軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

629 クマさん、ゴブリンと再会する

村の近くまでやってきたわたしは探知スキルを使う。

「うわぁ」

蜘蛛(スパイダー) の反応がたくさんでる。

蜘蛛がたくさんいるの?

想像しただけで、身震いする。

帰りたい。見なかったことにしたい。

でも、そうもいかない。

「くまゆる、くまきゅう、ゆっくりと行くよ」

「「くぅ~ん」」

……ちゃんと心構えをしていたつもりだった。

現れても驚かないつもりでいた。

でも、イメージと現物を見るのとでは違った。

「ぎゃ~~~~~~」

わたしは、目の前に現れた 蜘蛛(スパイダー) を見た瞬間、悲鳴をあげた。

大きい蜘蛛だ。

ウルフぐらいある。

テレビで見た手のひらサイズのタランチュラでも身震いするのに、ウルフサイズの蜘蛛なんてあり得ない。

真っ黒い体に、8本の足と口がカチカチと動くのが見え、鳥肌が立つ。

「ベアーカッター」

蜘蛛(スパイダー) は三等分になり絶命する。

つい、クマ魔法を使ってしまい、過剰攻撃をしてしまった。

三等分になった 蜘蛛(スパイダー) を見ると、脚がピクピクと動いている。

「うぅ、帰りたい」

前に、娘を魔術師にさせるために虫の中に入れたり、虫の餌にするために生きたまま大量の虫の中に放り込むアニメや漫画があった。あれを見たときは鳥肌が立った。

もし、そんなことをされたら、間違いなく発狂する。

近くで直視もしたくない。

大きな蜘蛛の顔が目の前にあるってことを想像しただけで、鳥肌が立ってくる。

やばい。過去最悪の敵かもしれない。

これから、苦手な蜘蛛がたくさんいるところに向かわないといけないと思うと、気が滅入る。

それから、わたしは村に到着する間に、 蜘蛛(スパイダー) に遭遇するたびに何度も悲鳴をあげた。

やっとのことで村に到着するが、もう精神が崩壊しそうだ。

「帰りたい」

何度、この呟きを言ったか分からない。

家に帰って、何もかも忘れて、くまゆるとくまきゅうを抱いて、寝たい。

フィナとシュリと楽しく過ごしたい。

……でも、村の現状を見ると、そうも言っていられない。

村の中を 蜘蛛(スパイダー) がうじゃうじゃと徘徊し、家が蜘蛛の糸によって巻きつかれている。

まるで、家の中にいる人を外に出させないためのように。

探知スキルを使って確認する。人の反応がある。

家の中に閉じ込められているけど、生きているみたいだ。

間に合ったことに安堵するが、徘徊する 蜘蛛(スパイダー) を倒して、この惨状をどうにかしないといけない。

戦った感じ、吐き出す糸が厄介だけど、それほど苦労せずに倒すことができる。

問題はわたしの精神が最後まで持つかどうかだ。

探知スキルで確認すると、村の中にはかなりの数がいる。 30? 50? それ以上はいそうだ。数えるのも面倒くさい。

それじゃ、嫌だけど、蜘蛛討伐を始めますか。

「くまゆる、くまきゅう、後ろをお願いね」

「「くぅ〜ん」」

今回ばかりは、くまゆるとくまきゅうには傍にいてもらうことにする。

本来なら別々に討伐するのが早いが、もし背後から 蜘蛛(スパイダー) に覆い被さられでもしたら、精神にダメージを受けてしまう。

そんなことになれば、一生のトラウマものになる。

無数の大きな蜘蛛に取りつかれたことを考えただけで、失神しそうだ。

だから、くまゆるとくまきゅうには、わたしの護衛をしてもらう。

「くまゆる、くまきゅう。守ってね」

「「くぅ~ん」」

くまゆるとくまきゅうの鳴き声は「任せて」と聞こえる。

2人とも、信じているからね!

わたしたちは村の中を徘徊する 蜘蛛(スパイダー) を倒しながら、村の中を移動する。

蜘蛛(スパイダー) の体は柔らかいので、倒すのは簡単だけど、倒したあとに足がピクピクと動くのだけはやめてほしい。

夢に出てきそうで嫌だ。

今日はくまゆるとくまきゅうを抱いて寝よう。

くまゆるとくまきゅうを抱いて寝れば、きっと夢に出てこないはずだ。

フィナとシュリに貸してほしいと言われても、今回は鬼になっても断るつもりだ。

蜘蛛(スパイダー) を倒しながら村の中を移動していると、男の声が聞こえてくる。

「おりゃ! どけぇ!」

戦っている?

もしかして、冒険者?

村に助けを求めに来た男性が、二人の冒険者に助けてもらったって、言っていたことを思い出す。

戦っているのはその冒険者かな。

つまり、男性を助けた後、逃げずに 蜘蛛(スパイダー) に襲われている村に向かったってことだ。

しかも、この状況を見ても、逃げずに戦っている。

尊敬する。

もしかして、その冒険者に全部任せることができるかな?

任せることができたら、いいな。

「くまゆる、くまきゅう、行くよ」

「「くぅ〜ん」」

村人って可能性もあるから、とりあえずは声がするほうへ向かう。

「いた」

ゴブリン顔の大男が大剣を振り回して、 蜘蛛(スパイダー) と戦っている。

もう一人の冒険者らしき男は、後ろで家族を守っている。

あの大剣を持っているゴブリン顔、どこかで見たことがあるような?

どこだったかな。って今は考えている場合じゃない。

ゴブリン顔は蜘蛛に囲まれ、後ろには家族と思われる男性と女性と子供がいる。

わたしは駆け出し、 蜘蛛(スパイダー) の後ろから風魔法を放ち、切り刻む。

変な色の液体が噴き出して、倒れる。

「大丈夫?」

ゴブリン顔の冒険者に尋ねると、驚いた表情でわたしを見る。

やっぱり、どこかで見たことがあるような。

「……おまえはクマ」

わたしの格好で驚いたのかと思ったけど、違うみたいだ

おまえは? ってことは、わたしを知っているってことだ。

わたしの記憶間違いではないみたいだ。

「どうして、こんなところにクマの嬢ちゃんがいるんだ?」

後ろで家族を守っていた男も、わたしのことを知っているみたいだ。

たしかに、この男も見覚えがある。

「えっと、大丈夫? 助けに来たんだけど。それから、どこかで会ったっけ?」

「……貴様」

「デボラネさんを忘れたのか!」

ゴブリン顔は怒り、家族を守っていた男が、ゴブリン顔らしき男の名前を口にする。

デボラネ、デボラネ。

聞き覚えがある。

脳のどこかにちゃんと仕舞ってある。

でも、その記憶した引き出しから出てこない。

「おまえが冒険者登録しに来たときに殴った男の顔を忘れたのか」

…………ポン

「ゴブリン」

「デボラネだ!」

思い出した。思い出した。

冒険者ギルドに登録しに行ったとき、わたしに絡んできた冒険者だ。そして、返り討ちにしたっけ。

懐かしい思い出だ。

最近、あまり冒険者ギルドにも顔を出していないし、デボラネとも会っていなかったから、忘れていたよ。

たしか、デボラネの後ろにいる男の名前はランズだっけ?

ルリーナさんとギルの元メンバーで、別れたと言っていたけど、こんなところにいたんだ。

「どうして、二人がここに? クリモニアから離れているよ」

「貴様こそ、どうしてここに」

「王都の依頼で近くの村のタイガーウルフを倒しに行ったら、この村が蜘蛛に襲われているから助けてほしいと、この村の男の人に頼まれたからだよ」

「それじゃ、あの男は無事なんだな」

やっぱり、あの男性を助けたのはこの2人だったみたいだ。

「疲れていたけど、大丈夫だよ」

「そうか」

デボラネは安堵の表情を浮かべる。

「デボラネさん。今は、ここを離れましょう」

ランズが周りを見ながら言う。

周りはわたしが 蜘蛛(スパイダー) を倒したことで、今は安全だけど、いつ集まってくるか分からない。

「ああ、そうだな」

わたしはどうしようかなと思っていると、デボラネが声をかけてくる。

「貴様も来い」

どうしてよ。と言いたかったが、後ろで家族を守っているし、情報が欲しいので、一緒についていくことにする。

やってきたのは村長の家。

「クマ!」

家の中に入ってきたくまゆるとくまきゅうに家の中にいた男性は驚く。

この人が村長みたいだ。

「このクマなら、大丈夫だ」

デボラネはそう言うと、村長の許可を待たずに椅子に座り、水を頼む。

村長は、疲れているデボラネとランズに水を出してくれる。デボラネとランズは一気に飲み干す。

襲われていた家族は、デボラネにお礼を言って、隣の部屋で休ませてもらうことになる。

「それで、その可愛らしいクマの格好をした、お嬢さんとクマは?」

村長がわたしと、わたしの傍にいるくまゆるとくまきゅうに目を向ける。

「ああ、こんな格好をしているが冒険者だ」

「冒険者?」

デボラネがわたしを冒険者だと言った。

初めて出会ったときのことを思い出すと、かなりの進歩だ。

「あと、この黒と白のクマはこいつのペットだ」

「「くぅ~ん!」」

デボラネの紹介にくまゆるとくまきゅうが抗議の声で鳴く。

「ペットだろう」

「「くぅ~ん!」」

再度、くまゆるとくまきゅうは抗議の声をあげる。

話が先に進まないので、わたしは仲裁に入る。

「この子たちは、わたしの大切な仲間だよ。だから、なにもしなければ大丈夫だよ」

わたしが仲間と言うと、くまゆるとくまきゅうは嬉しそうに「「くぅ~ん」」と鳴く。

村長は対応に困った表情を浮かべるが、これ以上くまゆるとくまきゅうについては尋ねてこなかった。

「それで、おまえは、この 蜘蛛(スパイダー) の討伐を手伝ってくれるということでいいんだな」

デボラネは剣に纏わり付いた 蜘蛛(スパイダー) の糸と血を処理しながら、尋ねてくる。

「そのつもりだけど、必要?」

余計な手を出すなとか、おまえの手なんて借りるかとか、言われるかも。

「必要だ。俺とランズは魔法が使えないからな」

あら、素直に助けを求められた。

流石に村の住民の命がかかっている状態で、自分のプライドを守るために断る、とは言わなかったみたいだ。

わたしだって、突っかかってこなければ、喧嘩を買うことはしない。だって、わたしは大人だからね。

「それじゃ、状況を教えて」

村長の話ではいきなり 蜘蛛(スパイダー) が現れ、村を襲ってきたそうだ。

デボラネとランズは村の近くに仕事で来ていたところ、蜘蛛に襲われていた男性を助け、そのまま、この村に来たと言う。

わたしのゴブリン株が上がった。

逃げずに村に来たことを尊敬する。

そして、デボラネの指示で、村の住民は家の中に閉じこもったそうだ。

だから、住民は家の中にいたんだね。

そう考えると、デボラネもちゃんとした冒険者なんだと、改めて思う。

「 蜘蛛(スパイダー) は糸を餌に巻きつけて、保存して食べる習性があるからな。家の中にいれば、すぐに食われることはない」

ほとんどの家は糸に巻きつかれていた。

「気持ちいいわけじゃないけどな。その間は命の保証はされている」

食べられる順番待ちとも言うけど。

でも、デボラネの言うとおりに、すぐに食べられるわけじゃないから、対処の時間があるってことだ。

「それじゃ、村にいる 蜘蛛(スパイダー) を倒せばいいってことでしょう?」

それなら、当初の目的と変わらない。村を襲ってきた 蜘蛛(スパイダー) を討伐するだけだ。