軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

931 クマさん、ジュウベイさんに会う

サタケさんが部屋から出て行き、部屋にはわたしとカガリさん、シノブとスオウ王の4人となる。

「あらためて礼を言う。2人のおかげで被害が大きくならなかった」

スオウ王が感謝の言葉を述べる。

「まあ、成り行きだったから、気にしないでいいよ」

「そうじゃな。成り行きじゃな」

サクラにクマフォンで呼ばれ、シノブの治療をしたのがきっかけだったけど、そのあとのことは自分から首を突っ込んだ。

カガリさんも過去の妖刀が盗まれたと知って、手を貸しただけだ。

どっちも成り行きだ。

「それで、ジュウベイさんと男はどうなるの?」

「ジュウベイの奴は報告義務を怠ったこと。部下を放置したこと。妖刀を回収したのに戻ってこなかったこと。いろいろとあるが厳重注意ぐらいだろう」

「甘いのう」

「妖刀に操られて人を殺していたら、処罰も重くなるが、実際は仕事をしなかっただけだ」

そう言われると、仕事をサボっただけだから、厳重注意ぐらいは正しいかも。

「表向きはそうだが、実際に襲われたのはユナだ。お前さんの言葉次第で、ジュウベイの処罰を重くすることもできる」

刀で斬りかかられたから、殺人未遂になるのかな?

「わたしが決めろってこと?」

「そういうつもりはない。ただ、国を救ってくれたユナの言葉を無視することができないってことだ」

「別にジュウベイさんの罪を重くしたいとは思わないから、厳重注意だけでいいよ」

ジュウベイさんを失うのは国にとっても損失だ。

それに、ジュウベイさんの罪を重くしろと言って、和の国との関係を壊したくない。

「感謝する。そういえば、もう一人の男は知り合いだったな」

「知り合いってほどじゃないよ。顔見知り程度だよ」

犯罪者の知り合いって言われると反応に困る。

「以前に戦ったことがあるだけ。あと過去に悪いことをしたってことを聞いたことがあるぐらいで、詳しいことは知らないよ」

エレローラさんから黒男の話を聞いた記憶があるけど、興味がなかったし、どうでもよかったので、話の内容は覚えていない。ただ、頭の片隅にあるのは悪いことをしていたってことぐらいだ。

「まあ、他の国での犯罪を、この国で問うことはできない」

「そうなの?」

「証拠がない。確認するのも面倒。別にこの国で大量殺人をしたわけではない。もし、していたら、他国に連絡をする以前に死刑だしな。なにより、今回の件は国の恥を晒すだけだから、他国に報告をするつもりもない」

城は国の顔だ。

その城の中に盗みに入られたと知られたら恥だ。

城の守りが弱いと自分から言っているようなものだ。

そうなると、黒男はこの国のルールで処罰されるみたいだ。

「それで、ユナとカガリに礼がしたい。なにか欲しいものはあるか? 可能なら用意する」

「酒じゃ。美味い酒が欲しい」

カガリさんは悩むこともなく言う。

「確認だが、その体で飲んでも大丈夫なのか?」

「大丈夫じゃ、すでに飲んでいる。スズランのせいで、量は制限されておるが」

されているんだ。

「分かった。手配してスズランに渡しておこう」

「どうして、スズランに渡す? 妾に渡せばよかろう」

「カガリの体調管理はスズランというか、代々カガリをお世話する者たちの役目だ」

「なんじゃと。だから、酒が少なかったのか」

「だが、カガリは街まで来て、飲んでいたからあまり意味はなかったそうだが。管理をしないよりはいいだろう」

確かに、誰かが管理するのと、しないでは変わってくる。

お菓子だけを食べるとか、毎日カップラーメンとか食べていたら、健康を悪くする。

カガリさんに誰もなにも言わなかったら、ずっとお酒を飲んでいそうだもんね。

「そういうわけだから、酒はスズランに渡しておく」

「納得はできぬが、分かった。じゃが、最高級の酒を用意するんじゃぞ」

カガリさんの褒美はお酒となった。

「それでユナはどうする?」

どうしようかな。

お金は必要はない。

欲しい食べ物は買えばいい。

できれば、お金を出しても手に入らない物。

一瞬、妖刀って言葉が頭を横切る。

イヤ、それは流石にダメだ。

う~ん。

「刀かな」

妖刀でなく、刀なら問題はない。

剣でもいいんだけど、なんか刀が欲しくなった。

できればカガリさんが持っているような名刀が欲しい。

「刀か、それなら、用意はできると思うが……」

「いや、刀が欲しいなら、ちゃんと一から作らせたほうがいい」

カガリさんが横から口を挟む。

「名刀は存在する。スオウが持っている刀は良い刀じゃろう。じゃが、それがユナに合うとは限らん、優秀な職人は人に合った刀を作る」

そうだ。ガザルさんがミスリルナイフを作ったときも、わたしの手を見て、わたしに合うようにナイフを作ってくれた。

「刀身の長さ、重さ、人にあったものがある。もちろん、お主なら刀に合わせることもできるじゃろう。でも、それはお主が刀に合わせているだけで、本来の実力ではなくなる。凡人が強くなるために名刀を使うのはいい。じゃが、お主は違う。お主に合った刀を作るほうがいい」

カガリさんにそう言われると、そうかもと思ってしまう。

ゲームだと店に並んでいる物を買ったり、宝箱から拾ったりして、普通に装備するだけだ。

漫画や小説でも、主人公が強い武器を手に入れて、普通に強くなる。

だから、そういうものと考えていた。

わたしに合わせる武器。

「うん、いいかも。じゃ、どこかで作ってもらおうかな」

「待て、それだと報酬を渡すことができないだろう」

「えっと、それじゃ、わたしの報酬はカガリさんにお酒を渡して」

「なんじゃと、いいのか」

わたしの言葉にスオウ王とカガリさんは驚く。

「カガリさんには、いろいろとお世話になっているからね」

温泉がある屋敷に住んで、管理もしている。

まあ、管理はスズランさんがしているんだと思うけど、カガリさんがいなかったら、管理はされていないはずだ。

それに、カガリさんには何度も助けてもらっているけど、お礼をしていない。

だからと言って、お礼に酒と言われても、お酒に詳しくないわたしには用意はできない。高級酒と言われても、わたしには判断ができない。

ならお酒に詳しい大人であるスオウ王に任せたほうがいい。

「そういうことだから、わたしのお礼はカガリさんにつけておいて」

「……分かった。ユナがそれでいいなら、ユナの褒美はカガリへの酒にしておこう」

国王は、少し呆れた様子だったけど、話は纏まった。

「それじゃ、妾たちは帰るとするかのう」

「待ってくださいっす」

わたしたちが帰ろうとすると黙って聞いていたシノブが声をあげる。

「わたしも頑張ったっすよ。報酬は?」

確かに、シノブは怪我をしたりしたけど、頑張った。

サクラの護衛もしてくれた。

「俸給はあげているだろう」

「特別報酬っす」

「冗談だ。休みがほしいと言っていたな。落ち着いたら休暇の手続きをしておく。だが、そんなに長くは無理だ。3日」

「少ないっす」

「5日」

「頑張ったっすよ。怪我もしたっすよ」

「10日」

「もう一声」

「そんなに休みたいなら、永眠するのはどうだ」

「冗談っす。10日間のお休み、嬉しいっす」

「急ぎの仕事が入らなかったら、延長も考慮しておく」

「最高の雇い主っす」

シノブは嬉しそうにする。

10日間って長いのかな?

学生だと夏休みとか一ヶ月あるけど。

10日間だとゴールデンウィークぐらい?

まあ、シノブが喜んでいるなら、わたしが口を出すことはない。

それぞれの報酬が決まり、今度こそ、帰ろうとしたとき、扉がノックされ、サタケさんが入ってきた。

少しばかり、話が長くなっていたみたいだ。

「どうした?」

「ジュウベイが目を覚ましました」

このタイミングで。

「そういうことだが、ユナたちはどうする? 会って行くか?」

気になるし、会っていこうかな。

「会うよ」

「なら、妾も付き合おう」

「もちろん、わたしも行くっすよ」

そんなわけで、わたしたちはジュウベイさんに会いに行くことになった。

ジュウベイさんは念の為ってことで病室で寝かされているってことだ。

個室だ。

ジュウベイさんが怪我をして気を失ったのは外聞が悪いってことで、個室になったそうだ

情報統制ってところかな。

表向きは妖刀に負けたことになると思う。

実際は妖刀の力に飲み込まれ、わたしと戦って負けた。

隊長が妖刀に飲み込まれたことも外聞が悪い。

さらには妖刀の力を使って、クマに負けた。

表沙汰にはしたくないんだと思う。

サタケさんと戦ったときも、人払いをしてから戦った。

部屋に入ると、ジュウベイさんが起き上がって身支度をしていた。

「ジュウベイ、寝ていないとダメだろう」

「陛下!? それと嬢ちゃんも」

わたしたちが部屋に入ってきたことにジュウベイさんが驚く。

「ユナ、すまなかった」

ジュウベイさんはわたしを見ると頭を下げる。

「それと戦ってくれて感謝する」

わたしは返答に困る。「気にしないでいいよ」は違うと思う。「わたしも楽しかったよ」は正しいけど、「また、戦おう」と言われても困る。

わたしが返答に困っているとサタケさんがジュウベイさんに近寄ると笑い出す。

「ジュウベイ、おまえもクマの嬢ちゃんに負けたみたいだな」

「おまえも?」

「俺も負けた」

「俺は妖刀の力を使って負けた」

「俺も妖刀を使って負けた」

ジュウベイさんとサタケさんはお互いの顔を見る。

「お互いに情けないな」

「ああ、情けない」

「勝てないからと言って、妖刀の力を借りるなんてな」

大人2人が笑い出す。

「ジュウベイさん。一つ確認だけど、どこまで覚えている?」

「最後にユナに殴られて、地面を転がったところまでだ」

どうやら、妖刀狂華に飲み込まれた記憶はないみたいだ。

もしかして覚えているかなと思ったけど、覚えていなかったみたいだ。

まあ、目は虚ろだったし、剣は振り回しているだけだった。

「なにかあったのか?」

「ううん、なにもないよ。ただ、雑に運んじゃったから」

覚えていないなら、話す必要はない。

「そんなことか、気を失った俺を運んでくれたことに感謝しても、怒ることはない」

ジュウベイさんは優しく微笑みながら言う。

わたしとの話が終わると国王がジュウベイさんに話しかける。

「それで、ジュウベイ。体のほうは大丈夫なのか?」

「はい、なんともありません」

ジュウベイさんは国王の前に来ると腰を下げ、膝を床に突く。

「今回のこと、どんな処罰も受けます」

「妖刀を2本回収したのだろう。なんの罰を受けるのだ?」

「妖刀を回収したのに戻らず、妖刀を使って、ユナに戦いを挑みました」

「まず、妖刀を回収したのに戻らなかった処罰は厳重注意ぐらいだな。ユナの件は本人に聞いてみればいいだろう」

国王はそう言って、わたしに目を向ける。

先ほど、わたしも厳重注意だけでいいと言った。

それは本心だ。罪を問うつもりはない。

「わたしとジュウベイさんは、ちょっと手合わせをしただけだよ。罪と言ったら、深夜に呼び出したことかな。寝ている時間だよ。普通、女の子をそんな時間に呼び出さないよね」

「すまない」

「でも、それだけだから、王様のほうからちゃんと注意しておいてね」

「そういうわけだ。ジュウベイの処罰は厳重注意だけだ」

「ありがとうございます」

ジュウベイさんは頭を下げる。