軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

734 クマさん、かくれんぼをする その2

話は勝手に進み、シノブとかくれんぼをすることになった。

もう、かくれんぼというよりは、シノブを探すだけだけど。

「分かったよ。やればいいんでしょう。でも、屋根裏部屋とかダメだよ。あくまで、人が普通に入れる場所だからね」

「了解っす。絶対に見つけられないように隠れるっす。でも、ユナもわたしと同じことができるかもしれないっすから、耳栓をして、目隠しをしてもらうっす」

忍者じゃないんだから、そんなことはできないよ。

流石のわたしでも、音で居場所が分かるスキルは持っていない。

そもそも、そんなスキルは必要ないし。

「それから、みんなは絶対にユナに話しかけちゃダメっすからね」

「わたしが公平に見てますから安心してください」

サクラが申し出る。

うぅ、面倒くさい。

わたしは早く終わらせるため、みんなの指示に従い目隠しと耳栓をする。

真っ暗で、音も聞こえない。

わたしは動かず、ジッと待つ。

そして、しばらくすると目隠しと耳栓が外される。

「もういいの?」

「はい、砂時計の砂が落ちました」

本当に面倒くさい。

どうして、この年になって、かくれんぼなんてしないといけないんだ。

しかも、シノブを探すなんて、なにが楽しいの。

「ユナさん、頑張ってください」

みんなが、期待に満ちた眼差しで、わたしを見る。

「うん、頑張るよ」

わたしは早く終わらせるため、探知スキルを使う。

反則と言われても、隠れるのが上手いシノブを普通に探すのは不可能だ。

はっきり言って、わたしに勝ち目はない。

「こっちだね」

「ユナさん、分かるんですか?」

「まあね」

わたしが歩き出すと、みんながぞろぞろとついてくる。

わたしは階段を下り、二階に移動する。

廊下を歩き、一つの部屋の前で止まる。

この部屋だね。

わたしは襖を開ける。

えっと、反応は。

壁?

わたしは壁に触れる。

反応は、壁の先、つまり外だ。

わたしは壁から離れ、近くの窓に移動し、掛かっている鍵を外し、窓を開ける。

そして、横を見る。

シノブと目が合う。

シノブは壁に張り付いていた。

「どうして、ここにいるって分かったっすか?」

「なんとなくだよ」

「なんとなくで、見つかるはずがないっす。探し始めて、そんなに時間は経っていないっすよ。サクラ様、どうなんすか?」

「ユナ様は、まっすぐにこの部屋に来ました」

「くまゆるっすか、くまきゅうっすか。それとも魔法っすか」

「いえ、くまゆる様とくまきゅう様とお話ししている感じはありませんでした。目隠しと耳栓を外すと、悩むこともなく、まっすぐにこの部屋に来て、窓をお開けになりました」

「ユナ、本当のことを言うっす」

別に人がどこにいるか分かるって、言ってもいいけど、今まで、くまゆるとくまきゅうのおかげってことにしてきた、わたしのルールが壊れてしまう。

だから、わたしは。

「内緒」

と言う。

「もう一回っす」

「面倒くさいから、ヤダ」

「これでも、隠れるのが上手なシノブちゃんと言われたっす」

「うん、上手だったよ。窓に鍵が掛かっていたし」

「あれには、ちょっとした技があるんすよ」

「泥棒技だね」

「違うっす! とにかく、もう一回勝負っす」

シノブが引き下がらないので、しかたなく、もう一回だけ付き合うことになった。

「くまゆる、くまきゅう、口を塞がせてもらうっす」

シノブはそういうと長い布を取り出すと、くまゆるとくまきゅうの口を塞ぎ始める。

「これで大丈夫っすね」

くまゆるとくまきゅうが、少し不機嫌な顔をする。

「この勝負が終わったら、外してあげるっす。サクラ様も、フィナたちも外しちゃダメっすからね」

サクラたちは頷く。

そして、わたしは一回目と同じように目と耳を塞がれる。シノブが隠れ、わたしは砂時計の砂が落ちるまで、待つことになる。

砂時計の砂が落ちると、目隠しと耳栓が外される。

「ユナさん、いいですよ?」

わたしはシノブを見つけるため、歩き出す。

「ユナ様、もう、シノブの居場所が分かるのですか?」

まあ、探知スキルを使えば分かる。

この屋敷にいる人数とフィナたちがここにいることが分かっているので、必然的に、一人離れている反応がシノブになる。

反則だけど、さっさと終わらせることにする。

わたしは今回も真っ直ぐに反応があるほうへ向かう。

「ユナさん、どうして、分かるのですか?」

「耳も塞がれているから、音は聞こえないですよね?」

「しかも、シノブは足音がしないように歩いています」

ノア、ミサ、サクラが尋ねてくる。

「くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんは、喋っていないよ」

シュリがくまゆるの口を触りながら言う。

「フィナは、ユナさんが、どうしてシノブの居場所が分かるか、分かりますか?」

「えっと、……分かりません」

フィナには探知スキルっていうか、魔物や人が、どこにいるか分かることを教えていたっけ?

前に話したような気がする。

もしかすると、誤魔化してくれたのかな?

「シノブにも言ったけど、内緒だよ」

そして、今回も隠れていたシノブを簡単に見つけることができた。

再戦を申し込まれたが、丁重にお断りした。

だって、ズルしているかぎり、わたしが勝つし、ズルをしなければ、勝てない。勝てないどころか一生見つけることができない。

まあ、そのときは放置すればいいだけだけど。

「今度は、ユナが隠れるっす。わたしが見つけるっす」

「シノブの勝ちでいいから」しつこい。そんなしつこいシノブにサクラが注意する。

「シノブ、ユナ様に迷惑をかけてはいけません」

「うぅ、分かったっす」

「それから、危険な場所には隠れない。フィナたちが真似をしたら、どうするんですか」

「ごめんなさいっす」

ちなみに、今回は天井に張り付いていた。窓の外や天井に隠れるなんて、普通はできないよ。

まあ、いろいろとあったけど、かくれんぼは終わり、遊び疲れたのか、ノアたちはみんなで仲良く、くまゆるとくまきゅうに寄り添うように寝ている。

「サクラはどうだった?」

「楽しそうだったすよ。最近は笑顔を見せることも多かったっすが、同年代の友達がいないっすからね」

「そうなの?」

「王族の血筋ってこともあるっすが、幼くして巫女として仕事をしているっすからね」

ノアたちを連れて来て正解だった。

「それにノアとミサもサクラ様を気にかけてくれたっすよ。一緒にくまゆるとくまきゅうと遊んだりしたっす。もちろん、フィナとシュリとも楽しそうに話していたっすよ」

そうなんだ。

「まあ、主に、ユナの話が多かったっすが」

えっ。

「どんな話をしていたの?」

「それは、秘密っす」

みんな変なことを話していないよね。

わたしは気持ちよさそうに寝ているサクラたちを見る。

最近は、殺伐としたことがあったから、心が落ち着く。

やっぱり、平和が一番だね。

そして、ノアたちが目覚めると夕食の準備をする。

みんなで料理を作ろうとしたが、王家の元令嬢、貴族の令嬢が二人、狐が一人、忍者が一人、まだ幼いシュリ。

基本的に任せられるのはフィナとシノブしかいない。

食事の準備はわたしとフィナがすることになり、みんなはくまゆるとくまきゅうと遊んでいてもらう。

そして、食事も終わり、食後にはデザートとして、タールグイで採った果物を食べる。

「この果物は美味しいのう」

カガリさんはバナナを食べている。

確かに和の国では珍しいかもしれない。

クリモニアでも見たことがない。

「食べたいのに、お腹がいっぱいで食べられません」

「わたしもです」

「ユナ姉ちゃん、苦しいよ」

みんな畳の上に倒れている。

「食べ過ぎはよくないっすよ」

「美味しかったから」

「はい。どれも美味しかったです」

美味しくても食べ過ぎはよくない。

「ユナさん、フィナ、申し訳ありません。片付けをさせてしまって」

「気にしないでください。それに、シノブさんも手伝ってくれましたから」

お腹がいっぱいで動けないノアたちは倒れていたので、わたしとフィナ、それからシノブの三人で洗い物をした。

食事を終えて、わたしたちはまったりし始める。

ノアは窓から外を見ている。

「夜の湖が綺麗です」

月光に照らされて、昼とは違う光景が広がっている。

ミサとシュリ、それからフィナ、サクラも外を見ている。

「温泉に入りながら、見るともっと最高っすよ」

確かにそうだね。

食後の休憩をしたわたしたちは、温泉に向かう。

かけ流し温泉。

いつも綺麗なお湯が流れている。

「ここで服を脱ぐんだよ」

一度来ているシュリがノアとミサに教える。

脱衣所を見れば分かるが、説明をしたいお年頃なんだと思う。

全員、裸になると脱衣所を出て温泉に向かう。

すぐに温泉に入ろうとするシュリをフィナが止めて、体を洗うように言う。

シュリは渋々とフィナに従う。

それを見たノアとミサもお姉さんとして、体を洗わずに入ろうとはしない。

サクラとシノブは注意される前に体を洗っている。

そして、一緒について来たカガリさんはかけ湯をすると、温泉に入る。

「ああ、カガリ姉ちゃん。ダメだよ」

「妾は一日中部屋にいたからのう。汚れておらん。それにかけ湯ってものもある」

「そうなの?」

まあ、動いていなくて汗も掻いていなければ、かけ湯ぐらいでもいいと思う。

それぞれが思い思いに体を洗い、温泉に入る。

子熊化したくまゆるとくまきゅうも、みんなに洗われ、大変そうだった。

今は、洗われ疲れたのか、温泉の 縁(ふち) に頭を乗せて、まったりして外を見ている。

そのくまゆるとくまきゅうの左右に横並びに全員が湯に浸かりながら外を見ている。

「綺麗ですね」

「ミリーラの町から見た海の景色も綺麗でしたが、この景色も綺麗です」

「ミリーラと言うと、この国と繋がりがある町ですよね」

「昨日は、ミリーラの町にいたんです」

サクラの問いにノアが答える。

「船で何日もかかると聞きました。それが一瞬で来られるなんて、不思議な扉ですね」

「わたしも欲しいっす」

「あげられないし、あげられるとしてもあげないよ」

「酷いっす」

いじけるシノブを見て、周りから笑いが出る。

「わたしもフィナたちの街に行ってみたいです」

「そうだね。サクラに時間があるなら、連れて行ってあげるよ」

「いいのですか?」

前にも連れて行ってあげると言って、そのままだ。

「でも、秘密だよ」

「ユナ、わたしは?」

「お留守番、お願いね」

「いや、護衛は必要っすよ」

「わたしがいるし、もし必要ならカガリさんに頼むよ」

「妾か?」

「カガリさんなら常識があるし、秘密を守ってくれるしね」

「わたしも秘密はまもるっすよ」

「シノブって、わたしが知らないところで、なにをしているか分からないからね」

「酷いっす!」

また、周りから笑いが起きる。

まあ、実際問題。見た目はあれだけど、カガリさんが一番信用できる。

ただ、問題はわたしと一緒で、怠け者ってところだ。

「それで、ユナお姉様、明日はどうするのですか?」

「和の国の街を見て回ろうと思っているよ。ノアたちは街並みが全然違うから驚くと思うよ」

「楽しみです」

「はい」

「それでしたら、わたしが案内します」

それから、温泉を堪能したわたしたちは、仲良く布団を敷き、並ぶように寝た。

カガリさんも自分の部屋に戻らず、一緒だ。

もしかすると、なんだかんだ言って、カガリさんも人恋しかったのかもしれない。