作品タイトル不明
631 クマさん、蜘蛛と戦う その2
クマと分かれた俺とランズは 蜘蛛(スパイダー) を倒していく。
「デボラネさん、右から来ます」
俺は正面の 蜘蛛(スパイダー) を倒すと、すぐに右を向く。
「おりゃ、死ねや!」
ルリーナとギルがいたときは、周囲の確認はルリーナの役目だった。だが、二人が居なくなった今は、ランズが戦いながら魔物の位置を知らせてくれる。目の前の敵だけではなく、周りのことがよく見えている。
「デボラネさん、後ろから一匹。俺が行きます」
ランズは 蜘蛛(スパイダー) の脚を的確に斬って、動けなくなったところで止めを刺す。
昔は、目の前の魔物しか見えていなかったくせに、成長したものだ。
俺は周囲の確認はランズに任せ、目に付く魔物を倒していく。
「今度は左から来ます」
ランズの言葉にチラッと左に目を向けると、 蜘蛛(スパイダー) が糸を吐き出そうとしていた。
俺は腰にあるナイフを掴むと 蜘蛛(スパイダー) の口に向けて投げる。ナイフが口の中に刺さり、動きが止まる。俺は目の前の 蜘蛛(スパイダー) を処理すると、ナイフが口に刺さって動きが鈍くなっている 蜘蛛(スパイダー) に止めを刺す。
俺は蜘蛛の口の中にあるナイフを回収して、腰に戻す。
それから、俺とランズは村の中を動き、蜘蛛を倒していく。
「くそ、次から次へと現れやがって。ランズ、大丈夫か!」
「大丈夫です。でも剣が糸のせいで」
それは俺も一緒だ。なるべく吐き出した 蜘蛛(スパイダー) の糸は避けているが、避けられない糸は剣で切ったり、防いだりしているせいで、剣に糸が巻き付いてしまう。
「ここの魔物を倒したら、武器交換だ」
「はい」
目の前の蜘蛛を討伐すると、俺とランズは武器の交換をして、一呼吸入れる。
腕が重い。
何度も剣を振っているから、腕に疲労が溜まり出している。
「ランズ、まだいけるか? 疲れたら、村長の家に戻っていろ」
「まだ、戦えます」
「そうか」
次から次へと現れるが、思ったよりは少ない。あのクマが倒しているんだろう。悔しいが、あのクマは強い。
ゴブリンキングを討伐した話を聞いたとき、信じられなかった。だが、ルリーナが討伐するとこを見て、ギルとランズは冒険者ギルドに運ばれてきたゴブリンキングの死体を確認している。
ルリーナの話ではゴブリンも100体いたと言う。ゴブリンだけなら4人で倒せても、同時にゴブリンキングと戦うのは無理だ。だが、あのクマは1人でゴブリン100体を倒し、ゴブリンキングを倒した。
もし、あのときに俺たちが遭遇してたら、どうなっていたか分からない。
それから、クマがブラックバイパーを討伐した話を聞いたとき、冗談話かと思ったぐらいだ。
だが、ブラックバイパーの解体を街の外でやると知り、見に行った。本当にブラックバイパーが倒されていた。
触ったが、皮膚は硬かった。
あんな大きな魔物、どうやったら倒せるんだ。
解体しているギルド職員の話によると、口から入り込んだ火の魔法が、体内の奥深くまで入り込み、燃やしたと言う。
ルリーナ曰く、あれほどの大きさの魔物なら、魔法を体内まで届かせることはできないと言った。よくて、口の中までと言った。相当な魔法の力がないと無理だと言う。
俺様を殴り倒す力を持っているくせに、魔法の才能まで持っている。
あんなふざけた格好をしているくせに、ムカつく女だ。
そんな女の力を借りないといけないと思うと情けなくなる。
「おりゃ!」
イラつきを 蜘蛛(スパイダー) に叩きつける。
だが、俺様のためにクマが 蜘蛛(スパイダー) を倒していると思えばいい。
素材を俺様に譲ると言う約束は守ってもらうからな。
そのクマと言えば、たまに遠くで叫び声が聞こえてくるが、気にしないことにする。あのクマが簡単にやられるとは思わない。何度も声が聞こえてくるってことは、大丈夫ってことだ。
なにより、黒と白のクマも傍にいるんだから、大丈夫だろう。
まあ、今回はクマの気持ちも分からなくはない。俺様も 蜘蛛(スパイダー) は気持ち悪い。ランズも嫌な顔をしながら蜘蛛を倒している。
だが、俺様は冒険者だ。襲ってくるなら倒すだけだ。
△△△△△△
「おりゃ、死ねや」
離れた場所からデボラネたちの声が聞こえてくる。
デボラネも頑張っているみたいだ。
わたしも早く帰りたいので、頑張ることにする。
探知スキルを使って、 蜘蛛(スパイダー) が集まっているところを重点的にくまゆるとくまきゅうと一緒に回る。
わたしが多く倒せば、デボラネたちが楽になる。
別にデボラネのためではない。
デボラネが蜘蛛に食われているところを、わたしが見たくないだけだ。
そもそも、わたしはデボラネを嫌っていない。
嫌がらせを受けたのは初めて会った一回だけだし、その後は嫌がらせを受けていない。
ランズには、ゴブリン討伐のときに、お礼を言われている。
ただ、デボラネは態度がでかく、横柄なところがムカつく。
それに、わたしをクマ扱いするし。
それにしても数が多い。
こんなにいたら、戦える力を持っていない人はたまったものじゃないね。
元の世界でも、猪に遭遇しただけでも大騒ぎだった。一般人は猪を倒す手段を持ち合わせていない。それだけ、危険なことだ。わたしだってクマ装備がなければ、ウルフ一匹倒すこともできない。
わたしは氷の矢を飛ばし、次々と蜘蛛を倒していく。途中から襲ってこなくなる。
どうやら、隠れ出し始めたようだ。
わたしは探知スキルを使って、家の上、家の裏、木の上、茂みの裏、身を隠している 蜘蛛(スパイダー) を的確に倒していく。
悪いけど、村の安全を考えると、一匹も逃すわけにはいかない。人がいる領域に魔物が入ってきたのだから、仕方ない。
そして、村の中にいた蜘蛛討伐が終わる。
「これで最後」
家の陰に隠れていた 蜘蛛(スパイダー) を倒す。
「くまゆる、くまきゅう、ありがとうね」
「「くぅ〜ん」」
くまゆるとくまきゅうが背中を守ってくれたおかげで、安心して戦うことができた。
もし、わたし1人だったら、何度、絶叫したか分からない。心に相当なダメージを受けたかもしれない。
だから、わたしを守ってくれたくまゆるとくまきゅうには、感謝の言葉もない。
「終わったのか?」
わたしがくまゆるとくまきゅうの頭を撫でていると、デボラネとランズがやってくる。
わたしは、デボラネたちを見た瞬間、目を閉じたくなる。2人とも 蜘蛛(スパイダー) の血と糸がべっとりと付いている。
冒険者なら、このぐらい大丈夫なのかもしれないが、わたしには無理だ。
想像しただけで、寒気がしてくる。
でも、魔物の返り血や蜘蛛の糸が体に付いても、気にしないのが、本来の冒険者の姿なのかもしれない。
「そっちも終わったみたいだね」
デボラネたちを直視しないように話しかける。
「ああ、あとは隠れている奴がいないかだが」
「それなら、大丈夫だよ。隠れている 蜘蛛(スパイダー) も討伐したから、村の中には、もういないよ」
探知スキルで確認済みだ。
「そんなことがわかるのか?」
「この子たちが教えてくれるから」
わたしは左右にいるくまゆるとくまきゅうに手を伸ばして、体を撫でる。
「便利なクマだな」
「それじゃ、デボラネさん。これで終わったんですよね」
「ああ、ひとまずはな。あとの問題は 蜘蛛(スパイダー) が現れた森だ。まだ、残っている可能性がある」
確かに、ゴキを1匹みたら100匹いるって言うし。
戦っている間も森からやってきていた。まだ、森の中にいる可能性は十分にある。
最低でも近くの森の確認は必要だ。
デボラネがわたしを見る。
もしかして、わたしに確認しに行けなんて言わないよね?
「おい、クマ。俺様たちが村に残る。おまえは冒険者ギルドに報告に行け」
デボラネの口から予想外の言葉が出た。
「いいの?」
わたしなら、探知スキルがあるから、探し出して討伐することは可能だ。
デボラネもくまゆるとくまきゅうができることを知っているはずなのに、命令してこない。
いや、「冒険者ギルドに報告に行け」も命令かもしれない。
「そのクマなら、早く王都に戻れるだろう」
デボラネがくまゆるとくまきゅうを見る。
「そうだけど」
「なら、さっさと行け。約束どおりに 蜘蛛(スパイダー) の処理はしておいてやる」
「分かったよ」
言い方はあれだけど、今回はデボラネの言葉に従う。
だって、これ以上蜘蛛と戦いたくないし、他の冒険者が残りを倒してくれると言うなら任せたい。だから、わたしはデボラネの案を呑むことにした。