軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

667 クマさん、妖精と話す

「妖精?」

大きさは両手に乗るぐらいで、緑色のドレスみたいな服を着て、金色の長い髪をした可愛らしい女の子。そして、背中からは人にはない羽がある。どこから見ても、妖精そのものだ。

「今、妖精って言った? もしかして、わたしが見えるの?」

妖精は、自分を主張するように、わたしの前を飛ぶ。

「見えるよ」

「本当に、ちゃんと見えてる? 光だけとか、虫みたいとかじゃなくて」

「緑色の服を着て、金色の長い髪を左右で結んでいる女の子に見えるよ」

わたしが見たままを言うと、妖精は嬉しそうにして、わたしの周りを飛び始める。

「本当に、わたしが見えるのね」

「本当に妖精なの?」

「あなたは、自分の目で見たものが信じられないの?」

「見たものと言われても、妖精なんて一度も見たことがないし、羽が生えた虫かも?」

「こんな可愛い女の子を虫と一緒にしないでよ!」

妖精の女の子は、わたしに向かって飛び蹴りしてくるが、わたしは横に躱す。

「うぅ、避けないでよ」

「いや、向かって飛んでくれば、避けるでしょう」

妖精の女の子は悔しそうにする。

虫のように叩かなかっただけ、マシだと思ってほしい。虫だったら、ペチと叩いていた。

「あのう、ユナさん。妖精がいるんですか?」

わたしが妖精の女の子と話していると、ノアは周りをキョロキョロと見ながら尋ねてくる。ノアは何度も妖精がいる場所を見るが、見えていないのか、視線が通り過ぎる。

「わたしの目の前にいるけど」

わたしは妖精がいる位置をクマさんパペットで指す。

ノアはわたしがクマさんパペットで指す先をジッと見つめる。妖精はジッと止まってくれている。

「うぅ、見えないです」

一生懸命に目を凝らして見ようとしているが見えないみたいだ。

「その子には見えていないみたいね。わたしたち妖精を見ることができるのは、ごく一部の人間だけだからね」

妖精はノアの前を飛ぶが、ノアに反応はない。

「ちなみに、妖精の声も聞こえないんだよね?」

「はい、聞こえないです。ユナさんが誰もいないところに話しかけているように見えます」

それって、端から見たら、危ない人だよね。

想像してみるが、かなり危ない人だ。

わたしが、そんな人物を見かけたら、関わらないように離れる。

「でも、妖精さんはいるんですよね」

「信じるの?」

「もちろんです。ユナさんが見えているって言うんですから、信じます」

ノアには妖精の姿も声も聞こえていないのに、わたしの言葉だけで信じてくれる。

「この子、優しいわね」

本当にそう思う。フィナにも普通に接するし、貴族だからと言って威張ったりしない。ただし、くまゆるとくまきゅうなどのクマに関することは、我が儘になることもある。

妖精はノアの周りを飛びながら、話しかけるがノアは反応しない。

「でも、どうして、一部の人しか見ることができないの?」

「人が妖精を見るには、その妖精との波長が合わないと見ることができないって言われているわ」

つまり、わたしとこの妖精との波長が合ったってこと?

これも神様から貰った力のおかげなのかな?

それとも元々、わたしと波長が合った可能性もある。

今は、それを知ることはできないので、気にしないでおく。

「でも、最初は、わたしもあなたのことは見えなかったよ」

声は聞こえていたけど、姿は見えていなかった。

「それは、あなたがわたしの声が聞こえていたみたいだから、魔力の波長に合わせたからよ」

「それじゃ、ノアっていうか、この子の魔力の波長に合わせれば、ノアにも、あなたのことが見ることができるの?」

わたしはノアを見ながら尋ねる。

「それは、無理。波長は誰にでも合わせることができるわけじゃないの。魔力の波長が近い人しか、合わせることはできないわ」

だから、わたしにしか見えないのか。

「ノア、妖精との魔力の波長が合わないと見ることができないんだって」

「うぅ、そうなんですね。妖精は限られた人しか見ることができないって言われています。それは魔力が原因だったんですね」

ノアは理由を訊いて、残念そうにする。

「でも、わたしも、綺麗で、美しいと言われている妖精さんを見たかったです。話がしたかったです」

ノアが少し残念そうな表情をする。

わたしもできることなら、ノアにも妖精を見せてあげたいけど、今回ばかりは、どうすることもできない。

わたしが諦めるように言おうとしたとき、妖精の女の子から予想外の言葉が出る。

「一応、その子にもわたしを見ることも話すこともできるわよ」

「でも、さっき、できないって」

「それは、今まで、あなたが居なかったからよ。でも、わたしと魔力の波長が合うあなたが力を貸してくれれば、その子にも他の人も見えるようにできるわ」

「わたしが力を貸すって、どうやって?」

「魔力を少しでいいから、くれればいいわ」

魔力。

わたしはノアを見る。妖精が見えなくて、残念そうにしている。

「変な、影響はないよね」

「ないわよ。あなたの魔力をわたしがもらうんだから、影響があるなら、わたしのほうよ」

「まあ、それなら」

わたしが妖精に向かって手を伸ばすと、妖精はクマさんパペットの上に乗る。

「ノア。わたしの手を見ていて。妖精が見えるかもしれないから」

「本当ですか?」

「それじゃ、いくよ」

必要か分からないけど、わたしの魔力をクマさんパペットに流す。

妖精はわたしの魔力を取り込んで、体が光ったと思うと、ノアが声をあげる。

「ああ、妖精さんです! 見えます!」

ノアの目が大きく開き、わたしのクマさんパペットの上にいる妖精を見ている。

「その子にも、わたしが見えるようになったみたいね」

「綺麗です。可愛いです」

「その人間は見る目があるわね」

綺麗とか、可愛いとか言われて嬉しいのか、妖精はノアの周りを飛び始める。

まあ、綺麗だとは思うけど、性格が少し横柄な感じがする。

ノアは手を差し伸ばすと、妖精はノアの手に止まり、ノアは満面の笑顔になる。

「初めて妖精さんを見ましたが、本当に妖精さんはいたんですね」

「あなたは運がいいわよ。滅多にわたしを見ることなんてできないんだから」

「はい、一生の思い出になりました」

「うぅ……」

ノアの真っ直ぐの言葉に妖精の女の子は何も言えなくなる。

「えっと、それで……」

妖精を呼ぼうとして、名前を知らないことに気付く。

「わたしの名前はプリメ」

妖精が名前を名乗るとノアが口を開く。

「わたしはノアールです。ノアとお呼びください。えっと、プリメちゃん?」

「わたしはあなたより、年上よ」

「えっと、ごめんなさい。プリメさん」

どうやら、ちゃん付けはダメだったらしい。

見た目は15歳ぐらいの女の子に見えるけど、妖精だ。実際の年齢は分からない。

「ノアね。それで、変な格好したあなたはユナだっけ。その子が呼んでいたけど」

「そうだけど」

わたしも名乗ろうとしたが、先に名前を呼ばれてしまう。

それに、わたしの変な格好だけど、妖精にも言われると、なんとも言えない気持ちになる。

「でも、幽霊の正体が妖精のイタズラだったとはね」

漫画や小説でもイタズラ好きな妖精の物語は読んだことがある。でも、まさかわたしの前に出てくるとは思いもしなかった。

「ですが、これで依頼達成ですね。ユナさんも幽霊ではなくてよかったですね」

幽霊の正体が妖精と分かれば、もう怖くはない。

ノアの言葉じゃないけど、これで依頼は達成だ。

ちょうど良いお小遣い稼ぎとなった。

「ノアも手伝ってくれたし、依頼料で、何か美味しい物でも買って食べようか」

「いいんですか!」

ノアは嬉しそうにする。

ノアがいてくれたことで、怖さも半減していた。そのぐらいのお礼をしてもいいと思う。

わたしは改めて妖精を見る。

「なによ」

「もう、イタズラをして人を驚かせちゃダメだよ。みんな幽霊が出たって、大変だったんだから。できれば、このお屋敷には来ちゃダメだよ」

わたしは子供に言い聞かせるように言う。

見た目が小さいので、子供って感じだ。

「ちょ、誰が人間にイタズラをして、驚かせているって」

ノアの手から離れて、わたしの顔の前に飛んでくる。

「あなただけど」

「イタズラをして、驚かせてなんていないわよ」

「幽霊の真似をして『たすけて』と言ったり、見えないことをいいことに、カーテンを動かしたりして、驚かせていたでしょう」

「別に、驚かせるつもりなんて、なかったわよ。わたしは、わたしを見つけてほしかっただけ」

「どうしてですか?」

プリメは、少し悲しそうに答え、そんなプリメを見て、ノアが尋ねる。

「言葉どおりに助けてほしかったからよ」

プリメは真面目な顔で言う。

噓や冗談で、イタズラをしていたわけじゃないみたいだ。

「お願い、わたしを助けて」

プリメは、クマさんパペットの上に止まると、頭を下げてお願いする。