軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

208

次の手を考えるレオルドだが、やはり魔法しかないだろうという結論に至る。

剣術では絶対に勝てないから、その答えになるのは当たり前だった。

しかし、どうしたものかとレオルドは考える。なにせ闘技大会というよりは、一回戦のベイナード戦でほぼ全てを見せている。

だから、当然リヒトーも対策を練っていることだろう。

だが、逆に考えればまだ見せた事のない魔法を使えば優位に立てるかもしれない。

ただ、リヒトーはベイナードと同等もしくはベイナード以上の実力者であるので、初見でも簡単に対処してくるかもしれない。

ならば、手はないのかと頭を悩ませるレオルドは、至ってシンプルな答えに辿り着く。

後先考えず我武者羅になればいいと。

要は最初の予定通り全部出し切ってしまおうということだ。あれこれ考えずに、ただ自分のもてる全てをリヒトーにぶつけるのみ。

難しく考える必要は無い。

レオルドはジークフリート戦で見せた雷の剣を背後に浮かべる。

滅茶苦茶になった地面を蹴ってレオルドは剣を構えリヒトーへと迫る。

お互いに剣が届く距離にまで近付くと、咄嗟にレオルドは横へ飛んだ。その次の瞬間、ガンッと肩に衝撃が走る。結界が作動したようだ。どうやら、自分は切られたのだと理解するレオルドは冷や汗を流す。

(くそっ……わかってても避けられないか!)

目にも止まらぬ速さで切られたレオルドは内心で悪態を吐く。

先程はレオルドがリヒトーの間合いに侵入した瞬間にリヒトーが剣を振るい、レオルドを袈裟切りにしようとしていた。

レオルドは危険を察知して横に飛んで斬撃を避けようとしたのだが、リヒトーの剣の速さは尋常ではなく避け切れなかった。

(ふう……間合いに入ったら問答無用ってわけか。闘技大会じゃなかったら、間違いなく殺されてたな)

結界のおかげで致命傷にはならなかったものの、かなりの衝撃がレオルドには伝わっている。それがリヒトーの攻撃力の高さを物語っていた。

そして、恐らく今の一撃で腕輪の耐久値は大幅に減らされたに違いない。

もう後手に回っていたら勝ち目はない。レオルドは捨て身覚悟の特攻しか選択肢はなかった。

「行くぞ!」

走り出すレオルドはリヒトーに手の平を向ける。一瞬、リヒトーは魔法を警戒して動きを止めるがレオルドの狙いは別だ。

ほんの一瞬の隙を狙ってレオルドはリヒトーの間合いに侵入した。

(なるほど。僕の間合いに入るのが目的だったか。魔法はその為の囮ってわけか)

互いに剣が届く距離となり、ぶつかり合う。金属音が鳴り響き、火花が飛び散る。高速で展開される剣戟に観客は目が離せない。

そこへさらにレオルドは背後に浮かべていた雷の剣を混ぜる。縦横無尽に振るわれる雷の剣は、いくらなんでも避けることは出来ないだろうと観客の多くはそう思っていた。

(化け物かよ……!!!)

八本のもの雷の剣は全て弾かれる。それは全てのものを虜にするような光景であった。レオルドと剣を結んでいながらも迫りくる雷の剣をリヒトーは一つ一つ丁寧に対応してみせたのだ。

戦っているレオルドが一番驚いている。少なくとも一本くらいは当たるだろうと予想していたのに、結果は見事に裏切られた。

これが王国最強の騎士リヒトーの実力なのだ。

改めて思い知らされたレオルドは心が折れそうになる。ベイナードの時もそうであったが、あまりにも壁が高い。一つ壁を乗り越えても、またすぐに新しい壁が現れる。それが堪らなく辛い。レオルドはこのあまりにも高い壁に挫けそうになっていた。

(ああ、くそ……何度だって越えてみせるさ! こんなところで立ち止まるわけにはいかないんだ!)

己に活を入れてレオルドは奮起する。壁が高ければ今まで以上に頑張ればいいだけだ。ただそれだけだ。ならば、問題はない。やることはいつもと同じ。何度、壁が立ち塞がろうとも乗り越えればいい。そうやって人は成長するのだから。

「おおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!」

「っっっ!!!???」

剣を切り結んでいたレオルドが突然吠えるとリヒトーの足元が泥沼に変わり、宙に浮かんでいた雷の剣が勢いを増した。それに加えてアクアスピアまでが飛んでくるようになり、リヒトーは対処しなければならないものが増えてしまう。

(くっ! ベイナード団長に見せた時以上の魔法を!

ははは! ここに来てさらに進化したか!

嬉しいよ! いずれ国を担う次世代の力がここまで育ってるなんてね!!!)

レオルドの手数が増えてベイナード戦以上の成長を見せるが、それでもリヒトーには届かない。それもそうだろう。リヒトーは国王を守る近衛騎士であるから、複数の敵に対応できるように日々鍛錬をしている。

たった一人で複数の敵と戦っているかのような状況を作り出すレオルドも称賛に値するが、リヒトーはそれ以上だ。

今まで以上の負担を強いられるレオルドは悲鳴を上げている身体にムチを打ち、攻撃の速度を上げていく。ただ勝つために。己が持つ全てを出し切るつもりだ。

両手で剣を握りしめ、並列思考で魔法を制御し、超人的な速度でリヒトーへと攻撃を続けていく。

「いけ……行けーーーーっ!!!」

「頑張れ、レオルド様!!!」

「負けるなぁっ!!!」

鼻血を吹き出して極限にまで神経を削っているレオルドに多くの声援が送られる。まるで背中を押されるようにレオルドはリヒトーを壁際にまで追い詰めていく。

「負けないで、リヒトー様!」

「上には上がいるってことを教えてやれーっ!」

「勝て、勝てーーーっ!」

圧倒的な手数で攻めてくるレオルドを剣一本で捌いてみせるリヒトーにも多くの声援が届く。壁際にまで追い詰められているが、未だに傷一つ負っていない。

(あと一つ! あと一つ何かが欲しい! そうすれば届く!)

果敢に攻めているレオルドだが、リヒトーには傷一つ与えることが出来ていない。それどころか、針の穴に糸を通すかのようにリヒトーから反撃を受けており、腕輪はすでに限界である。

それでも、諦めないレオルドは他にまだ手立てが残っていないか探す。そうすれば、リヒトーにも届くはずだと己の力を信じて疑わなかった。