軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

777 クマさん、秘密を話す

わたしとカガリさんは飛び去った氷竜を見る。

「カガリさん、氷竜の言葉って、どう思う?」

「言葉通りなら、妾とお主の魔力に似たような人物がいたってことじゃろう。お主はともかく、妾にそんな人物がいるとは思えんが」

いや、わたしだっていないよ。

この世界で生まれたカガリさんの家族がいるほうが現実的だ。

妖狐の子供だったとか。

「そもそも、魔力って似る、似ないってあるの?」

「そんなこと知らん。妾は学者でも研究家でもない。さらに言えば、学者と研究家の知り合いもいない」

「でも、氷や雪に魔力があるって分かるんだよね」

「魔力の有り無しぐらいなら分かる。だが、区別はできん」

まあ、魔力の有無ぐらいなら分かるかもしれないけど、魔力に触れただけで、誰々の血筋の者かって分からないよね。

百歩譲って血液検査みたいな、魔力検査があれば分かるかもしれないけど。

カガリさんは尻尾を仕舞うと「戻るぞ」という。

このまま、ここにいても仕方ないので、リーゼさんたちがいるところに戻る。

「ユナさん! カガリちゃん!」

部屋に入っていくと、リーゼさんが駆け寄ってくる。

「2人とも大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ」

「それで、外になにがいたんだ?」

「凄い音がして、地面が揺れた」

お爺ちゃんたちが尋ねてくる。

氷竜が降りてきたときに、地面が揺れたみたいだ。

わたしはカガリさんを見る。

「噓を言って、誤魔化しても仕方ないじゃろう。外に出れば気付かれる」

馬小屋も壊され、着地したときにできた穴もある。

「氷竜がいたよ」

「氷竜ですか!?」

「大丈夫だったのですか?」

騒ぎが大きくなる。

「もういないから、安心せよ」

「でも、氷竜が現れたときに、馬小屋が壊されちゃったけど」

自分が壊したわけじゃないけど、申し訳ないように感じてしまう。

「そうですか。でも、2人が無事でよかったです。それにユナさんのおかげで、馬は無事です。小屋なら他の建物を使えばいいことです」

鉱山の道具を仕舞う小屋や休憩する小屋、話し合う小屋など、他にもあるそうだ。

確かに、いくつか小屋があったね。

「お主たちに確認じゃ、氷竜がここに来たことは?」

「飛んでいるところを見たことがあるだけです」

「それに氷竜を見たら、隠れますので」

それはそうだ。

人を食べるかどうか知らないけど、氷竜に襲われる可能性がある。

身は隠すよね。

もし、現実の世界で恐竜が現れたら、わたしだって見つからないように隠れる。

そして、みんなも落ち着き、食事をして寝ることになった。

「ユナさんたちは、どこで寝ますか?」

ベッドはリーゼさんたちの分しかない。

今までに人が来たことなんてなかったんだから、仕方ないことだ。

「わたしたちは外で寝るから大丈夫だよ」

わたしはクマハウスのことを話し、リーゼさんたちも街で見たクマハウスの説明をお爺ちゃんたちにしてくれる。

クマの風呂を作ったこともあったので、信用してくれた。と言っても、みんなクマハウスに興味があったようで、鉱山の外までついてきた。

吹雪は弱くなっており、朝には止むと思う。

わたしは鉱山の入り口にクマハウスを出すと驚かれる。

一応、みんなにクマハウスで寝るか尋ねたけど、丁重に断られた。

「それで、お主は彼らを、どうするつもりじゃ?」

クマハウスに入り、椅子に座るカガリさんが尋ねてくる。

「う〜ん、どうしようか。ここから離れるとしてもリーゼさんがどうするか分からないし。このままみんなをほっといていいのかなと言う気持ちもあるよ」

「お主の気持ちは分からんでもない。じゃが、出来ることとできないことはある」

それは分かっている。

クマ装備があったとしても、神様になったわけじゃない。

「それに、氷竜が言っていたことも気になるし。カガリさんは気にならないの?」

「気にならんと言えば噓になる。じゃが、何百年も生きていれば、親離れは終わっておる。家族が恋しいとは思わん。妾は周りにいる者たちが幸せなら、それ以上望むことはない」

カガリさんが、いつの間にか用意したお酒を出し、一口飲む。

落ち着いている姿は、まるで大人のように見える。

いや、カガリさんは大人だよ。

「そういうお主は気になっているのか?」

「正直に言えば、わたしも気になっているよ。普通に考えて、わたしの血縁者はいないからね」

「そうなのか? 親戚とか、遠い血縁者かも知れぬぞ」

親戚どころか、遠い血縁者もこの世界にはいないはず。

神様が両親をこの世界に呼ぶとは思えない。考えられるのは親戚や遠い血縁者。そこまで行くと、絶対とは言えない。

神様が、わたしの知らないところでなにをやっているかなんて知る由もない。

そのことをカガリさんに話すか悩む。

わたしは少し考え、クマの魔法陣をテーブルの上に作り出す。

「なんじゃ、これは契約の魔法陣か?」

一度、カガリさんには見せているので、すぐにクマの契約の魔法陣と理解する。

「つまり、話せないことか? なら、無理に話さなくてもよい。話せないこと、話したくないこと、誰しもが持っているものじゃ」

「そうなんだけど」

「妾がそれを聞いて、妾に解決できることなのか?」

わたしは首を横に振る。

「妾が聞いて、お主が救われるのか?」

「…………」

「もちろん、話すだけでも、気持ちに整理ができ、スッキリすることもある。それでよければ、妾は話を聞こう」

「話したら、カガリさんに迷惑がかかるかもよ」

「命に関わることか?」

わたしは首を横に振る。

「危険なことはないよ。ただ、ありえないことだから」

「お主は、大蛇という妾の闇を取り払ってくれたじゃろう。聞いても危険がないなら、恩返しにもならん」

くまゆるとくまきゅうを見ると、心配そうにわたしの左右にやってくる。

「それじゃ、話を聞いてくれる?」

「ああ」

わたしは話した。

こことは別の世界から来たこと。

神様と名乗る者に、この世界に連れて来られたこと。

クマの力を授かったこと。

そして、元の世界に帰る方法はないこと。

カガリさんは黙って聞いている。

「こことは違う世界とは信じられぬのう。それに神様……」

「やっぱり、信じられないよね」

「そういうわけではない。世界には信じられないことはある。なにより、妾の存在自体が、信じられないことじゃろう」

それはそうだけど。

「だから、妾のことは信じられる者にしか話していないし、話した者にも口止めをさせておる。だから、お主が今まで黙っていたことも理解できる」

言いふらしてもいいことではない。

変な目で見られる。頭がおかしいと思われる。もしかしたら、恐がられるかもしれない。

もし、フィナに変な目で見られ、頭がおかしいと思われ、恐がられでもしたら、落ち込むどころの話じゃない。

「でも、神様から授かったクマか。それじゃ、このクマはサクラの言っていたとおりに神獣になるのか?」

カガリさんはくまゆるとくまきゅうに目を向ける。

「「くぅ~ん」」

くまゆるとくまきゅうは自慢気に鳴く。

「とても、そんなふうには見えぬが」

「「くぅ~ん」」

今度は抗議するように鳴く。

「ほら、怒らないの。別に自分たちも神獣とは思っていないでしょう」

「「くぅ~ん」」

くまゆるとくまきゅうはすり寄ってくるので、体を撫でてあげる。

「だから、この世界にわたしの血縁者はいないよ」

「お主が氷竜の言葉に納得していない理由は分かった」

「それで、どう思う?」

「その神様が、お主の血縁者を呼んだかもとしか分からん。そもそも、神様なんているかも分からない存在じゃ」

「そんなこと言っていいの?」

「人は神に願いを言う。だが、その願いを叶えてくれることはない。妾が何度、神に祈ったか」

そうだよね。大蛇に襲われたとき、神にもすがったかもしれない。

でも、多くの人が亡くなった。

「神がいれば、皆が笑って暮らせる世界を作ってほしいものじゃ」

カガリさんが、何度も願ってきた願いかもしれない。

「いや、お主が神の使いなら、妾の願いが叶ったことになるのか?」

カガリさんの願い。

大蛇から国を救ってほしい。

わたしが大蛇を倒したので、間違ってはいない。

でも、これだけは否定したい。

「別に、わたしは神の使いじゃないから」

「まあ、そのクマ同様に、神の使いには見えんのう。どちらかと言うとクマの使いじゃろう」

クマ装備から始まり、クマ魔法、召喚獣のくまゆるとくまきゅうだ。クマの使いと言われても否定はできない。

「本当に、神様がいるなら、会ってみたいものじゃ。そして、一言文句も言ってやりたいわい」

「わたしも会ったことがないんだよね」

「そうなのか?」

「神様って名乗る者から、一方的な手紙を貰うだけだからね」

「それを聞くと、サクラたちより、お主のほうが巫女や神官っぽいのう」

確かに言われてみると、神様から神託を聞いているみたいなものだ。

でも、神託っていうよりは、出来事が終わってからの 手紙(メール) が多い。

「それじゃ、お主の強さの秘密は神様からもらった力なのか?」

「戦いの技術は自分のものだと思っているよ」

現実の世界では魔力は持っていなかったけど、ゲームの中では魔力は持っていた。

戦い方もゲームの中で学んだ。

カガリさんにゲームのことを説明しても理解はできないと思うので、別の世界ってことで話す。

「わたしが生まれた世界以外にも、他の世界があって、そこでは魔法と剣を使っていたんだよ」

「他にも別の世界があるのか?」

「あると言えば、あるのかな」

ゲームはすごくリアルだったから、別の世界と言ってもいいよね。

「そこでは魔法は使えるけど、自分の世界に戻ると魔法は使えないんだよ」

「不思議な世界じゃのう」

「その、別の世界では、ここと同じように魔物も現れるし、人とも戦ったよ」

「なるほどな。力を与えられても、それを使う手段をしらなければ、使うことはできぬ。もし、サクラに魔力や剣を与えても、戦えぬじゃろう」

なんでも、そうだけど、与えられたからと言っても、使えるとは限らない。

飛行機やヘリコプターを与えられても操縦はできない。

ナイフを与えられたからと言って、魔物の解体ができるわけではない。

ゲームだって、与えられたからといって、すぐに上手にできるわけじゃない。

何度も失敗を繰り返し、学んでいく。

なんでもそうだけど、経験が必要だ。

「お主の強さの秘密を少しばかり知れた」

カガリさんは納得した表情で頷いている。

そして、カガリさんには、今日話したことについてクマの契約魔法を行った。

カガリさんのことを信用してないわけじゃないけど、酒に酔って話されても困るからね。

カガリさんのお酒好きだけは、治りそうもない。

さっきからずっと飲んでいるけど、元の大人の姿に戻れなくてもしらないよ。