軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

088

ショウキチ、ケットル、キョウコの戦闘が終わり、バーバラの戦闘もそろそろ終わる頃だ。

「おっとバーバラ、そいつは毒の他に混乱攻撃も使ってくるよ。上空を旋回したら毒攻撃だから 治癒(キュア) 、鳴き声がしたら事前に 防音(サンプル) が基本の立ち回りね。混乱に対しての 治癒(キュア) だと……」

「あそっかー! 混乱に 治療(キュア) だと治るよりも先に同士討ちで痛手になるのか、しまったなぁ」

蝙蝠型のmobを忌々しそうに見つめながら、外に出てくるバーバラ。

パーティ戦闘を想定としたこの仮想訓練は、それぞれの役割毎に必要な要素を意識しなければならない。

盾役(タンク) であるラオはパーティへの負担を数値化、受けるはずだったダメージとそれを軽減したものを数値化、単純な火力・殲滅力。

回復役(ヒーラー) であるバーバラは、パーティへの負担を数値化、オーバーヒール数値、軽減成功率を数値化などがある。

タンクとヒーラーにはその他にmob知識などが必要となり、どのモブがどんな性質の攻撃をしてくるかなどを深く理解していないといけない。

そして他―― 攻撃役(アタッカー) 達の主たる仕事も様々だが、なによりも重要なのが〝火力を出すこと〟である。

「うっわ、異次元的」

「綺麗……!」

キョウコとケットルが釘付けにする視線の先で、スケルトンの大群を相手に 怜蘭(レイラン) が舞う。

流麗な動きから繰り出される、恐ろしく鋭利で素早い一太刀――対峙する三体のスケルトンが砕け散るのを見る事なく、返す刃でもう二体の首をはねた。

背中の鞘に十字架の大剣を納めながら、怜蘭は第7部隊の面々がいる入り口へと歩いてきた。

「元最前線組で強いとは聞いてたけど……怜蘭さんは正直別格ね。スキル発動から次のスキル発動までの動きに無駄が無いし、この数のスケルトンに対してまだ余力を感じるもの」

腕の鳥肌をさするバーバラ。

ショウキチは開いた口が塞がらないと言った様子である。

「はっはっは! 怜蘭の敵殲滅数とボスへのダメージ量は最前線3つのギルドでも〝3本の指〟に入るくらいだったからな」

「なんでラオさんが偉そうなんですか」

誇らしげに胸を張るラオにジト目を向けるケットル。

カロア城下町に近接したエリアで最もレベルの低い〝キレン墓地のmob〟を想定した仮想敵であったが、怜蘭にとっては居ないも同然といった結果であった。

* * * *

第7部隊の訓練が一通り終わり、小さな銀狼を抱いてそれを傍観していた修太郎に、ラオが声をかける。

「修太郎もどう? 召喚獣込みの連携も考えた方がいいんじゃない?」

その言葉に、修太郎も頷く。

とはいえ修太郎からしたら魔王達の立ち回りや火力について、未熟さや不足の可能性を全く心配していない。むしろ、目立ちすぎたり強すぎたりしないだろうか――という、別の意味で心配はしているのだが。

「(シルヴィアの火力が数値化されるのは避けたいなぁ)」

なにせレベルカンストのボスモンスター。測定器の故障を疑う数値が並ぶことは火を見るよりも明らかである。

「連携については後でじっくり試そうと思ってるから、今回は僕個人の訓練をしようかな」

苦し紛れの言い訳をする修太郎。

もちろんラオは首を傾げる。

「ん? 別に気にしなくていいのに。私的にはそこのチビちゃんがどれだけ動けるのか、そっちもかなり気になってるんだよね」

期待に胸を膨らませるラオ。

焦ったように目を伏せる修太郎。

助け舟を出したのはバーバラだった。

「ま、まあいいじゃない、召喚獣の仕事は単純な索敵と攻撃くらいだし、火力も機嫌やコンディションによって変わるって言うもんね!」

シルヴィアの実力を目の当たりにしているバーバラもまた、火力が数値化するのを阻止するため動いていた。そして、単なる興味本位だったラオも、それ以上の事は言わなかった。

「じゃあ行ってきます」

足早に入っていく修太郎。

「沢山のmobに囲まれて怖がらなければいいな」などと心配するラオと怜蘭は、戦闘が進むにつれ顔色を変え、十数秒もしないうちに驚愕の色へ染まった。

「ちょ、え? この数値、怜蘭と、え?」

「二連撃の発動待機時間が0.48秒って、どれだけのスキルレベルがあればこんなに速いの……?」

召喚士となり、職業による武器ダメージの補正が無くなったにも関わらず、修太郎の火力は怜蘭に勝るとも劣らない数値が出ていたのだ。

それは、 第六位魔王(バートランド) との修行で上限いっぱいまで上げたスキルレベルに加え、 第五位魔王(セオドール) から受け取った牙の剣による恩恵、そして修太郎自身の希有な才能が相乗された結果であった。

驚いていたのは二人だけではない。

まともに修太郎の戦闘を見たことがなかったバーバラ達もまた、次元の違う動きに目を白黒させていた。特にショウキチは魂が抜けたように茫然と立ち尽くしている。

「修太郎君――」

出てきた修太郎を見るや否や、体を小さくぶるりと震わせた怜蘭が口を開く。

その手には大剣の柄が握られている。

「試合、したい」

その目はしっかりと修太郎の目を見据えていた。