偶然だとは思うが、一度【魔物使役】が解放されてからスキル取得のアナウンスが流れていった。

普段ならそのままスキル取得に入るので、つまりはその手前で別のスキル取得から解放条件が整ったということになるわけだが。

(そのスキルは、たしか――)

バーシェから得られたスキルは、この他だと【調教】と【獣語理解】の2つだけ。

ならばそう難しい問題ではない。

――【獣語理解】――

『絶対、ぶっ、殺す!』

「うおー! ゴブリンジェネラルが喋ったー!」

凄い凄い凄い!

考えてみればギニエ辺りでこのスキルを取得していた気もするけど、ずっと発動していると勘違いしたままスキルの存在を忘れていたのだ。

【獣語理解】Lv5 動物や魔物の言葉を理解し、意思の疎通が図れるようになる 魔力消費0

スキル詳細をよくよく見れば、【異言語理解】と違って『常時発動型』じゃねぇ! って罠に今更気付いちゃったけど、まぁ問題ない。

だって俺はこれから、魔物マスターになるんだから!

「ということで、使役するからよろしく!」

『うる、さい、死ね!』

「あれ? 違くて、使役しようかなーって……」

『てめ! これだけ、ボコボコ、殴って、今更使役、だと!?』

「あれぇええ!?」

まさかの殴り過ぎ問題勃発!?

ちっとも同意してくれないとか、地味にこのスキル、さじ加減が難しいんですけど!

「えーと、どうすれば、使役されてくれますかね……」

そう問えば、舌打ちされながらもなんだかんだと答えてくれる。

『チッ……俺より、強いから、なるのは、しょうが、ないけど、まずは、飯』

「へ?」

『飯と、あとは、この傷、治せ』

「……」

なんで、コイツこんな偉そうなんだよ?

しかし初めての使役なのだから、ここは丁重にいきつつ流れを掴まないといけない。

もしかしたら、これが使役のための『作法』なのかもしれないのだ。

「ど、どうぞ」

腐らないように収納保管していたなんかの肉をあげつつ、これまた初めての経験。

魔物に【回復魔法】という、RPGなら御法度な技を試みてみれば、意外とすんなり血だらけだった顔面は治っていく。

「ほ~魔物にも効くとか意外……って、魔物でも【回復魔法】使うやつがいるんだから当然か」

『え、あ、いや、ま、ま、魔石で、良かった、ですが?』

「? あぁ魔石、魔石ね」

なるほど、そういうことか。

前にハンスさんがボロボロのロキッシュに何かを食べさせていたのも、きっと魔石だったんだろう。

成長していく上位種じゃなくても、魔石を食えば魔物の傷は回復する――ふむ、魔物特有のルールだし、かなり勉強になるなコレ。

「とりあえず回復させたし、お肉も……なんか全然食べてないけど、とりあえずあげたし。これで使役されてくれますかね?」

『それは、もちろん、です。有難き……有難き……』

「なんか急に気持ち悪いんだけど……まぁいいや、それじゃいくからね」

(使役したーい)

『……ッ!?』

「おぉ、感覚的に成功したってのが分かるのか。なんだこの不思議な感じ……」

ステータス画面から【魔物使役】の専用タブを確認すれば、案の定ゴブリンジェネラルという名前が載っており、その横には『コスト10』と、発生している消費コストが記されていた。

だがこれだけであり、それ以外にHPバーのようなモノや、所在を示す表記は存在していない。

かなりゲームに寄ってしまうから、載っていないことも不思議ではないが……

しかしそうなると、どうやってハンスさんはロキッシュのピンチに駆け付けられたのか。

そんな疑問が残ってしまう。

(もしかして、スキルレベルが関係してるのか?)

ハンスさんの【魔物使役】はまず間違いなくレベル10だ。

レベル上昇によって、何かしらの機能が解放されるというスキルも存在しているのだから、レベルを上げれば分かる範囲が広がるというのも十分あり得る話。

もしくは先ほどのように、なんとも言えない独特な感覚で、"何が起きているのか"使役者が理解できるのかもしれないな。

(ゼオが知らなきゃ、もしかしたらでフィーリル。それかハンスさんに聞くのが一番の近道だよなぁ)

たぶん聞けば教えてくれる。

となれば、南へ向かう理由も強くなってくる。

(……まぁ、追々だな)

今取り急いでその情報が必要というわけでもないのだ。

そのうちクアド達がどこかでお店を開いた時、番犬のような護衛役として、使役した魔物が店や彼らを守ってくれれば良いかなというくらいで、今はこの手の魔物がどうしても必要な場面は特にない。

それでも、ここで『解放』するのもなんだし、せっかくの初代『仲魔』なのだから、一応連れて帰りますがね!

「よし、とりあえず家に帰ろっか」

『い、家!? それは、もう。ただ先に、二つ、どうしても、気になること、あります』

「ん?」

『名を、俺に、名が欲しい、です』

「おぉう名前ね。ん~ゴブリンよりジェネラルを弄った方が分かりやすいし――よし、ジェネ! ジェネでいこう!」

『有難き、幸せ。あと、さっきから、凄く、気になる、こと』

「うん」

『主は、もしかして、魔王様、ですか?』