軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

872 クマさん、大会を見守る その3

4回戦が始まる。

みんな真剣に盤面を見ている。

勝てばベスト4だ。

「結構、思っていたよりも年齢の差があるね」

12歳以下では、ほとんどが大きい子ばかりが勝ち残っている。

見た感じ10歳以下の子は勝ち残っていない。

13歳以上では10代から、年配の人まで勝ち残っている。

「年配の人が参加してくれるのは嬉しいけど、ここまで勝ち残るのは予想外だね」

個人的にリバーシって子供の遊びってイメージだ。

だから、年配の人が参加してくれるとは思っていなかった。

「あの人は老人会の人ね」

わたしの視線の先を見たミレーヌさんが答えてくれる。

「老人会?」

「年寄りの集まりよ。聞いた話だと、毎日のように年寄り仲間とリバーシをやっているという噂よ」

まるで、囲碁や将棋をする年寄りだね。

でも、毎日リバーシをやっているってことは、ノアや孤児院の子供たちよりも場数を踏んでいることになる。

「そんな集まりがあるんだね」

「普通の年寄りが集まってお喋りしたりするだけよ」

「ミレーヌさん、そんなところの情報まで知っているんだね」

商業ギルドって、そんな情報まで集めるのかな?

「ふふ、その老人会には引退した元商業ギルド職員もいるから、たまに話を聞いてるのよ。それにこういうところは情報が集まるから、バカにならないのよ。ちなみにユナちゃんの情報も聞いたことがあるわ」

「わたしの情報って?」

気になるんだけど。

「とは言っても誰でも知っている情報よ。クマの格好した女の子が街の中を歩いているとか、黒いクマと白いクマを連れているとか、冒険者ギルドで暴れたとか。クマの女の子がクマの店を開いたとか」

確かに誰でも知っている情報だ。

これで別の世界から来た情報まで知っていたら怖いけど、流石に無理だよね。

「たまに知らない情報も得ることができるから、バカにできないわよ」

まるで情報ギルドみたいだ。

もしかして、情報ギルドみたいな裏組織があるのかな?

実はミレーヌさんがクリモニアを牛耳る裏組織のボスとか?

流石に漫画や小説の読み過ぎだよね?

「なに?」

ミレーヌさんの笑顔に裏なんてないよね?

「なんでもないです」

笑って誤魔化し、会場に目を向ける。

年配の人がかなりの数、残っている。

予想外の優勝候補が出てきた。

そして、4回戦が終わる。

12歳以下では孤児院の子は負け、ノアは勝ち残りベスト4に入る。

「ノア姉ちゃん、勝った!」

「ノア様すごいです」

「ノアお姉様は、負けず嫌いですから」

対戦相手に恵まれたとしても、簡単に勝ち残れるわけではない。

ノアの実力だ。

フィナたちも勝ち残ってほしかったけど、こればかりはしかたない。

孤児院の子は女の子に負けていた。

13歳以上ではギルとレムおじさんも勝ちベスト8に入る。

「ギルの相手、ギルが怖いから、わざと負けていないよね?」

「それはないと思うわよ。人数も減ってきたから、対戦の近くにギルド職員が立っているわ。わざと負けるようなことをすれば、リアナに報告が入るはずだから」

そのリアナさんに報告が入らないってことは実力で勝っていることになる。

これは萎縮して実力が発揮できないのが濃厚かもしれない。

戦闘でも相手の体が大きかったり、顔が怖いと萎縮して実力が発揮ができないことがある。

そして、予想外と言うか、予想通りと言うか、年配の方が6人も残っている。

そして、5回戦が始まる。

勝てば決勝だ。

ノアの前に座るのは頭の良さそうな女の子だ。

確か、あの女の子は孤児院の子に勝った子だ。

「ノアールちゃん、相手が悪いわね」

「知っている子?」

「商家の子で、何度か会って話をしたことがあるけど、頭がいい子よ」

「商家の子……」

数字の計算が得意なら、頭の回転が速いかも。

それを言ったらノアだって勉強はしている。

でも、ノアの場合はいろいろな分野に渡っての勉強だ。勉強の内容が違う。

───ノア視点───

ミサに勝ち、順調に勝ち残ることができました。

シュリもフィナも負けていますので、勝ち残っているのはわたしだけです。

ここまで勝つことができましたが、少しでも間違えると負けます。

5回戦の相手はわたしと同じぐらいの女の子。

今まで対戦してきた子たちとは雰囲気が違います。

真っ直ぐに、わたしを見てきます。

「よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

お互いに挨拶をします。

わたしが先手です。

まずは、いつもどおりに置いていきます。

数手、置き終わります。

まだ、どっちが有利かは分かりません。

目の前の女の子は強いです。

わたしが置いてほしくないところに確実に置いていきます。

違うところに置いてくれれば、有利に進めることができますが、相手はミスをしてくれません。

ここに置けば、ここに置かれるはず。そしたら、ここに置いて……。

こっちに置けば、ここに置くはず。こっちに置く場合もあるけど、そうしたら、わたしが勝ちますが、こっちに置かれましたら、相手が優勢になる。

きっと、読んでいるはず。

どこに置けば。

予想外の場所に石を置いて、様子を見る?

そんなことをすれば、一手無駄にすることになります。

やっぱり、初めに考えたところに石を置き、挟んだ石を裏返しにします。

女の子は少し考え、的確に置いてほしくないところに石を置きます。

強いです。

膠着状態のまま後半にさしかかります。

端はお互いに取り合っていますけど、角を取られたら負けます。

もう、置く場所は限られています。

あそこに置いたら、ここに置かれる。そしたら、こっちに。

数手先まで読みます。

五分五分。どっちが勝つか、まだ分かりません。

わたしは石を置き、挟んだ場所を裏返していく。

わたしの置いた石を見て、女の子が「そこですか」と小さい声が聞こえた。

予想外の一手だったみたいです。

でも、女の子は迷わずに石を置きます。

わたしは我に返る。

そこですか?

わたしは女の子から聞こえた声の意味を考えた。

わたしは先を読む。

間違えました。

さっきの一手は間違いでした。もう一つのほうへ置くべきでした。

この先、どこに置いても勝てません。

可能性は相手がミスをすることです。

わたしは考えます。

ここの判断は難しいはず。

石を置く。

相手が置きたくなる箇所は2箇所。

あちらに置けばわたしが勝つ。あちらに置かれたら、相手の勝ちです。

でも、相手の女の子は二択を間違えませんでした。

計算が間違いじゃなければ負けます。

わたしが石を置くと、相手の女の子はすぐに石を置きます。

どうやら、相手にも勝ち筋が見えているみたいです。

でも、最後まで諦めません。

ミスをするかもしれません。

でも、彼女は間違えることはなかった。

盤面が全て埋まります。

場面を見ただけでは分かりませんが、2つ負けです。

「負けました」

相手の女の子が手を上げます。

係の人が来て、女の子にバッジを渡し、少し待つように言います。

同年代の女の子に負けました。

フィナとミサに負けたことは何度もあります。

でも、今日は今までの中で調子がよかった。

集中ができ、思考も早かった。

でも、負けました。

「ノアール様は、今まで対戦した中で一番、強かったです」

対戦した女の子がわたしの名前を言います。

「気付いていたのですか?」

変装が気付かれるとは思っていませんでした。

「わたしはタリオ商会の娘のエルテと言います。ノアール様が使われている髪の色を変える薬は、わたしの家がフォシュローゼ家に卸させていただきました」

この髪の色を変える薬は彼女の商家から購入したものだったのですね。

「よく気づきましたね」

「ノアール様は何度かお見かけしたことがあります。それと、商人は目を見るんです。目を見れば分かります」

たしかに目は変えていませんが、目を見ただけで分かるのでしょうか?

優秀な人は相手の目を見て、噓を言っているか見抜きます。

お父様にも大切な会話をするときは相手の目を見て、見極めるように言われています。

エルテはわたしと変わらない年齢で、それに近いことができているかもしれません。

「あなたはわたしと同じぐらいの年齢ですよね?」

「ノアール様より、一つ年上の12歳です」

「わたしの年齢も知っているのですね」

「この街の領主様のご令嬢の名前と年齢、ご尊顔は存じ上げています」

貴族でもないのに丁寧な口調。

商家の娘と言っても、貴族と関わりがある商家。ちゃんと教育が行き届いているんでしょう。

「わたしが領主の娘と知って、手加減をせずに対戦をしてくださり、ありがとうございます」

「それがノアール様の希望だと思いましたので」

髪の色を変えた理由も分かっているみたいです。

「次は負けませんよ」

「来年、あった場合。わたしは13歳なので、対戦はできませんね」

「そのときは、わたしが13歳以上のほうに参加します」

参加したいです。

「ふふ、そのときは、また勝たせていただきます」

負けたのは悔しいですが、会話をして悔しい気持ちが和らいでいきます。

「わたしに勝ったのですから、優勝してくださいね」

「はい。対戦したなかで、一番強かったのが、ノアール様だと証明してみせます」

力強く言います。

彼女が勝てば、わたしが2位ってことです。

「ちなみに言いますが、あなたより強い人はいますよ」

「誰ですか?」

「一番、強いのはくまゆるちゃんとくまきゅうちゃんです」

「くまゆるちゃんとくまきゅうちゃん? もしかして、ぬいぐるみの?」

「そうです。クマさんとバカにしてはダメです。くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんは、凄く強いんです。わたしは何度も対戦しましたが、一度も勝てませんでした」

ちょっと負けたのが悔しかったので、自慢げに言います。

「それが、本当なら対戦してみたいです」

エルテは目を輝かせながら言います。