軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

691 プリメのお姉さん ローネ その2

研究の結果にベルングは悔しそうにするが、リヤンの魔力を他人に渡せば、少しはわたしのことが見えることが分かっただけでも、凄いことだと思う。

「でも、わたしがリヤンの魔力を使えば、いつでもベルングは見えるし、話すこともできるからいいんじゃない」

面倒くさい研究などをしなくても、それでいいと思う。

リヤンの魔力を使うということでは同じことだ。わたしに使うか、ベルングに使うかの違いだけだ。

「そうだが、リヤンがいなかったら、わたしはローネを見ることも話すこともできない」

「でも、わたしもいつかは家に帰らないといけないし、どっちにしろ居なくなるから変わらないでしょう」

わたしの言葉に、二人は悲しそうな顔をする。

わたしが居なくなれば、どっちにしろ見ることも話すこともできない。この研究そのものが無駄なことだ。少しの間だけ話すなら、わたしがリヤンの魔力を使って見えるようにすればいいだけだ。

でも、人間は違うらしい。

「無駄ってことはないよ。人はいろいろなことを調べて、研究して、成長していくんだよ」

この大きな建物も、倒れないように強い組み立てがされ、強度が強い材質や木材とかを調べて作られていると教えてくれる。あと、人間が持っている武器もそうだと教えてくれる。

どの材質が硬く、切れ味がいいのか。どのくらいの重さが扱いやすいのか。重心はどこがいいのかとかを話し出す二人。

「だから、研究に無駄ってことはないよ。それにローネたち妖精のことを少しでも知ることができるのが、わたしたちは何よりも嬉しいからね」

「ああ、妖精に会い、妖精と話をするのは子供のときから夢だったからな」

「でも、妖精のことを調べるほど絶望するだけだった。妖精を見たことがある人は、ほとんどおらず、言い伝えばかりだった。だから、こいつから、ローネの話を聞いたときは、信じられなかった」

ベルングはリヤンを見る。

「だから、嘘じゃないって言ったでしょう」

二人は楽しそうに話す。

よく、分からないが、リヤンが楽しいなら、わたしも嬉しくなる。

だから、わたしは、二人の研究をもう少し手伝うことにした。

妹に黙って出てきたのが少し心配だけど、あの妹のことだから、わたしが居なくなったことも気づいていないかもしれない。

妖精の時間の感覚は人間とは違うのだ。

基本的に仕事があるので、研究は時間が空く夕方に行われる。2人とも、その度に学生に戻り、研究だけをしていたいと言う。

それから、研究を進めるといろいろなことが分かってきた。

わたしの魔力をリヤンに流し、リヤンが魔法を使うと威力が強くなった。

リヤンが言うには2割から3割ほど威力が上がっていると言う。

「妖精の魔力に、こんな力が……」

同じようにベルングでも試したが効果はなかった。

つまり、わたしのことが見える人、波長が合う人だけみたいだ。

「ローネは世界でたった一人のわたしのパートナーですね」

その言葉が嬉しくなる。

「でも、世界は広いから、一人だけじゃないかもよ」

波長が近い人はいる。捜せば、この街にも一人ぐらいいるかもしれない。

「そう言われると悲しいな」

「でも、今はリヤン一人だけだよ」

わたしの言葉にリヤンは嬉しそうにする。

わたしとリヤンが楽しそうに話をしていると、どこからともなく強い視線を感じた。その視線の先を探すと、ベルングが睨むようにわたしたちを見ていた。でも、わたしの視線に気付くと、すぐに表情が変わる。

「羨ましいです。わたしにもローネのような可愛い妖精のパートナーがほしいです」

笑顔でそう言う。

あの顔は見間違いだった?

でも、それは見間違いではないことが分かる。

それからも、わたしとリヤンが一緒にいるときに度々視線を感じると、リヤンのことをベルングが睨んでいるところを見かけるようになった。

そのリヤンを見る目が怖い。

わたしが、そのことをリヤンに話しても、信じてくれようとはしなかった。

リヤンはベルングの視線に気付いていないようだった。

それからというもの、ベルングがわたしに必要以上に話しかけてくることが多くなってきた。

「欲しいものありますか?」「暮らしに不満はありませんか?」「街の暮らしは楽しいですか?」

わたしにはいろいろと気にかけて、二人の時は優しいが、わたしがリヤンと二人で話していると、時折、怖い目でわたしたちを見ている。

わたしは研究で手伝う以外は、ベルングから距離を置くようにした。

そして、わたしが自分の家に帰る日が近づいてきたとき、リヤンが消えた。

どこを捜してもいない。

怖いけど、ベルングに会いに行った。

「ああ、リヤンなら、この家の地下室で寝ているよ」

ベルングは笑みを浮かべながら答える。

微笑んでいるが、目が怖い。

でも、リヤンのことが心配だから、案内された場所に向かう。

一階の廊下を進み、固く閉ざされた扉を開くと、階段があった。

薄暗くて怖い。

でも、ベルングが壁の魔石に触れると、ぽつんぽつんと、光が灯る。

光が灯って、少し安堵する。

階段を下りていくと、大きな広間にでる。

その広間の中央にはベッドが置かれ、リヤンが寝ていた。

わたしは飛び、リヤンのもとに向かう。

「リヤン!」

声をかけるが起きない。

叩いても、顔の上で暴れても、反応がない。

「リヤンに何をしたの!」

「わたしのお手伝いをしてもらっただけです。永久的に」

ベルングは笑みを浮かべながら答える。

「それって、どういうこと?」

「それは、君のことをずっと見続けるためですよ」

わたしはリヤンとの魔力を切断する。

「ちゃんと見えていますよ」

「嘘」

わたしが移動しても、ベルングの目はわたしを追ってくる。

「君とわたしは繋がった。これで、君はわたしのものです」

ベルングは笑う。

怖い。

今すぐにも逃げ出したい。

わたしはベルングの後ろの階段に目を向ける。

「このまま、彼を見捨てて逃げるつもりですか?」

わたしが逃げようとしていることに気付いたのか、そう言ってくる。

リヤンに目を向ける。

ベッドで死んだように眠っているが、彼はちゃんと生きている。

リヤンを置いて、わたし一人で逃げ出すことはできない。

「もし、このままあなたが逃げ出したら、彼は死ぬかもしれませんよ」

「リヤンに何をしたの?」

「彼の魔力は随時わたしに流れるようになっています」

「まさか……」

「分かったようですね。あなたを見るために、彼の魔力をもらっているのです」

リヤンのベッドの周りには、わけが分からないものがたくさんある。わたしが分かるのは魔石ぐらいだ。2人がたまになにかの研究をしていたけど、これだった?

「そんなことをしなくても、わたしがリヤンの魔力を使えば、誰でも見ることが」

「でも、先ほど、リヤンとの魔力を切って、わたしから見えないようにしましたよね」

確かに、見えないようにした。

今も、そうだ。本来なら、わたしを見ることも、声も聞くこともできないはずだ。でも、ベルングはわたしの声も姿も見えている。

本当に、ベルングはリヤンの魔力を取り込んで、わたしを見て、話をしている。

だから、事実なんだと思う。

「このままわたしに魔力を吸い取られ続ければ、リヤンは死ぬかもしれません。一応、外部から魔力を入れていますが、あなたが逃げ出せば、止めるだけです」

つまり魔力を止めたら、リヤンが死ぬことを示している。

「それに逃げたとしても、君とわたしは繋がっています。どこまでも追いかけますよ。それもリヤンを通してというのが納得はできませんが」

それって、彼にはわたしの居場所が分かるってこと?

もし、それが本当なら、妖精の森に逃げたとしても、この男を仲間たちがいる妖精の森に呼び寄せてしまうことになる。

たとえ、わたしが死ぬことになったとしても、それだけはダメだ。

「リヤンとあなたは友達じゃなかったの?」

「友達ですよ。だから、こうやって、お互いの物を共有しあっているんですよ」

「わたしは物じゃないわ。それにリヤンはあなたから、何ももらっていない」

「ローネには分からないと思いますが、研究にはお金がかかるんですよ。彼が行う研究は全て、わたしがお金を出してきました。ともに、妖精を追う仲間でした。ですが、リヤンが妖精を見たと聞いたときは、リヤンのことを妬み、憎みましたよ」

初めて会ったとき、わたしとリヤンを見ていた、あの目の理由が分かった気がした。

それからも、ときおり彼がリヤンを見る憎む表情をしていた。

「それで、返答は?」

もう一度、寝ているリヤンに目を向ける。

わたしのことを見えた人。

リヤンを見捨てることはできない。

それに、リヤンを見捨てて逃げたとしても、妖精の森に帰ることはできない。

「わたしはどうすれば」

「簡単なことですよ。ずっと、わたしの側にいてください」

どうやら、彼はわたしを自分だけの物にしたいらしい。

わたしは誰のものでもない。

まして、この男の物ではない。

でも、この男から逃げ出すことはできない。

「分かったわ。ここに残る。でも、自由にさせてもらうわよ」

「構いません。ただし、逃げ出したと思ったときは……」

「分かっているわ」

リヤンが死ぬまで、どこまでも追いかけてくるだろう。

リヤンが死ねば逃げることもできるだろうが、わたしにはリヤンを見捨てることはできない。

あの笑顔をもう一度見たい。

自由さえ奪われなければ、きっとリヤンを助け出す機会はあるはずだ。