軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

856 クマさん、王都へ帰る

コルボーは暴れ出そうとしたが、騎士に押さえつけられ、最後は項垂れるように膝をついた。

そしてコルボーは騎士によって部屋から連れ出されていく。

騒ぐ力は残っていないのか、素直に連れて行かれる。

最後の砦である親にも見放されたからか、諦めたんだと思う。

生気が抜けた感じに項垂れていた。

「終わったね」

「最後は、全部エレローラさんが片付けちゃったね」

わたしとマーネさんの出番はなかった。

「適材適所よ。エレローラだったから、スムーズに進んだだけ。もし、わたしとユナだけだったら、息子を守った可能性もあるわ」

確かに、それはありえる。

ミサが攫われたときもそうだったけど、エレローラさんがいたから、スムーズにことが進み、悪徳貴族を捕まえることができた。

そのことが分かっていたから、マーネさんはエレローラさんを呼んだんだと思う。

でも、前から思うけど、エレローラさんって何者なんだろう。

本当に謎の女性だ。

「これで、わたしの役目は終わりかしら?」

「エレローラ、ありがとう。助かったわ」

「どういたしまして」

「今度、お礼をするわ」

「お礼は欲しいけど。まずは、国王陛下への言い訳を一緒にしてほしいわ」

「あなた、国王陛下に黙って来たの?」

「緊急の手紙を寄越したのはマーネ様でしょう。だから、置き手紙を書いて、すぐに出発したんですよ」

「……他のことでお礼をするわ」

「ダメです。じゃないと、わたしが怒られます」

「……分かったわ」

マーネさんは諦めるようにエレローラさんの条件を呑んだ。

2人は国王陛下に叱られるのかな?

でも、今回は緊急事態だったし。

でも、違う人を寄越すってこともできただろうし。

判断の難しいところだ。

まあ、わたしには関係ないことだ。

「あのう、エレローラ様。息子は」

ああ、忘れていた。

解決したけど、まだお屋敷の中だ。

コルボーの両親もいる。

「この街で起きた犯罪だけど、薬師の犯罪だから、王都に連れて行きたいと思っているわ」

エレローラさんの代わりにマーネさんが答える。

「そういうことだけど、王都に連れて行っていいかしら」

「構いません。わたしたちから言うことはありません。しっかり処罰をしてください」

それから、エレローラさんが集めていた証人たちとも会うことになり、領主夫婦に怒っていた。

マーネさんには謝罪はしないでいいと言われていたが、領主夫婦は謝罪をし、フェリトン家から追放したこと。もう貴族ではないことを伝えた。

それから、薬師たちには薬草園を作る約束をすると、薬師たちは喜んでいた。

ただ、わたしは、なんでクマがいるんだ? みたいな目で見られていた。

そして、もう一つの問題。わたしたちを襲った男たちの処遇だ。

今回の件で、男たちは裏でいろいろと手を回していたらしい。

自分たちと同じ荒くれ者たちに、コルボーに頼まれても助けないように声をかけて回っていたとのこと。

どうやら、冒険者ギルドの部屋から抜け出して、そんなことをしていたらしい。

わたしたちを襲ったことを無かったことにしたとしても、過去に悪いことをしたことは無くならない。

それがコルボーの指示で行っていたとしてもだ。

依頼を受けて、悪事の手伝いをしていたのだから。

マーネさんは許しを請われたが、「わたしを襲ったことだけは無かったことにしてあげるという約束だったわよ」ときっぱり言い切った。

でも、可哀想だから代案を男たちに突きつける。

この街の警備隊の仕事をすること。

男たちは街の裏の部分も分かっているので、犯罪防止にも繋がる。

「俺たちが貴族の使いっ走りなんてできるか」とか言っていたけど、エレローラさんが、「それじゃ、死ぬまで地下現場で肉体労働ね」と言うと「やらせていただきます」と素直になった。

あとのことは領主の仕事なので、コルボーの父親に任せることになる。

「マーネさん、ユナちゃん、ありがとうね」

「助かった」

証言をしてくれたリディアさんとゼクトさんがお礼を言う。

「これで、わたしの役目は本当に終わったから、王都に帰るわ」

妹さんの病気もほぼ完治した。

他のマーネさんが診た病人も快方に向かっている。

あとはカボさんが診ることになっている。

「マーネさんに会えてよかったです」

「お礼なら、薬草でいいわよ。これから、冒険者ギルドに依頼するから、お願いね」

コルボーがいなくなったので、マーネさんがこの街の冒険者ギルドに依頼を出し、冒険者ギルドから指名依頼として、リディアさんたちに依頼することになっている。

「はい、任せてください」

「任せておけ」

これからは、稼いだお金はちゃんと自分たちの幸せのために使って欲しいものだ。

正当な仕事には、正当な報酬。

タダ働きほど、不幸なことはない。

「マーネ先生」

リディアさんと入れ替わるようにカボさんがやってくる。

「マーネ先生の仕事を見れて、勉強になった」

「わたしの調合を近くで見ることができたんだから、光栄に思いなさい。それと、今度来るまでには、ちゃんと掃除をしておくのよ」

「もう来ないでくれ」

「そうね。来ることはないと思うけど、ちゃんと薬師として、仕事をしているあなたたちを見ることができてよかったわ」

「……先生」

「これからも、ちゃんと薬師としての仕事をするのよ。コルボーのようになったらダメよ。もし、なったら、そのときに来るわ」

「それじゃ、二度と会うことはないから大丈夫だな」

マーネさんはカボさんの言葉に微笑む。

つまり、立派な薬師になるってことだ。

それから、他の薬師からもマーネさんへ感謝の言葉をもらった。

コルボーから解放されて嬉しそうだった。

「それで、コルボーはどうなるの?」

わたしは気になっていたことを尋ねる。

「わたしが殺されていたら、死刑は確実だったけど。生きているからね。薬師ギルドと話し合ってから、コルボーの処罰を決めることになると思うわ」

「怖いことを言わないでよ」

「実際に、コルボーは殺しはしていない。それに、わたしはコルボーに罰を与える権限は持っていない。できることは、薬師ギルドに言って、薬師の資格を剥奪させるぐらい」

「そういえば、薬師ギルドって」

「薬師を管理するギルドよ。加入するかどうかは自由だけど、加入していればいろいろな恩恵があるから、入っている薬師は多いわね。薬師不足の街に派遣させるとか、薬草の生息地の共有、新しい薬の効用、どんな病気が増えているかの情報とかね。薬師の間で共有されれば、対処も早くできるからね」

「この街にはないの?」

「ないわね。王都と人口が多い街ぐらいかしら? だから、コルボーは王都に連れて行かないといけないのよ」

なるほど、今回の件は薬師コルボーとして処罰をするとのことだ。

でも、コルボーが貴族の息子だったので、エレローラさんの出番となった。

そして、いろいろとあったけどわたしたちの役目は終わったので、王都に帰ることになった。

「待っていたわ」

「エレローラさん?」

街の外に出るとエレローラさんがいた。

その側には騎士と馬車もある。

「エレローラさん、その格好は?」

エレローラさんの服装がいつものドレス風の服ではない。

なんとなく乗馬用の服だ。

「せっかくだから、くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんに乗って、王都に帰ろうと思って」

エレローラさんがそう言うと、後ろにいた騎士が前に出る。

「マーネ様、どうかエレローラ様をお止めになってください。クマに乗って帰るとおっしゃって」

どうやら、ワガママを言って騎士を困らせているみたいだ。

「エレローラ、騎士たちを困らせちゃダメよ」

「それじゃ、マーネ様が馬車で帰って、わたしがくまゆるちゃんとくまきゅうちゃんに乗って帰ります」

「ダメよ。くまゆるとくまきゅうに乗って帰るのはわたし」

「マーネ様は、ずっと一緒だったんだから、譲ってくれてもいいかと」

「それとこれは別。ユナはわたしの護衛。つまり、くまゆるとくまきゅうもわたしと一緒ってことよ」

2人の言い争いが始まる。

騎士全員が困った表情をしている。

そして、なぜか、わたしを見る。

つまり、わたしに、どうにかしろってこと?

嫌なんだけど。

でも、止められるのはわたししかいないのは確かだ。

「2人とも、こんなところで騒がないで」

「ユナはどっち?」

「ユナちゃんはどっち?」

2人が同時にわたしを見る。

「えっと、騎士もいるし、2人で仲良く、馬車で帰れば……」

「「嫌よ」」

2人の声がハモった。

もう、どっちでもいいから、帰ろうよ。

結局、エレローラさんを止めることができず。エレローラさんとマーネさんが一緒に乗るってことで、話が終わった。

マーネさんは1人で乗るはずが、2人乗りになったから不満そうだったけど、エレローラさんは満足気だった。

騎士たちはゆっくりとコルボーを乗せた馬車と王都に帰ることになった。

そして、わたしたちを乗せたくまゆるとくまきゅうは、王都に向けて駆け出した

これは後の話になるけど、コルボーは薬師がいない遠くの村に派遣されることになった。

性格に難こそあるが、薬師としての腕はある。

なので3年間、村で薬師として仕事をすることになった。

真面目に3年間働けば、王都に戻って来られるとのこと。

殺人未遂で甘くない? と思ったけど。マーネさんは「死んでいないからいいのよ」とか「これから、コルボーが救う人が増えれば、殺人未遂はチャラよ」らしい。

更生してくれればいいけど、どうなんだろう。

まあ、それを気にするのはわたしの仕事じゃない。マーネさんであり、薬師ギルドの役目だ。