軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

757 クマさん、鳥に乗るフィナたちを見守る

「鳥は湖にいるのですか?」

これから向かう鳥についてフィナとシュリがノアとミサに説明している。

「鳥さん、湖の上を泳ぐんだよ」

湖で鳥に乗ったことがあるシュリが説明する。

「それでは、鳥に乗って空を飛ぶんじゃないんですね」

「残念です」

どうやら、ノアとミサは鳥に乗って空を飛べると思っていたみたいだ。

「水の上を泳ぐ鳥に乗るだけだけど、やめる?」

「いえ、鳥に乗りたいです」

「それに、大きな鳥を見たいです」

わたしたちは湖に向かって歩き出す。

「この街の建物は石で建てられているのでしょうか?」

ノアは周りに建てられている家を見ながら尋ねる。

「ここだと木材は貴重だからね」

一応、湖もあるので小さい森林はある。でも、木材が貴重なことには変わりない。

「そうですね。クリモニアなら簡単に手に入るものでも、ここでは手に入らないんですね」

「その逆もあるよ。ここでは手に入れやすくても、クリモニアでは手に入りにくい物が」

「だから、交易、貿易するために商人たちが街や国を行き来するんですよね」

「そんな商人のおかげで、遠く離れた場所にある物や作られた物が、わたしたちの手にやってきます」

「感謝しないといけませんね」

だから、クマの転移門を使って、商人たちの苦労を無にしてはいけない。

でも、神様がくれたんだから、有効活用はしないと。自分が欲しい物ぐらいはいいよね。

わたしが心の中で言い訳をしている間も、ノアたちの経済学の話が続き、フィナとシュリは感心するように聞いていた。

そんな子供らしくない話を横で聞きながら、わたしたちは湖までやってくる。

湖には大きな鳥が泳いでいる。

「本当に、大きい鳥さんが泳いでいます」

「ノアお姉様、鳥さんに子供が乗っています」

「ユナさん、早く乗りたいです」

「分かったから急かさないで」

わたしはノアとミサの逸る気持ちを落ち着かせ、鳥乗り場に向かって歩き出す。

いつもシュリが大騒ぎするところだけど、今回はノアとミサが大騒ぎして、シュリが説明して、それを補足するフィナって感じだ。

「フィナとシュリは乗ったことがあるんですよね」

「はい」

「うん、乗ったよ」

「うぅ、ユナさん、急ぎましょう」

「そうです。乗れないかもしれません」

わたしの手を掴むとノアとミサは歩き出す。

「そんなに急がなくても大丈夫だよ」

「鳥の数は決まっていると思います」

「そうです。鳥さんの数も無限ではありません。わたしたちが乗れる鳥さんがいなくなってしまうかもしれません」

そう言われたら、なにも言い返すことができない。わたしはノアとミサに引っ張られるまま鳥乗り場にやってくる。

そして、気づく。

「水着が必要だった」

ミリーラの町に従業員旅行に行ったときに水着を用意したけど、それを持ってくるように言うのを忘れた。

「水着ならありますよ。フィナに使うかもと言われたので用意してあります」

「そうなの?」

「ユナお姉ちゃんが、みんなをどこに連れて行くか分からなかったけど、もしかすると必要になるかなと思って」

流石と言うべきか、わたしより計画性がある。

しっかりし過ぎなところが、少し心配だ。

もうちょっと子供らしくてもいいと思うんだけど。

わたしたちは鳥乗り場にやってくる。

「大きい鳥さんです」

柵があり、柵の中には大きな鳥がいる。

「近くで見ると、本当に大きいです」

「ユナお姉様、鳥さんに名前はあるんですか?」

個別の名前じゃないよね。

「たしか、カモールだったかな? そんな名前の鳥だったよ」

「……カモール」

「ユナお姉さま、早く乗りたいです」

「それじゃ、あの小屋に行こう」

鳥がいる柵の近くに小屋がある。

わたしたちは小屋に向かう。

中に入ると小屋の中にいた男性が驚いた顔をする。

「あのとき、カリーナ様と一緒にいたクマ……」

「わたしのことを覚えているの?」

「当たり前だろう。そんなクマの格好している子は一度見たら、忘れない」

カリーナと一緒に来る人はいると思う。

友達と来るかもしれない。

でも、クマの格好した人物は忘れないってことみたいだ。

実際にフィナとシュリのことは覚えていないみたいだし。

つまり、わたしのことをクマと認識しているから、クマの着ぐるみを脱げば、分からないってことだ。

「それで、今回も鳥に乗りに来たのか?」

「うん、この子たちを鳥に乗せてあげたいんだけど」

「4人だな。今、休んでいる鳥がいる。そっちの部屋で着替えておいてくれ、その間に準備しておく」

わたしは代金を払い、フィナたちに水着に着替えるように言う。

おじさんは小屋から出ると柵の中に入り、複数いる鳥の中から、ノアたちが乗る鳥を選び始める。

そして、選ばれた4羽の鳥がやってくる。

そのタイミングで水着に着替えたフィナたちが部屋から出てくる。

「それじゃ、乗ったことがある嬢ちゃんもいるかもしれないが、注意事項だけは言っておく。あまり、遠くに行くな」

「あのう、わたし初めて乗るのですが、どうしたらいいのです?」

「馬のように指示に従わせることもできるが、それなりの熟練が必要だ。だから、基本的に乗っているだけだ。あと鳥の上で暴れないことだ。振り落とされることがある。どんな動物でも、自分の背中の上で暴れたら、振り落とすだろう。たまに、鳥の上に立ったり、早く動かそうとして叩いたりする子もいる。それは危険な行為だからやらないように。カモールは基本的に遠くに行かないように教育されている。あと、人を乗せて、しばらくすると戻ってくるように教育されている。まあ、教育と言っても、餌をもらいに帰ってくるだけだがな。まあ、たまに戻ってこない場合もあるが、そのときはこの笛を使って呼び寄せるから安心してくれ」

おじさんの首には笛が吊り下げられている。

「他に質問は?」

「それでは、一緒に遊べないのですか?」

「それは、大丈夫だ。カモールは一緒に行動する習性がある。とくに、この4羽は兄弟だから、いつも一緒に行動する」

だから、選んでくれたのかな。

他に質問が出ないので、ノアたちはカモールに乗ることになる。

小さい桟橋があり、カモールたちは礼儀正しく並び、ノアたちが乗るのを待つ。

まるでタクシーの順番待ちのようだ。

「よろしくお願いします」

ノアはカモールに乗ると、優しく背中を撫でながら声をかける。それを見たミサ、フィナ、シュリも同じ真似をする。

「おまえたち、嬢ちゃんたちを振り落とすなよ」

「クエっ」

カモールは鳴くとスーと滑らかに動き出し、湖の上を泳ぎ始める。

「動きました。水の上を泳いでいます!」

「暴れちゃダメだからね!」

「は〜い」

カモールはノアたちを乗せて、湖の上を泳ぐ。

離れていても、ノアたちの楽しそうな声が聞こえてくる。

落ちないか不安になるけど、もしものときは、水の上を歩くことができるクマのスキルがあるからすぐに駆けつけることができる。

それにいざとなれば、くまゆるとくまきゅうもいるし。

「嬢ちゃんは、この街の住民じゃないよな」

ノアたちを見ているとおじさんが話しかけてくる

「うん。そうだけど」

「それじゃ、あの子供たちを連れて、あの砂漠を通ってきたんだな。大変だっただろう」

クマの転移門を使ったから楽だったよ、とは言えない。

「うん、まあ……」

「前もそうだっだが、楽しんで行ってくれ。以前、一度、この湖が

枯れそうになったことがあったんだ」

うん、知っているよ。

「そのときに、この街の領主様が頑張ってくれて、元に戻すことができた。あのときは、この街を出て行こうとする者も多かった。俺は鳥たちがいたから、そんな考えはなかったがな」

おじさんは笑う。

「湖がなくなれば、鳥は死ぬ。そのときは、俺も一緒だと思った」

「どうして、そんな話をわたしに?」

「なんでだろうな。カリーナ様が、たまに来るんだ。そのときに、あんたの話をするんだ。だからかもしれないな」

カリーナが……。

「嬢ちゃんは、カリーナ様の知り合いなんだろう。どういう関係なのか知らないが、カリーナ様をよろしく頼む」

おじさんは、それだけ言うと、小屋に戻っていく。

……カリーナ。

これは、久しぶりに会いに行ったほうがいいかな。

ノアの言葉じゃないけど、ここに来たことは遠からず知られると思う。

もし、そのことを知ったら、悲しむかもしれない。