作品タイトル不明
321
質問がなくなったのか王子達は引き上げていく。レオルドはやっとゆっくり出来ると思ったら、今度はシルヴィアの母親で第一王妃のミリアリアがやってきた。まさかの義理母である。
(いや、いずれは話す時が来ると思ってたけど、このタイミングか〜)
レオルドは少々酔っているので正常とは言えない。ただ、意識はしっかりとしているので会話は可能だ。しかし、酔って高揚しているので何を口走るかわからない。先程も王子達の質問にシルヴィアの魅力など語っている。本人が聞いたら赤面するくらいのことを。
「こうして貴方と話すのは随分と久しぶりね、レオルド」
幼少期には何度かミリアリアと対面しているのだ二人は。勿論、公の場でもプライベートでもだ。まあ、 父親(ベルーガ) と 国王(アルベリオン) の二人が友人関係なのだから、その息子や娘に交流があっても不思議ではない。
「そうですね。こうしてお話するのは幼少期以来でしょうか」
「もう、そんなに経つのね。貴方がやんちゃだった頃から」
「その節については随分とご迷惑をお掛けしました」
「いいのよ。私は別に迷惑を掛けられたわけじゃないから。ただ、オリビアから相談を受けたりしていたけれどね?」
(おう……つまり事情はすべて把握しているってことね!)
家族に対して負い目があるレオルドはミリアリアの言葉を聞いてショックを受ける。
「お恥ずかしい限りです……」
「ふふ、仕方のないことよ。誰だって過ちは犯すわ。ただ、貴方は少々やりすぎた部分はあるけどね」
ミリアリアが言っているのはレイプ未遂事件のことだろう。学園で出来た部下を使って 元婚約者(クラリス) を襲わせた事件はレオルドにとって最大の汚点と言えるだろう。未遂ではあっても伯爵令嬢を襲った罪は到底許されるものではない。
だが、その際にジークフリートと決闘騒ぎを起こして敗北した。ある意味、そのおかげで助かったとも言えるが、やはり一番の要因は転生したことだろう。真人の人格と記憶がレオルドに混ざり込み、新たな人格が形成されたことで、今ここにいるのだから。
「まあ、貴方が秘密裏にヴァネッサ伯爵を支援していることは知っているのだけれど」
(どっから情報が漏れてんのかね!? 結構、あらゆる方面から支援して俺には辿り着かないようにしてるのに!)
やはり、王族は侮れないようだ。カルロス然り、ミリアリアもレオルドが隠していることをしっていた。王家直属の諜報員はかなり優秀なようだ。レオルドはイザベルのことを思い出して納得した。彼女は元王家直属の諜報員であるのでレオルドも重宝している。普段はメイドとして働いているが、諜報活動をさせるとかなりの成果を上げていた。
「はは、私にはそれくらいしか出来ませんから」
とりあえず笑ってこの場を乗り切ろうとするレオルド。とにかく別の話題を振ってくれないかと祈るレオルドの祈りが通じたのかミリアリアは別の話題をあげた。
「うふふ、そうね。さあ、暗い話はこれくらいにして聞きたいことがあるのだけど」
「私にお答えできることならなんでも」
「じゃあ、聞くのだけどシルヴィアのどこが好きになったの? ほら、貴方って最初はシルヴィアを狙ってたじゃない? それがモンスターパニックの後にシルヴィアと再会した時、露骨に避けてたでしょ? その後にシルヴィアからの婚約を断っているし、あれはシルヴィアの本性を見抜いてたから。なのに、どうして今回は自ら婚約を申し込んだんの?」
「あ、あー……殿下のことが好きになったからですよ。確かに小さい頃は殿下に気に入られようと必死でしたけど、モンスターパニックの後に再会した時、殿下は中々に腹黒いお方だと知って避けてたんです。まあ、それからも何度かお会いしましたけど、好きにはなれませんでした」
「好きになった切っ掛けがあるのね?」
「ええ、勿論です。とはいっても自覚したのはつい最近なんですけどね。帝国で療養中に殿下が訪れた際に話をしていて自覚をしました。恐らく好きになったのはもっと前なんでしょうけど」
「そう。ふふっ、貴方の本音を聞けてよかったわ。これで実は王家に取り入るのが目的なんて言われたらどうしようかと思ったくらいよ」
「ははっ、それこそありえませんよ。王家に婿入りしても面倒なだけでしょうから」
「まあ、随分と言うのね」
「事実でしょう?」
「ふふふ、そうね。本当に貴方は成長したわ」
ミリアリアは冷や汗をかいている。流石に踏み込みすぎたと焦っていた。レオルドの本心を聞こうと近寄ったが、皮肉を言われてしまいミリアリアは内心ドキドキである。レオルドが王家に対して敵意を抱いたのではないかと。
残念なことにミリアリアの考えすぎである。レオルドは皮肉を言ったつもりはない。勝手にミリアリアが勘違いしているだけだ。レオルドは率直な感想を言ったまでに過ぎない。ゼアトの領主でさえ面倒なのに王族なんてもっと面倒だろうと思っての言葉だった。
だから、ミリアリアが心配する必要はないのだが、それを教えてくれる人はいないのでミリアリアは勘違いしたままになる。
その後、流石に酔っ払いすぎてどんちゃん騒ぎになることはなかったが、何の思惑もない、一部ではあったが楽しい晩餐会は終わった。