軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

664 クマさん、のんびりする

食事のときにエレローラさんとシア、サーニャさんには帰る旨を伝えてあるので、ガザルさんとリッカさんに帰る旨と、フィナの解体イベントの結果を伝えに行った。

それにフィナの解体道具についても、気になっていたので確認もしたいと思っていた。

「そのことか」

フィナが持っていた解体道具のことを尋ねると話してくれた。

なんでも、イベントの解体道具は毎年冒険者ギルドから頼まれて鍛冶職人が作っているそうだ。長年、形や解体道具の種類も変わってなく、手で持つ木の部分の底に印があるらしく、すぐに分かったそうだ。

黙っていた理由としては、亡くなった父親の物と聞いたので、過去のことを思い出させるのも可哀想だと思い、言わなかったとのこと。

一応、あとでタイミングを見て、話すつもりだったらしい。

ただ、フィナが敢闘賞に選ばれ、解体道具を手に入れるとは思いもしなかったと言う。

ガザルさんから解体道具の話を聞き終わると、くまゆるナイフとくまきゅうナイフのメンテナンスをしてくれることになり、その間はリッカさんとお喋りをして時間を過ごす。

リッカさんも幸せそうでよかった。

そして、みんなに別れを伝えたわたしはクマの転移門の前に立った。

「忘れ物ない?」

「大丈夫よ」

「うん、わたしも」

「だいじょうぶ〜」

ティルミナさんとフィナは持っているものを確認し、シュリは両手を挙げて、大丈夫なことを教えてくれる。

本日、クリモニアに帰る。

まあ、忘れ物をしてもクマの転移門を使えば、すぐに戻ってこられるけど、確認だ。

「それじゃ、クマの転移門を使ってクリモニアに帰るけど、この門のことは秘密だからね」

「ええ、分かっているわ」

わたしはクマの転移門の扉を開いた。その先はクリモニアのクマハウスの中だ。わたしはクマの転移門を通り、クリモニアのクマハウスに帰ってきた。

「本当に不思議よね。ここがクリモニアのユナちゃんの家だなんて」

ティルミナさんは不思議そうにクマの転移門を通り、その後をフィナとシュリも通る。

「ユナちゃん、ありがとうね。楽しかったわ。それに娘の活躍も見ることができたし」

「ゲンツさんには悪かったけどね」

ゲンツさんはフィナの活躍を見ることができなかった。話を聞けば、きっと悔しがると思う。

「ふふ、そうね。帰ったら、機嫌を取らないといけないわね。2人とも協力してね」

「「うん」」

ティルミナさんがフィナとシュリにお願いをすると、2人は返事をする。

2人がゲンツさんに甘えれば、ゲンツさんの機嫌はすぐに良くなるだろう。

わたしの父親は甘くはなかったけど、父親は娘に甘いという話を聞くし、ゲンツさんも娘には甘いらしい。血は繋がっていないけど、娘のように思っているってことだろう。

まあ、わたしの父親は娘に関心がなかっただけだ。

ティルミナさんたちは、お礼を言うとクマハウスを出ていく。

ドアが閉まると家の中が静まり返る。この数日間、フィナやシュリ、ティルミナさんの声が絶えず聞こえていたので、3人がいなくなり、静かになると寂しい気持ちになる。わたしはくまゆるとくまきゅうを召喚する。

「「くぅ〜ん」」

わたしの気持ちを察したのか、くまゆるとくまきゅうはすり寄ってくる。わたしはくまゆるとくまきゅうを撫でる。

くまゆるとくまきゅうが、わたしの家族だ。

2日後、フィナが家にやってきて、家のことを教えてくれる。ゲンツさんが寂しがっていて、帰ってくるなり、抱きついてきたこと。

そして、家の惨状を見たティルミナさんが怒ったこと。

なんでも、家を数日間空けただけなのに、部屋の中がゴミで散らかり、洗い物もされず、洗濯物もしてなくて、ティルミナさんのカミナリが落ちたそうだ。

そういえば、ティルミナさんと結婚する前も、引っ越しの準備を何もしていなくて、引っ越しが大変だったと聞いた記憶がある。

ゲンツさんは仕事はできるけど、家のことはできないみたいだ。

それで、王都から帰ってきた翌日は、一日中、家の掃除をすることになったと、楽しそうに教えてくれた。

「お疲れ様」

それから、お茶とお菓子を食べながら、ゲンツさんにイベントで貰った解体道具を尋ねたことを話してくれた。

ゲンツさんは知っていたとのこと。フィナが亡くなった父親が参加したと知って、気後れして、本来の力を発揮できないと困るから黙っていたとのこと。

確かにフィナなら、父親が参加したと知れば、余計な力が入って本来の力を発揮できなかったかもしれない。

話を聞いたティルミナさんが「それなら、わたしにも教えてくれてもよかったんじゃない。わたしが話したら、どうするつもりだったの?」と尋ねたらしいが、当時ティルミナさんは興味なさそうだったし、フィナがイベントの話をしても、ピンときていなかったから、忘れていると思って、ゲンツさんは話さなかったらしい。

まあ、実際にティルミナさんは覚えていなかったから、こればかりはゲンツさんが正しい。

「でもお母さんは、お父さんが黙っていたのは、亡くなったお父さんに負けたことが悔しくて言わなかったんじゃないかな、って言っていたけど」

それも十分にあり得る。

負けたとなれば、なおさらだ。

そして、今日はゲンツさんは仕事に行き、ティルミナさんとシュリは孤児院やお店に行っているそうだ。

「フィナは一緒に行かなくてよかったの?」

「ユナお姉ちゃんは大丈夫かなと思って」

予想外の言葉が出てくる。

「わたし? 大丈夫もなにも、なにも心配されるようなことはないけど」

「わたしたちが帰るとき、少しだけ、寂しそうな顔をしていたから」

あのときか、確かに寂しい顔をしていたかもしれない。でも、寂しいと思ったのは3人が帰った後だと思うんだけど。もしかして、3人を見送るときには、すでに表情に出ていたのかもしれない。

でも、その気持ちをフィナに気づかれていたとは思わなかった。

「心配してくれて、ありがとう。もう、大丈夫だよ」

2日も経ち、くまゆるとくまきゅうもいたので、もう寂しさは感じてない。

それにフィナが家に来てくれたし。

「それからね。ユナお姉ちゃん……」

わたしとフィナは何かをするわけでもなく、おしゃべりをしながら、のんびりと一日を過ごした。

翌日、わたしはいろいろな場所に顔を出す。

孤児院に行くと、もう慣れた様子で子供たちがコケッコウの世話をしている。初めは恐る恐るお世話をしていたことが懐かしい。リズさんも子供たちに指示を出している。

ティルミナさんは集めた卵を確認している。その横ではシュリとフィナの姿もある。軽く朝の挨拶をすると、わたしは建物の中に入る。建物の中には院長先生とニーフさんが幼年組のお世話をしている。

2人は、わたしが来たことに気づくと、笑顔を向けてくれる。

何か困ったことがないか尋ねると、院長先生は相変わらず無いと答える。ニーフさんからも同じ言葉を貰ったので、嘘や我慢をしているわけではないみたいだ。

次にわたしはクマさんの憩いのパン屋さんに向かう。

店の中はお客さんでいっぱいで、子供たちが一生懸命に働いている。初めの頃は不慣れな感じで仕事をしていたけど、今では、カリンさんに指示をもらう前に自分たちで考え、動いて仕事をしている。

調理場に顔を出せば、ここでも子供たちが自分たちで考え、なにが売れているか、どのパンが売り切れそうなのか判断して、モリンさんに許可をもらって、パンを作っている。

最終的な判断はモリンさんだけど、子供たちもしっかり考えて、意見を出している。

改めて見ると、子供たちも成長したんだと感じる。

帰り際に、モリンさんからパンを貰ったわたしは、次にアンズのお店に向かう。

店の中を覗くとお客さんたちが焼き魚、おにぎり、海鮮鍋、みんな美味しそうにアンズが作った料理を食べている。

店内ではセーノさんが忙しそうに動き回っている。

ちょっと、食事をしていこうと思ったけど、邪魔になりそうだ。

「ユナちゃん?」

窓の外から覗いていたわたしに気付いたセーノさんが、窓から顔を出す。

「食べに来たの?」

「そのつもりだったけど、混んでいるみたいだから、今度にするよ」

「ふふ、何を言っているの。この店でユナちゃんが食べられないってことはないよ。入って」

セーノさんが店から出てくるとわたしの手を掴む。そして、店の中に引っ張っていくと、空いている席に座らせる。

わたしはセーノさんの好意に甘え、食事をいただくことにする。

「それで何を食べます?」

「それじゃ、久しぶりに海鮮鍋をお願い」

お客さんが海鮮鍋を食べているのを見て、食べたくなった。

「了解。アンズ! 至急、海鮮鍋一人前、お願い」

セーノさんが厨房に向かって叫ぶ。

「セーノさん、至急って、なんですか! 作る順番があるんですよ」

「それは、わたしたちの雇い主様のユナちゃんの注文だからだよ」

「もう、それを先に言ってください。ユナさん、今から至急作りますから待ってくださいね」

厨房からアンズの声が聞こえてくる。

「別に急いでいないから、ゆっくりでもいいよ」

注文を受けた順番通りに作らないと、他のお客さんの反感を買ってしまう。

そして、しばらく待つと、湯気が上がった、ごはん付きの海鮮鍋をアンズが運んできた。

「本日、ミリーラの町から運ばれてきた新鮮な海鮮で作ったんですよ」

「これもユナちゃんのおかげだね」

「うん、離れたクリモニアでも故郷の料理を食べられるのはユナちゃんのおかげ」

「そして、楽しく仕事ができるのもね」

アンズ、セーノさんだけなく、ミリーラから来たフォルネさんとペトルさんも頷く。

孤児院にいたニーフさんもだけど、クリモニアに来て、楽しそうに仕事をしているようでよかった。

そして、久しぶりに食べた海鮮鍋は美味しかった。わたしはお礼を言って店を後にする。

店を出たわたしは、届け物があるので、ノアの家に向かう。

「ユナさん!」

ノアが笑顔で出迎えてくれる。

「聞きましたよ。フィナと王都に行っていたんですよね」

どこで聞いたのか知らないけど、ノアの耳に入っていたみたいだ。

「わたしも一緒に行きたかったです」

「今度、一緒に行こうね」

久しぶりにエレローラさんとシアに会わせてあげても、よかったかもしれない。

その場合は、クマの転移門をどうするか、悩むんだけど。ノアなら黙ってくれるんじゃないかと思う。

「約束ですよ」

ノアは満面の笑みを浮かべる。

いつかは、クマの転移門のことを教えてあげて、一緒に出かけるのもいいかもしれない。

「それで、今日はどうしたんですか?」

「エレローラさんとシアから、手紙を預かってきたんだよ」

フィナのお祝いの料理を食べたあと、2人から預かっていた。

「お母さまと、お姉さまからですか!」

わたしの言葉にノアは嬉しそうにする。

ノアはエレローラさんとシアの手紙を読み、2人が恋しくなったのか、少しだけ寂しそうにしていた。

わたしはくまゆるとくまきゅうを召喚して、帰るまで一緒にいてあげた。

そして、クマハウスに帰ってきたわたしは、クマさんの憩いの店で貰ったパンを食べ、お風呂に入って、くまゆるとくまきゅうと寝る。

平和な一日だった。

こんな日がずっと続くといいな。