軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

758 クマさん、冒険者と再会する

カリーナのことを考えながら湖を見る。湖ではフィナたちがカモールの上に乗って楽しそうな声が聞こえてくる。

連れてきてあげてよかった。

「ユナさーん!」

ノアが大きく手を振るので、わたしは軽く手を振り返す。

カモールは仲良く列を作って泳いでいる。

まるでカルガモの兄弟のようだ。

先頭はミサ、それからシュリ、フィナ、ノアと続く。

「もっと、早く泳いでください! みんなを追いこしてください」

ノアはカモールに呼びかけるが、ノアが乗っているカモールは気にした様子もなく、一番後ろを泳いでいる。

カモールの中にも序列があるのかもしれない。

ノアが乗っているカモールは一番下の子なのかもしれない。

でも、ミサが一番前で、ノアが一番後ろって光景も面白い。

いつも、ノアが前を歩き、ミサが後ろを歩くって感じだ。

たまにはこういうことがあってもいいと思う。

そして、時間になったのか、カモールたちが戻ってくる。

それに合わせたように小屋からおじさんが出てくる。

「ご苦労さん」

おじさんは、戻ってきたカモールに餌をあげ、首筋を撫でて労る。

フィナたちはカモールから降りる。

「楽しかったです」

「もう少し乗りたかったです」

「鳥にも休憩が必要だから、休ませてあげないと」

「そうですね」

鳥は柵の中に入ると丸くなって、休んでしまう。

「鳥さん、疲れちゃったのかな」

シュリが心配そうに見ている。

「人と同じだよ。シュリも、たくさん遊んだら、疲れて寝ちゃうでしょう」

「うん」

「鳥もシュリと一緒に遊んで疲れたんだよ。休ませてあげようね」

「うん」

シュリが素直に頷くと、ノアたちも我が儘を言うことはなかった。

まあ、一番年下のシュリが我が儘を言わなければ、年上のノアたちも我が儘を言えない。

「それじゃ、着替えておいで」

水着が濡れている。

鳥の上に乗っていたとしても、びしょ濡れだ。

服だったら、大変だったかもしれない。

でも、この暑さだったら、濡れてもすぐに乾くかな。

フィナたちは返事をすると小屋に入って行く。

さて、この後はどうしようかな。

カリーナに会うことになれば、ノアたちも紹介しないといけないし。

それとも、カリーナに会うのは後にして、街の外のピラミッド見学に行く?

このあとの予定を考えていると、フィナたちが小屋から出てくる。

そして、おじさんにお礼を言って、わたしのところにやってくる。

「ユナさん、お待たせしました」

「次はどこに行きますか?」

「疲れていない?」

鳥に乗っていた。

わたしは馬には乗らないから分からないけど、馬に長く乗っていると疲れると聞く。

ちなみに、くまゆるとくまきゅうに長く乗っていても疲れない。

「大丈夫です」

「わたしも大丈夫です」

「あたしも!」

ノア、ミサ、シュリが声を上げ、フィナは頷く。

子供って元気だね。

「それなら、街の外に行こうか」

カリーナの件は後回しにして、先に街の外に行こうと思う。

街の外にはピラミッドがある。

ノアとミサがピラミッドを見たからと言って、勉強になるか分からないけど、ためにはなるはずだ。

「街の外ですか?」

「ノアとミサに見せたいものがあるよ」

わたしは街の外へ出る門に向かって歩き出す。

この街には二つの門がある。

一つは王都側から来る入り口。

そして、反対側にピラミッドに向かう入り口。話によると、他の国からの入り口でもある。

いつかは、その国にも行ってみたいものだ。

「街の外には何があるのですか?」

「大きな、三角の建物があるよ。あと、街の外、全部、砂なの!」

わたしより先にシュリが答える。

「砂?」

まだ街の外を見ていないノアとミサは首を傾げる。

今までに砂漠を見たことがないから、想像ができないのだと思う。

わたしだって、元の世界で砂漠なんて見たことがない。

映像で見て知っているぐらい。

もし、映像や本でも見たことがなければ、想像がつかないかもしれない。

シュリとフィナが街の外について話しながら歩いていると、前のほうからガタイのいい男性冒険者が、こちらに向かって歩いてくる。

見覚えがある顔に防具。

その男性冒険者とわたしの目が合う。

「やっぱり、クマの嬢ちゃんか」

「えっと、ウ、ウラガン?」

この街で会った冒険者だ。

カリーナが冒険者ギルドでピラミッドに一緒に行ってくれる冒険者を探していた。そのときに、このウラガンのパーティに頼もうとしていたが、邪魔者扱いをして追い払おうとしていた。

まあ、それから、いろいろとあって、冒険者のジェイドさんたちとともに、ピラミッドに一緒に行ってくれることになった。そのときの冒険者のパーティーのリーダーだ。

「今度は覚えていたか」

前にフィナの誕生日プレゼントで王都に行ったときに会っている。(参照572話)

そのときに名前を覚えていなかった。

「でも、王都にいたんじゃ」

「ああ、あれからしばらく王都で仕事していたんだが、この防具の有効性を考えると、ここが一番稼げる」

ピラミッドには大きなスコルピオンがいた。

わたしは大きなスコルピオンを討伐し、その一部の素材をジェイドさんと目の前にいるウラガンに譲った。

王都で出会ったときにはすでに作って装備をしていた。

「有効性?」

「前にも話したが、強度が高いのに軽い。だから、重い防具と違って動きやすい」

タイガーウルフに噛まれても大丈夫だった話を思いだす。

「他に、鉄と違って熱くならないことが分かった」

「そうなの?」

「熱くならないと言っても、あくまで金属と比較してだ。この地域じゃ鉄はすぐに熱くなるから、着ることはできない」

夏場とか外にある鉄は火傷するほど熱くなるよね。

子供が滑り台とかで火傷をしたニュースや車のボンネットで目玉焼きを作る動画を見たことがある。

クーラーが効いている部屋に引きこもっていたわたしには縁がない話だったけど。

「でも、この装備なら着けることができるから、他の冒険者と違って有利だ。だから、しばらくはここで金を稼がせてもらおうと思ってな」

だから、この街にいたんだね。

「役に立っているようなら、よかったよ」

素材にしても防具にしても、使ってもらって活用してもらえたなら嬉しい。

わたしのクマボックスの中には眠っている素材がたくさんあるから宝の持ち腐れになっているけど。

「それで嬢ちゃんは、なんでこの街にいるんだ? ジェイドの話じゃ、王都ではない街に住んでいると聞いたが」

「遊びに来ただけだよ」

「遊びにって……」

ウラガンはわたしの傍にいるフィナたちに目を向ける。

「嬢ちゃんのクマなら、可能なのか?」

くまゆるとくまきゅうに乗ってきたと思っているみたいだ。

まあ、本当のことを言うことはない。

「わたしのクマは特別だからね」

「あれから王都で、嬢ちゃんの話は聞いた」

どんな話なのか気になるところだ。

まあ、ロクでもない話なのは間違いない。

フィナたちに変なことを聞かれても困るので話を変える。

「今日は1人なの?」

人数は覚えていないけど、仲間がたくさんいた。

でも、わたしの質問に呆れた顔をする。

「どうして、休みのときまで、野郎どもと一緒にいないといけないんだ」

ウラガンは当たり前のように言う。

パーティーはいつも一緒にいるイメージがあるが、たしかに休みのときまで一緒に行動する必要はない。

好きなものを食べたり、別の友人に会ったり、恋人がいれば会いに行くのもいい。

「それに、俺が一緒じゃ、休めるものも休めないだろう」

リーダーとは仲間でもあり、上司でもある。気を使う立場なのかもしれない。

そして、ウラガンは用事があると言って去って行った。

「ユナさんは、いろいろなところにお知り合いがいるんですね」

今まで、静かにわたしたちの会話を聞いていたノアが口を開く。

「前に来たときに、一緒に魔物討伐をしただけだよ」

「どんな魔物討伐をしたのですか?」

「そうだね。これから、見るものと関わってくるから、見ながら話すよ」

わたしたちは街の外に出る。

ちなみに、街の外に出ようとしたら、門番の人に止められた。

でも、前に来たときに、門番の人はわたしのことを知っていたらしく。子供がいるんだから、気をつけるようにと言うだけで、通してくれた。

「門番の人もユナさんを知っていました」

もしかすると、砂漠に現れたワームとの戦いを見ていたのかもしれない。

「まあ、わたしの格好は見たら、忘れないからね。わたしがクマの服を脱いだら、みんな気づかないよ」

誰もわたしがクマの格好をしていた人物とは思わないはずだ。

気づかれずにスルーされる。

「そんなことありません。わたしは気づきます」

「はい」

「ユナお姉ちゃんは、どんな格好していても分かります」

「わかるよ〜」

4人から否定の言葉が出る。

その言葉に少しだけ嬉しい気持ちになった。