軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

209

鼻血を吹き出して、極限にまで神経を削っているレオルドは必死に模索する。リヒトーへと一撃を届かせるために最後の手立てを。

その時、一つの考えが思い浮かぶ。まるで天啓のようにそれは閃いた。

(雷の魔法で肉体を強制的に加速させれば……)

真人の記憶を持つレオルドは異世界の知識を思い出す。それは人体についての知識だ。残念ながら真人は専門家ではないため、中途半端な知識しか持っていない。ただ、そんなことは些細な問題であった。

レオルドは異世界の知識を用いて、自身の肉体へと雷魔法を掛けようと考える。それは命を失うかもしれない賭けであった。人体に電気を流すのは非常に危険を伴う。

人はたった42 V(ボルト) の電圧で死ぬ。通称、死にボルトと呼ばれており、現代日本の一般家庭で使われている100Vの半分ほどだ。ただ、本当に危険なのは電流のほうである。

この世界には電圧を測るような道具は存在しない。だから、レオルドが使っている雷魔法がどれだけの電圧かはわからない。ただ、少なくともライトニングやサンダーボルトは落雷なので一億Vはあるだろう。

ただ、この世界には魔法が存在しており科学でも証明できないことがある。だから、レオルドがやろうとしていることは危険ではあるが、出来ないということはないかもしれない。

(いけるか?

いや、迷ってる暇はない!)

格上に勝つためには一か八かの賭けしかないだろう。腕輪も限界であり、もう保たないように見える。しかし、たった一撃を入れる為に命を賭けるような事をしてもいいのだろうか。

(死ぬかもしれないか……ビビってんじゃねえ!

運命に勝つんだろ! なら、命賭けの大博打くらいやってやらぁ!!!)

いつか来る死の未来に備えて泥臭く汗にまみれながら努力しているレオルドは、最後の最後に大博打に出ることにした。

ここで死んでしまうかもしれない。それでも、レオルドは決めたのだ。運命に打ち勝つのだから、命賭けの大博打くらいには勝ってみせると。

体内で雷魔法を発動させて強制的に肉体を加速させる。本来ならば脳が処理して神経に伝わり、神経が手や足に命令を出して身体は動く。それをレオルドは雷魔法で強制的に加速させて人間の限界を越えようとしたのだ。

その試みは見事に成功する。

「なっ!?」

レオルドの剣がリヒトーの剣を上回り、一撃を入れることに成功した。その一撃を受けたリヒトーは驚愕の声を上げてしまう。

(なんだ!? 今の動きは! 今までの比じゃないぞ!

まさか、まだ力を隠していたのか!?)

その直後に異変は起こる。レオルドの動きが急激に悪くなり、リヒトーの反撃を受けてしまい腕輪は砕け散ってしまう。

「え……?」

戸惑うのは他の誰でもない。目の前で戦っていたリヒトーである。先程の動きは完全に自分を上回っており、リヒトーは負けてしまうかもしれないと思ったのに、こんなにも呆気ない決着に戸惑いを隠せない。

そんな風にリヒトーが戸惑っていると、レオルドが倒れようとしている。慌ててリヒトーは駆け寄り倒れそうになったレオルドを受け止める。

「レオルド……っ!?

すぐに担架を用意しろ!!!」

慌てるリヒトーに只事ではないと係員達は急いで担架を用意する。リヒトーが支えていたレオルドを担架に乗せて、奥へと消えていく。試合会場に残されたのはリヒトーのみで、観客は困惑していた。

レオルドはどうなったのだろうかと。

その後、リヒトーの勝利が告げられて闘技大会は閉幕式を残すのみとなった。

そこからは大騒ぎである。最後に倒れたレオルドはどうなったのかと騒ぎ出す観客に対応する係員。

そして、レオルドの安否を確かめる為に家族総出で動き出すハーヴェスト公爵家にレオルドの部下たち。

さらには突然倒れたレオルドに気が気でないシルヴィアは、王女としての立ち振る舞いなどを忘れてレオルドが運ばれた医務室へと駆け込む。

医務室は大勢の人で溢れ返ってしまい、中に入れない人が出る始末だ。

おかげで医務室で働いている医者と看護師は大慌てである。ハーヴェスト公爵家の面々に加えて王族まで来るので、医者も緊張してしまっている。

「レオルドの容態はどうなっている!」

「意識を失っているだけだと思うのですが……」

「ですが? なんだ? 早く答えろ!」

「腕の方に火傷のような跡があるのです! しかも、外側ではなく内側からのようなんです!」

「なんだと? 腕輪の結界が作動していなかったと言うのか?」

「いえ、腕輪の結界機能は確かに作動しています。ですから、リヒトー様の剣を受けた箇所は打撲痕はありますが斬られたような傷はありません」

「では、なぜレオルドに火傷の跡が?」

「推測でしかありませんがレオルド様は自分の身体に魔法を使ったのではないかと……」

「それは身体強化ではないということか?」

「はい。身体強化でしたら火傷の跡など残らないでしょうから」

医者から説明を聞いたベルーガは落ち着きを取り戻すが、今度は別の疑問が浮かんでくる。

レオルドはなぜ自身の身体に魔法を使ったのかという疑問だ。

その場にいた人たちも二人の会話を聞いて、レオルドがなにをしたかったのかを考える。

その時、レオルドの様子を見に来たリヒトーが試合の時のことを思い出す。

「皆さん、聞いてください。もしかしたら、レオルドは新しい魔法を生み出そうとしたのかもしれません」

その言葉に全員がリヒトーへと顔を向ける。

「それはどういうことかしら?」

新しい魔法という言葉に最も反応したシャルロットはリヒトーへ問い掛ける。

「詳しくは分かりませんが、最後の一瞬にレオルドは僕の剣を上回りました。しかし、その直後にレオルドは急激に動きが悪くなりました」

「……私の目には見えなかったけど、貴方が勝ったのよね?」

「ええ。僕が勝ちましたが最後の一瞬だけレオルドは確かに僕を上回りました」

シャルロットは魔法に特化しているので二人の試合はよくわからなかったが、最後の方はレオルドが力尽きたと思っていた。

しかし、リヒトーの話を聞く限りでは別の要因があったと思われる。

それが新しい魔法。

レオルドの身体に刻まれた火傷の跡。シャルロットはそれを確かめる為にレオルドが眠っているベッドへと近付く。

「なにをする気だね?」

患者(レオルド) に手を伸ばそうとしているシャルロットに医者が止めようと割り込む。

そこへシルヴィアも割り込み、シャルロットのフォローに回る。

「申し訳ありません。ですが、どうか目を瞑っていてはもらえないでしょうか。こちらの方は高名なお方ですので決して悪いようには致しません。どうか、お願いします」

「シルヴィア殿下がそこまで仰るのであれば私は従います」

「寛大なお心に感謝を」

これで医者を黙らせる事が出来た。シャルロットはシルヴィアに小さくお礼を述べてからレオルドの容態を確認するのであった。