軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

090

試合開始と同時――

修太郎の数字が《8》へと減った。

「えっ?」

見守るショウキチから驚きの声が漏れる。

試合開始と同時に、 怜蘭(レイラン) は敵に急接近する《突進》を用いて距離を詰め、修太郎を弾き飛ばしたのだ。

そして勢いそのまま、大剣で斬りつけていた――それが致命傷となったために修太郎の数字が減った、という訳である。

蓋を開ければ、ごくありふれたコンボ攻撃。

しかし、その練度・レベルは桁違いである。

ギャラリーの中も怜蘭の動きを目で追えたプレイヤーは数えるほどしかいなかった。

「(とんでもなく速い……!)」

苦悶の表情を浮かべる修太郎。

着地後、素早く受け身を取りながら剣を構えた修太郎だが、目の前にいた怜蘭の姿が無い。

鋭い斬撃音が響く!

足元の地面が割れ、斬撃の波が伸びる。

横っ跳びで避ける修太郎。

そこではじめて、上空の光る何かに気付いた。

「《流星剣》」

怜蘭の大剣は銀色の線を帯び、

突き出された軌道をなぞるように尾を引いた。

戦闘スキルによる超高速の突きであるが、

威力はさながらマシンガンの如し。

MAP特徴、対人慣れ、リーチ。

圧倒的に有利なのは怜蘭に変わりない。

反撃を許さない怒涛の攻め――

しかし、余裕がないのは怜蘭の方だった。

「(悠長に勝負を楽しんではいられない。ここで仕留めるつもりで決める!)」

彼女の額に汗がにじむ。

修太郎の数字がみるみる減少し、《4》まで減った所で修太郎は攻撃を受け止めた。

ギャリィィイイイイン!!!

激しい金属音が弾ける。

怜蘭と修太郎は互いの剣を挟んで睨み合った。

「(笑った……?)」

怜蘭が見たのは、笑みを浮かべる修太郎の姿。それはおよそ追い詰められてる者のする顔ではない。

「エリアが暗いから注意しないとすぐ見失っちゃう。でも、もう逃さない」

そう言って、修太郎は再び笑った。

* * * *

二人の間に砂煙が舞い、スキル発動と衝突を意味する光と火花のエフェクトが、けたたましい音を立てながら弾けては消える。

怜蘭の鍛え抜かれた戦闘スキル《大薙ぎ》が、通常のおよそ数倍の速さで繰り出されるも、修太郎は跳びながら剣の腹でそれを受け、威力に身を任せる。

「(どこ……!?)」

闇に溶けるように消える修太郎。

怜蘭は必死に辺りを見渡す。

怜蘭からしてみれば、目の前の修太郎が一瞬にして消えたように見えただろう。その時修太郎は振り抜かれた大剣から抜け出し、怜蘭の背後を位置取っていた。

ィイイインッ!

僅かな 溜め(・・) の音の後に、

繰り出される強烈な《三連撃》!

最前線のプレイヤーでも自分のレベルほどに育っていれば上々なその戦闘スキル。レベルを極めている修太郎のそれは誰よりも速く、強い――

鮮やかなライトエフェクトと共に怜蘭の頭上にある数字が《10》から《8》へと変わり、ギャラリーからどよめきの声が上がった。

「(なんとか一発だけ躱せたけど、速いなんてものじゃない……見てからじゃ防御できない)」

再び剣を構える怜蘭。

体からは蒸気のようにオーラが立ち込める。

「!」

異変を察した修太郎が後ろに飛び退くと同時に、騎士の形をした半透明の巨人が怜蘭の背後に現れ、雄叫びを上げるように唸る。

波紋のように広がる衝撃波。

訓練場全体がビリビリと音を立てて揺れる。

《 騎士の咆哮(ナイツ・オブ・ロア) 》

主に広範囲の敵をまとめて倒したい時に用いられる大剣使いの貴重な範囲系スキル。それを受けた対象は、無視できないダメージに加え数秒の〝 硬直(スタン) 〟に襲われる。

しかし――

「(なんて子……あの短期間で私の動きとMAPに完全に適応したというの? 全く隙が無くなった)」

難なくかわしてみせた修太郎に、怜蘭は悔しがるどころかうっすらと笑みを浮かべていた。

本気をぶつけてもビクともしない少年に、惜しみない称賛、そして戦いへの高揚感を抱いていた。

ダァン!!!!

一瞬にして怜蘭の懐に潜り込む修太郎。

踏み込んだ足が地面を割るような、物凄い地響きと破裂音がこだまする。

とっさに防御の構えを取る怜蘭は剣の軌道を見極め、《三連撃》の発動直前であることを察する――そして修太郎の剣先が数ミリ動くその刹那、防御スキルである《鋼の魂》を発動させた。

地面に大剣を突き刺し、体が鉛色に変わる。

《鋼の魂》は受付時間1.5秒と極めて短いながら、受けるダメージをほぼ無効化する大剣使いの切り札的防御手段。

鋼の魂に弾かれた相手の武器は、

一瞬だが制御が効かなくなる。

極限の集中力の中で、永遠とも覚える時間が流れるのを感じながら――怜蘭はいつまで待っても〝来るはずの衝撃〟が来ない事に気付く。

修太郎は剣を振りかぶったまま、動きを止めていたのだ。

「スキルキャンセル?!」

驚愕の声を上げたのはラオ。

修太郎の戦闘センスに、驚き以上の恐ろしさを覚えていた。

修太郎は怜蘭の防御スキルを読んでいた。

それが終わる瞬間に備えていたのだ。

怜蘭の防御スキルが消えてゆくのを見計らい、修太郎はスキルを使わず腹部に四度の攻撃を浴びせる――スキル発動後の硬直により回避ができない怜蘭はそれを全て受けてしまい、頭上の数字を《4》まで減らしていた。