作品タイトル不明
277話 また来るから
(普通のレイドパーティなら、どうやって勝つんだよコレ)
そうぐちりながら必死に首へ食らいつき、環境的に最も有利と思われる【雷魔法】を撃ち続ける。
『はぁぁ……首から、身体中の、血肉焦がして、爆ぜろ、”爆雷”ッ!!』
「ゴァアアアアアアアアアアアアアアア……ッ!」
「んぐぅううううう!!」
混ざり合って響き渡る、二つの悲鳴。
このボスはバカにしていたけど地味に優秀だった。
身体の内部なら反射されないだろうと思っていたら、第三段階になって急に俺まで脳天を突き抜けるような電撃に襲われたのだ。
一度だけの偶然とかではなく、覚悟して放った二度目もやはり、俺にまで電撃が跳ね返ってくる。
となれば、原因はあの【鏡水】とかいうスキルしかないだろう。
体内の肉が溶けたのか縮んだのか、それとも俺が掻き分けて骨を掴みにいったのがまずかったのか。
【魔力感知】でも発動の瞬間に魔力が凝縮するタイミングがあるので、できた隙間に【鏡水】を生み出しているとしか思えない。
それでも【雷属性耐性】と【麻痺耐性】があるおかげで、相応のダメージ軽減と、そして麻痺の硬直がすぐに解けるのは幸いだった。
『周囲の、水を、氷の、台地へ』
ガルグイユを再び湖の底へ潜らせないために。
麻痺して動きの鈍い間に封じる必要があるため、おちおち【不動】でダメージから逃げることもできやしない。
第三段階に入ってまた水が底から噴出し、同時に水が渦を巻くように流動し始めたが、俺は突き入れた腕を抜くつもりはなかった。
抜けば、水の底へ逃げられる。
だから咄嗟に取ったのは水を凍らし、ガルグイユが潜れないようにすること。
しかしそれでも下からどんどん水が湧き上がってくるので、重ねるように何度も何度も足元から下やガルグイユの下半身を氷漬けにし、身動きを取らせないようにしていく。
そうすれば首に取り付いている以上、ガルグイユの残す攻撃手段は周囲から飛来する水の槍だけだ。
『うっ、ぐっ……うざっ……周囲に、強固な、石の壁を、生成』
明らかに飛来する量の増えた水の槍から身を守るべく、周囲に石の防御壁を何枚も作り出し、間髪容れずに麻痺をさせ、足先から魔法を放ち、今度は下方から周囲を凍らし続ける。
そして――
「やっと、止まったか……?」
どんどん上昇していた湖面の動きが完全に止まり、目の前には身体の過半を氷漬けにされ、鈍く頭を振りながら藻掻くガルグイユの姿が。
ならばこれ以上自爆気味に魔法を放つ意味はないと首から腕を抜き、氷に埋まっていた部分だけを【発火】で溶かして俺だけが氷の世界から抜け出る。
身体中寒いが、今は気にしてもいられない。
ガルグイユは長い首と頭部だけを地上に出し、動きは緩慢で息も絶え絶えだが、その目はまったく死んでおらず俺を刺すように睨みつけていた。
「ボス相手だからこそ、やる価値と意味もあるだけに、難しいな」
そう一人呟きながら、仕舞っておいた長剣を『収納』から取り出す。
『力刃』
「グォオァアア……アアァ……」
「もう、死にかけだね」
殺しきるだけならば、他にも方法はあったと思う。
内部から強引に燃やすことだってできたかもしれないし、氷漬けになって動きのない部分を【空間魔法】で消すことだってできたかもしれない。
それでも勝ち方に拘ったのは、その後の装備に転用できる素材を見据えてのことだ。
結局は首を斬り飛ばすのが、後々の旨味を考えるならば一番良い。
――【魂装】――
「それじゃ、また来るから」
「……グァ…………」
――『力刃』――【旋風】――
『レベルが59に上昇しました』
『レベルが60に上昇しました』
『【丸かじり】Lv6を取得しました』
『【廻水】Lv1を取得しました』
『【廻水】Lv2を取得しました』
『【廻水】Lv3を取得しました』
『【廻水】Lv4を取得しました』
『【廻水】Lv5を取得しました』
『【魔力感知】Lv5を取得しました』
『【魔力纏術】が解放されました』
『【鏡水】Lv1を取得しました』
『【鏡水】Lv2を取得しました』
『【鏡水】Lv3を取得しました』
『【鏡水】Lv4を取得しました』
『【水属性耐性】Lv7を取得しました』
『【無面水槍】Lv1を取得しました』
『【無面水槍】Lv2を取得しました』
『【無面水槍】Lv3を取得しました』
『【無面水槍】Lv4を取得しました』
『【無面水槍】Lv5を取得しました』
「はぁ~……最高」
▽ ▼ ▽ ▼ ▽
ガルグイユの死体を周囲の氷ごと回収し、自身を煌々と白く燃やしながら周囲の氷を急速に溶かしていく。
地底には――というより【探査】で調べる限りは排水されたことによって穴の中に流れたっぽいが、無手になるため投げ捨てた大剣がまだ放っておかれている。
もし転移ワープでもして空間がリセット。
せっかくロッジに作ってもらった武器まで消失なんてなったら笑えないので、しょうがなく氷の上に寝そべり、のんびり戦果を確認しながら地底を目指していた。
(使えるのは【鏡水】と【廻水】か)
あの飛来する槍のような攻撃も、まともな耐性や魔法防御力が無ければハチの巣になるんだろうし、複数戦相手の場合には有効っぽかったんだけどなぁ。
まぁ球体という特殊なフィールドのみの使用環境っぽいから、駄目なら駄目で割り切るしかないだろう。
それに【水魔法】で真似をしようと思えば、規模は違えど近いことはできる気がする。
なので問題は使える2つの方だが、「クセが強いわ~」と、詳細説明を確認して思わず溜め息が漏れた。
【廻水】Lv5 広範囲の水を強制的に流動させる 範囲と速度はスキルレベルによる 魔力消費:1分毎に70消費 ※水の無い場所では発動不可
【鏡水】Lv4 水を利用し魔法属性に分類される攻撃を自動で防御、反射する 反射精度はスキルレベルによる 魔力消費:10秒ごとに30消費 ※水の無い場所では発動不可
なんというか、どちらも水がその場にないと発動できないタイプなので使い勝手が悪い!
場所を限定すればたぶん凄いんだろうけどなぁ。
【廻水】はフェリンの【地形変動】なんかとかなり相性が良さそうというか、【水魔法】では補えない規模で強引に水を動かしたいのならばこのスキルを。
あとは長い詠唱が不要でサクッと発動できるというところも、ボスや魔物が所持する特殊スキルの強みだろう。
ただ本当にどこで使うんだって話になるわけですが。
それに比べたらまだ【鏡水】の方がマシで、実用性もあるように思える。
こちらも水がないと使えないのは同じだが、そもそも使用する水の量に段違いの差があるからね。
極端な話をすれば、使いそうな場面で最初に水を撒いておけばいいのだろうから、そう考えれば使用条件はグンと下がる気がする。
難点はオートなのに下準備が必要で、かつ常時発動型でもないわけだから、無防備な俺を守る自動防御機能にはなり得ないってことだろうな。
まぁそれでもいざ戦闘となった際には上手く使えば相当強力だろうから、今日にでもとりあえず物質生成タイプの【土魔法】と【氷魔法】まで有効なのか、ゼオに軽い魔法を撃ってもらいながら細かい部分も確認していこう。
あと【魂装】チャレンジの結果は知力『620』だった。
数値的には可もなく不可もなく、たぶん当たりは他にあった気がするけど。
それでも能力値がズバ抜けて高いボス2種をセットという当面の目標はクリアできたわけだし、自己強化は順調ってもんである。
はぁ~それにしても・・・・・・むふふ。
スキルポイント:133
今回は2レベルも上がり、またスキルポイントに余裕が生まれてしまった事実に、ニヤニヤが止まらない。
さてさて、今後は何に使おうかしら?
【魂装】はとりあえずもう1つくらい上げて、次のボスに備えつつ、まだまだ弱いままの敏捷値を底上げしておくのもありだよなぁ。
うん、間違いなくありだな。
『【魂装】Lv3を取得しました』
それに、今回解放だけされた『魔力纏術』も、ばあさんの使ってる姿を見たら憧れが――
そんな幸せ妄想でいっぱいになっていたら、いつの間にか氷は解けて湖の底に到着していたらしい。
いくつか入れる穴もあるので、光の玉を生成して中に落としていく。
奥の方に大剣があるのは分かるが、いったいどの穴に入ればいいのか。
――【気配察知】――
――【探査】――光の玉。
「ん~……こりゃ、中で繋がってんのか?」
入り口はどれも1.5メートル程度の穴だが、別の穴に入れた光の玉も、全て同じ方向に向かっている。
ならば気にしてもしょうがない。
斜め下に延びていく一つの穴に立ち――吹き上がった風の臭いに一瞬顔を顰めるも、俺は剣を回収すべくそのまま内部へと突入した。