軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

854 クマさん、コルボーを問い詰める その2

マーネさんはコルボーを言葉で追い詰めていく。

「さらにあなたがあの兄妹に渡した薬も、わたしが預かっているし、証言もしてくれることになっているわ」

「一般人の言葉より、貴族の俺の言葉の方が説得力がある。それに俺は多くの病人を治してきた実績がある。病気を治した者たちが証言してくれるさ。俺の優秀さを」

わざと時間をかけて治療し、金を稼いだとしても、病気を治した事実は変わらない。

何より、患者や関係者は、その事実を知らない。

「あなたがあの兄妹同様にお金儲けをしている患者が現在進行形で数人いたら?」

マーネさんは机の上に、薬を並べていく。

「それは……」

「あなたが作った薬だから見覚えがあるでしょう。あなたが渡した患者の薬よ」

「なんで、それを……」

「あなたから薬を買うために盗賊まがいのことをしようとしていたのよ。だから、わたしがちゃんとした薬を作ってあげる代わりに、あなたの薬を貰ったわけ。彼らもいざとなれば証言してくれることになっているわ」

「たった数人だろう。俺が治してきた病人はその何倍も何十倍もいる」

年単位だと、すでに治っている患者のほうが多い。

治っていれば、その病気が長期的な病気なのか、簡単に治る病気なのか、知ることはできない。

「ああ、それなら大丈夫よ。他の薬師が証言してくれるから」

マーネさんの言葉にコルボーの目が大きく開く。

「あなた、敵を作りすぎよ。みんな、あなたを排除してくれるなら、証言してくれると言っていたわ。どんなことを頼まれたのか、薬を作る制限をされたとか、患者を回すように言われたとか、薬は作らないように言われたとか、たくさん聞いたわよ。だから、あなたが関わってきた患者のことも証言をしてくれるわ」

マーネさんはコルボーの逃げ道を塞いでいく。

わたしが護衛していない間に、色々と手を回していたみたいだ。

「ふ、ふざけるな!」

「怒っても無駄。あなたは終わり。素直に、刑罰を受けるといいわ」

そう言った瞬間、マーネさんは胸を押さえて机の上に倒れる。

「マーネさん!」

「やっと効いてきたみたいだな」

「……どく」

マーネさんが苦しそうにコルボーを見る。

「匂いで気づかれる可能性もあったから、遅効性の薬を使ったが、気付かれずに済んだみたいだな」

わたしはその言葉を聞いて、魔法で窓を吹っ飛ばす。

そして、部屋に充満していると思われる毒を外に放り出し、上空に向けて拡散させる。

毒が薄まればいいけど、今は考えている時間はなかった。

わたしはマーネさんの体を支える。

「なんで、貴様は大丈夫なんだ!」

どうやら、わたしのことは目に入っていなかったみたいだ。

たぶん、わたしには毒類は効かない。

妖精の眠り粉も効かなかった。

クマ装備が守ってくれているんだと思う。

わたしはマーネさんを抱きかかえ、治療魔法を使う。

マーネさんの顔色がよくなっていく。

「ユナ、あなた」

マーネさんが不思議そうにわたしを見ている。

「マーネさん、今は」

「そうね」

マーネさんは立ち上がる。

「なんで、立ち上がれる」

コルボーはマーネさんを驚いたように見ている。

それに答える義務はない。

「ユナ、悪いけど、捕まえてくれる。容疑は毒物を使い、わたしを殺そうとした」

「了解」

わたしはマーネさんから離れ、コルボーに近寄る。

「近寄るな!」

コルボーは逃げるように後ずさりするが、背中が壁にぶつかる。

これ以上は下がることはできない。

わたしとの距離が縮まる。

「来るな!」

わたしは一気に間合いを詰め、振りかぶった腕を振り抜く。

クマパンチがコルボーの腹にめり込み、コルボーはお腹を押さえながら床に倒れる。

「手加減はしてあげたよ」

手加減をしたと言っても、死なない程度だ。

コルボーはクマパンチを喰らって、立ち上がることもできず、お腹を押さえて苦しんでいる。

「殺人未遂で捕らえさせてもらうわ」

マーネさんはコルボーに近寄る。

「お、俺にこんなことして、親父が黙っていると思うのか」

「わたしだって、なにも考えずに来たわけじゃないわ。ちょうどいいタイミングね」

マーネさんは壊れた窓の外を見ながら言う。

わたしも外を見ると、エレローラさんと騎士っぽい人が数人いた。

マーネさんは外にいるエレローラさんに向かって「中に入って」と声をかける。

「到着早々だけど、状況を説明してくれますか?」

エレローラさんは頭を抱えながら尋ねる。

マーネさんは今までのいきさつを話す。

「国家の重要人物のマーネ様を殺そうとするなんて、国家への叛逆を疑われても仕方ないわよ」

「そんなつもりはない」

騎士に縛り上げられたコルボーは否定する。

どうやら、反論ができる程度には、お腹の痛みは引いてきたみたいだ。

「魔道具で、あなたの証言は録音済みよ。それに、わたしを殺そうとしたでしょう」

どうやら、今回の会話も録音済みだったみたいだ。

「エレローラ、悪いけど部屋の確認をお願い。どこかに毒があるかも知れないわ」

エレローラさんの指示で、騎士たちが部屋を確認すると、コルボー自身が液体の入った瓶を二つ持っていた。

二つとも、半分以上減っているが、液体は残っている。

「こっちは毒で、こっちは解毒剤かしら」

「見て分かるの?」

「分かるわよ」

「わたしにも見せて」

わたしはスキル、クマの観察眼を使う。

紫っぽい液体が「ライオ草の根を使った液体」と表示される。

青っぽい液体は「ボラ草を使った液体」と表示される。

どっちも液体だ。

しかも、知らない草の名前だ。

どっちが毒なのか、解毒剤か、表示してほしかった。

毒草は毒にも薬にもなるって言うし、一概に表示はできないのかな。

わたしはマーネさんに小瓶を返す。

「エレローラ、わたしはこの液体を調べるから、あとのことはお願いをしてもいい?」

「はい、こっちのことはわたしがやっておきます」

「ありがとう。貴族の息子相手だと、逃げられる可能性があったから、あなたの力が必要だったの」

「マーネ様にも証言はしてもらいますよ」

「ええ、そのぐらいは構わないわよ。あと、他にも証言をしてくれる人が何人かいるわ。この紙に書いておいたから、確認してちょうだい」

マーネさんは用意していた紙をエレローラさんに渡す。

エレローラさんは面倒くさそうな表情をするけど、紙を受け取る。

ここのことはエレローラさんに任せ、わたしたちは部屋を出て、あるところに向かう。

「それで、どうして、俺のところにいるんだ」

わたしたちがやってきたところで、カボさんが邪魔そうな目で見てくる。

カボさんには先ほどのことを簡単に説明する。

「それで、コルボーが持っていた毒を調べるためにね」

「毒! 他のところでやってくれ!」

毒と聞いて、カボさんは後ずさりをする。

「ちゃんと気を付けるから大丈夫よ」

マーネさんが手を翳すとスイカぐらいの大きさの水の玉が浮かび上がる。

水の玉かと思ったけど、中が空気だ。

見た目がシャボン玉だ。

そのシャボン玉はテーブルの上に乗る。

どうやら、そのシャボン玉の中で作業をするみたいだ。

マーネさんはコルボーが持っていた紫色の液体が入った小瓶をシャボン玉の中に入れる。

シャボン玉の中で小瓶の蓋を開け、液体を小皿に垂らす。

そして、すぐに小瓶の蓋をする。そして、先ほどの小皿に別の液体を垂らす。

すると色が変わる。

「ライオ草の根の毒ね」

「そんなことが分かるの」

「いろいろな種類の毒はあるけど、遅効性の毒は限られているからね」

そして、もう一つの小瓶に入っていた液体は解毒剤だった。

毒の確認を終えたわたしたちは冒険者ギルドに向かう。

「それじゃ、これで俺たちは自由だな」

「連絡先ぐらい、教えていきなさい」

「受付嬢の女が知っている」

それだけ言うと、コルボーの指示で襲った男たちは部屋からでていく。

そして、誰もいなくなるとマーネさんはわたしを見る。

「それでユナ。あなた、わたしになにをしたの」

覚えていたみたいだ。

「なにって?」

一応、誤魔化してみる。

「わたしの毒を治したでしょう。体が温かくなって、苦しさが抜けていったわ」

説明しないとダメみたいだ。

「魔法で治しただけだよ」

「魔法で治した? そんなことできるわけがないでしょう」

「神官だっけ? 神官だってできるでしょう」

そんなようなことを聞いたことがある。

「たまに勘違いしている人はいるみたいだけど、神官は病気を治せるわけじゃないわよ。神官は人が持っている治癒力を高めているだけ」

「…………」

「かすり傷などほっといても、時間が経てば治るでしょう。それを早めているだけよ。だから、神官は病気や毒は治せない」

「でも、病気も治すって聞いたことがあるよ」

「それは、薬を飲ませて、その薬の効果を早めているだけよ。だから、治ったように見えるだけ」

そうなの?

「本来、薬の効果がでるまで数時間、あるいは何日もかかるところの時間を短くできる。もっとも、それでも凄いことなんだけどね」

確かに、苦しむ時間が短くなるってことだけでも凄いことだ。

「だから、薬で治せないものや、本来の人の力で治せないものは神官の力では治すことはできないのよ」

「知らなかった」

「まあ、おおっぴらに言っていることじゃないから、一般の人からしたら、魔法で治しているように見えるからね」

「それじゃ、怪我も?」

「ええ、同じ事よ。傷薬を塗って、その効果を早めているだけ。優秀な神官なら、骨が折れても治せるわ」

骨は折れても時間が経てば治る。

つまり自然の力で治せるってことだ。

「だから、解毒剤を飲んでいないわたしの毒は魔法では治せないのよ」

「…………」

だから、尋ねてきていたのか。

「詳しくは話せないけど。わたしの魔法は毒を治療することができるの。その、だから、他の人には言わないでもらえたら……」

「言わないわよ。もし、あのときユナが治してくれなかったら、わたしは死んでいたかもしれない。命の恩人のユナが言わないでほしいと言うなら、誰にも言わないわ」

「ありがとう」