軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

142

辺りに煙が広がったと同時に、

解放者達三人の気配が遠退くのを感じる。

「慌てずこの場に止まってください!」

修太郎の一喝が修道院に響く。

しばらくして煙が晴れると恐怖から解放されたのか、群衆達が解放者達を探しはじめた。

「殺す! 殺す! 殺す絶対殺してやる!」

「樹貴、ごめんな。お前死んだんだな」

「クリアされて外に出ても私、生きる希望が……」

皆、解放者によって友人や知人が殺されていたことに気付いたから。その怒りは尤もだったが、修太郎は冷静に行動する。

「《至高の魔力》《拡散》《はじまりの印》」

修太郎の掌の上に小さな魔法陣が現れた。

「《精神安定》」

魔法陣を握りしめる修太郎。

波紋の様に広がるそれは、パニックを起こす人々の体を通過し―― 皆(みな) が冷静さを取り戻してゆく。修太郎は自分が見た光景を映像化し、バーバラ達をはじめ紋章関係者に添付し送った。

「まずは皆さんを安全なカロア支部まで送ります。あの三人のやった事は許せない、僕も友達を殺されたから……わかるよ。でもここにいる全員が見たし、映像もある。今は追いかけて復讐するより自分達の命を優先してください」

修太郎の言葉を群衆は大人しく聞いていた。

この少年に救われたのを理解してたから。

「で、でもあいつらがアリストラスに向かったら――!」

「僕はいつでもあの人達を追いかけられる。でもまずは皆さんを、安全な場所に送らなきゃならない。送らないと追いかけられない」

殺気にも似た冷たい視線を向ける修太郎。

群衆はそれで完全に沈黙したようだった。

*****

「修太郎君!!!」

修道院から出た直後だ――

目の前にバーバラが立っていた。

その後ろにはキョウコが、そしてショウキチとケットルが涙を浮かべ立っていた。バーバラは修太郎の無事な姿を見るなり、涙を溜めて抱きしめた。

「ごめんバーバラさ……」

「馬鹿!! ばかばかばか!!」

くぐもった声で連呼するバーバラ。

修太郎は優しく彼女の背中を叩く。

顔を上げたバーバラは、

綺麗な顔を涙でぐしゃぐしゃにしていた。

「生きててよかったよぉぉ」

ケットルとキョウコも貰い泣きをしており、ショウキチは誇らしげに鼻の下を指で擦った。

修太郎は無所属プレイヤー達を含めて、バーバラ達に同行してきた紋章ギルドのメンバーに一部始終を説明した。

解放者達はPKを行なっていた。

その手口は映像に残してある。

逃走したが動きは把握できる、など。

それはつまり、ログアウト自体が嘘であったことの証明だった。同じように友人を亡くしたプレイヤー達が膝から崩れ落ちる。

修太郎の視界がぼやけた。

目尻になにか、熱いものが込み上げる。

「あれ……あれ、」

バーバラ達と合流したからか――

修太郎の目から大粒の涙が溢れた。

それは精神安定魔法が切れたのも影響しており、緊張の糸が切れたように、修太郎は大声を上げて泣き崩れる。

「キイチさん……ヨシノさん……ごめんなさい、ごめんなさい、気付けなくてごめんなさい、間に合わなくてごめんなさい」

出てくるのは後悔の言葉と、懺悔。

「ッ――!」

何かが修太郎を包み込んだ。

ショウキチだった。

ぽろぽろと涙を流しながら力強く言う。

「騙された人達は確かに救えなかった、でも修太郎はここにいる全員を助けた。誇っていい、胸張っていい!」

ショウキチの言葉に同調するように、助けられたプレイヤー達から感謝の言葉が飛び交う。

修太郎はその言葉に少しずつ励まされながら、自分がやるべきことを徐々に思い出す。

涙を拭いた修太郎が立ち上がる。

魔王に念話を飛ばしながら――

「解放者達はケンロン大空洞の方角に向かってます。他のプレイヤー達が襲われる前に、問題を取り除かなければなりません」

修太郎の横にシルヴィアが現れる。

しかしその姿は小狼ではなく、

見上げるほどの美しい大狼だった。

「僕は解放者を追います。皆さんはカロア城下町にそのまま入ってください」

シルヴィアに跨る修太郎を見て、群衆達は神か何かを見たかのように湧き立った――そしてバーバラ達は顔を見合わせ、修太郎に向き直る。

「ここまで来て置いて行くのはなしだろ!」

怒ったような口調で言うショウキチ。

修太郎は反論しようと口を開き、しかしそれを言葉にはせず、笑顔でシルヴィアの背中をポンポンと叩いた。

「僕達が終わらせに行きます。皆さんはどうか事が終わるまで、カロア城下町から出ないようにお願いします」

バーバラ達が戻ったのを確認した修太郎は念話を飛ばす――そしてシルヴィアは短く『承知』とだけ答えると、風のような速さで駆け出した。