軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

675 クマさん、再出発する

わたしたちはお礼を言って、村を出る。

「国の名前や、街の名前を聞くことができませんでしたね」

「流石に自分たちが住んでいる街や国の名前を知らない人はいないと思うからね」

もし、日本に住んでいて、通行人に「ここ、なんていう国ですか?」と尋ねたら、「はぁ?」となる。せめて、わたしたちが旅商人や遠くからやってきた冒険者などに見えれば違和感もないが、クマの着ぐるみを着た変な娘と、裕福な家庭で育った娘の不思議な組み合わせの2人だ。

「そうですね。もし、ここが知らない土地でしたら、クリモニアの街なんて、知らないですからね」

わたしの言いたいことがノアにちゃんと伝わる。

ノアは年齢の割に頭の回転も速いし、理解力もある。

「まあ、とりあえず、妖精のことや、周辺の魔物情報と街の情報は得ることはできたから問題はないよ。なにより、お婆ちゃんが喜んでくれたからね」

「ふっ、これもわたしのおかげだけどね」

プリメが胸を張って威張る。

プリメも嬉しそうだったし、寄ってよかったと思う。

「それで、ノア。プリメのお姉さんの魔力を感じることはできる?」

ノアは目を瞑り、ジッとすると、ゆっくりと指差す。

「あっちです」

「やっぱり、聞いた街には行くことはなさそうだね」

男性から聞いたときから、違うと分かっていたことだ。

「でも、ユナさん。確か、こっちの方角は……」

ノアも分かっているみたいだ。

男性に教えてもらった街とは反対方向だ。つまり、魔物がいる方向でもある。

どうして、わたしが向かう方向に魔物が……。

クリフの言葉じゃないけど。わたしって、本当にトラブル体質?

いや、そんなことはないよ。今回のことは、たまたま目的地の途中に魔物がいただけだ。

「避けて通るか、そのまま進むかは、近くまで行ってから判断しよう」

わたしには探知スキルがある。魔物を避けて抜けることができるかもしれない。くまゆるとくまきゅうもいるし、近くに行ってから判断すればいい。

ノアも頷き、わたしたちは、くまゆるとくまきゅうにそれぞれ乗り、ノアが示す方向へ走り出す。

「そういえば、魔物って、妖精は見えるの?」

「う~ん。たまに妖精の森を出て、魔物に遭遇したことがあったけど、反応する魔物もいたわね」

「それって、魔物は妖精を見ることができるってこと?」

「分からないわ」

「どうして」

「ユナってバカなの?」

「……バカ?」

また、バカと言われてしまった。

「それじゃ、ノアにも聞いて見ましょう。ノア、魔物が近くにいたら、どうする?」

「離れます。逃げます」

「そういうこと。妖精だって、魔物を見かけたら、離れるわよ」

「自分のことが見えないのに?」

「見えるかもしれないでしょう?」

確かに。見えないとは言い切れない。

「さっきも言ったけど、わたしに反応する魔物はいる。わたしのことが見えているのかもしれない。それとも、気配を感じているのかもしれない。魔力を感じているのかもしれないし、匂いかもしれない。実際のところ、魔物が、わたしに反応する理由は分からないのよ。人と違って、魔物の言葉は分からないもの」

反論することはできなかった。

魔物に「わたしが見えていますか?」と尋ねるわけにもいかないし、尋ねたとしても返答は返ってこない。逆に襲われるかもしれない。

魔物が反応したとしても、それが気配なのか、匂いなのか、魔力を感じているのかもしれない。そして、プリメの言う通りに、見えているかもしれない。

でも、実際のところは魔物にしか分からない。

もし、匂いだったら、鼻を動かしたり、見えていたら、目が動くかもしれない。でも、危険が迫っている中、確認は難しい。

「それに、妖精の森には人間もそうだけど、魔物も入ってこられないし、出遭った回数はそれほど多くないから」

わたしが元の世界で、野生の動物に出会ったことがないのと同じことかな。

そんな話をしている間も、くまゆるとくまきゅうは、ゆっくりと走り続ける。すると、くまゆるとくまきゅうが「「くぅ〜ん」」と鳴いて止まる。

「なに、いきなり止まって」

プリメがくまゆるの頭の上で、声をあげる。

わたしは探知スキルを使う。

「魔物がいるみたいだね」

村で聞いた情報どおりだ。

「ユナさん、どうしますか?」

倒すのは簡単だ。ただ、血生臭いところをノアに見せることになるし、怖がるかもしれない。

でも、プリメの意見は一つだった、

「そんなの、避けて通るに決まっているでしょう。いくら、この子たちがいるからって、危険よ」

プリメがくまゆるの頭を撫でながら、言う。

ノアとわたしが、お互いの顔を見合わす。

「……」

「……あっ」

プリメが何を思っているか、理解した。

「そういえば、プリメさんはユナさんのことを知らなかったんですよね」

確かに、話していない。

「プリメさん。ユナさんは、とっても強くて、魔物ぐらい倒せるんですよ」

「そうなの?」

プリメは信じられない表情で、わたしを見る。

「まあ、全ての魔物ってわけじゃないけど。男性が教えてくれたウルフぐらいなら、倒せるよ」

プリメが信じられないようにわたしを見る。

「だから、お父様もわたしが行くことを許してくれたんです」

「そういえば、そんなことを言っていたわね。てっきり、この不思議なクマがいるからだと思っていたわ」

プリメはくまゆるとくまきゅうを見る。

「本当は、ユナには断られるかと思っていたの。危ないだろうし、小さい女の子だし。でも、この子たちがいるから、来てくれるのかなと思っていたの」

「ユナさんは、とっても強い冒険者なんですよ」

「冒険者って、確か、魔物を倒す人間のことよね?」

「よく知っているね」

「前に見たことがあるから。でも、とてもじゃないけど、ユナが、その強い冒険者には見えないね」

「よく、言われるよ」

「それじゃ、どうするの? このまま進むの? 回り道する? わたし的には、ユナが強いって言っても、あまり無理はしてほしくないんだけど」

「そうだね。ノアもいるし、迂回して行こうか」

「ユナさん、別にわたしは」

「プリメの言葉じゃないけど、無理して、危険を冒す必要はないよ」

もし、わたしがウルフの縄張りに入ったことで、あの村が復讐として、襲われでもしたら大変だ。全てのウルフを倒せばいいけど、今回の目的は違う。あくまでプリメのお姉さんを捜すのが目的だ。

あの村が守ってきたルールを、わたしが壊す必要はない。

「そんなわけだから、くまゆる、くまきゅう、ウルフがいる場所を避けながら進むよ」

「「くぅ~ん」」

くまゆるとくまきゅうは返事をすると、走り出す。

くまゆるとくまきゅうも魔物を探知する力はあるから、任せておけば大丈夫だ。

ウルフがいる場所を迂回し、わたしたちは進む。

「ユナさん、このまま行くと山が」

クリモニアからミリーラに向かう山ほど高くはないが、ちょっとした山が行く先にある。

「あっちの方向なんだよね」

ノアはくまゆるとくまきゅうに走るのを止めてもらい、目を瞑って集中する。

「はい」

山道が舗装されているわけもないので、小さい山でも登るなら大変だ。でも、わたしたちには、くまゆるとくまきゅうがいる。

わたしたちを乗せた、くまゆるとくまきゅうは山の中を走り、頂上の景色が良いところで休憩を挟み、山を下っていく。

山を下りる頃には夕方になり、暗くなり始めてきたので、山を下りたところで、一泊することにする。

「プリメのお姉さん、結構遠くまで来ているみたいだね」

「くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんがいなかったら、大変でしたね」

「ユナ、ノア、一緒に来てくれてありがとうね。わたし1人だったら無理だったと思う」

「1人で行かないで正解だったと思うよ」

「はい。わたしなら、絶対に無理です」

「ありがとう」

「「くぅ〜ん」」

「自分たちもいるって」

「そうね。あなたたちもありがとう」

プリメはくまゆるとくまきゅうの頭の上を飛び、それぞれの頭を撫でる。

くまゆるとくまきゅうは嬉しそうに鳴く。

翌日も魔物は避け、危険は回避しながら進んでいく。

一人なら直進、魔物がいれば倒していくけど、今回は安全第一だ。

順調に進んでいると、くまゆるとくまきゅうが鳴く。

「なに!?」

くまゆるの頭の上で寝ていたプリメが落ちそうになる。

わたしは、くまゆるとくまきゅうの反応を見て、すぐに探知スキルを使う。

魔物の反応と人の反応がある。

数は、魔物はウルフが数十体。人の反応は5人。

「この先に魔物がいるみたい。それと、人も一緒に」

「襲われているのでしょうか?」

「冒険者が、戦っているかも」

「でも、普通の人だったら」

悩んで、手遅れになるのが最悪だ。見てから、判断しても遅くない。

「えっ、もしかして助けに行くの?」

「あとで、死体になって発見されでもしたら、後味が悪いからね」

全員を助けるつもりはないけど、知ってしまったからにはスルーはできない。

「くまゆる、くまきゅう、急いで!」

「「くぅ~ん」」

くまゆるとくまきゅうは、もの凄い速さで走り、すぐにウルフと人が視界に入ってくる。

その姿を見た瞬間、わたしはくまゆるとくまきゅうに指示を出す。

「くまゆる、くまきゅう。あの岩の後ろに隠れて」

「ユナさん、どうしたのですか?」

わたしは指を口に当てる仕草をする。実際はクマパペットを口に当てているだけだけど、ノアには伝わったようで、口を閉じる。

くまゆるとくまきゅうは右斜めにある岩の後ろに移動する。

わたしはくまゆるから下りて、岩の裏から覗く。

騎士っぽい人たちが、ウルフの群れと戦っていた。