軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

783 クマさん、リーゼさんに話す

あの新しくやってきた氷竜を倒せば、全てが終わる。

でも、それには戦わないといけない。

「それで、あの氷竜は戻ってくるの?」

戻って来ないようだったら、倒しようがない。

「アヤツハワレノチイヲネラッテイルカラモドッテクル。ソレニコウゲキヲシタオヌシノコトモニガサヌダロウ」(※あやつは我の地位を狙っているから戻ってくる。それに攻撃をしたお主のことも逃がさぬだろう)

火の魔法を使ったわたしに怒っているってことだね。

逃げるのは簡単だけど、わたしのせいで無差別に攻撃をされても困る。

「ワレハモドル」(※我は戻る)

もっと詳しい話を聞きたかったのに氷竜は翼を広げると山頂に向かって飛び去っていく。

わたしはカガリさんに目を向ける。

「お主は本当に自分から厄介ごとに突っ込むのが好きじゃのう」

カガリさんが呆れるような表情をしている。

「別に好きじゃないよ」

「自分とは関係ない大蛇やスライムと戦ったりしておるじゃろう。今回は氷竜じゃ」

「話の流れ的に、そうなっただけだよ」

「普通は避けて進むものじゃ。好き好んで氷竜と戦う選択肢を選ぶのはお主ぐらいじゃ」

「それが一番良い、選択だからね」

「そうじゃ、全体を見れば、お主が氷竜を倒すのが一番良い選択じゃ。みんなが幸せになる。じゃが、お主だけが大変なだけで、お主になにも得がないじゃろう」

大蛇やスライム、さらに氷竜と戦うメリットはわたしにはない。

でも、戦うのは、わたしのためでもある。

「わたしの心が救われるよ」

「お主の心じゃと?」

「大蛇のときもそうだったけど、サクラを見捨てて自分だけ逃げて、和の国が滅んで、サクラが死んでいたら、自分が許せないし、見捨てて逃げたことが夢に出ると思うし」

悔やむと思う。

そう考えるのもクマ装備があるからだ。

神様から貰ったクマ装備があるんだから、自分にできることがあったはずと考えてしまう。

でも、クマ装備があっても敵わない敵だったら、逃げると思う。

「だからと言って、命を懸けるバカは、そうはいない」

バカなんて酷い。

「だが、そのバカの行動のおかげで妾たちは救われたんじゃがな」

一応、褒められているんだよね?

「それで、あの氷竜を倒すのはいいが、どうするのじゃ?」

いいんだ。

「とりあえず、リーゼさんたちに報告かな。そのあとに山頂の氷竜のところに行く感じ?」

氷竜と詳しい話をする前に移動されてしまった。

卵が心配だから、すぐに戻りたかったんだろうから、仕方ないけど。

わたしはくまゆるとくまきゅうを召喚すると、リーゼさんたちのところに戻る。

「ユナさん、カガリちゃん」

わたしたちが鉱山のところに戻ってくると、鉱山の入り口から様子を窺っていたリーゼさんたちが出てくる。

「二人とも大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫だよ」

「心配をかけたのう」

「よかった」

「それで、どうなったんだ?」

わたしは氷竜との会話を説明する。

「それじゃ、山頂にいた氷竜は偉い氷竜ってこと?」

「その氷竜の王の座を狙ってきたってことか?」

「卵を産んだんだから、女王様じゃ?」

「そんなのどちらでもいいだろう」

話を進ませるお爺ちゃんたち。

「それで、山頂にいた氷竜を助けることにしたんだけど」

わたしの言葉にリーゼさんたちが複雑な表情をする。

「お主たちの気持ちは分からんでもない。お主たち家族を、街を、凍らせた氷竜を助けると言っておるんじゃ。複雑な気持ちじゃろう。じゃが、これが一番のいい解決方法なんじゃ」

わたしが決めたことなのに、カガリさんが代わりに説明してくれる。

「それと、新しい氷竜は人間に対して敵対心をもっているみたいだから、新しい氷竜が勝つと、氷竜が人を襲うようになるかもしれないの」

「もしかして、山にいる氷竜が負ければいいとわたしたちが思っていると考えています?」

「家族を凍らせた氷竜を倒しに来た氷竜が現れたら、新しい氷竜を応援しない?」

敵の敵は味方って考え方もある。

まあ、今回はどっちも味方とは言えないけど、山頂にいる氷竜のほうがマシだと思う。

「ないと言えば、噓になります。でも、三年も経つと、山にいる氷竜が、わたしたちを殺そうと思って、凍らせたわけではないことは分かりました。ただ、山に棲みついただけ。それでわたしたちの街が凍ってしまっただけ」

「理不尽だが、氷竜は、そのような相手だ」

「なので、今のわたしたちは氷竜を倒したいとは思っていません」

リーゼさんの言葉にみんなが頷く。

「新しくやってきた氷竜が山にいる氷竜を倒し、新たにここに棲みつき、人を殺そうとすれば、最悪な状況だ」

「いつ死んでもよいと思っていたが、街が氷から解放されるなら、見てみたい。そのためには山にいる氷竜には勝ってもらわないとならない」

「だから、山にいる氷竜の赤ちゃんが産まれ、ここから立ち去ってくれるなら、それ以上の喜びはない」

「だから、気にしないでいい」

「氷竜のことはユナさんとカガリちゃんにお任せします」

口ではそう言っても、本心は分からない。

でも、リーゼさんたちの言葉には感謝だ。行動がしやすくなる。

「ありがとう。それじゃ、山にいる氷竜を守り、新しい氷竜を倒すってことで行動させてもらうよ」

リーゼさんたちには、なにが起きるか分からないので、ここから離れないようにしてもらい、なにか異変が起きたら、鉱山の中に隠れるようにお願いをする。

わたしとカガリさんは山頂に向かう。

「また、山を登ることになるとはのう」

「いつ新しい氷竜が襲ってくるか分からないから、山頂にいる氷竜の傍にいないとダメだし」

「そうじゃが」

「それに新しい氷竜の話も聞きたいしね」

情報は大切だ。

情報を制する者は世界を制すって言葉もあるし。

そんなわけで、くまゆるとくまきゅうに乗ったわたしとカガリさんは山頂にやってくる。

「キタカ」(※来たか)

氷竜は前回来たときと同じ場所に座っている。

あの体の下に卵があるんだと思う。

「話を聞きたいんだけど」

「ナニヲキキタイ」(※何を聞きたい)

「あの氷竜は言葉が通じるの? そもそも氷竜って、人の言葉を話せるの?」

「コトバガハナセルノハワレダケダ」(※言葉が話せるのは我だけだ)

そうなの?

それじゃ、他の氷竜は話せないんだ。

「妾からも確認じゃ。お主はあの氷竜から逃げて、ここにやってきたのか?」

「アノモノハ、ワレガタマゴヲウムノヲマッテイタ。ワレハミヲカクスバショヲサガシ、ココニヤッテキタ」(※あの者は、我が卵を産むのを待っていた。我は身を隠す場所を探し、ここにやってきた)

そのせいで、この街は氷漬けになった。

はた迷惑なことだ。

だけど、人だって、そこに住んでいる動物、鳥、虫を気にしないで、家を建てたり、開発をしている。

「それで、あの氷竜はいつやってくるか分かる?」

「ワレヲニガサナイ。チカイウチニクル」(※我を逃さない。近いうちにくる)

そうじゃないと困る。

一年後とか、ありえそうだったから怖い。

「ヒトノコヨ。ホントウニタタカウノカ?」(※人の子よ。本当に戦うのか?)

「戦いたくはないよ。でも、わたしも恨まれたみたいだから、無差別に人を攻撃をされても困るしね」

あの新しい氷竜は人を襲う。人と敵対するなら、戦うしかない。

「あなたは戦ってくれるの?」

「コガウマレルマデ、ココヲハナレルツモリハナイ」(※子が産まれるまで、ここを離れるつもりはない)

つまり、子が産まれるまでは戦ってくれるってことかな?

わたしとカガリさんは氷竜が現れるまで、クマハウスで休むことにした。

一応、氷竜にクマハウスの許可をもらう。

「カマワナイ」(※構わない)

許可をもらったので、クマハウスを出して中に入る。

「ふぅ、この家は暖かいのう」

「やっぱり、魔法を使っていても寒い?」

「魔法の暖かさと、家の中の暖かさは違うんじゃよ」

そうなんだ。

暖炉、暖房エアコン、石油ストーブ、こたつ。

確かに、それぞれ暖かさが違うから、そんな感じなのかもしれない。

わたしは和の国で購入した緑茶をカガリさんに出してあげる。

「熱いのう。でも、体の芯から温まる」

わたしも自分の分を用意して、飲む。

確かに体の芯から温まる。

「カガリさん、帰る?」

わたしは改めて確認する。

「なんじゃ、いきなり」

「今回のことはカガリさんは関係ないでしょう」

「それを言ったら、お主も関係ないじゃろう」

「わたしは、自己満足なだけだから」

あと夢見の問題がある。

神様から貰ったクマ装備があるのに、リーゼさんたちを見捨てたら、夢に出る。

「なら、妾も同様じゃ。じゃが、お主が妾がいるのが邪魔じゃと言うなら、今回のことはお主に任せるが……」

「そんなことはないよ。カガリさんが一緒にいてくれると助かるよ」

知識もそうだけど、戦闘面でも助かる。

「ただ、危険と思ったら、逃げてね」

「それはお主もじゃ。お主になにかあれば、サクラが悲しむからのう」

「うん」

「なにより、お主になにかあれば、妾が帰れなくなる」

確かに、わたしになにかあったらカガリさんは帰れなくなる。

わたしだって、命は大切だ。

のんびり、まったりが、わたしのモットーだ。

だから、死ぬ直前まで戦うつもりはない。