軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

345

それから、しばらくしてシルヴィアが宿へ帰ってきた。レオルドは早速、情報交換のためにシルヴィアの元へ向かう。シルヴィアの部屋に来たレオルドはシルヴィアと対面するようにソファへ腰掛けると、イザベルとリンスが、それぞれの主に紅茶を淹れる。

「レオルド様。なにか手掛かりはありましたか?」

「いえ、残念ながら、特には」

「そうですか……」

「殿下の方はどうでしたか?」

レオルドが聞き返すと、シルヴィアはカップを手に取り、紅茶を口に含んだ。リンスが淹れた紅茶を、堪能したシルヴィアはカップを置いてから、レオルドに聖女アナスタシアと交わした会話の内容を話す。

「聖女アナスタシア様とお話しましたが、これといった情報はありませんでしたわ。ただ、こちらに戻ってからいくつかの事件を解決したそうです」

「事件とは? どのようなもので?」

「一つは幽霊屋敷の調査ですわね。どうやら、悪霊が発生していたようで、ゼクシア子爵と協力して解決したそうですわ。次が、近くの森に現れた新種の魔物の退治だったそうです。まあ、新種ではなく突然変異した魔物だったそうですが」

「まだあるのですか?」

「他にもいくつかありますが、レオルド様が必要としているものは……」

「そうですか……」

申し訳無さそうに目を伏せるシルヴィアに、レオルドはダメだったかと背もたれに身体を預ける。そのまま、顔を上に向けて天井を見つめながら、ぼんやりと考える。

( 運命48(ゲーム) と同じようにジークは聖都で発生している事件を解決してるのか。これで、教皇の企みに気づくはずだが……、期待はしないでおくか。しかし、これで確定した。教皇は邪神を復活させようとしていることが)

シルヴィアから聞いた情報は、運命48で 主人公(ジークフリート) が解決するイベントである。それらのイベントを進めると、教皇の企みが邪神復活ということが判明するのだ。幽霊屋敷の悪霊も、突然変異の魔物も全て邪神復活の儀式で死んだ子供達の無念や怨念が引き金になったのだから。

「どうしましょうか、レオルド様?」

「……ギル。シャルに繋いでくれ」

天井を見上げていたレオルドにシルヴィアが問い掛け、レオルドは顔を正面に戻してから少しだけ思案すると、ギルバートの方へ声を掛けた。レオルドの指示に従って、ギルバートは部屋の窓を開けると指笛を吹いた。すると、ギルバートが飼っている鷲が飛んでくる。

ギルバートの腕に乗った鷲は、首を傾げて目をパチパチとさせている。そして、ギルバートは窓を閉めてから、腕に乗った鷲をレオルドに近づける。

「シャル。聞こえてるか?」

「聞こえてるわよ〜」

鷲に話しかけたレオルドに答えるように、鷲が嘴を開くとシャルロットの声が聞こえる。シャルロットは、今回付いてこなかったが、使い魔を通して同行していたのだ。そして、今回シャルロットの使い魔に選ばれたのが、ギルバートの鷲である。

「手短に話す。聖教国から他国の人間に引き取られたという子供を探してほしい」

「それくらいなら、お安い御用ね。他には?」

「今はない」

「そう。じゃあ、こっちから話があるわ」

「悪い話か、良い話か?」

「両方よ」

「む……。悪い方からで頼む」

「まだ見つからないわ」

「ちっ……、それでもう一つは?」

「こっちは凄いわよ! ルドルフとキャロがやったわ!」

「なにッ!? それは本当なのか!」

「嘘ついてどうするのよ。ともかく、あの二人は貴方に課されたお題をきっちりとクリアしたわよ」

「はは、ハハハハハハハハッ!!!」

シャルロットの話を聞いて、レオルドは嬉しさのあまり高笑いを上げる。その様子に、シルヴィアを含めた全員が驚いていた。

「あのレオルド様。なにがそんなにおかしいのですか?」

「あー、これは失礼しました。殿下、これは他言無用でお願いします。 回復薬(ポーション) の作成に成功したのです」

「回復薬!? それは、失伝されたという、あの回復薬ですか!?」

回復薬、それは長い歴史の中、聖教国によって消されてしまった。回復術士が希少価値を高め、重宝されるのはそれが原因だった。昔は、傷や怪我の治療は回復薬を使えば良かったのだが、今では教会に勤めている回復術士に頼まなければならない。しかも、決して安くはない治療費を取られるので、あまり印象は良くなかった。

だが、それも終わる。レオルドは、 運命48(ゲーム) で出てきた回復薬の材料を覚えていたのだ。ただし、作り方は知らない。当たり前だ。レオルドもとい真人はプレイヤーだったので、指定された材料を集めるだけで、あとは錬金術師のキャロラインや研究者のフローラに渡すだけで良かったのだから。

そうすれば、彼女達が持ち前の知識を使って回復薬を復活させるのだ。そのおかげで、聖教国の力も弱まり、国力を大きく削いだのだ。

それを今回はレオルドがするのだ。はっきり言えば、もう誰もレオルドに逆らえない。武力、知識、それら二つはどの国家もレオルドに遠く及ばない。真人の現代日本の知識を活用し、 運命48(ゲーム) の攻略知識を使って領地を発展させたレオルドに勝てる者は、シャルロットくらいだろう。

真正面から策もなしに、レオルドと戦えば蹂躙されるのは間違いない。シャルロットと同等の圧倒的な力を持ってない限りは、レオルドに勝つことは不可能だ。もっとも、それはゼアトを攻めた場合で、レオルド単体ならば、まだ勝てる可能性はある。が、やはり、それでもシャルロットやギルバートにグレン並の力は必要だろうが。

「シャル。二人には特別賞与を出しておけ。それから、キャロラインは正式に採用することを伝えてくれ」

「はいは〜い。それじゃあ、子供達のこと調べたら、連絡するわね」

「ああ、頼んだぞ!」

話が終わったので、鷲は元に戻った。ギルバートは窓を開けて鷲を、空へ放し、窓を閉める。ギルバートが元の位置に戻ると、シルヴィアが口を開いた。

「あの、レオルド様は一体何を為さるおつもりなのですか?」

「何を? いえ、特には考えてませんが」

「しかし、回復薬を復活させたのは何かあるからではないのでしょうか?」

「え……。いや、あったら便利程度にしか思ってませんが」

これは本当である。いずれ来るであろう魔王との戦いに備えているだけで、レオルドは他のことなど考えていない。何よりも重要なのは、運命に打ち勝ち、生き延びることなのだ。それ以外は基本おまけのようなもの。だから、レオルドは何も考えていなかった。