軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

778 クマさん、雪かきを手伝う

翌朝、くまゆるとくまきゅうに起こされる。

どうやら、魔物は現れなかったみたいだ。

一応探知スキルで確認すると、探知内ギリギリにアイスゴーレムの反応がある。

あとのことを考えると倒したほうがいいかもしれない。

寝ているカガリさんを見ると、わたし同様にくまゆるとくまきゅうに起こされているが「眠い」とか言って、なかなか起きようとしなかった。

でも、最後は顔の上にくまゆるに乗っかられて、起きることになった。

「それで、今日はどうするつもりじゃ」

カガリさんが着替えをしながら尋ねてくる。

「少し、考えたんだけど、氷竜は会話ができるよね」

「あの一方的に話すことを会話と言っていいのか分からんが、人の言葉を理解していることだけは確かじゃ」

「あと、襲ってこなかったってことは、わたしたちに敵対心はないってことだよね」

「氷竜からしたら、敵にもならんと思われたのかもしれぬ」

「敵と思っていないなら、対話も交渉の余地もあるってことでしょう。だから、ここから出て行ってほしいと頼めないかなと思って」

言葉が理解できるなら、対話だってできるはずだ。

「そうじゃが、気に障れば踏み潰してくるぞ」

カガリさんの言っていることは理解できる。

気にくわないことをしたり、言ったりすれば、攻撃を仕掛けてくるかもしれない。

「別に戦いに行くわけじゃないし、無理矢理に追い出そうとするわけじゃないよ」

戦いで追い出すだけが、解決方法じゃない。

「とりあえず、氷竜と話してみようと思うよ」

どっちにしても、行動しなければ、なにも解決はしない。

「だから、カガリさんは……」

和の国に戻っていて、と言葉を続けようとするよりも、カガリさんが口を開く。

「妾も一緒に行こう」

「危ないよ」

「小娘一人、行かせられん。それに乗りかかった船じゃ。お主を置いて船を途中で降りるようなことはせぬ。最後まで付き合う」

小娘って言うけど、見た目で言えば、カガリさんの方が小さいからね。

でも、カガリさんの気持ちは嬉しいので、ありがたくもらっておくことにする。

今日の予定も決まり、クマハウスの外に出ると、リーゼさんたちが雪かきしていた。

「ユナさん、カガリちゃん、おはようございます」

「おはよう。雪かき?」

「鉱山と小屋の周辺ぐらいはしておかないと不便なので」

雪は膝ほどには積もっていないが、都内育ちのわたしからしたら、かなり積もっている。

「手伝うよ」

リーゼさんに氷竜のことを話そうと思ったが、あとにして雪かきをすることにする。

「妾も手伝おう」

カガリさんも申し出てくれる。

わたしとカガリさんは火の魔法を使って、雪を溶かしていく。

「どんどん、雪が溶けていきます」

「俺たちの出番はないな」

「でも、地面が水で大変なことになっておるな」

確かに、雪が溶けて、地面は水たまりがたくさんできて、ぐちゃぐちゃになっている。

「時間が経てば無くなりますよ。それよりも、雪があるほうが大変です」

リーゼさんの言うとおりだ。テレビで大雪のニュースを見るけど大変だ。道は歩けないし、車は動かない。家の屋根の雪かきもある。一般人からしたら、雪は邪魔だと思う。喜ぶのはスキー場とかぐらいだと思う。

とにかく、今は雪を溶かすことに専念して、わたしとカガリさんは雪を溶かしていく。

そして、一時間もしないうちに鉱山周辺の雪は無くなる。その代償として地面には水たまりができあがった。

この水たまりも、凍るかもしれないが、雪よりはいいはずだ。

雪かきで汗をかいたわたしたち3人はお風呂に入る。

管理人のおばさんと漁師のお嫁さんは食事の準備をするからと言って、お風呂には入らなかった。

くまゆるとくまきゅうにはなにかあった場合に備えて、見張りをお願いしてある。

「ユナさん、カガリちゃん、ありがとうございます。助かりました」

「役に立てたならよかったよ」

「それで、ユナさんとカガリちゃんは、いつ、ここを発つのですか?」

「まだ、決めていないよ」

「そうなんですね」

リーゼさんは、少し安堵した表情を浮かべたと思うと、なにか言いたそうに、チラチラとわたしたちのほうを見てくる。

「なにかあったの?」

「相談くらいなら聞くぞ」

「もちろん、できることとできないことがあるけどね」

わたしたちが声をかけると、リーゼさんは少し考えたと思うと、口を開く。

「……みんながわたしに、ここから出ていくように言うんです」

昨日の夜に、わたしとカガリさんがクマハウスの中で話し合っていたように、リーゼさんたちも話をしていたらしい。

みんなは、リーゼさんにここを出て、幸せになってほしいと思っているらしい。

「みんなの気持ちは嬉しいです。でも、みんなを残して、わたしだけ、ここを離れるなんて」

「それは仕方ないことじゃろう」

「カガリちゃん?」

「お主は、みんなに大切にされておる。それは、側から見ていても分かる。お主のことを孫、我が子のようにみんなが思っているのじゃろう。そんな子の幸せを願うのは、大人として当たり前のことじゃ」

「ふふ、カガリちゃんって、本当に不思議な女の子です。わたしより、ずっと大人みたいです」

はい、正解です。お婆ちゃんです。

わたしがそう心で思った瞬間、カガリさんから顔にお湯をかけられる。

「何度も言うが、お主は顔に出過ぎじゃ」

そんなに顔に出ていたかな。ポーカーフェイスは上手だと思っていたんだけど。

「それに、出て行くのは、やることをやってからじゃ」

カガリさんが意味深な表情でわたしに目を向ける。

「そうだね。みんなに相談って言うか、話があるんだけど」

「相談ですか……」

そして、お風呂から出たわたしたちは管理人のおばさんたちが作ってくれた昼食を食べるときに話すことになった。

「それで、ユナさん。わたしたちに話ってなんですか?」

食事が始まると、余程気になっていたのか、リーゼさんが尋ねてくる。

「ちょっと、氷竜に会ってこようと思って」

みんなの食事をする手が止まる。

「ユナさん、氷竜に会うって……」

「まだ、みんなに氷竜について話していないことがあるんだけど。昨日、会った氷竜、話しかけてきたんだよ」

「氷竜が言葉を話したってことですか?」

「うん、一方的にだけどね」

「信じられん」

誰しもが信じられない顔をする。

わたしだってそうだ。

氷竜が話すなんて、誰も思わない。

「それで、氷竜と話してこようと思う。もしかしたら、ここから出て行ってくれるかもしれないでしょう」

「危険です!」

「そうだ。襲われたら、どうする」

「殺されにいくようなものだ」

「わたしたちのためなら、やめてください。もし、ユナさんが戻ってこなかったら……」

みんなから反対の言葉が出る。

「嬢ちゃんは、どうして、赤の他人の俺たちのために、ここまでのことをしてくれるんだ。この街に知り合いでもいるのか?」

わたしは首を横に振る。

「いないよ。この街に来たのも偶然だし」

偶然と言うか、導かれてきたんだけど。

もしかして、クマの道標は氷竜に会わせるためだったのかもしれないと考えている。

氷竜がわたしの魔力を懐かしいと言った事といい。

「それじゃ、なんで……」

「寝覚めが悪いっていうか。このまま帰ったら、みんなのことが気になっちゃうと思う」

みんな、大丈夫かな。魔物に襲われていないかな。生きているかな。食べ物は大丈夫かな。といろいろと考えてしまうと思う。

クマの転移門を設置すれば、いつでも会いに来ることができるけど、それは根本的な解決にはなっていないし、違うと思う。

それに、わたしがいない間に、なにかが起きるかもしれない。

そしたら、後悔すると思う。

あのときに、やっておけばよかった。

あのときに、氷竜と話してみればよかった。

と考えてしまう。

自分のことを善人だと言うつもりこそないけど、薄情者でもないと思っている。

「だから、氷竜と話してくるよ」

「カガリちゃんもなにか言ってください。ユナさんを止めてください」

「無理じゃな。こやつはお人好しじゃ。自分に関わりがないのに、人を助ける」

「別にお人好しじゃないよ」

「そう思っているのは本人だけじゃ。それに安心せよ。妾も一緒に行くつもりじゃ」

「カガリちゃんまで行くの? 余計に安心できないよ」

「そうだな」

「嬢ちゃんたちが危険を冒す必要はない」

「これも運命だったと」

全員、諦めていたのかもしれない。

三年間、なにもできず、ただ生きてきた。

でも、リーゼさんだけは未来を見てほしいと思ったから、リーゼさんだけを、わたしに託そうとした。

「諦めるのは早いよ」

「そうじゃな。諦めたら、未来はない。生きているかぎり、足掻き続けないとならぬ」

カガリさんは自分に言い聞かせるように言う。

「我々に氷竜をどうにかすることなんてできません」

「だから、妾たちがおる。お主たちは、三年間、頑張って生き続けてきたのじゃろう。そして、生きたことで、妾たちに出会えた。それが遅いと思うのか、早いと思うのかは分からん」

「みんなが、諦めたと思っているなら、最後と思ってわたしたちに賭けて」

「……ユナさん」

「ただ、最悪、氷竜と交渉決裂になった場合。どうなるか分からないけど」

その場合は戦いになり、勝てればよし。

負けそうになったら、みんなを連れて逃げればいい。

「そうですね。このまま、なにもせずに死ぬなら、お二人に賭けます」

「そうだな。3年間、ただ魔物に怯え生きてきた。凍った家族を見守ることしかできなかった」

「誰も助けに来てくれなかった。ここまで俺たちを助けてくれたのは嬢ちゃんたちだ。その嬢ちゃんが危険を承知で氷竜に会いに行くと言うんだ。俺たちの命は嬢ちゃんに預ける」

「どっちにしろ、なにもせずにいても、このまま凍った街で死ぬだけなら、嬢ちゃんに任せる」

「氷竜が怒って、俺たちを殺しに来ても恨まない」

そんなことはさせない。

もし、怒って、危険なことになったら、クマの転移門を使って、全員を逃す。

「ありがとう」

「ただし、自分たちの命を優先してくださいね」

わたしはみんなの気持ちにお礼を言い、氷竜がいる山頂を目指すことになった。

その前に、探知スキル内にいたアイスゴーレムは倒しておいた。