軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

649 クマさん、フィナを応援する 四回戦終了

━フィナ視点━

重い。

前はお父さんが手伝ってくれたけど、一人で甲殻を外すのがこんなに大変だと思わなかった。

せっかく、ユナお姉ちゃんが解体させてくれた魔物が出たのに遅れている。

「早い。デッド君、甲殻を外し終えた」

進行役の男性の声が聞こえてくる。

もう、全部外したの?

わたしは半分も終わっていない。

わたしに力がないからだ。

同じ女性のエリザさんを見ると、わたしと同じように苦労しているけど、頑張っている。周りを見ると、みんな、汗を流しながら解体をしている。

大変なのは自分だけじゃない。

「お姉ちゃん、頑張って!」

「フィナちゃん、頑張って!」

シュリとシア様の声が聞こえてくる。

シュリたちを見ると不安そうに見ているお母さんと、ジッと見ているユナお姉ちゃんがいた。

わたしは息を吐いて、心を落ち着かせて、解体を再開する。

自分ができることをするしかない。ゆっくりでもいい。丁寧に綺麗に、確実に解体をする。

甲殻を外して、ここを切って、この尻尾には針があるから気をつけて、ここからナイフを入れて、この箇所にはこの道具を使って。

わたしは一歩一歩、ゆっくり進むように解体をしていく。

時間は進み、確実に終わりに向かっている。

でも、まだまだ終わらない。

そんなとき、歓声が上がり、進行役の男の人が声をあげる。

「おっと、二連覇を狙うデッド君、一番でスコルピオンの解体を終わらせた!」

顔を上げて周りを見ると、解体を終わらせたことを知らせるように、一人の男性が手を挙げて合図していた。

もう、終わったの?

速い。

「そして、少し遅れて、引き続き2番手はガルド君だ。ガルド君、悔しそうですが、実力は僅差です。一歳下と考えれば十分でしょう。逆にデッド君は一歳とはいえ年下のガルド君に負けたくないのかもしれません」

あの二人は別格だ。わたしじゃ、敵わない。

でも、まだ他の人たちは終わっていない。

わたしは解体を終わらせるために手を動かす。

それからも、次々と周りがスコルピオンの解体を終わらせていく。

すでに、10番まで名前が呼ばれている

でも、わたしは終わらない。

「エリザちゃん、12番で、終わらせた!」

わたしは顔を上げてエリザさんを見る。やり切った綺麗な表情をしている。

自分の力を出し切ったから、満足をしているのかもしれない。

エリザさんと目が合う。

口が動く。声は聞こえなかったけど、口は「頑張って」と動いているように見えた。

「お姉ちゃん、頑張って!」

シュリの大きな声がわたしに届く。

まだ、終わっていない。

腕が重いけど、まだ動く。

そして、わたしが終えるまでに、全員の名前が呼ばれ、わたしは誰よりも遅く、一番最後に解体を終えた。

━ユナ視点━

「最年少の出場のフィナちゃん。今、17番に終えました。体の小さい不利がある中、これは素晴らしいです」

周りから拍手が起こる。

17番。3人棄権を申し出ているので、スコルピオンの解体参加人数は17人。つまり、最下位だ。

ここまで、残ったメンバーは誰もかも、解体が上手だった。

三回戦でフィナと同時だった女性は16番。冒険者ギルドの職員のエリザさんが、健闘して、12番に終わらせていた。

決勝に行ける可能性がある女性は、エリザさんぐらいだ。

「お姉ちゃん、大丈夫?」

シュリが心配そうに言う。

はっきり言えば、無理だと思う。

いくら上手に解体をしていたとしても、10人の中に残ることはできないと思う。

だから、ティルミナさんもエレローラさんもシアも、シュリの言葉に返すことができない。

流石に、最下位17位の者を10位内に入れることはサーニャさんでもしないと思う。

そして、採点が終わり、進行役の男性のところに順位表が渡される。

「ここに残ったのは17名。この中で、決勝に行けるのは、僅か10名のみ。誰が決勝に行けるのでしょうか」

無理と分かっているけど、もしかしてと思ってしまう。

「一位、デッド君! 一回戦、二回戦、三回戦、そして、この四回戦も一位。誰にも一度も一位を譲らずに、決勝進出だ!」

会場が盛り上がる。

解体の種類によっては得意不得意があるはずだ。それを全部一位取るのは凄いことだと思う。

戦いで、剣、ナイフ、斧、弓、魔法、投擲、そんな全ての武器を使って、一位を取るようなものだ。

どの勉強でも、得意不得意があってもおかしくはない。数学が得意な人、英語が得意な人、まんべんなく全てが優秀なのは、本当に凄いことだと思う。

「そして、二位はこれも一回戦から四回戦まで、全てが二位のガルド君」

これも凄いことだ。一度も三位に落ちていない。

そして、三位から、順番に名前が呼ばれていく。

「10位、エリザちゃん! 二人抜いて10位に入り込みました」

「11位と12位になったベート君とゲガット君は決勝進出に焦りましたね。最後の解体処理が雑になり、大切な解体道具の扱いも急ぐあまり、雑になっていたようです。それに引き換えエリザちゃんは最後まで丁寧に解体をしたと書かれています」

会場から拍手が起こる。

凄いことだ。女性で唯一決勝進出を決めた。それと同時にフィナの決勝進出が消えたことになる。

「お姉ちゃん、負けちゃったの?」

ティルミナさんもエレローラさんも、シュリの言葉に応えることができない。

それはわたしもだ。

フィナは10位の中に入れなかった。シュリの言うとおり負けてしまった。

それから、四回戦は残った者の順位も発表された。

フィナの順位は終えた順番通りに17位だった。

「……お姉ちゃん。負けちゃった」

順位が確定したことで、フィナの四回戦敗退が決まった。

でも、違う。

「シュリ、違うよ。たとえ10人の中に残れなくても、100人以上いる中で、17番だよ。大きな人たちの中で、凄いことだよ」

四回戦では最下位かもしれない。

でも、参加人数から考えれば、上位に入る。

負けたんじゃない、ここまで勝ち残ったのだ。

「だから、戻ってきたら笑顔で出迎えてあげよう。シュリが悲しんでいたら、フィナも悲しくなっちゃうよ」

「そうね。フィナちゃんの解体技術は素晴らしかったわ。戻ってきたら、褒めてあげましょう」

「うん、わたしの中ではフィナちゃんが一番だよ」

エレローラさん、シアも気持ちを入れ替えるように元気に言う。

「ふふ、母親失格ね。負けちゃったことを、残念に思うなんて、フィナは一生懸命やったのに。ユナちゃん、教えてくれてありがとう」

みんな、フィナを出迎える心構えはできた。

あとは笑顔でフィナを出迎えるだけだ。

─フィナ視点─

終わった。

17位。最下位だった。

悔しい。

初めは、わたしより大きい人に負けても仕方ないと思っていた。でも、負けると、凄く悔しい。

みんな、応援してくれたのに、残念に思っているかもしれない。みんなの顔を見るのが怖い。

「なに、顔を下げているの?」

下を向いていると誰かが声をかけてきた。わたしは顔を上げると、女の人がいた。

「えっと、エリザさん?」

「名前を知ってくれているのね。嬉しいわ。フィナちゃん」

「はい、同じ女性で、凄い人だから」

「ふふ、ありがとう。でも、女性と名乗るのは、まだフィナちゃんには早いかな」

「ごめんなさい」

「ふふ、冗談よ」

エリザさんは笑う。

「ほら、悲しい顔はしないの。胸を張っていいわよ」

「……エリザさん」

「ここに残った人たちは、フィナちゃんに恥ずかしいところを見せたくないから、頑張ったのよ。こんな11歳の女の子が一生懸命に解体をしているのに、体格も人生の経験も上の自分たちが負けるわけにはいかないって」

わたしの周りに人が集まってきている。

そして、エリザさんの言葉に頷いている。

「フィナちゃんは、解体が終わると控え室には戻ってこなかったでしょう」

休憩時間はサーニャさんと一緒にユナお姉ちゃんがいる場所に戻っていたから、エリザさんたちみたいに、控え室には行かなかった。

「ごめんなさい」

「だから、謝らないの」

「みんな、フィナちゃんのことを尊敬しているのよ。解体作業が大変なことなのは、解体をやったことがある者なら、みんな知っている。初めは、こんな小さい女の子に解体ができるわけがないと思っていたの」

エリザさんの言葉に、みんな頷いている。

「でも、フィナちゃんは解体をしてみせた。フィナちゃんの解体を見たとき凄いと思ったの。でも、それと同時に負けられないって、みんな思っていたの。もちろん、わたしもその一人」

「そうだぞ」

「そんな悲しそうな顔をするな。自分を褒めろ。俺が初めて参加したときは一回戦で負けた」

「僕は二回戦だった」

「僕は決勝まで行った」

「俺も決勝まで行った」

デッドさんとガルドさんまでやってくる。

「おまえたち二人には聞いていない」

笑いが起きる。

「とにかく、フィナちゃんは四回戦まで来たことを誇ればいいわ。ここまで来ることが、どれだけ大変なことかは、参加したことがある者なら理解してるわ」

「だが、負けた悔しさも分かる。その気持ちは大切だ。その気持ちを次回の糧にすればいい」

みんなが、わたしを慰めてくれているのが分かる。

みんな、わたしより年上だ。そんな人たちに負けても仕方ない。

「ありがとうございます。もう、大丈夫です」

悔しいけど、もう悲しくない。

わたしは頑張った。でも、ここにいる人たちは、わたし以上に頑張った。わたしより、たくさんの時間をかけて多くの解体をして身につけたんだと思う。

11歳のわたしが、そんな人たちに並ぶのは、まだ早い。同じぐらいやって、それでも負けた時に悲しまないと、みんなに失礼だ。

「ふふ、決勝は、わたしを応援してね」

「はい、頑張ってください。エリザさん」

「とは言っても、10位だから、どこまで頑張れるか分からないけどね」

エリザさんの笑顔に、わたしも笑顔になってしまう。

負けちゃったけど、今回、参加してよかった。