軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

733 クマさん、かくれんぼをする その1

「元気な子たちですね」

サクラが微笑ましそうに部屋から出ていくノアたちを見送る。

ノアとミサは貴族令嬢だけど、子供らしさがある。でも、サクラは大人びている。

カガリさんと同様に中身が大人と言われても違和感がないかもしれない。

部屋を出て行ったと思ったら、ノアがこちらを見ている。

「サクラも一緒に行きませんか?」

ノアがサクラのことを誘う。

「よろしいのですか?」

「うん、だって、くまゆるちゃん、くまきゅうちゃんが好きな人は、わたしたちの友達です」

その言葉にサクラは嬉しそうにする。

サクラはわたしのほうを見る

わたしは頷く。

「はい。ご迷惑でなければご一緒させていただきます」

サクラは部屋から出ていく。その後ろを見守るように静かにシノブがついていく。

忍者だから仕方ないけど、ストーカーみたいだ。

くまゆるとくまきゅうが一緒だから、護衛は必要ないけど、仕事に忠実ってことだろう。

シノブはちゃらんぽらんのように見えるけど、真面目だ。

わたしは残ったカガリさんのほうを見る。

「カガリさん、元の姿に戻っていないんだね。それとも、元に戻れるけど、その姿が気に入ったとか?」

「お主ではないんじゃ。そんな訳がなかろう。元に戻れないだけじゃ。元に戻れば、好きなときに酒場に行って、酒が飲める」

まあ、今の幼女のままじゃ、酒場に行ってもお酒なんて出してくれないだろう。それ以前に、入店はお断りされる。

「おまえさんは、相変わらずクマの格好をしているんじゃのう」

「まあ、クマの加護を受けているからね」

「狐の格好すれば、狐の加護が付くぞ」

「そんな加護があれば、サクラが喜ぶかもよ」

カガリさんとわたしは、サクラの狐の姿を思い浮かべて笑う。

「あの2人はお主のことをどこまで知っておるんじゃ」

「移動できる門のことや、遠くの人と話せる魔道具のことは知っているよ。でも、この国で大蛇と戦って、倒したことは話してはいないよ」

『わたし、和の国で大蛇って大きな魔物を倒して、国王から感謝されて、この屋敷をもらったんだよ』

なんて、言えない。

自慢しているように聞こえる。

「あと、カガリさんのことは話していないから」

「そうか」

カガリさんが何百年も生きており、狐に変化できると知れば、どんな反応をするか分からない。

それに、わたしの口から簡単に話してはいけないことだ。

「2人はお主から見て、信用がおける者たちなのか?」

「信用はできるよ。だから、今回のことを話して、連れて来てあげたからね。でも、だからと言って無理に話す必要はないよ」

なにを信じるかは、自分が決めることだ。

それに信じたからと言って、話す必要はないことだってある。

わたしが異世界から来たことは、一番信用しているフィナにさえ話していない。

「わかった」

「だから、あの子たちの前でお酒は控えてくれると助かるかな。説明するのが面倒くさいから」

一般的に子供がお酒を飲むことはダメとされている。それは和の国でもクリモニアでもだ。

……ドワーフは分からないけど。

「最近は、お主はどうだった?」

「最近って、スライムの後ってこと?」

「お主は、面倒ごとに愛され、首を突っ込むたちだからのう」

「人聞きが悪い」

わたしは、少し考える。

「あれからはキングスパイダーと戦ったり、妖精探しをしただけだよ」

「…………」

わたしの言葉にカガリさんは呆れた顔をする。

「キングスパイダーもあれじゃが、妖精探しとは、お主はいろいろとやっているのう」

確かに言われてみると、いろいろとやっている。

でも、冒険者なら、戦っていることは多いはずだ。それを考えれば、わたしは少ない。

ただ、珍しいトラブルが多いのは否定はできない。

それから、わたしはフィナたちが帰ってくるまで、カガリさんのお酒の肴に蜘蛛のことや妖精の話をすることになった。

カガリさんは楽しそうに、わたしの話を聞く。

そして、しばらくカガリさんと話をしていると、フィナたちが帰ってきた。

5人は仲良く話しをしている。

その姿は、出て行ったときと違うことがすぐにわかった。サクラとの距離が縮まっているのが分かる。

ノアが、部屋に入ると、わたしのところにやってくる。

「ユナさん、この建物の中で、かくれんぼをしてもいいですか?」

「かくれんぼ?」

「わたしがかくれんぼしたことがないと言いましたら、みなさんが」

サクラが、恥ずかしそうに言う。

「わたしも無かったので」

サクラの言葉にミサも続く。

サクラは特殊な環境だし、ミサは貴族のお嬢様だ。かくれんぼなんてしたことはないかもしれない。

「でも、なんで、いきなりかくれんぼ?」

「シュリが、かくれんぼをしたら、楽しそうって言い出して」

「だって、たくさん、お部屋があって、隠れられそうなところがいっぱいあるから」

確かに、隠れるところは多そうだ。

無駄に広いし。

「別にいいけど」

「やった!」

「ユナさん、ありがとうございます」

5人は嬉しそうだ。

「それでは誰が魔物役をしますか?」

「魔物は、見つける役ですよね」

魔物? どうやら、この世界では鬼ではなく、魔物らしい。

「誰が魔物役をしましょう」

誰も手を挙げる人はいない。

かくれんぼはしたいが、探す役は誰もしたくないみたいだ。

「それなら、わたしがするっすよ」

今まで、黙っていたシノブが申し出る。

「シノブ、いいのですか?」

「いいっすよ。でも、ちゃんと隠れないと、すぐに見つけちゃうっすよ」

シノブが鬼役……もとい魔物役になり、時間などのルールを決め、隠れることになった。

みんな、走って、部屋の外にでていく。

「若いって、眩しいね」

「お主、妾より、年寄りみたいじゃぞ」

幼女姿のカガリさんに言われても説得力はない。

まあ、わたしが年寄りっぽいのは今更だ。

しばらくするとあちらこちらから、「いいよ」って声が聞こえてくる。

シノブが部屋から出て行く。そして、数分もしないうちに、シュリが戻って来て、ノア、ミサ、サクラ、フィナと部屋に戻ってくる。

「早くない?」

「シノブさんがやってきたと思ったら、隠れている場所をあっという間に見つけられてしまいました」

「うん、シノブ姉ちゃん、凄い」

「シノブ、魔法は使っていないですよね?」

「使っていないっすよ」

「それにしては、簡単に見つかってしまいました」

みんな、なにかしら理由があると思って、シノブを疑う。でも、わたしが知るかぎり、シノブがなにかをした感じはしなかった。でも、シノブの顔は怪しい。

シノブはニコニコと微笑んでいる。

何かしら、裏があると思う。

そんなみんなに、カガリさんが口を挟む。

「耳じゃよ。お主たちの声を聞いて、方角、距離を把握している」

「シノブ、そうなのですか?」

「いや、かくれんぼってそういうものっすよね? わたしが子供のときに山の中でやったとき、声だけで方角、距離を分かる特訓をしたっすよ」

まるで、忍者みたいだ。

そもそも、そんなことが可能なの?

「それでは、返事をするのはなしにしましょう。隠れる時間を3分にして、3分経ったら、シノブは探しにきてください」

「分かったっす。この砂時計が落ちたら、探しに行くっす」

シノブが砂時計を逆さまにすると、全員、駆け出すように部屋からでていく。 そして、砂が落ちるのを確認すると、シノブは部屋からでていく。

今度は簡単に見つからないと思ったら、フィナたちはすぐに見つけられて戻ってくる。

「ちゃんと隠れているの?」

「隠れていますよ。でも、シノブさんは迷うこともなく、見つけてしまうんです」

みんながノアの言葉に頷いている。

「カガリ様、シノブはどうやって、わたしたちを見つけているのですか?」

「声を出さなくても、こやつの耳なら、走る音、階段を下りる音、襖を開ける音、ドアを開ける音。それだけのヒントがあれば分かるじゃろう」

つまり、ここから、そんな音を聞いて、見つけているわけだ。それじゃ、簡単に見つかってもしかたない。

反則過ぎる。

「カガリ様、ネタバレはよくないっすよ」

「お主が大人げないだけじゃろう」

それには同意だ。

「かくれんぼの厳しさを教えているだけっすよ」

「いや、かくれんぼは楽しむものだよ」

「それじゃ、どうしたら。シノブに勝てるのでしょうか?」

「無理じゃな」

「どうしてですか?」

「たぶんじゃが、こやつのことだから、全ての襖やドアに仕掛けをしているじゃろう」

「仕掛けですか?」

「仕掛け……、ああ、なるほど」

わたしは分かったので、声をあげる。

「ユナさん、シノブさんがなにをしたのか分かったのですか?」

「襖やドアのところに紙みたいな小さいものを挟んでおくんだよ。それで、ノアたちがドアを開けると、紙が落ちる」

「それで、わたしたちがどの部屋に隠れたか、分かるんですね」

「さらに言えば、音で方角も分かっているから」

「簡単に見つかってしまうんですね」

「シノブ、酷いです。そんなことをしてまで勝ちたいのですか?」

「大人げないのう」

「いや、これも勝負っすから」

結局、シノブが鬼(魔物)役をすると、つまらないってことで、かわりばんこで鬼(魔物)役をすることにして、かくれんぼをすることになった。

「みんな酷いっす」

いや、酷いのはシノブだから。

そして、みんなはシノブがいなくなったかくれんぼを楽しんだみたいだ。

「ユナ、最後にわたしと勝負するっす」

「勝負って、かくれんぼ?」

「そうっす」

「いや、わたしが隠れてもすぐに見つかるから断るよ」

カガリさんからあんな話を聞いて、やるわけがない。

「逆っす。わたしが隠れるっすから、ユナが見つけるっす。ああ、もちろん、くまゆるとくまきゅうに頼むのは無しっすよ」

「やるメリットがないから断るよ」

なにより、面倒くさい。

「こっちにいる間、みんなの食事を奢るっすよ」

別にお金に困っていないから、別にやらなくてもいいんだけど、シノブとわたしのかくれんぼにサクラたちが興味を持ち始めた。

「ユナ様とシノブが勝負ですか? どっちが勝つんでしょうか?」

「見つけるのがシノブさんなら、シノブさんだと思いますが」

「ですが、探すのはユナお姉さまです」

「ユナ姉ちゃんが勝つよ」

「フィナは、どう思いますか?」

「えっと、ユナお姉ちゃんかな?」

「わたしもユナさんだと思います」

「わたしも、ユナお姉さまに」

フィナの言葉にノアとミサも。

みんな、わたしが勝つ方へ投票してくれた。

「サクラ様、みんな酷いっす。サクラ様は、わたしが勝つと思うっすよね」

サクラはシノブを見てから、わたしを見る。そして、再度シノブのほうを見ると、頭を下げて謝罪をする。

「……申し訳ありません。わたしもユナ様が勝つ方へ」

「酷いっす。絶対に見つからないところに隠れるっす」

だから、勝負するとは言っていないよ。