軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

893 カガリさん、妖刀と戦う

ギルマスとの話を終える。

「なにか、分かったことがあったら頼む」

「どちらにお伝えすればいいですか?」

そうじゃった。

どこに住んでいるか伝えていないし、あの屋敷のことを言うわけにもいかない。

少し考える。

スオウのところが一番情報が集まってくるが、ギルマスとはいえ、国王と簡単に連絡を取り合うことはできない。

妾のところまで情報が来るまで時間がかかる。

そうなると、小さい少女の顔が浮かぶ。

ユナやシノブ、スオウからの情報も集まってくる。

サクラには悪いが伝言役になってもらうことにする。

「巫女屋敷にいるサクラと言う 女子(おなご) に伝えてくれ。その者は今回の情報も把握しておる」

「サクラと言うと、王女殿下の忘れ形見のサクラ様ですか?」

「知っておるのか?」

「王族の関係者のことぐらいは把握していますよ」

ギルマスの地位にいれば、そのぐらいの情報は把握しているってわけか。

「それで、カガリ様は、今はなにをなされているのですか?」

「なにをしているかと言われれば、妖刀探しじゃのう」

「いえ、そういうことではなく。現状の暮らしについてです。どちらにお住まいとか、生活についてです」

探りを入れにきたか。

ひょうひょうとしておるが、ギルマスじゃな。

「すまぬが、詳しいことは話せぬ」

面倒ごとを持ってこられても困るからのう。

「相変わらず、不思議な女性ですね。いつも男たちが近寄ってきただけはあります。我々、男性冒険者にとってはあなたは高嶺の花でしたからね」

「そうじゃったのか?」

「お酒を飲ませていたでしょう」

「たくさん、ごちそうになったのう」

冒険者たちから、タダ酒を奢ってもらったことがある。

「それは、下心があったからですよ」

「妾を酔い潰すことはできぬ」

「全員、翌日には財布が軽くなったことに泣いていましたね」

奢ってくれると言うから、飲んだまでじゃ。

じゃが、それも昔のこと、スオウやスズランの2人に止められた。

その代わりにお酒を持ってきてくれたので、冒険者ギルドには行かなくなった。

その代わりに酒と食べ物を出す店には顔を出すようになったが。

「懐かしいのう」

「それで、その姿は元に戻るのですか?」

「いつになるかは分からんが、戻る」

「なら、よかった」

ギルマスは安心した表情をする。

酒が影響していたら、元に戻らないかもしれぬが。

「それじゃ、妾は行く。情報が入ったら頼む」

「カガリ様もなにかありましたら、先ほどの女性、クオンに伝えていただければ、わたしに連絡が通るようにしておきますので」

妾はギルマスの部屋を後にする。

さて、どうしたものか。

妖刀に関する情報は得られなかった。

思ったより、妖刀の動きがない。

妖刀が動けば被害がでるからいいことじゃが、動きがなければ見つけることはできない。

「ジレンマじゃのう」

今後のことを考えながら冒険者ギルドから出ようとすると腰にぶら下がっている刀が震える。

気のせいじゃなかったか。

一度なら気のせい。

二度なら事実。

じゃが、刀に触れて確認するが震えていない。

視線を感じる。

妾を見ている者はいるが、そのような視線ではない。

突き刺すような視線。

誰じゃ。

周囲を見るが見つけることができない。

受付に目を向けると先ほど案内してくれた受付嬢が妾を見て、手を振っている。

ここで騒ぎを起こすことはできぬ。

妾は軽く手を上げて、冒険者ギルドを出る。

冒険者ギルドを出た妾は適当に街の中を歩く。

付いて来ておる。

先ほどの突き刺さるような視線を背中越しに感じる。

後ろを振り返ればいきなり襲いかかってくる可能性がある。

ここは人が多い。

人通りの少ない裏路地を通る。

じゃが目的はなんじゃ?

真っ当に生きていた妾が恨まれることはない。

刀に触れる。

考えられることは妖刀。

それが一番しっくりくる。

じゃが、妾が狙われる理由が分からん。

他の冒険者でなく、どうして妾なんじゃ?

……妖刀右京か。

……封印した妾のことを覚えていたのか。

まさか、冒険者ギルド内に妖刀の持ち主がいたとは灯台下暗しじゃな。

静かに妾の後を付いて来ている。

襲ってこないってことは、妾にとっても助かる。

ただ、いつ斬りかかられるか分からない、怖さがある。

じゃが、一定の距離から近づいてこない。

裏道を通り、城下街の外れにやってくる。

足を止め、ゆっくりと振り返る。

20歳ぐらいの若い男が立っている。

冒険者か?

「会話はできるか」

「ああ、できる」

どうやら、妖刀と同調した人間のようだ。

「妾に用か?」

「嬢ちゃんってよりは、その刀に用がある」

「この刀か?」

妾は持っている刀を見せる。

「正確には俺じゃなくて、こいつが用があるみたいだ」

男は腰にある刀に触れる。

あの鞘は妾が知っている鞘ではない。

妖刀右京ではない。

じゃが、妾でなく妾が持つ刀に用がある?

それじゃ、なんの妖刀じゃ?

「確認じゃが、その刀はどこで手に入れた?」

「落ちていたのを拾った」

男は素直に答える。

どうやら、妖刀を盗んだ者ではなかったみたいだ。

それが本当かどうかは分からぬが。

「それで、妾が持っている刀になんの用があるんじゃ」

「どうやら嬢ちゃんが持っている刀に興味があるらしい」

妾は自分が持つ刀を見る。

「この刀をどうするつもりじゃ」

「どうやら、壊したいらしい」

男は刀を持ちながら言う。

「悪いが、壊させるわけにはいかぬ。刀を破壊したいなら、実力でしてみるんじゃな」

妾は鞘から刀を抜く。

「まさか、こんな子供と戦えと。分かったよ」

男は刀と話しているようだ。

「嬢ちゃんが悪いんだぞ。そんな刀を持ち、俺の忠告にも逆らったんだからな」

男も鞘から刀を抜く。

妖刀なのは間違いないが妖刀右京ではない。

森に逃げられた妖刀でもない。

どうやら、別の妖刀に当たってしまったようじゃな。

先手必勝。

先に仕掛ける。

男に向かって走り出す。

男との間合いに入ると、小さい体をいかして下から上へ斬り上げる。

男は一歩下がりながら躱し、刀を振り下ろす。

右に躱し、篝火を放つ。

じゃが、篝火は切り捨てられる。

「まさか、その年齢で魔法を使うのか? それ以前にその動きはなんだ」

答える義務はない。

妾は間合いを詰め、斬りかかる。

男は避ける。

動きが遅い。

刀は一流でも、持ち手が三流。

宝の持ち腐れじゃな。

ジュウベイやユナが持っていたら厄介じゃったが、妖刀といえ、持ち手が三流なら、脅威にもならぬ。

当たらなければ、一流の刀も意味がない。

剣筋を読み、男の刀を避ける。

「なぜ、避けられる。当たらない」

それはお主が三流だからじゃよ。

駆け引きもない。囮もない。引っかけもない。

動きも遅い。鋭さもない。動きも単調。

ただ、斬れ味がいい武器をもっているだけじゃ。

「妖刀が泣いておるぞ」

「うるさい!」

「どちらの刀が上か確かめるんじゃったな」

刀を振り抜く。

「冗談だろう」

男の持つ刀が半分の長さになっていた。

男の持っていた刀を斬った。

角度、威力、さらには魔力を乗せた。

男の実力では角度の修正もできず、太刀筋のままに斬り落とした。

男が驚いている間に、さらに追い討ちをかける。

軽く飛び上がり、男を蹴り飛ばす。

蹴り飛ばされた男は地面に転がり、刀も手から離れ転がった。

「うぅ」

地面に倒れている男を無視して、妖刀に近寄る。

微かに動いている。

自分の刀を鞘に戻し、地面に転がっている妖刀を拾う。

妖刀から斬られた憎しみの感情が流れてくる。

自身が最強の刀であることを証明したい。

自分より強い刀は存在しない。

だから、斬られることなんてない。

現状を認められない感情。

「妖刀馬鉄か」

男が持っていた妖刀が判明した。

「人は成長する。よりいい刀を作るために日々精進し、製法も変わる。当時は最高の一振りじゃったかもしれぬ。じゃが、お主は古い」

妾が持っている刀より古い。

「じゃからと言って、自分を否定するな。お主を持った男の実力不足だったこともある」

妾が伝えると、悲しむ感情が流れ出し、おとなしくなった。

じゃが、妖刀じゃ。いつ他人の心の隙を狙い、操るかもしれぬので、簡易的な封印を施す。

そして、切り落とした刀も同様に簡易的に封印を施し、アイテム袋の中に入れる。

これで妖刀馬鉄の回収は完了じゃな。

妖刀右京ではなかったが、早々に1本回収できただけでもよしとしよう。

妾は妖刀を持っていた男に近づく。

蹴られた男は唸っている。

蹴られたぐらいで、情けない。

こんな男に拾われて、妖刀馬鉄も運がなかった。

「悪いが、もうしばらく付き合ってもらうぞ」

土魔法で縛り上げ、逃げられないようにすると、一度冒険者ギルドに戻り、受付嬢のところにやってくる。

「あら、カガリちゃん。どうしたの? 忘れ物?」

クオンが話しかけてくる。

カガリちゃんはやめてほしいが、今は時間がない。

「悪いが、もう一度、ギルマスに会いにきた」

ギルマスの言葉通りに受付嬢に話すと、すぐにギルマスに通された。

「どうしたのですか?」

「妖刀を持った男に襲われた」

「……!?」

「安心しろ。妖刀は回収して、男は捕まえた」

妾の言葉にギルマスは安堵の表情を浮かべる。

「それで悪いが、男から情報を得るために城に連れて行きたい。手配を頼む」

男が転がっているところを教えると、ギルマスはすぐに馬車を手配し、自ら御者席に座ってくれる。