軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

886 クマさん、カガリさんと合流する

「邪魔するぞ」

わたしたちがカガリさんの話をしていると、その本人がいきなり部屋に入ってきた。

「カガリさん(様)!」

「なんじゃ、誰しも妾の顔を見て驚くのは失礼じゃろう」

それは驚くよ。

今、話していた人物がいきなり現れるんだから。

「いや、どこに行っていたんすか、ユナが心配していたっすよ」

別に心配はしてない。

屋敷にいなかったから、気になっただけだ。

いつもいる場所にいる人がいないと、気になるものだ。

「城に行って、スオウに会ってきた」

「わたしたちも、さっきまで城に行って、スオウ王に会っていたよ」

「知っておる。お主と男の試合を見ていた」

サタケさんとの試合を見ていたの?

「それなら、声をかけてくれても」

「見知らぬ男がいたからのう。それに、上から見ていたから、説明が面倒じゃ」

見知らぬ男って、サタケさんのこと?

それに上から見ていた?

「カガリ様、また空を飛んで城に入ったのですか?」

サクラが呆れたように言う。

どうやら、常習犯だったみたいだ。

「正面から入るのは面倒だからのう。それにスオウの奴もなにも言わない」

「それは注意すれば、カガリ様が気軽に会いに来てくれなくなるからです」

スオウ王の立場からしたら、城を空け、離れた場所にいるカガリさんに会いに行くことは簡単にできないと思う。

もしかしたら不倫を疑われる可能性も。

今のカガリさんは幼女だけど、他の人からしたら、スオウ王が黙って城を抜け出すようにしか見えないだろうし。

そういえば奥さんに会ったことがないけど、いるのかな。

「スオウがなにも言わないなら、問題はなかろう」

国で一番偉い人がダメと言わなければ、サクラたちがダメとは言えないよね。

さらに言えば、わたしが止める権利も立場もない。

「それで、スオウ王には?」

「気になる妖刀があって、盗まれたか確認したかっただけじゃよ。シノブは3本以外知らなかったようじゃったからのう」

「確認って、保管室に入ったっすか? わたしたちは危険だから許可が下りなかったっすよ」

「部屋には危険な物があるからのう。じゃが、妾なら大丈夫じゃ」

確かに、カガリさんなら、危険な物があったとしても大丈夫そうだ。

だからスオウ王も許したんだと思う。

「ついでに部屋に残っていた妖刀には簡易的な封印をしてきた。近いうちに、盗まれた妖刀も判明するじゃろう」

「カガリさん、凄いね」

「まあ、だてに年はとっておらん」

「……お婆ちゃん」

バシッと叩かれるシノブ。

「でもこれで、盗まれた妖刀が判明すれば対処もしやすくなりますね」

サクラの言うとおりだ。

話を聞いた感じ、赤桜、風切、馬鉄、それぞれ妖刀には個性があるらしいから個性が分かっていれば戦いやすい。

「それで、どうだったの? そのカガリさんが気になる妖刀は?」

わたしは尋ねる。

「無かった。盗まれたと考えてよいじゃろう」

「その盗まれた妖刀って、なんすか?」

「……妖刀 右京(ウキョウ) 」

「名前は聞いたことがあるような」

「わたしも」

シノブもサクラも名前は知っているみたいだ。

「どんな妖刀なのですか?」

「過去の持ち主の技術を持つ刀じゃ」

「技術を持つ?」

少し分かりにくい。

「その刀を持つと、過去の持ち主の技術を扱えるようになるんじゃよ」

「扱えるって、つまり一流剣士の技が誰でも使えるってこと?」

「そうじゃ」

わたしの質問にカガリさんは頷く。

「なんっすか。その卑怯な刀は」

確かに卑怯だ。

刀を持っただけで、一流剣士の技が使えるなんて。

「誰もがその刀を欲しがった。血の滲むような鍛錬の末に身につけた偉人たちの技術が使えるようになるのじゃからな」

わたしも欲しいと思う。

つまり練習なしで、三段突きをしたり、燕返しができるってことだ。

チートだ。

「刀の奪い合いによって多くの血が流れ、また手にした者は技を試すのに多くの血を流した」

手に入れたら、使いたくなるのが人ってものだ。

わたしだって、初めて魔法が使えたときは楽しくて何度も使った。

わたしの場合はゲームだから人に攻撃しても怪我をしても治るし、死んでもすぐに復活する。

でも、現実で行えば本当に怪我をし、死ぬことになる。

「カガリさんが倒したの?」

関わりがあるなら、十分に有り得る。

「どうじゃろうな」

でもカガリさんは誤魔化すように言葉を濁す。

人には話したくないことはある。だから、これ以上は尋ねなかった。

「妖刀右京に出会ったら気を付けろ。手にした者が子供だろうと素人だろうと一流の剣士となる」

つまり、サクラやフィナが手にしても最強の剣士になるってことだ。

サクラとフィナが刀を使いこなしている姿を想像してみる。

カッコいい。

漫画やアニメの影響なのか、小さい剣士ってカッコいいよね。

でも、現実では危険だ。

漫画と現実では違う。

「どの妖刀も危険じゃが、右京は誰が持っても危険なことを覚えておいてくれ」

「了解っす」

「了解」

わたしとシノブは、それぞれ返事をする。

「だから、とくにユナ、お主は近づくな。お主は強い。お主の力が取り込まれたら手が付けられなくなる」

それって、わたしのことを評価してくれているってことだよね。

嬉しいけど、それって、わたしだけじゃないよね。

ジュウベイさんとかもそうだし。

「でも、そんなに危険なら、妖刀なんて処分すればいいのに」

たまに思う。危険なものは処分すればいいと思う。

だって、使い道のない危険なものは処分したほうがいい。

保管していても、今回のように盗まれたり、悪意を持った者が手にするかもしれない。

それなら、トラブルの元は初めから無いほうがいい。

「ユナは妖刀ってものを分かっていないっすね」

「妖刀は処分ができないのです」

わたしの疑問にシノブとサクラが答える。

「どういうこと?」

「折っても、元に戻るっす」

なにそれ、怖いんだけど。

「過去に、折って2箇所で保管していたことがあったっす。でも、知らないうちに保管室から妖刀は消え、知らないうちに誰かの手に渡っていたっす」

「調べた結果。折ってもお互いに引きつけ合い、元に戻るそうです。それがどんなに離れていても……」

「それじゃ、粉々にするとか、溶かすとか」

粉々にすれば、流石にくっつかないと思うし、火山の噴火口に入れれば復活もしないと思う。

ただ、噴火口は危険だから、命がけになる。

そんなわたしの考えにシノブとサクラは首を横に振る。

「粉々にしても元に戻るっす。溶かして、他の物に使うことも考えたそうっすが、呪われる噂もでて」

溶かすことはなくなったと。

「怖くなって海に捨てたり、山の中に埋めた事例もありますが、なぜか数年後には歴史上に現れます」

ホラーなんだけど。

「だから妖刀は国で管理することになったわけじゃ」

「誰も呪われたくないっすからね」

今まで、幽霊や呪いの類いは信じていなかったけど。

ここは異世界だ。なにがあるかわからない

魔法や魔法陣、魔物に妖精までいる。

呪いがあると言われても否定はできない。

わたしだって、呪われたくない。

それなら、国で管理したほうがいいのかもしれない。

盗まれないことが前提だけど。

「でも、それならどうやって、回収すればいいの?」

「妖刀にはそれぞれの想いが込められている。それを満足させ、押さえ込む精神力じゃな。欲望に負けず、心の意思が強ければ、その刀は使われない。封印することもできる。じゃが、人の心は強くない。強い武器を手に入れたら使いたくなるものじゃ」

それはなんとなく分かる。

わたしの現状がそれだ。

クマ装備が強すぎて手放せない。

この世界で手に入れた魔法を手放せと言われても簡単にできない。

それに別の考え方をすれば、お金だって力だ。

宝くじで10億円当たったお金を手放せと言われて、簡単に手放す人なんていない。

そのお金(力)が二度と手に入らないと思ったら、なおさらだ。

わたしだって、この世界に来て手に入れたクマ装備も魔法もお金も手放せない。

くまゆるとくまきゅうも力だから、手放せと言われても無理だ。

だから、いらないと思う人が手に入れるのが一番だけど。

そんな人は少ないと思う。

「妖刀を手にした者たちは、その強さに惹かれ、多くの者が封印をさせなかった」

「それじゃ、過去は」

「中には、いるんじゃよ。他人の力を頼らない。自分の力だけで上を目指す心の強い持ち主たちが」

「凄い人たちもいるっすね」

「なにを言っておる。お主の身近にもいるじゃろう。妾は伝え聞いたぞ、ジュウベイの奴が妖刀と戦い、手に入れたが、封印させたと」

「知らなかったっす」

「まあ、昔のことだから、お主は小娘じゃっただろう」

シノブの小さい頃。

いつから、ジュウベイさんと知り合いなんだろう。

でも、ジュウベイさん、妖刀と戦ったことがあったんだ。

妖刀の誘惑にも負けず、妖刀の回収に適した人だね。

今思うと、サタケさんの言葉と行動はわたしが妖刀に認めさせる力を持っているか確かめるためだったのかな。