軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

894 カガリさん、報告する

「まさか、冒険者ギルド内に妖刀馬鉄を持っている者がいるとは思いませんでした」

馬車を操縦しているギルマスが口を開く。

「どうやら、品定めをしていたみたいじゃな」

「品定め?」

「名刀を探していたらしい。それで、妾が持つ刀に反応したみたいじゃのう」

妾の持つ刀は、それなりの刀じゃ。

妖刀にも引けをとらない。

妖刀馬鉄は、それが気にくわなかったのかもしれぬ。

馬車は男が倒れているところに到着する。

街外れで、陰に隠しておいたこともあって、誰にも見つかっていなかったみたいだ。

「あの男ですか?」

ギルマスは地面に転がっている男に近づく。

ギルマスを見て男は驚くが口は塞がれているため声は出せない。

「知っておる者か?」

「タケルって名前ぐらいですね。詳しいことはギルド職員のほうが知っているかと思います」

確かに冒険者と関わりを持つことが多いのは受付をする職員のほうじゃろう。

「それじゃ悪いが城に届けたあと、この男に関する情報を頼む」

「この男が犯人だと?」

「城との証言と照らし合わせるだけじゃよ。こやつが言っていた妖刀を拾ったって言葉に嘘はなかろう。じゃが、どこまで真実かは聞いてみないと分からんからのう」

「分かりました」

ギルマスは頷き、男を立たせると馬車に乗るように言う。

男はなにかを言いたそうにしていたが、なにも言うことができず馬車に乗せられる。

男と妾たちを乗せた馬車は城に向かう。

「それじゃ、男のことは頼む」

ギルマスに男を任せる。

「カガリ様は?」

「妾はスオウのところに行ってくる。男はサタケという者に引き渡せばいい」

冒険者ギルドのギルマスってこともあって、門番はすぐにサタケを呼んでくれることになった。

男のことはギルマスに任せ、妾はスオウのところに向かう。

ちなみにスオウから預かっているカードを見せたら、門番は引き止めることはしなかった。

階段を上がり、スオウの部屋の前までやってくる。

「カガリがドアから入ってくるなんて、雨でも降るのか?」

妾が珍しく、ドアから入ると嫌みを言われる。

「たまにはドアから入ることもある」

「できれば毎回ドアから入ってきてほしいものだ。それで、どうした?」

スオウは人払いさせると尋ねてくる。

「妖刀を回収した」

「それは本当か?」

アイテム袋から折れた妖刀をスオウの前にある机の上に出す。

「たぶん、妖刀馬鉄じゃろう」

「危険は?」

「一応、簡易的な封印は施してある」

スオウは恐る恐る刀に触れる。

でも、反応はない。

それから、妖刀馬鉄を回収した経緯を話す。

ユナと島に行き、刀を回収したこと。

冒険者ギルドに行き、ギルマスと話をしたこと。

冒険者ギルドを出ると後を付けられたこと。

それで人目を避けて、街外れで対峙したこと。

そして、戦いになり、妖刀を斬り、男を捕まえたこと。

ギルマスに頼み、城まで男を運んだこと。

「カガリが強いことは知っているが、あまり危険なことをするな」

スオウは心配そうに言う。

「いざとなれば、空を飛んで逃げるから大丈夫じゃ」

逃げるだけなら簡単なこと。

勝てはしないが負けもしない。

尻尾を巻いて逃げるとも言うが。

「男はサタケだったか、あやつに引き渡すように言っておいたが、あまり情報は期待しないほうがいい。どうやら妖刀は拾ったみたいじゃ」

妾の言葉にスオウはため息を吐く。

「じゃが、盗んだ犯人が妖刀を落としたなら、逃走経路が分かるかも知れぬ」

「そうだな。少しでも情報が得られればいいが」

どの情報がどこまで当てになるかは分からんが、なにもないよりはいいじゃろう。

それからしばらく妖刀のことを話していると「失礼します」と言ってドアが開き、男が入ってくる。

見覚えがある。

ユナと試合をしていた男じゃ。

「サタケ、妖刀の報告か?」

「そうですが……」

男が妾を見る。

「そちらの少女は、もしかして?」

「なんだ。知っているのか?」

「先ほど、冒険者ギルドのギルマスが妖刀を持っていた男を連れて来ました。男の取り調べをしましたが、妖刀は金色の髪をした少女が持って行ったと」

ああ、ギルマスに伝えるのを忘れていた。

まあ、男が話したなら隠せるものじゃない。

それに、目の前に妖刀がある。

「そうじゃ、妾じゃ。そして妖刀はそこにある」

スオウの前にある机を指さす。

男は驚いた顔をする。

「スオウ王、危険です」

男は妖刀を見ると慌ててスオウのところに駆け寄る。

「封印はされているから大丈夫だ」

スオウは証明するように妖刀馬鉄を手にする。

「たとえ、封印されているとしても、国の王が触ってはなりません」

「分かったから、そう怒るな」

スオウは妖刀から手を放す。

「妖刀馬鉄らしい。確認と強化した封印をしてくれ」

「分かりました」

男は布を出すと恐る恐る妖刀馬鉄を布で包む。

「それで、他に報告は?」

「男は妖刀に関しては拾ったこと以外分からないそうです」

「城から落ちていた場所の経路を重点的に確認させろ」

「すでに指示を出しました。ですが……」

「分かっている。時間が経っている。落ちていたとしても拾われているだろう。だが、なにかしら事件が起きている可能性がある」

殺人事件、斬りつけが起きていれば、妖刀が関わっている可能性は高い。

ただ、時間が経てば人は動く。

どこまで情報が集められるかは分からん。

「それで別件ですが、そのクマの格好した嬢ちゃんなのですが、同じように妖刀を持っていた男を連れてきました」

男の報告に妾とスオウは驚く。

森に逃げられた男か?

ユナのやつ、ちゃんと探し出して捕まえたらしい。

流石じゃのう。

「いつだ」

「ギルマスが男を連れて来る前です。それで、調べていましたら、ギルマスが男を連れてきたと連絡を受け」

「それで妖刀は?」

「残念ながら、妖刀には逃げられたそうです」

「逃げられた?」

スオウが怪訝そうな顔をする。

たぶん、妾も同じ顔をしている。

「男は捕まえたんだろう。仲間がいたのか?」

仲間がいたぐらいでユナが取り逃すとは思えんが。

あのクマたちもいる。

「その妖刀が空を飛んで逃げたそうです」

「……」

「……」

スオウと妾は男の報告に呆れる。

「ユナが言うには捕まえるのに魔法を使ったのが原因だったと。妖刀を持っていた男からも同様の証言が得られています」

「魔法を使ったのか?」

「森の中で、周囲には取り憑く者は誰もいなかったから、使ったそうです」

確かに、周囲に取り憑く相手がいなければ、取り憑く相手は自分だけだ。

そう思えば、魔法を使って倒しても問題ないと考える。

妾も使ったじゃろうし、実際に使った。

「それでは妖刀の回収はできなかったんだな」

「ユナが申し訳なさそうにしていました」

しかたない。

誰も妖刀が空を飛んで逃げるとは思っていない。

「しかし、ユナが捕まえた男も妖刀を拾ったのか」

それだと盗んだ者も手がかりもないってことか。

盗んだ犯人も分からない。

盗まれた妖刀の本数も分からない。

どこに妖刀があるかも分からない。

「面倒じゃのう」

「そうだな」

妾の呟きにスオウも頷く。

「それじゃ妾は行く。なにか新しい情報が入ったら、サクラに伝えてくれ」

「分かった」

「……サクラ様ですか?」

男が怪訝そうな顔をする。

「スオウ王、この少女はいったい……」

「カガリ、どうする?」

面倒だから妾に放り投げる。

妾も面倒くさい。

「口が堅いなら構わん。口が軽いようなら、教えんでいい。お主の判断に任せる」

「だそうだ。お前は口が堅いか」

「スオウ王が話すなと言うなら、死んでも口にしません」

「それじゃ、命令だ。ここで話したことは誰にも話してはならぬ。例外としてユナ、シノブ、サクラ、ジュウベイなら構わない」

「シノブとジュウベイも知っているのですか?」

「いろいろあってな」

「お前もリーネスの島の巫女については知っているな」

「代々大蛇の封印をしてきた巫女がいることは」

「その巫女が、目の前にいるカガリだ」

スオウの言葉に男は驚いたように妾を見る。

「こんな幼い女の子が?」

「詳しくは話せないが、成人した女性だ。大蛇との戦いでこんな姿になった」

「成人した女性」

驚いた顔がさらに驚く。

「あの島に一人で暮らし、魔物討伐もしてきた。そして、大蛇討伐にも貢献している」

「クマと狐様」

男が呟く。

「その狐様が、カガリだ。このことはごく僅かな者しか知らない」

男は驚いたが真面目な顔になる。

「申し訳ありませんでした。そんなこととは知らず」

男は腰を曲げて謝罪する。

「あのう、もしかしてあのクマの格好したユナも」

「それについては言えぬ」

妾のことを話すことができても、ユナとは契約をしているから話すことはできない。

「そんな幼い姿だが、カガリは誰よりも強い」

「わたしよりもですか?」

「魔法ありなら、誰も勝てん。勝てるのはユナぐらいだろうな」

「誰も勝てないのに、あのクマの少女であれば勝てる?」

「実際はどうだか分からん。俺も戦っているところを見たわけじゃないからな」

そう言って、スオウは妾を見る。

「あやつが本気を出したら、誰も勝てんよ」

「だそうだ」

ユナは強い。魔法だけでなく武器の扱いにも長けている。

妾が有利なのは、空を飛べることぐらいじゃろう。

それだって、ユナの魔法にかかれば無意味なこと。

魔法を飛ばせるし、巨大な竜巻も起こせる。

魔法が届かない位置に移動すれば、妾だって魔法は届かなくなる。

じゃから、戦いになれば逃げることはできても勝つことはできぬじゃろう。

妾のことを説明したことで、男の態度も変わり、情報はサクラに届けると約束してくれた。