軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

943 クマさん、氷竜の角を削る

「ありがとうね」

わたしはお礼を言って、ミスリルのインゴットをクマボックスにしまう。

鉄は引き取ってもらうことも考えたけど、もしかすると使うかも知れないので、こちらもクマボックスにしまう。

あのミスリルゴーレムが、こんな形になるとは、なんとも言えない気持ちになる。

クマボックスにしまったわたしは、製錬してもらった代金をバッソさんに払う。

ミスリルを欲しそうにしていたけど、活用方法があるので譲れない。

神様、またミスリルゴーレムを作ってくれないかな。

ミスリルゴーレムの無限湧きでもあったら、お金稼ぎになりそうだ。

でも、ゲームと違って、大量に売れば価格が落ちるので無理と思うけど。

後片付けがあるバッソさんと別れ、建物から出る。

「それで、刀はいつ作る?」

「わたしはいつでもいいけど。ロージナさんの予定は?」

作ってほしいと頼んだとしても、ロージナさんも予定があるかもしれない。

もしかしたら、わたしよりも先に武器を頼んでいる人がいるかもしれない。

わたしの言葉にロージナさんは少し考える。

「そうだな。大きな仕事は入っていないから、すぐに取りかかることはできる。でも、今日は遅い。準備もしたいから、明日の昼頃でいいか?」

思っていたよりも早く取りかかってくれるみたいだ。

もちろん、わたしは了承する。

明日の約束をしたロージナさんとも別れ、わたしとカガリさんは家に向かう。

「カガリさんはどうする? お酒も買ったし」

歩きながら尋ねる。

カガリさんの目的は果たした。

「ここまで付き合ったのじゃ、最後まで付き合おう。それに妾もやることもあるしのう」

「やること?」

「お主が気にすることではない」

なんだろう。

少し気になるところだけど、カガリさんが刀造りを手伝ってくれるのは嬉しい限りだ。

最高の一本ができそうで楽しみだ。

ドワーフの街にある家に戻ってくる。そして、クマの転移門の前に立つ。

「わたしの家でいいの? 迎えに行くけど」

「お主の家で構わん。あの部屋は狭いが、悪くない」

日本の部屋と比べたら、広いほうだけど。和の国のカガリさんの部屋と比べたら、半分もない。

カガリさんの部屋が広いだけだ。

わたしはカガリさんを連れて、クリモニアにあるクマハウスに戻ってくる。

「それじゃ、明日に備えて寝るかのう」

カガリさんは小さく欠伸をする。

お酒は抜けても、夜遅いから眠いみたいだ。

でも、寝る前にすることがある。

「その前にお風呂だよ」

「面倒じゃ」

「鉄工所は暑くて、汗も掻いて、そのまま寝てたら、気持ち悪いでしょう」

「お主、スズランみたいなことを言うのう」

そんなつもりはないけど、寝る前にお風呂に入る習慣ができているので、わたしが入りたい。

「くまゆる、くまきゅう、カガリさんをお風呂に連れていって」

「待つのじゃ、自分で歩くのじゃ」

くまゆるとくまきゅうはカガリさんを連れて、風呂場に向かう。

わたしも、その後ろをついていく。

「はぁ、気持ちいいのう」

なんだかんだで、気持ちよさそうにお風呂に入るカガリさん。

「温泉じゃないけどね」

「この風呂もいい風呂じゃ。欠点はクマのところじゃろう」

カガリさんは風呂場にあるクマの置物に目を向ける。

クマの置物の口からお湯が出ている。

「狐に変更しないのか」

「しないよ」

「それじゃ、今度、温泉のお湯が出るところを狐にしようかのう」

「いいんじゃない」

温泉のほうは狐にしても気にしない。

クマに慣れた現状、クマハウスの中にクマ以外の物が置いてあると、違和感を覚える自分がいる。

もしかして、クマ依存症?

治す方法ある?

でも、クマハウスの中にクマ以外を置けばくまゆるとくまきゅうが嫌がるし、こればかりは治りそうもない。

風呂から出たわたしたちは、それぞれの部屋で寝る。

翌朝、朝食を食べ、ロージナさんとの約束までのんびりしようと思ったら「お主はやることがあるじゃろう」とカガリさんに言われる。

「やること?」

「氷竜の角を削ることじゃ。向こうでやるのか?」

そうか、魔力を込めないといけないから、わたしがやらないとダメなんだ。

ロージナさんに氷竜の角を渡して、「お願い」とはいかない。

わたしは作業がしやすい解体場に移動する。

そして、フィナがいつも解体している台の上に氷竜の角を出す。

「ナイフで削ればいいの? それともなにか道具が必要?」

大工さんが使っているカンナとか?

カンナだと薄く削れるけど、やったことはないし、なによりカンナは持っていない。

「ナイフで構わんよ。角に魔力が通っていなければ、削れるはずじゃ。その前にそのまま削れば、粉が落ちて回収が面倒くさいぞ」

「それじゃ、どうしたら?」

ビニールシートみたいなものはない。

「角が入るほどの、大きな鍋があるといいのじゃが」

「あるけど」

孤児院のみんなの料理を作るときに買った鍋だ。

わたしはクマボックスから大きな鍋を取り出し、床に置く。

「ちょうどいい大きさじゃのう。その中に氷竜の角を入れて、削ればいいじゃろう」

わたしは言われるままに氷竜の角を鍋の中に立てる。

わたしの身長よりも高い。

手を上げたぐらいだ。

わたしは昔に購入した鉄のナイフを取り出す。

そして、刃を当てて縦に削るようにスライドさせる。

削れて細かい粉が鍋の中に落ちる。

「どのくらい作ればいいか分からないんだよね?」

「普通は作る武器と同じぐらいにしておけばいいのだが、お主は規格外じゃからのう」

それを言われると、反論はできない。

神様に貰った力が、どのくらい影響するか判断できない。

「それじゃ、多めに見積もって刀二本分かな」

わたしの魔力量ってところが気になるので、多めに作っておくことにする。

作る武器の前後なら、2倍もあれば大丈夫なはずだ。

もし、削り粉が余ったら、マーネさんに持っていけばいい。きっと、薬に使ってくれるはずだ。

問題は、わたしの魔力が込められた粉が使えるかどうかだけど。

わたしは氷竜の角を削る作業をする。

氷竜の角にナイフを当て、上から下へ、ナイフを下ろす。

粉になって下に落ちる。

「その削ったものをさらに粉にする」

「面倒だね」

「物を作るのは大変なことじゃ。酒だってそうじゃ。どの酒も手間ひまかけて造っておる。だから、美味しい酒ができる」

そうだよね。

モリンさん、カリンさんが手間ひまかけてパンを作ってくれているから、美味しいパンが食べられる。

エレナ(ネリン)さんが時間をかけてケーキを作ってくれているから、美味しいケーキが食べられる。(※ネリンは書籍でケーキ担当)

アンズが丁寧に魚を捌き、美味しい料理を作ってくれる。

ゴルドさんもガザルさんも心を込めて武器や防具を作っている。

フィナも丁寧に解体をしている。

誰しもが手を抜いたりしていない。

それを考えると、自分の武器になる手間だ。

しっかりやらないと。

……そう思った時期がわたしにもあった。時間がかかる。削ったあと、粉末にする作業が残っている。

わたしはくまゆるとくまきゅうを召喚する。

「くまゆる、くまきゅう、手伝って」

「「くぅ~ん」」

氷竜の角を削る仕事はくまゆるとくまきゅうに任せ、わたしは氷竜の角を削ったものをすり鉢で粉末にすることにした。

「ちゃんと魔力を流しながら粉末にするのじゃぞ。ここが重要じゃ」

わたしは棒に魔力を込めながら削り取った氷竜の角を粉末にしていく。

「よくこんなの持っていたね」

「昔に使って、そのままアイテム袋に入っていただけじゃ。お主にやるから、今後も使うといい」

今後、使う予定はないけど。

絶対とは言えない。

ほぼ無限に入るクマボックスだ。邪魔にはならないので、ありがたくもらっておく。

「でも、この棒。なに?」

木の棒や金属でもない。なにか変わった素材だ。

「なにかの魔物素材だったと思うが、忘れた」

もしかすると、珍しい魔物の素材なのかもしれない。

「魔力を流しながら、粉末にするのじゃ。そうすることで、氷竜の粉末にお主の魔力が付着する」

それをミスリルに混ぜるわけか。

本当に、わたし専用の武器を作る準備をしているみたいで、楽しい。

わたしはくまゆるとくまきゅうが氷竜の角を削ったものを、魔力を込めながら粉末にしていく。

「お主、大丈夫か?」

「なにが?」

「この部屋、寒いぞ」

「寒い?」

クマ装備を着ているわたしには分からない。

「たぶん、そいつのせいじゃな」

カガリさんがすり鉢を見る。

よく見ると、すり鉢が冷えているように見える。

カガリさんが恐る恐る指を伸ばし、すり鉢に触れる。

そして、触れたと思った瞬間、引っ込める。

「こんなに冷たいのに、お主、よく触れられるのう」

「ああ、それはこの手袋のおかげだと思うよ」

クマ装備は耐熱、耐寒機能を持っている。

「でも、そんなに冷たいの?」

わたしは試しにクマの手袋を外し、すり鉢に触れてみる。

いや、触れようとしたけど、手に冷気が伝わってくる。

「下手に触れない方がいいじゃろう。流石に氷竜の角ってことじゃろう。それとお主の魔力が強いのかもしれぬ」

「ずっと冷たいまま?」

「経験上、しばらくすれば大丈夫なはずじゃ。魔力を込めて粉にしたものは放置しておけ」

わたしは言われるまま、氷竜の角を粉状にするとカガリさんが用意してくれた箱に入れる。

「この箱って」

この箱もすり鉢同様に普通の箱と違う。木や鉄ではない。

「特別製じゃ、それもお主にやろう」

「いいの?」

「酒の代金の代わりじゃ」

「絶対にこっちのほうが価値があるでしょう。お金、払うよ」

魔物の素材でできた箱だ。

貴重な可能性が高い。

「お主がドワーフの街に連れて行ってくれなかったら、酒は手に入らなかったから気にしないでいい」

そうだけど、お礼のつもりで連れて行って、お酒の代金を払ったのに。

「もし、気になると言うなら、また連れて行ってくれたらいい。それで十分じゃ」

まあ、毎日連れて行ってくれと言うわけじゃない。

たまになら、問題はない。

わたしはありがたく、珍しい箱を貰うことにした。

わたしはクマの手袋をすると、再開する。

カガリさんと話している間も、くまゆるとくまきゅうが氷竜の角を削ってくれていたので、溜まっている。

ちなみに、くまゆるとくまきゅうは器用にナイフを氷竜の角に当てて削ってくれている。

この作業はロージナさんの約束の昼まで続いた。