軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

944 クマさん、刀の材料を用意する

ドワーフの街に戻ってきたわたしたちはロージナさんのところに向かう。

店の中に入ると、ウィオラさんが店の奥でロージナさんが待っていると教えてくれる。

「来たか、こっちは準備ができているぞ」

「こっちも準備してきたよ」

わたしはミスリルの塊と氷竜の角の粉末が入った箱を出し、箱の蓋を開ける。

その箱の中をロージナさんが覗く

「これは氷竜の角か?」

「朝から、頑張って削ったんだよ」

そう言いながら、わたしはミスリルの塊を白クマパペットで掴む。

「たしか、ミスリルに魔力を流しながら、氷竜の角の粉を振りかけるんだよね」

「氷竜の角の粉末が吸い込まれていくはずじゃ」

わたしは白クマパペットで掴んだミスリルに魔力を流しながら、黒クマパペットで氷竜の角の粉末を振りかける。

すると、氷竜の角の粉末はミスリルの塊に吸い込まれていく。

雪が地面に落ちて、溶けて土に吸い込まれていくみたいだ。

「不思議な光景だな」

ロージナさんは凝視するように見ている。

どんどん氷竜の角の粉を振りかける。

どんどん氷竜の角の粉がミスリルの塊に吸い込まれていく。

「しばらくしたら、吸い込まれなくなるんだよね」

「そうじゃ。ミスリルの大きさ、使っている素材、使い手の魔力しだいで、吸い込まれる量は変わってくる」

とりあえず、刀に使用するミスリルの塊の2倍は用意してきたけど、どんどん減っていく。

半分減り、さらに減っていく。

「止まらないのう」

もう、ほとんど残っていない。

「もしかして、足らない?」

「お主の魔力が凄いのか、氷竜の角が凄いのか分からんが、足らなくなる可能性はあるじゃろう」

結局、クマハウスで作った氷竜の角の粉末は全て吸い込まれていった。

「これって、追加だよね?」

「お主が妥協するつもりがないならな」

もちろん、妥協するつもりはない。

「ロージナさん、氷竜の角を削る場所ある?」

ここでは少し狭い。

「例の角を出す場所だよな。裏に小さい庭がある。そこなら大丈夫だろう」

わたしたちは裏庭に移動する。

そこには花壇があり、小さい花が咲いている。

わたしは邪魔にならないように、氷竜の角を削る3点セットを出す。

鍋、すり鉢(棒付き)、箱。

そして、最後にくまゆるとくまきゅうを召喚する。

くまゆるとくまきゅうを合わせたら4点セット? と思いつつ。気にしない。

「くまゆる、くまきゅう、また手伝って」

「「くぅ〜ん」」

今朝同様にくまゆるとくまきゅうには氷竜の角を削ってもらい、わたしはすり鉢で粉末にする。

それをロージナさんが見ている。

「そのすり鉢はなんの素材でできているんだ?」

流石、鉱物を扱うだけのことはある。

普通のすり鉢でないことに気づいたみたいだ。

「カガリさんに貰ったんだけど、カガリさんも分からないみたい」

「昔のことで、忘れた」

わたしはひたすら魔力を込めながら粉末にする。

そして、ある程度溜まるとミスリルの塊に振りかける。

「これって、かなりの魔力を使うね」

氷竜の角の粉末にするときに魔力を込め、ミスリルにも魔力を込める。

「だから、簡単には作れぬ。お主だからできることだ」

「嬢ちゃん、もしも数日間かけてやった場合はどうなる?」

「できる。じゃが、考えてみよ。魔法使いならまだしも、普通の剣士が、どれほどの魔力を持っておる。魔力が少ないから剣を持つ。魔力が多いものは杖を持つ。そして、魔力を使い過ぎれば疲労も溜まる。そんな状態で冒険者として、剣士としての仕事ができると思うか」

魔力を使いすぎた経験があるけど疲労感があった。

魔力が少ないってことはすぐに疲労感がくるってことだ。

「もちろん、他者が魔力を込めることができる。だが、それは本人にとっての最高の一本の武器にはならんじゃろう」

「確かにそうだな。でも、他者の魔力でも強くなるんだろう」

「普通の武器に比べたら、強くなる。それを行うメリットがあるかどうかは、武器を作る職人次第じゃ」

「難しいところだな」

「だが、この世にはこやつのように魔力を持った剣士はいる」

ジュウベイさんとかだね。

シノブも短刀とはいえ、武器を使っている。

「欲しいと思う奴が居れば、作ってやればいい」

「そうだな。嬢ちゃん、教えてくれてありがとうな」

「その前に、お主の腕が悪ければ、良い素材もゴミとなるぞ」

「そうならないように頑張ろう」

2人が楽しそうに話している間も、わたしはひたすらに粉末にして、ミスリルの塊にふりかけた。

そして、しばらく作業を続けると、氷竜の角の粉は吸い込まれず床に落ちていった。

「終わったのか?」

のんびりとお茶を飲んでいるカガリさんが確認するように言う。

「かなり吸い込んだのう」

刀10本ほどの氷竜の角が吸い込まれた。

かなり氷竜の角が削られた。

「ミスリルの重さってどうなっているかな?」

「お主、自分でもっておるじゃろう」

「この手袋をしていると分からないから」

クマの手袋は重い物でも軽々と持てる。

だから、ミスリルの塊が重くなったとしても気づくことができない。

「俺も気になる。秤を持ってくる」

そう言って、ロージナさんが秤を持ってくる。

その秤の上にミスリルを載せて確認する。

「変わってないな」

ロージナさんのいうとおりに変わっていなかった。

「あんなに吸い込んだのに?」

粉とはいえ重みはある。

「魔力として吸い込まれたのかもしれぬ。妾にも分からん」

研究家がいるわけじゃないし、カガリさんが分からなかったら、誰にも分からない。

「でも、これで氷竜の角とわたしの魔力が込められたミスリルができたってことだね」

「そうじゃな。あとは鍛治職人の腕次第じゃ」

わたしはミスリルの塊をロージナさんに渡す。

「ロージナさん、お願いね」

「ああ、任せろ。だが、その前に確認だな」

わたしの身長や腕の長さから最適な刀の長さを決めることなった。

そして最終確認で武器が並んでいる店内に移動し、剣を持ってみて、最適解を決める。

それから、手の大きさを測ったりして握る柄の大きさも決める。

「こんなに柔らかい手で、よく武器を扱えるな」

ゴツゴツしたロージナさんの手がわたしの手を確認する。

「だから、手袋が必須なんだよ」

わたしはクマの手袋を嵌めながら言う。

「この手袋もいい素材で作られているな」

ガザルさんと同じことを言う。

武器を扱う職人だから、剣を握るときの手袋にも詳しいのかな。

「それで、どのくらいでできる?」

「はっきりした日数は分からない。数日はほしい」

「急いでいないから、大丈夫だよ」

別に魔王が現れたり、国が滅びる出来事が起きているわけじゃない。

急いで使う予定もない。

ただの趣味の刀作りだ。

「時間がかかってもいいから、最高の一本をお願いね」

「任せておけ」

わたしはお願いをすると邪魔にならないように店を出る。

「カガリさんも付き合ってくれてありがとうね」

細かい指示がなかったら、適当な刀になっていたかもしれない。

「気にせんでいい。妾にもやることがあったからついでじゃ」

そういえば、そんなことを昨日言っていたような。

「やることってなに? 付き合うけど」

カガリさんを残して帰るわけにはいかない。

「もちろん、最高の酒を手に入れることじゃよ」

「それって、生産数が少なくて購入ができなかったお酒?」

カガリさんが唯一購入できなかったお酒があった。

購入どころか試飲もできなかった。

「諦めたんじゃ」

「諦めるわけがなかろう。お主も付き合うなら、昨日、酒を購入した店に行くぞ」

カガリさんは歩き出す。

仕方なく、わたしも歩きだす。

「昨日の嬢ちゃんたちか」

昨日、お酒を購入した店に入ると、偶然にもダダンさんが店内にいた。

「まさか、酒を買いに来たとは言わないよな」

昨日の今日だ。少し、戸惑いの表情をしている。

「今日は別件じゃ。昨日言っていた最高の酒を造る職人がどこにいるか教えよ」

「いや、だから、直接行っても購入ができない」

「そんなの分からないじゃろう」

「はぁ」

ダダンさんは諦めた表情をする。

「少し待っていろ。案内してやる。おまえたちがいきなり行っても、迷惑がかかるだけだ」

ダダンさんは一度奥の部屋に入り、少しすると戻ってくる。

「行くぞ」

ダダンさんは歩きだす。

「これだけは約束しろ。無理やりに購入はするな。相手がダメと言ったら、素直に諦めろ」

「分かっておる。妾は子供じゃない。我が儘を言ったりはせぬ」

ダダンさんは横を歩くカガリさんを見る。

そして、小さくため息を吐く。

いや、どう見ても我が儘を言っている子供でしょう。

ただ、購入するのがお酒で、子供らしくはないけど。

「なんじゃ、そのなにか言いたそうな顔は」

「昨日のことが不思議で、夢でも見ていたと思っていた。でも、今日、またおまえさんたちを見て現実だと思ってな」

「ボケるには早いじゃろう」

「……とにかく、迷惑だけはかけるなよ。店に卸してくれなくなったら、困るからな」

「なら、妾たちで行くが」

「俺が教えたことが知られれば同じことだ。それなら、監視として、一緒に行ったほうがいい」

まあ、ダダンさんが一緒なら話も早く済む。

カガリさんも諦めるはずだ。

「それにしても、嬢ちゃんの格好は目立つな」

周りから、クマって単語がたくさん聞こえてくる。

「諦めたほうがいいぞ」

カガリさんの言葉にダダンさんは、なんとも言えない表情をする。

そんな視線を受けながら、わたしたちは大通りを抜け、街外れにやってくる。

そしてしばらく歩くと大きな家がある。

「ここなのか?」

「そうだ。さっきも言ったが、無理強いはするなよ」

「分かっておる。誠心誠意、心を込めてお願いするつもりじゃ」

カガリさんの言葉にダダンさんはあきらめ顔になる。

柵の中に入り、家の横を通り抜けると奥に建物がある。

酒蔵?

ダダンさんは慣れたようにドアを開けて中に入る。

勝手に入っていいの? とか、鍵がかかっていないの? と思いつつ、後に続いて建物の中に入る。

周囲を見る。

誰もいない。

詳しくはないけど、お酒を造る機械や道具らしきものが置いてある。

「静かじゃのう」

「ゴジール、いるか!」

建物の中にダダンさんの声が響く。

「今日は休みかのう?」

お酒の種類によって、造り方は違うと思うけど、毎日管理するものなのかな?