軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

708 クマさん、戦いに決着がつく

※ローザ視点※

わたしたちは馬から下りると、崩れた塀を乗り越えて、くまゆるちゃんたちのところに駆け寄る。

「プリメちゃん!」

「えっと、ローザとブリッツ?」

プリメちゃんがわたしたちに気付く。

「いったい、どうなっているの? その男の人は?」

わたしは倒れている男に近寄る。

男は痩せ細っており、胸から血が出ている。

近くにはナイフが落ちている。

「あなたがしたの!?」

騎士に問いかける。

「俺のナイフだけど、リヤンさんが自分で刺したんだ」

「本当よ。彼じゃないわ」

メイドも男を庇うように言う。

状況を把握するためプリメちゃんから、簡単に現状を聞く。

プリメのお姉さんのローネと会えたこと。

ローネのパートナーのリヤンって人に会えたこと。

そして、領主のベルングに見つかり、ユナちゃんがプリメちゃんのパートナーと知られ、プリメちゃんを自分の物にするためにユナちゃんと戦うことになったこと。

ユナちゃんとベルングが戦っている間に、地下に寝かされていたリヤンを、この2人が連れてきたこと。

そして、リヤンが自分で胸にナイフを刺したこと。

領主のベルングがおかしくなり、ローネが気を失ったこと。

ローネは今はくまゆるちゃんの背中に乗せられている。

プリメちゃんの話を聞いている間もブリッツが倒れているリヤンって男の人を治療している。ブリッツが男の治療をしているときに、体にいろいろな模様が描かれているのが見えた。

これがプリメちゃんが言っていた魔法陣のことだと思う。

「ブリッツ、彼の状態は……」

ブリッツは首を横に振る。

「かろうじて生きているが、時間の問題だ」

街の様子を思い出す。

今は誰しもが他人を助ける余裕はない。

今のわたしたちにはなにもしてあげることはできない。

わたしは周りを見る。一緒に屋敷に行ったはずの人物がいない。

「プリメちゃん、ノアちゃんの姿が見えないけど」

「それは……」

「くぅ〜ん」

くまゆるちゃんがプリメちゃんに向かって鳴く。

「分かっているわ。えっと、ノアは安全なところにいるから心配はしないで」

「本当なの?」

「うん、安全な場所よ」

そう言うなら、今はノアちゃんのことは気にしないことにする。今は現状の問題を一つずつ片付けていかないといけない。

「とりあえず、ここから離れましょう」

後ろでは2人が戦っている。

突風が吹き、ここにいるのは危険だ。

「くぅ〜ん」

くまきゅうちゃんが近寄ってくると、倒れている男の横で屈む。

「背中に乗せろってこと?」

「くぅ〜ん」

動かすのはよくないが、だからと言って、このままここに寝かせておくわけにはいかない。

いつ、ユナちゃんたちの魔法が飛んでくるか分からない。

わたしとブリッツは男をゆっくりとくまきゅうちゃんの背中に乗せると、ユナちゃんたちが戦っている場所から離れる。

そして、騎士の格好した男も落ち着いてきたのか、わたしたちに尋ねてくる。

「おい、あんたたちは誰なんだ」

「彼女、プリメのお姉さんを助けにきた冒険者だ」

ブリッツはプリメとくまゆるの背中で気を失っているローネに目を向けると、騎士とメイドも目を向ける。

「ローネ様の妹……。それじゃ、おまえたちはローネ様を連れていくのか?」

「ああ、そのつもりだ。それがプリメとの約束だ」

「街の外の煙も……」

騎士は屋敷の外に目を向ける。

ブリッツとわたしは頷く。

「悪いが住民から魔力を奪う装置は壊させてもらった」

「でも、騎士でも知らない場所にも設置されていたから、全部を破壊することはできなかったけどね」

もし、全てを破壊できていれば、ユナちゃんと戦っている男を止めることができていた。

ギルマスの情報にも穴があった。

騎士はなにか言いたそうにしたが、口をギュッと閉じる。

騎士がなにも言ってこないので、ブリッツはユナちゃんと領主ベルングの戦いに目を向ける。

2人の戦いは動きが速く、魔法の応酬が激しいため、わたしたちが入り込む隙はない。2人の戦いに入り込めば、ユナちゃんの邪魔になる。

そんな2人の戦いをブリッツが怪訝そうな表情で見ている。

「どうしたの?」

「ユナの戦いがおかしい」

わたしがユナちゃんの戦いを見るが、何がおかしいか分からない。

でも、横にいるブリッツが「まただ」と言う。

「なにが、まただなの?」

「何度か、攻撃の隙があるのに、ユナの動きが鈍るときがある」

ブリッツの何度目かの「まただ」の言葉で理解する。

確かに攻撃のタイミングで、躊躇している。

でも、ユナちゃんとベルングの動きが速く、言われないと分からないレベルだ。

「そうか……」

ブリッツは納得した表情を浮かべる。

「なにか分かったの?」

「ローザも経験があるだろう。初めて人を殺したときのことを」

ブリッツの言葉で理解する。

わたしが人を初めて殺したのは、冒険者となってある程度、経験を積んだときだった。

そのときは商人の護衛を受けていた。

街と街の移動は基本的に安全だ。いろいろな人が通るので魔物は駆逐されている。でも、絶対に魔物が現れないってことはない。

商人は安全を買うため、冒険者を雇う。

わたしも、あのときまで楽な仕事だと思っていた。

でも、魔物ではなく、盗賊に襲われたのだ。

女性冒険者故に目を付けられたのだ。

わたしは襲ってくる盗賊と無我夢中で戦った。そして、初めて人を殺した。盗賊は、わたしの火の魔法で体中が焼け、苦しそうにしていた。そして、最後は「痛い」と言いながら死んだ。

初めて人を殺した。

盗賊だ。殺されても仕方ない。

殺さなかったら、わたしが殺されていた。

それからしばらくは食べ物が喉に通らず、焼け焦げた顔の男が、夢に何度もでてきた。

「懐かしいわね」

今では、切り替えはできている。

殺しに来る者には、容赦しない。

わたしが戸惑えば、自分だけでなく仲間が危険な目に遭う。護衛を頼んだ人の信頼を裏切る。

先輩冒険者から、もし戸惑うなら死ぬだけだ。そして、死ぬのが嫌なら殺す覚悟を決めろと言われた。

殺した者のことを考えるのでなく、そのときに守った者の顔を見ろと言われた。

助けた人や守った人からは感謝された。

わたしはその感謝の言葉と笑顔に救われてきた。

「冒険者を続けていれば、いつかはぶちあたることだ」

「そうね。でもユナちゃんは、まだ子供なのよね」

可愛いクマの格好した女の子。

見た目と違って強い女の子。

強い魔物を一人で倒してしまう女の子。

わたしやブリッツより強い。

でも、15歳の女の子だ。

わたしが15歳のときは魔法を学んでいて、初めてウルフを倒したときぐらいだ。

あの時の恐怖は未だに覚えている。

「なら、先輩冒険者の役目だな」

「ええ、身近に代わりができる先輩冒険者がいるなら、代わってあげればいいわ」

わたしとブリッツは2人が戦っている方へ歩み出す。

※ユナ視点※

クマの風魔法がベルングを襲う。ベルングは同様の風魔法で防ぐ。防がれるのは分かっている。わたしは魔法に気を取られている間に回り込み、ベルングを蹴り飛ばす。

ベルングは体勢を崩す。

そのまま、クマ魔法を放てば……。

一瞬の迷いに行動が遅れる。

ベルングはすぐに立ち上がり、襲い掛かってくる。

いくら殴っても蹴っても、気を失わない。普通の人間なら一発で終わっている。

ベルングを止めるには手足を折ればと思ったが、魔力で強化されているのか、まるでゴムの塊を殴っているような感じだ。

わたしはベルングの周りに竜巻を起こす。

ベルングの体が刻まれて、血飛沫が舞う。

ベルングの魔力が増加すると、ベルングの周りに風が巻き起こり、わたしの竜巻を消す。

さらに、体に刻まれた傷は治っていく。

中途半端な攻撃はベルングに魔力を使わせ、ローネを苦しませる。住民から魔力が奪われる。

わたしはなにも考えないことにする。

ベルングを殴り、蹴る。ベルングは後方に飛ばされる。そのタイミングに合わせて、クマの風魔法を放つ。

ベルングの剣を持っている右腕が血飛沫を上げながら飛ぶ。

初めて人の腕を斬った。心が揺れる。

でも、ベルングは止まらない。もう片方の腕を伸ばすと炎の渦を出す。

わたしは風魔法でベルングの炎を吹き飛ばし、ミスリルナイフを握りしめる。そして、ベルングに向けて走り出し、腕がない死角から回り込む。

わたしはミスリルナイフを強く握り、ベルングの胸に向けてナイフを突き出す。

このナイフを心臓に突き刺せば終わる。

わたしが腕を伸ばし、ベルングの体にナイフを刺そうとした時、ベルングの胸から剣が突き出てきた。

ベルングの胸にあった魔石が割れ、血を吐く。

「……ブリッツ?」

ベルングの背中から剣を刺したのはブリッツだった。

「ユナ、悪いな。良いとこ取りして」

ブリッツの言葉で理解する。

ブリッツがベルングを剣で突き刺したことに。

胸を剣で突き刺されたベルングは地面に倒れる。

周りを見ると、ローザさんもいる。

ブリッツとローザさんが来ていることに気づかなかった。