軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

77

秋。食欲の秋、スポーツの秋、読書の秋。

そう、レオルドがゼアトに来てから初めての秋を迎える。とは言っても、これといって大したことはない。

特別な行事があるわけでもなく、レオルドはいつものように書類と向き合っていた。

(やばい。死んじゃう。まさか、過労死まっしぐらの生活になるなんて)

レオルドが領主代理になってからは多忙な毎日が続いていた。中には休む間もなく書類仕事に追われる日もあった。

肉体的にも精神的にも限界が訪れそうだった。早急に文官を見つけなくてはならないとレオルドは奮起する。

しかし当てがない。レオルドは人脈がないのだ。いや、正確に言えばある。ベルーガに頼めばいいのだが、既に断られている。

そして、もう一人いる。こちらは頼ってしまえばどのような目に遭うか分からない。

だが、公爵家当主であるベルーガ以上に人脈はあるだろう。なにせ、第四王女シルヴィアなのだから。

「ないない。無理だ」

考えたがやはり無理だ。どのような要求をされるかわかったものではないと早々に切り捨てる。気分転換に町へ降りようとするレオルドはギルバートとイザベルを呼んだ。

二人を護衛に、レオルドはゼアトの町へと降りる。すでにレオルドが領主代理となっている事は知られている。

住民達は最初こそ噂を信じて恐れていたが、多くの騎士が慕っている光景を見て怯える事はなくなった。

そのおかげで、レオルドが町に出てきても住民達は怯えてしまうような事はない。

「うーむ。文官候補は見つからないか」

「王都のように大きくありませんから、市井に優秀な人材が眠っているようなことはないでしょうね」

「くそぅ。このままじゃ過労死まっしぐらだぞ」

「坊ちゃま。やはり、殿下に頼んではいかがでしょうか?」

「ギル。殿下に頼めば確かに優秀な文官を派遣してもらえるだろう。だが、見返りが恐ろしい。何を要求されるかわかったものじゃない」

「私の主を愚弄するような発言は控えてもらいたいですね」

「お前が殿下に報告してる事はこっちも把握してるからな!」

「ですが、このままだと坊ちゃまも限界を迎えるでしょう。なにか手を打たねばなりませんぞ」

「わかっているが……」

「レオルド様って人脈がありませんものね」

「うるさいわっ!」

人望は最近増やしつつあるものの人脈は父親とシルヴィアしかない。むしろ、シルヴィアというこれ以上ない立場の人間と関わりがあるのは凄い。だが、使い辛い。王族に対して無礼ではあるがシルヴィアは関わりたくない人種であった。

「育てるか……」

「時間がありません」

「誘拐でもする気ですか?」

「イザベル! お前は俺をなんだと思ってるんだ!」

「敬愛すべき主ですわ」

「嘘おっしゃい!」

「はて?」

「可愛らしく首を傾げても俺は騙されんぞ!」

「そのようなつもりはないのですが、褒めて頂けるとは」

手を顔に当てて顔を赤く染めるイザベルにレオルドは見惚れるが、演技だと判断してツッコミを入れる。

「お前のそのメンタルが羨ましいわ!」

もうお馴染みとなってしまった光景にギルバートは和んでいた。二人の間に割って入ることは出来ないが、レオルドが楽しそうにしているようでギルバートも嬉しく思っていた。

最初はイザベルのレオルドへ対する態度に注意をしようとしたが、レオルド自身が気にしていないこともあり、ギルバートは何も言わなかった。それに、他人のことを言えるギルバートではなかった。

自分も孫娘に甘かったせいで主であるレオルドに対して許されない無礼を働いた。だから、ギルバートはレオルドが何も言わないのでイザベルに何かを言う事は決してない。

「坊ちゃま、イザベル。ここは往来の場ですぞ」

「むっ……行くぞ」

「もう少し戯れても良かったのですが、ギルバート殿に従いますわ」

レオルドは先頭を歩き、先へと進む。しかし、大して大きくない町だ。あまり、見るようなものはない。強いて言うならば砦くらいだろうが、今は見に行く価値はない。

レオルドは左右を見回しながら、文官に向いてそうな人材を探すがピンと来ない。やはり、涙を飲んでシルヴィアに頼むべきだろうかと悩み始めた頃、騎士団の兵舎へと辿り着く。

(ふむ……そういえば騎士の中にも文官はいるよな? そこからヘッドハンティングでも……いや、騎士団にとって文官は貴重そうだからやめておこう)

アポ無しの視察という訳で、レオルドは兵舎へと足を進める。中に入ると、訓練場の方から暑苦しい掛け声が聞こえてくる。

恐らく、訓練に励んでいるのだろう。レオルドも身体を動かすのは、いい気分転換になるだろうと思って訓練場に顔を出す。

すると、レオルドに気が付いた騎士達は訓練を中止してレオルドへと挨拶をする。レオルドは訓練を続けろ、と手を振って制する。

しばらく騎士達の訓練を見ていると、バルバロトがレオルド一行に歩み寄ってくる。

「今日はどのようなご用件で?」

「ああ。実は文官候補を探してるんだが中々見つからなくてな。町を散策してたら、この近くまで来たから見学にでもと寄ってみたんだ」

「もしかして、騎士の中から探そうとしてます?」

「まあ、否定はしない」

「ふーむ……」

バルバロトは文官候補に見当があるのか、考える素振りを見せている。レオルドも期待してバルバロトを見ていると、視界の端で雑用をしている騎士を捉える。

「なあ、バルバロト。雑用係は騎士にもいるのか?」

「ええ、まあ。その、雑用係は言い難いのですが剣の才能が無い者ばかりです。ですから、掃除、洗濯などと言った雑務をさせております」

「引き抜くことは可能か?」

「可能でしょうが、文官が務まるかはなんとも言えません。ただ、あまり言いたくないのですが、雑用係は我々にとっては必要な存在なのです。

騎士の大半は戦う事が得意であっても、そのような雑用が苦手という者も多いので。雑用係はそういう意味では重宝しているのです」

「なるほどな……ん?

雑用は戦いが不得意な騎士がやっているんだよな?」

「はい。どうかしましたか?」

「ああ。少し、改善策を思い付いた」

不敵に笑うレオルドに、ギルバート、バルバロトの二人は期待を寄せる。そして、イザベルはレオルドがどのような改善策を見せてくれるのかと興味が湧いた。